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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 夏季フォーラム2023後の記者会見における十倉会長発言要旨

2023年7月21
一般社団法人 日本経済団体連合会

【夏季フォーラム総括】

コロナ禍が終焉し、会長・副会長、議長・副議長が一堂に会して議論を深めることができ、大変充実したフォーラムであった。また、昨年に引き続き、岸田総理をお迎えし、総括文書「資本主義の再構築と人材育成」をお渡しすることができた。政治と経済界との一層の連携強化を目指したい。

今年は北村滋先生、柳川範之教授、レベッカ・ヘンダーソン教授より、非常に示唆に富むご講演をいただいた。講師の方々のお話を踏まえ、参加者間でわが国の重要政策課題について議論し、総括文書を取りまとめ総理に手交できたことは意義深い。

〔官民連携のあり方について問われ、〕政府の掲げる「新しい資本主義」の実現に向け、成長と社会課題の解決の両立に官民連携で取り組む必要がある。例えば、今回のGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債での調達による政府支出のように、政府による投資で予見可能性を高め、民間企業の投資を促すことが求められる。

【賃金引上げ】

日本社会はようやくデフレマインドを払拭しつつあり、商品やサービスを値上げする動きが出てきている。この機を絶対に逃すことなく、賃金引上げのモメンタムを来年以降も継続し、構造的な賃金引上げを実現していく必要がある。

カギを握るのは、中小企業の賃金引上げである。今年の春季労使交渉では多くの中小企業も高水準の賃金引上げを実施しているが、人材確保などを目的にやむを得ず行った防衛的賃上げも多い。経団連は、中小企業の生産性向上に向けた支援や、労働移動推進型の雇用のセーフティーネットへの移行などに官民連携で取り組んでいく。

〔中央最低賃金審議会で現在議論されている、最低賃金の引上げについて問われ、〕最低賃金は、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払能力、の三要素を考慮して決定される。足元の物価高による生計費の高まりを踏まえれば、一定程度の引上げは必要である。ただし、中小企業の賃金支払能力を高める支援策とセットで実施することが不可欠である。

【円滑な労働移動】

円滑な労働移動の推進のカギを握る「リスキリング」は3種に大別できる。まず、人生100年時代に働き手個人がよりよく生きるためのものである。次に、企業が自社の働き手のスキルアップを図るものである。最後に、企業の枠を超えた、成長産業等への労働移動を通じて日本全体の生産性を向上させるためのものである。政府には、成長産業等への労働移動に資するリスキリングの支援や、働き手個人への直接的な支援の拡充を求める。

加えて、労働移動に中立な制度の構築も必要である。例えば、会社都合退職と自己都合退職では、雇用保険の失業給付における給付制限期間が異なるが、一定の要件の下でできるだけ見直すべきである。

【CPTPP英国加入】

〔CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への英国加入の影響を問われ、〕自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化を図る上で、ハイレベルの貿易投資ルールの拡大は極めて重要である。CPTPPの枠組みが環太平洋を越えて欧州にまで広がったという定性的なインパクトが大きい。CPTPPのようにハイレベルな経済連携協定が必要であり、11か国に加え英国が加入することは大変意義深い。

【女性活躍促進】

政府は「女性版骨太の方針2023」において、プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上にすることを目指すとしている。経団連は、多様性の尊重を「企業行動憲章」で掲げており、幹部への女性の登用を引き続き積極的に検討していく。

【年収の壁】

〔配偶者の扶養に入る働き手の年収が一定額を超えると社会保険料の負担が発生する、いわゆる年収の壁について問われ、〕前提として、社会保険料は税金と異なり、働き手自身が収入に応じて負担することで、安心をもたらす給付を受ける性質のものである。その前提に立ち、年収の壁の見直し等は、全世代型社会保障改革の一環として、引き続き議論すべきである。

【「ビッグモーター」保険金不正請求報道】

〔中古車販売大手「ビッグモーター」による自動車保険の保険金不正請求報道について受け止めを問われ、〕(報道されていることが事実であれば、)詐欺(的)ともとらえられる、非常にショッキングな、あってはならないことだ。回りまわって負担を強いられるのは保険契約者である。企業は、適切に情報を開示した上で、公平・公正な条件で競争しなければならない。

以上

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