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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2022年1月24
一般社団法人 日本経済団体連合会

【新型コロナウイルス感染急拡大への対応】

日本でも新型コロナウイルス感染者が急増している。諸外国の例も参考に、オミクロン株の特性に応じた対策を講じて経済社会活動を回していく必要がある。

まず、感染者または濃厚接触者の隔離期間について、日本では、エッセンシャルワーカーを除き10日間となっているが、海外では5日間のところも多い。適正な隔離期間を検討する必要がある。

外国人の新規入国禁止という現行の水際措置も、現実的ではない。オミクロン株について不明なことが多かった初動段階では、大きく網をかけることは正解だった。この変異株による感染者が大勢を占めつつあり、見直す時期に来ているのではないか。ビジネスは国内だけで成り立っているわけではない。海外との往来の断絶で、外国企業との技術協力やM&A交渉などに支障をきたしている。イスラエルを例にとると、今年1月から、ワクチン接種証明書の保持者等の入国を可能とした。日本もこのような国の措置を検証し、一刻も早く鎖国状態を改善していただきたい。

抗原検査キットの不足に対処すべく、国内メーカーは既に増産体制に入っている。日本政府には、この動きを支援し、同キットの供給増、ひいては医療体制の維持に努めていただきたい。

【春季労使交渉】

春季労使交渉は賃金だけを議論する場ではない。人への投資、働き方、生産性の向上など幅広いテーマについて、年に1度、労使で課題を共有し、集中的に議論することに意味がある。

コロナ禍によって、業種や企業ごとに業績のばらつきがあり、一律の賃金引上げが現実的ではない中、好業績を維持している企業、業績を上げた企業が、重要なステークホルダーである従業員に、その果実を還元するのは責務である。これから始まる春季労使交渉において、社内外の考慮すべき事項や財務状況等を踏まえて労使で協議し、企業が賃金を決定する「賃金決定の大原則」に則り、最善の解を出すべきである。

【取引適正化】

日本全体で賃金を向上させていくためには、中小企業を含め、サプライチェーン全体の生産性向上、付加価値増大が不可欠である。その中で、取引価格は非常に大事なファクターである。経団連は会員企業に対し、「企業行動憲章」で、下請など中小企業との取引条件の改善を促している。また、パートナーシップ構築宣言への署名も再三呼びかけている。

【有価証券報告書開示項目】

〔岸田総理が、男女賃金格差を有価証券報告書の開示項目にすることを検討していることについて問われ〕シェアホルダーズバリューからステークホルダーズバリューへのシフトの一環として、非財務情報の開示が増加する流れの中でのご発言ではないか。大事な事柄であるので、関係者でよく議論する必要がある。

【日米首脳会談】

自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日米間の緊密な連携ならびに同志国(like-minded countries)との協力の深化で一致したことを歓迎する。また、経済版「2+2」の新設について合意したことも、非常によい動きである。経済安全保障について、米国、同志国との間で協議することは重要である。

米国のTPP復帰が当面難しいとされる中、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を通じて同地域に経済面でも関与していくという米国の姿勢も歓迎である。

【対中関係】

今年は日中国交正常化50周年という節目である。日中両国は、東アジアの経済の繁栄と平和のために、安定的で建設的な関係を築いていく必要がある。

世界は中国なしではやっていけず、中国も世界なしでは立ちいかない。気候変動問題やコロナ対応など地球規模の課題も存在しており、それらの解決に向け、協力して取り組むべきである。

【ウクライナ情勢】

情勢を注意深く見守っている。

〔ロシア軍のウクライナ侵攻が現実のものとなれば、どのような影響が出るか、との問いに対し〕日ロ経済交流にも影を落とすだろう。さらにエスカレートすれば、ロシアから欧州への天然ガス供給がストップしてガス価格が急騰するという事態も招きかねず、日本経済、世界経済への影響も免れない。

【経団連と日経連の統合】

経団連と日経連が統合して、今年で20年を迎える。統合以前は、経団連が内外の幅広い政策課題に取り組む一方、日経連は、社会保障や労働問題を担当していた。社会保障や働き方等が日本の経済社会全体に関わる課題となることを予見し、経団連と日経連が統合し一体的に取り組むというのは、非常に意味のある決断であった。マルチステークホルダー、国民各層の要請・要望に応えられる組織に生まれ変わった。非常によい統合であった。

以上

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