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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 関西会員懇談会後の記者会見における十倉会長発言要旨

2024年1月18
一般社団法人 日本経済団体連合会

【能登半島地震】

現在は応急対策として避難や支援を行っているが、次は生活再建や産業復興に向けた復旧・復興の段階に入る。インフラが断絶しているなか、対応には時間を要するが、段階に応じた切れ目のない支援が必要である。明日(19日)、北陸経済連合会の金井会長と会談の予定である。要望を伺い、経済界として全力で、息の長い支援を行ってまいりたい。

【大阪・関西万博】

〔経団連としての前売り券の購入について問われ、〕経済界として700万枚の前売り券の購入が目安とされており、経団連も応分の責任を果たすべく、会員各社に依頼している。

〔会場建設費や運営費の増額について問われ、〕当初想定よりも会場建設費や運営費が増額となったことは残念である。ただし、資材価格や人件費の高騰、安心安全な万博の開催のための対策強化といった、やむを得ない事情によるものである。

博覧会協会の理事会は、高いコスト意識で厳格な執行管理を行っている。加えて、政府において、費用の執行状況の適切性を継続的に確認する有識者委員会が設置される予定である。できる限り支出抑制を図っていきたい。

【賃金引上げ】

〔2024年の春季労使交渉に向けた意気込み、中小企業への構造的な賃上げの波及について問われ、〕2023年に引き続き経団連は、「社会性の視座」に立って賃金引上げを「企業の社会的責務」として訴え、多くの企業の賛同を得てきている。今年の春季労使交渉にあたっては、昨年以上の熱量と決意をもって取り組んでいく。日本全体の機運醸成には、労働者の7割弱を雇用する中小企業における構造的な賃金引上げが重要であり、労務費を含む適切な価格転嫁が行われなければならない。適切な価格転嫁の実行が重要との認識を、発注元だけでなく、受注元に浸透させ、ひいては社会全体の社会通念にしていく必要がある。「パートナーシップ構築宣言」に参画する経団連会員企業は、全体で約52%に達しており、サプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の企業で8割超、1,000億円以上の企業では9割超が宣言している。経団連は引き続き、経労委報告の周知などを通して「パートナーシップ構築宣言」への参画を呼びかけていくとともに、「企業行動憲章」の改定も検討していきたい。また、こうした意識・行動変容の結果として「賃金と物価の好循環」が進み、サービス業で価格と賃金が上昇していけば、金融政策正常化に向け日銀の重要な判断軸となりうる。

〔2024年の春季労使交渉について現時点の手応えを問われ、〕報道等で知る限り、力強い動きが出ており、心強く感じている。一部の企業が経営の意思として既に大幅な賃金引上げを表明している。賃金は、各企業が「賃金決定の大原則」に則り、労使交渉を経て決定することが基本ではあるが、そうした動きが賃金引上げのモメンタムの維持・強化、機運醸成に寄与している面もある。サービス業において価格と賃金が上昇しているというデータもある。3月中旬の集中回答日の結果に大いに期待している。

〔2024年春季労使交渉は、大企業中心の経団連、中小企業中心の日商、労働組合を代表する連合が同じ方向を向いている感覚はあるかと問われ、〕経団連、日商、経済同友会の三団体は、思いを同じくしており、昨日(17日)も連名で、中小企業の賃金引上げに不可欠な価格転嫁などの取引適正化に関する要請文を発出したところである。経営者自らが先頭に立ち、取引適正化の取り組みや労務費を含む価格転嫁の推進を促すものである。また、連合が定期昇給を含め「5%以上」の賃金引上げ目標を掲げていることは、労働運動としては理解している。春季労使交渉は「春闘」とも言われるが、労使は「闘争」する関係ではなく、未来を「協創」する関係にある。共に闘う相手は「デフレ」や「価格転嫁の進まない社会」ではないか。

〔消費者が価格上昇を受容するために必要なことを問われ、〕特効薬はなく、個々の取り組みの積み重ねであろう。「良いものには値が付く」ことを社会通念とし、値付けを根付かせることが重要である。事の発端はコストプッシュ型インフレであるとはいえ、物価が上がり始めたこの機を逃さず、デマンドプル型の適度なインフレの実現を社会全体で目指したい。

〔賃金引上げに関する関西地域への期待を問われ、〕昨年の月例賃金の引上げ率は大手企業で3.99%(経団連調査)、連合調査で3.58%である一方、中小企業は3.00%(経団連調査)であり、中小企業への賃金引上げの波及が極めて重要である。ここ大阪には中小企業が非常に多い。関西地域には是非とも、中小企業の賃金引上げをリードしてほしい。

【日中経済協会合同訪中代表団】

〔日中経済協会合同訪中代表団(1月23日-26日)の最高顧問として、日中間のビジネス上の課題とその克服に向けた中国側への働きかけについて問われ、〕4年ぶりの訪中団であり、しっかりと対話をしたい。先の日中首脳会談(2023年11月16日)において、両国首脳は、個々の懸案で対立しても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。そうしたなか行われる今回の訪中は、時宜を得たものと認識しており、中国側も訪中団との会談に強い意気込みで臨もうとされているのではないか。

具体的に対応を求めたい課題は大きく三つある。一つ目は、反スパイ法の不透明な運用である。二つ目は、日本産水産物等の輸入規制であり、科学的見地に立った対応を求めたい。三つ目の、煩雑なビザ取得手続きは、日中経済界の交流促進を図る上で、早期の簡素化が必要である。また、要望のみならず、両国が少子高齢化といった共通課題にいかに取り組むことができるか、議論を行いたい。

以上

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