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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2019年1月28日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

Society 5.0の背景にあるデジタル・トランスフォーメーションは働き方改革にも直結している。産業構造が大きく変化する中、「仕事が変わる」という現実を経営者、従業員ともに直視しなければならない。この意味で労使ともに大きな転換点に立っている。これが今年の経営労働政策委員会報告(経労委報告)の大きなメッセージである。働き方改革というと、労働生産性の向上の面ばかりが注目されるが、デジタル化の中での働き方や仕事の変化をしっかりと意識した上で、働き方改革がどのような意味を持つのか、労使が議論することが必要である。

経労委報告は、賃金引上げについて、ベアを選択肢の一つとしてしっかり示している。ベアが重要な企業も当然ある。ベアを否定するものでもなければ、賃金引上げを否定するものでもない。賃金は、会社から従業員への最大のメッセージであり、成果を上げた従業員に賃金で報いるのは当然のことである。経営者はこの考え方を共有している。米中貿易摩擦の影響などについては、影響を受ける業界もあれば、影響を受けない業界もある。先行きの不透明感は、経営者の心理面でのプレッシャーにはなるだろうが、労使交渉に直接影響するものとは見ていない。

経営環境といっても今や、企業によって大きく異なる。例えば、電機業界はイノベーションを創出できなければ、将来展望を拓けず、社員のやる気次第で業績が大きく変わる。他方、毎日の仕事を確実に積み重ねることが業績向上を図る上で重きをなす産業もある。企業・産業が多様化している。ベアへの対応も各々の状況によるのであろう。

挑戦している企業は可能性があるし、あきらめたら退場を迫られるというのは経営者としてはヒリヒリするような感覚である。働く人がどうすればやる気・モチベーションを高めてくれるかが大きな経営課題である。

【エネルギー問題】

今年、日本はG20の議長国である。COP24を踏まえ、パリ協定に基づく温室効果ガス削減目標をどう達成していくのか、日本のスタンス・対応が国際社会で注目されている。しかし、温室効果ガスの長期・大幅削減に向けた具体的なマイルストーンをまだ示せていない。エネルギーのポートフォリオだけでなく、将来にわたって地球温暖化にどう取り組むのかを広く内外に明示していく必要がある。日本政府としては、G20の場で環境エネルギー問題についてどう具体的に議論を進め、成果を出すのか、あるいは、G20に先立つエネルギー大臣会合でどのようなメッセージを出すのか。大きな課題である。

再生可能エネルギーの拡大に向けて、グリッドに起因する制約があることもあり、電力投資が停滞している。これをどう克服していくかが課題である。エネルギーの分散化に対応した料金体系の再構築など、法改正を含めた環境整備について検討する必要がある。日本においては、太陽光、風力ともに適地が乏しく、大型化も難しい。太陽光については季節による発電量の変動、風力については頻発する台風による被害など、日本特有の気象条件も普及に向けた障害となっている。

経済界と行政、政治がこれらの課題を受け止めて、議論を展開していくことが国民の理解を得る上での第一歩である。現状に手をこまねいていれば、資源に乏しい日本は、大きな課題を抱えたまま立ち往生してしまう。エネルギー全体に係る国民的な議論が必要であり、経団連は一石を投じるべく、政策提言を取りまとめているところである。

【大学との対話】

今月中に「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」の第1回会合を開催する。こうした枠組みで大学と対話するのは経団連としては初めての試みである。教育のあり方も含む幅広い問題について、経済界の問題意識を伝えていく。

【毎月勤労統計】

保険給付にも影響してくる問題であり、大変遺憾である。統計はしっかりした調査に基づかなければならず、実務面で再発防止を徹底してもらいたい。

【日EU EPA】

2月1日に発効する日EU EPAの意義は大きく、国際社会からの評価も高い。日本とEUを合わせた経済規模はかなり大きなものとなり、保護主義が台頭する中、日欧が自由貿易を堅持していくという強いメッセージを発することになる。

【ダボス会議】

先週、ダボス会議に参加した。安倍総理も来場し、大いに盛り上がった。年末年始の金融資本市場の乱高下を含め、地政学的・地経学的に安定感を欠く中で、デジタル・トランスフォーメーションを推進するとともに、自由貿易をしっかり維持していこうという建設的な議論ができた。

今回のダボス会議では、日本の存在感が大きかった。安倍政権が安定していることが主因であり、その安倍総理から、自由貿易の推進に向けた力強いメッセージが発せられた。昨年末にTPP11が発効し、来月1日には日EU EPAの発効が控えている。日本は自由貿易の推進にリーダーシップを発揮する責務を負っている。

また、安倍総理から、デジタル・トランスフォーメーションを前向きに捉えた上で、DFFT(データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト)として、データ・ガバナンスに関する国際的な連携を深めていくとの方向性が示された。この分野でも、日本が主導権をとることへの期待が高まっている。

私は世耕経済産業大臣、五神東大総長らとSociety 5.0に関するメディア・ブリーフィングを行い、日本が政府、学界、産業界一体となって、Society 5.0の実現に向け、デジタル・トランスフォーメーションを推進していく姿勢を強くアピールした。日本への期待が高まったダボス会議であった。国際社会からのこの期待に応えて、日本と世界の経済成長につなげていくことが重要である。

以上

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