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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 北陸地方経済懇談会後の共同記者会見における十倉会長発言要旨

2024年11月20
一般社団法人 日本経済団体連合会

【能登半島地震被災地視察】

〔被災地視察(20日)の所感および能登の復興について問われ、〕1月の地震、そして、9月の豪雨の被害に遭われた被災者の方々が直面している困難や課題を目の当たりにし、胸が詰まる思いである。心中いかばかりかと拝察する。

能登の復興に向けては、能登地方の魅力を堅持し、活かしていくことが重要である。自然豊かな景観が一番の強みだが、加えて、世界に誇れる伝統工芸もある。視察では、輪島塗の大型地球儀「夜の地球」を拝見し、大変すばらしい技術であり、心を打たれた。今、世界が直面する対立、分断を忘れさせるような素晴らしい作品で、技術的には難しいようだが、4月に開幕する大阪・関西万博でも展示して世界に見せたいものだった。また、能登の方々は優しく、ホスピタリティに溢れるという人の魅力がある。本日の和倉温泉「あえの風」の視察では、元旦という繁忙期における震災当日に、一人の怪我人も出さず宿泊客を避難させることができたという話も伺った。まさに能登の方々のホスピタリティの真髄を見た思いである。

能登の復興は中長期のプロジェクトといえる。わが国は、少子高齢化による過疎地域の増加や、自然災害の激甚化といった中長期的な課題を抱えている。防災などのインフラは一度点検する必要がある。能登の復興の過程を可視化することは、今後起こり得る災害への備えとしても有益であり、全国のモデルになるであろう。

北陸経済連合会の策定された「能登半島地震からの産業振興・再生ビジョン」は、能登地方の魅力もベースに策定された素晴らしいビジョンである。経団連としても、協力できることは何でも取り組んでいきたい。

【北陸新幹線】

〔北陸新幹線の敦賀延伸の評価および新大阪までの全線開業への期待を問われ、〕北陸新幹線は、東海道新幹線とループ(輪)のようにつながることで、より大きな経済波及効果が期待できる。新大阪までの全線開業が早期に実現することを期待している。詳細なルートや駅の位置も含め、関係者間でよく議論してほしい。

大阪・関西万博の開幕に伴い、多くの方々が日本を訪れる。北陸新幹線の敦賀延伸は、とりわけインバウンドの方々に能登を含めて北陸の良さを味わってもらうことにつながるだろう。

【年収の壁】

〔年内の補正予算の成立や、いわゆる103万円の壁の引上げを総合経済対策に明記することについて、自民党・公明党・国民民主党が合意した(20日)ことの受け止めを問われ、〕わが国のマクロ経済環境を見るに、需給ギャップはほぼ解消されており、経済対策をはじめとする補正予算においては、需要の刺激よりも供給力の強化に資する施策に注力すべきである。そうした状況下でばらまき的な財政支出を行えば、むしろ物価上昇につながる恐れもある。

103万円の壁の引上げについて、経団連は分厚い中間層の形成を訴え、現役世代の可処分所得の増加が必要と考えているという意味で、思いは同じである。

ただし、103万円の壁だけでなく、社会保険に関する106万円の壁や130万円の壁など、年収の壁は他にも存在している。また、わが国の財政状況は、債務残高対GDP比が250%を超え、長期国債の格付けがG7の中でイタリアに次いで低いなど、極めて厳しい状況にあり、財政規律も考慮しなければならない。こうした状況を踏まえ、個々に議論するのではなく、税と社会保障を一体的に改革すべく、与野党で議論してほしい。

〔被用者保険の適用拡大に向け、就業調整を行う労働者を対象に、事業主負担の割合を増加できる特例の導入を政府が検討していることについて問われ、〕働き方に中立な社会保障制度へと見直しを進める観点で、106万円の壁の撤廃という政府の方針は、方向性としてよいことである。ただし、これまでいろいろなことに配慮していくつも壁があったものを一つの原則で整理しようとしているなかで、事業主負担を増やすことができるという新たな特例を設けることは、かえって企業間の待遇格差を招くことになりかねず、よく吟味すべきである。

以上

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