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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 九州経済懇談会後の共同記者会見における十倉会長発言要旨

2024年3月4
一般社団法人 日本経済団体連合会

【九州経済】

〔TSMCをはじめとする半導体関連産業の集積が進む九州の経済状況の評価を問われ、〕九州経済は非常に元気がある。九州、沖縄、山口への半導体関連の設備投資による経済波及効果が、2021年からの10年間で20兆円にのぼるとの試算もある。インフラをはじめ環境整備が進めば、さらなる投資の呼び水にもなるのではないか。絶好のチャンスを活かして、九州、ひいては日本経済全体の発展に寄与することを期待する。

〔九州経済の見通しについて問われ、〕わが国は今、少子高齢化やグリーントランスフォーメーション(GX)、人口減少下での地方創生、イノベーション創出に資する人材育成などの様々な課題を抱えている。九州はこれらの課題の解決に果敢に挑戦している。賃金引上げについても、経団連、日商、経済同友会が連名で発出した「構造的な賃上げによる経済好循環の実現に向けた要請」(1月17日公表)に呼応する形で、九州経済四団体が共同宣言を公表(2月16日)した。各地域で抱えている課題は異なるが、元気な九州が是非日本を引っ張っていってほしい。

〔原子力発電所の稼働による電気料金の低下について問われ、〕原子力発電の再稼働が進んでいることにより、九州電力管内の電気料金が他の地域と比較して低くなっていることは事実である。加えて、S+3E(安全確保+経済性、環境適合、エネルギー安定供給)の観点からも、再生可能エネルギーの主力電源化とともに、準国産のエネルギーである原子力の積極的な活用が不可欠である。2030年の温室効果ガス排出量の2013年度比46%削減の達成に向けて、(現行のエネルギー基本計画では)2030年の電源構成に占める原子力発電の割合の見通しは20~22%とされており、これは原子力発電炉27基程度に相当する。これまでに再稼働に至ったのは12基にとどまっている。官民連携で、安全を最優先とし、地元の理解を得ながら再稼働を推し進めなければならない。

【賃金引上げ】

〔今年の春季労使交渉で、一部企業が早期に高水準の賃金引上げを表明していることについて問われ、〕結構なことである。経団連は、春季労使交渉に際して、経済情勢や自社の賃金支払い能力等を総合的に勘案しながら労使で十分協議した上で、自社の実情に適した賃金引上げを行う「賃金決定の大原則」に則った検討を呼びかけている。ただ、経営の意思として大幅な賃金引上げを前もって表明することはよいのではないか。そうした動きが、他の企業の労使交渉に良い影響を与えている面もあろう。

〔今年の春季労使交渉における大手企業の月例賃金の引上げ率の見込みについて問われ、〕各社の状況が様々であることから一律の目標は掲げていないが、期待をもって見守っている。重要なのは、賃金引上げの動きを社会全体に波及させることである。春季労使交渉の集中回答日(3月13日)の回答は大手企業中心となる。一方、中小企業の春季労使交渉は4月や5月以降も続く。中小企業の賃金引上げの結果も注視していく必要がある。

〔日本は今デフレ脱却を果たしたと言える状況にあるのかと問われ、〕デフレからの完全脱却を目指し、官民連携で賃金引上げに取り組んできている。デフレから脱却したかどうかは、賃金引上げの状況も有力な材料の一つとして、政府・日銀が判断されることであろう。

【日経平均株価】

〔日経平均株価4万円突破(3月4日)の受け止めや株価の先行きについて問われ、〕素直に喜びたい。現下の株高の要因として、円安や中国経済の減速による資金流入だけでなく、「成長と分配の好循環」に向けた日本経済の潮目が大きく変化していると評価された面もあるだろう。他方、現在の株高がバブルであるとし、先行きを不安視する声があるのも承知している。多少なりとも株価と実体経済の乖離があるのは事実であり、「成長と分配の好循環」を確かなものとすべく、官民連携で取り組みを継続していくことが肝要である。

〔半導体関連株の上昇が日経平均株価の上昇に寄与しているとの一部指摘について問われ、〕半導体関連株の上昇が株式市場をリードする構図は、現下の世界のトレンドである。半導体産業は世界全体で水平分業が進んでいるが、日本企業は製造装置や素材の分野でも高いシェアを有している。そうした強みに加え、日本企業の歩留まり率の高さ、良質な労働力が評価されているのかもしれない。

【日産自動車下請法違反】

〔公正取引委員会が日産自動車に対し、下請法違反となる取引を長期間行っていたことを事由に近く勧告を出すという内容の報道の受け止めを問われ、〕報道が事実であれば、下請企業への支払代金を不当に減額していたとのことで、あってはならないことであり、極めて遺憾だ。自動車産業はサプライチェーンの裾野が広い産業でもあり、非常に残念である。

経団連は、パートナーシップ構築宣言の周知、浸透に向けた活動を積極的に展開している。現在、経団連会員企業の約53%が同宣言に参画している。サプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の企業については、8割超が宣言済である。課題は、宣言の実効性向上である。この点、政府は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表(2023年11月29日)するのみならず、下請事業者と親事業者との間で積極的に価格交渉と価格転嫁が行われるために、下請事業者への不当なしわ寄せが生じないよう、関係団体に要請(2023年12月8日)している。望ましい取引慣行の実行というパートナーシップ構築宣言の趣旨を社会的規範として浸透させるべく、経団連も引き続き取り組んでいく。

【政治倫理審査会】

〔衆議院政治倫理審査会(2月29日、3月1日開催)における岸田総理はじめ自民党幹部による説明の受け止めを問われ、〕岸田首相のリーダーシップにより、メディア公開の形での開催となり、自民党総裁としてご自身も出席された。一定の説明責任を果たされたと評価する。

ただし、重要なことは、政治改革に向けた議論の深化である。ルールの遵守と政治資金の透明性の確保を大前提に、必要な見直しを図るべく、議論を重ねていただきたい。

〔政治資金パーティ等への経団連の当面の対応について問われ、〕もっと透明で、ルールがより遵守される方向で、よりよいものに変わっていくことを期待するが、他方で、民主政治を適切に維持していくためには相応のコストがかかると認識している。民主主義は政治に参加することと責任をもつことが原則であり、経団連はそれ故、会員企業への政治寄附の呼びかけをやめることは考えていない。

以上

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