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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2022年3月7
一般社団法人 日本経済団体連合会

【審議員会議長・副議長人事】

本日の会長・副会長会議において、本年の定時総会(6月1日)で新たに審議員会議長ならびに副議長にご就任いただく候補者を内定した。

定時総会をもって、審議員会の古賀議長をはじめ、小林副議長、根岸副議長、斎藤副議長、畑中副議長、井阪副議長、新浪副議長、二宮副議長、永井副議長が退任する。

新たな議長の候補者として、東日本旅客鉄道の冨田哲郎会長を内定した。副議長の候補者については、定時総会で副会長を退任される杉森副会長には、引き続き、審議員会の副議長にご就任いただく。加えて、新たに、中外製薬の小坂達朗会長、資生堂の魚谷雅彦社長、IHIの満岡次郎会長、三菱商事の垣内威彦社長、損害保険ジャパンの西澤敬二社長、アステラス製薬の安川健司社長を内定した。今回の内定で、議長・副議長は22名となる。

いずれの候補者も、人格・識見、経営手腕、各業界における実績などを総合的に判断し、人選した。

〔副会長、副議長候補者に同一業界から複数選出したことを問われ〕金融分野の方々は、グローバルに幅広い事業活動を展開されている。そうした方々の知見を経団連活動に反映させることも考慮しての人選である。また、Well-beingが重視される時代において、ヘルスケアは今後成長が期待される重要分野であり、今回、製薬会社から2名を選出した。いずれも人物本位の人選である。

【新型コロナに関する提言】

本日の会長・副会長会議で、新型コロナ対策に関する提言を取りまとめたので、公表する。

昨年6月に私が会長に就任して以来、新型コロナに関する提言は、今回で5本目となる。本日現在、東京など一部地域は、ピークを越えたものの、残念ながら第6波から抜け出せておらず、まん延防止等重点措置の制限が続いている。

一方、それ以外の多くの地域では、まん延防止等重点措置が本日解除され、政府内でも「出口戦略」の検討が始まっている。そこで、今回の提言では、前回の11月の提言から一歩前進し、これからの感染の波に備えつつパンデミック対策からの出口戦略を策定・実行し、エンデミック対策に舵を切るべきであると訴えている。

提言のポイントは2点。1つは、今後の感染対策である。第6波で明らかとなった課題を踏まえつつ、ワクチン接種の加速、抗原キットや治療薬の確保、安心してサポートを受けることのできる自宅療養の仕組みの整備、医療へのアクセスの改善、変異株の性質に応じた、科学的・合理的で納得感のある対策の策定・実施、を求めている。

もう1つは、パンデミックからの出口戦略の構築・実行である。感染症を正しく恐れつつ社会経済活動を進めていけるよう、国民や社会全体のマインドチェンジを図ること、国際的な人の往来を本格的に再開すること、コロナの指定感染症法上の位置づけを簡素化していくこと、さらには、緊急時に物資が安定供給できる生産体制を整備すること、デジタルヘルスを推進すること、などを柱に据えるべきである。

本提言ではまた、政府に可能な限り早期に、エンデミック宣言するよう求めている。

【新型コロナウイルス感染症対策】

ワクチン、検査、治療薬が整ってきて、諸外国でパンデミック対策からエンデミック対策への移行が進む中、日本ではブースター接種の出足が鈍り、エンデミックへの切り替えが遅れている。オミクロン株の特性に照らせば、指定感染症の2類に相当するような位置付けとしていることに疑問を感じる。飲食店営業や旅行を制限し続け、負担をかけることに意味があるのか、検討する時期に来ている。

国際的な人の往来の再開に向けて、政府は着実に歩みを進めている。まもなく企業は駐在員の異動シーズン、学校は入学式のシーズンを迎える。これまで入国できなかったビジネスや留学を目的とする来日希望者を受け入れるうえで、1日の入国枠を7000人とし、留学生は別枠としたことはよかった。引き続き、段階的に緩和を進めてほしい。企業や学校は、海外に社員や学生を派遣するかどうかを判断するにあたり、外務省による「感染症危険レベル」を参照している。現在、欧米はレベル3(渡航中止勧告)、中国、豪州等はレベル2(不要不急の渡航は止めて下さい)と渡航基準が厳しいことから、見直しを求めたい。

【ウクライナ情勢】

ウクライナでは、民間人を含む犠牲者が増えており、深い悲しみを覚える。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表する。ロシアによる侵略は国際法の深刻な違反であり、強く非難する。侵攻開始から1週間以上経つが、情勢はますます深刻化しており、大変憂慮している。ロシアの「力による一方的な現状の変更」は、国際秩序全体を乱すものであり、欧州に留まらない問題と認識している。G7をはじめとする国際社会が固く結束し、対応することが肝要である。

対ロ経済制裁でルーブルが大幅に下落したことに伴い、事業コストが増加した、海外送金・入金決済が困難になるといった影響が日系企業にも出始めている。経済にある程度の影響が出るのはやむを得ない。ロシア、ウクライナともに、希少金属の輸出国である。影響は、燃料の大幅な価格上昇にとどまらず、幅広い分野に及ぶことをある程度覚悟しておかなければならない。最良のシナリオは、ロシアの侵略が一刻も早く終わることだが、制裁が中長期にわたるようであれば、何らかの追加的な対応が必要になるかもしれない。

〔ロシアとの8項目の協力プランについて問われ〕日ロ両国政府の合意である「8項目の協力プラン」を受けて、経団連もロシアでの事業活動を活発化してきた。現時点では、力づくで国際秩序を乱そうとしているロシアと積極的に事業を組んで進めていくのは困難だ。林外務大臣が述べた通り、現在は新たな経済分野の協力を進めていく状況にない。ロシアが一刻も早く国際秩序を堅持する姿勢に戻ることを願う。

〔ウクライナから国外に逃れる避難者に対する経済界の支援について問われ〕日本政府は受け入れる方針と承知している。政府から要請があれば、経済界も対応を検討したい。

〔サハリンプロジェクトについて問われ〕エネルギー安全保障に関わる問題であり、事業に携わる各社が日本政府と協調し、しかるべき対応がとられるものと承知している。サハリン2では長期契約で安価にLNGが調達できている。これを高止まりしているスポット価格に一気に代替することは困難ではないか。

【東日本大震災発生から11年】

被災地の農水産物への諸外国の輸入制限がようやく緩和されてきた。被災地の人々をはじめ、日本全体で安全性を強く訴えてきた成果である。

震災の記憶を風化させず、しっかり継承していかなくてはならない。経団連は引き続き、震災復興支援を強力に進めていく。

以上

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