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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 関西会員懇談会後の会見における中西会長発言要旨

2018年7月5日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【大阪北部地震】

先般、大阪北部を震源とする大きな地震が発生した。今回の地震により、犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、被災された方々にお見舞い申し上げる。できるだけ早く復興することが肝要であり、経団連としても関係各所と連携しながら支援していきたい。

あれだけの大規模な地震が発生する中、被害を最小限に抑えることができたのは、これまでの地震の教訓・知恵が活きたということであろう。他方、交通インフラの遮断や帰宅難民などの課題が浮き彫りになったことはきちんと反省しなければならない。過去の教訓・知恵をしっかり受け継いで地震対策を進めていくことが重要である。

日本列島に暮らしている限り、南海トラフ巨大地震をはじめ地震のリスクと無縁ではいられない。ただ、大阪北部地震では、阪神淡路大震災に比べて、建物の倒壊は少なかった。これは国が国土強靭化を進め、経済界もBCPを進めてきた成果である。地震対策としては、地震の発生確率をしっかりと確認しながら、こうした備えを進めていくことに尽きる。防災・減災対策の強化に向けて、政府、地域、経済界がしっかり連携して取り組んでいくべきである。

【万博誘致】

万博を大阪に是非、誘致したい。誘致のためには、人のつながりが重要である。経団連としても、榊原前会長が実行委員長を継続して務めており、会員企業にもさまざまな協力を要請している。例えば、企業のグローバルなネットワークを活用して、各国・各地域で誘致に向けた働きかけを行うことは有効である。先日のBIE総会での最終プレゼンテーションもとても上手くいったと評価されている。ただ、誘致はそう簡単なものではない。無記名による一国一票という投票スタイルも難しい面がある。地道にかつ継続的に取り組んでいきたい。

会場建設費等の資金負担のあり方については、目下オリンピックも控えており、誘致が実現してから検討すべき課題である。経団連の中でもまだ議論しておらず、新しいアイデアがある訳でもない。基本的には、万博は大阪のみならず、日本全体で誘致するものであると考えている。

2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年関西ワールドマスターズゲームズとビッグイベントが続く。2025年の万博誘致が実現した暁には、2025年に向けて一連の行事をしっかり盛り上げていくことも重要である。

【IR】

IRはわが国への来訪者を増やすツールとして重要である。日本のMICEの国際競争力は決して高くなく、大規模施設の整備や訪日客を収容する宿泊施設という面で課題が多い。カジノの賛否について特段の意見はないが、今回のIR実施法案を単純にカジノ法案と捉えるべきではない。日本を魅力ある国にするために、諸外国に比べて何が足りないのか、どのような規制緩和が必要でそれをどう進めていくかといったことを国会でよく議論していただきたい。IRの大阪夢洲への立地の可能性については、精緻に分析したわけではないが、大きなポテンシャルがあるのではないか。

【通商政策】

現在、米中間で貿易戦争の懸念が高まっていることは憂慮すべき事態である。米国は貿易不均衡の是正という観点に加えて、技術面での優位性確保という観点からも措置を講じている点に留意する必要がある。トランプ大統領だからという捉え方だけでは対応を誤ることになりかねない。また、ポピュリズムが台頭し、グローバル化に不満を持つ人たちの声が大きくなっている。新たな経済秩序の構築を視野に入れなければならないような深刻な状況にある。現状をただ嘆くのではなく、こうした時代背景の中で日本として何ができるかを考える時期に来ている。

【品質問題】

経団連は、品質問題を重要課題と捉え、会員企業の間で課題の共有を図っている。品質問題はまずは現場の問題ではあるが、根本的には経営の問題である。経営に密接にかかわっている。経団連としても引き続き議論を深めていく。

【エネルギー基本計画】

エネルギー基本計画を巡っては、電源のポートフォリオにばかり焦点が当たるが、ポートフォリオは結果である。最も大切なことは多様化するエネルギー源を見極めたうえで、しっかりとコストを下げた形でかつ安定的にエネルギーを供給できる道筋を示すことである。今回の基本計画はこうした議論を踏まえて策定されたものであると評価している。

化石燃料はいつか枯渇する。また、再エネの活用のためには従来のものとは異なる設備、技術、システムが必要になってくる。加えて、現在、電力システム改革が進んでおり、地域独占や総括原価方式といったメカニズムが変わりつつある。こうした中で、電力・エネルギー分野にしっかり投資を呼び込んでいかなければならない。

エネルギー基本計画にプルトニウムの削減が盛り込まれた。現実的に真剣に取り組まなければならない課題である。わが国が核燃料の再処理ができるのは、プルトニウムに対する監視体制が整っているからであり、この問題を放置してはならない。他方、現実にどう対処していくかといえば、原発の再稼働もなかなか進まない中、これまで通りのやり方で良いのかといえば議論があるところであろう。

【中小企業を巡る課題】

デジタル・トランスフォーメーション、即ち、Society 5.0の時代の中で、中小企業の役割はこれまで以上に大きくなる。これまでの大企業を頂点とするヒエラルキーから水平な構造へと変わっていく。中小企業は日本の産業競争力の源泉の一つであり、小規模ながらも高品質なものづくりを進めている中小企業はいくつもある。ただ、事業構造の転換期にあって、中小企業をこれまで通り、わが国産業の強みとしていくためには、抱えている課題を放置してはならない。例えば、企業規模が理由でIT人材が不足し、IT投資がままならないという現実的な課題がある。また、サイバーセキュリテイも深刻な課題となっている。こうした課題については、ただ補助金を出すといったことでは解決できない。IT技術の進展に伴いITコストも低減していることから、技術の導入などを通じて、中小企業の不安を取り除いていくことが必要である。サプライチェーンの構造が大きく変わるという前提で商工会議所や地域の金融機関などが連携して、産業全体の底上げを図ることが重要である。

【広域経済圏】

経済圏を細かく分けていては、なかなか良い手が打てず、都道府県という枠で物事を考えることがボトルネックとなりかねない。行政上の課題ということにはとどまらない。地域経済活性化への起爆剤という視点で、道州制を含め広域経済圏のあり方を議論すべきである。とりわけ、イノベーションを推進する上で、地域の大学には重要な役割が期待されている。イノベーションにつながる研究活動の拡充に向けて、制度面での整備を進めていく必要がある。

以上

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