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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2024年2月13
一般社団法人 日本経済団体連合会

【国家財政】

〔国債、借入金および政府保証債務現在高を合計した、いわゆる「国の借金」が2023年12月末時点で過去最大の約1,286兆円となったことの受け止めを問われ、〕財政健全化は重要である。政府の目標と同様、実額ではなく債務残高対GDP比の安定的な引下げが課題である。「経済あっての財政」の考え方を基本に、単年度の収支だけにとらわれず、中長期のスパンで財政健全化を目指す、ダイナミックな経済財政運営を行わなければならない。

とりわけ、社会保障費はわが国の財政の大きな割合を占めている。税と社会保障の一体改革を通じて、全世代型社会保障制度を構築していく必要がある。

【こども・子育て支援金】

〔こども・子育て支援金の創設により、医療保険料に上乗せする形で一人当たり月500円弱の国民負担が発生するとの報道について問われ、〕国民負担額の算出根拠を承知しておらず、水準についてのコメントは難しいが、前提として、若い世代の将来不安を払拭し、賃金引上げが消費に回るよう、全世代型社会保障改革に待ったなしで取りかかることが重要である。他方、改革には時間を要することから、当面のこども・子育て支援を急ぐという考え方も理解できる。

こども・子育て支援金の財源は、全世代で負担するという方針から、現役世代だけでなく高齢者からも医療保険料に上乗せして徴収する仕組みとなった。政府は歳出改革等を通じ「実質的な負担を生じさせない」としている。改革を確実に実行するとともに、国会での議論等を通じ、十分な説明をし、国民の理解醸成にしっかり取り組んでほしい。

【日経平均株価】

〔日経平均株価が一時3万8000円を超える(2月13日)など高値を付けていることの要因を問われ、〕過度な円安、インバウンド消費の拡大、中国経済の減速による資金流入、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請など、様々な要因があろう。現在の株高が日本企業の実力を表しているとは限らない。日本株への高い評価と実体経済の動向が早期に整合的になることを期待する。

【選択的夫婦別姓】

〔選択的夫婦別姓制度の導入の必要性、ならびに経団連の今後の活動について問われ、〕選択的夫婦別姓制度の導入に賛成である。海外訪問時にパスポート上の戸籍名と旧姓の不一致によるトラブルが生じる、改姓後に旧姓時代の研究論文の実績が認識されないといった弊害も耳にする。政府には、女性活躍や多様な働き方を推進する方策の一丁目一番地として制度の導入を検討してほしい。経団連は、2024年度上期中に提言を公表すべく検討を進めている。

【政治資金】

〔政治資金の問題に対する自由民主党の一連の対応について問われ、〕政治資金規正法で定められたルールを遵守することが大前提である。その上で、政治資金の透明性を確保するようなルールの見直しも行っていく必要がある。

〔派閥について問われ、〕人事とカネにばかり世の関心が向かうが、派閥は政策を学び、担う存在である。改めるべきことがあれば完全に決別し、新たな政策集団を目指していただきたい。具体的な派閥のあり方については、党内で一層議論を深めてほしい。

【高齢者雇用】

〔新藤経済再生担当大臣がテレビ番組で、「諸外国に比べて元気な日本の高齢者が、まだまだ働き続けられる社会をつくらねばならない」といった趣旨の発言をし(2月11日)、定年延長で高齢者に労働を強いるのか、といった反発があることについて問われ、〕新藤大臣は、定年退職の延長に直接的に言及されたわけではないのではないか。ましてや、全ての高齢者を無理に働かせるということを意図したご発言ではなく、自ら働き続きたいと望まれる、意欲ある健康な高齢者が働きやすい環境を整備していくという趣旨であろう。そのためには、同一労働同一賃金の徹底や、職務や勤務地等を限定した多様な正社員制度の導入などが必要となってくる。

【ウクライナ支援】

〔日本企業によるウクライナ復興支援の推進に向け、ウクライナ全土を最高度の「退避勧告」としている外務省の危険情報の引下げの必要性を問われ、〕外務省の危険情報の全4段階のうち「レベル4」ないし「レベル3」の国・地域への出張を実質的に禁じる内規を定める日本企業は多い。英国や韓国のように、例外的に渡航を許可できる仕組みが必要ではないか。政府には、勇気をもって支援を行おうとする日本企業の心意気に応えられる仕組みを構築してほしい。

【ダイハツ工業不正問題】

〔ダイハツ工業が不正を受けて経営の新体制を発表(2月13日)したことについて問われ、〕日本のものづくりは、提供する製品の品質やサービスの丁寧さ、納期や法令の遵守といった点で信頼・信用を勝ち得てきた。信頼・信用を得るには時間を要する一方、失うのは一瞬である。企業は社会的存在であり、社会の信頼・信用なくして事業は成り立たない。経団連の企業行動憲章でも、コンプライアンスの重要性を訴えている。この大事なことをいま一度、再認識すべきである。

【大阪・関西万博】

〔関西経済連合会の松本会長が、建設業界が大阪・関西万博のパビリオン建設などに非協力的という趣旨の発言をした(2月9日)といわれることについて問われ、〕万博を必ず成功させるという強い思いから出たものではないか。日本建設業連合会の宮本会長もまた、国家的プロジェクトである万博の成功に向けて、建設業界も積極的に取り組むとしている。是が非でも万博を成功させたいという思いはお二方とも同じであろう。

〔大阪・関西万博の運営費について問われ、〕万博の運営費は、基本的に入場券収入で賄うこととしている。販売目標の2300万枚のうち、1400万枚を前売券として販売することを目指しており、半数の700万枚については経済界で購入を呼びかけている。前売券の一般販売の売れ行きも見ながら、販促に向けたPR等を行ってまいりたい。今後、万博協会では「運営費執行管理会議」を四半期に1回程度開催し、運営費の執行管理を行っていく。

以上

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