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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(6/9)における筒井会長発言要旨

2025年6月9
一般社団法人 日本経済団体連合会

【トランプ関税】

〔日米間の関税交渉の進捗状況について問われ、〕日本政府は、米国側と精力的に協議いただいていると評価している。これまで5回重ねてきた閣僚級の交渉を通じてもなお、両者の間に隔たりがあり、着地点を見出せる状況にないと見受けられる。中小・零細企業は不確実性の高い状況に直面しており、不安感は強い。引き続き、粘り強い交渉が必要である。合意に向けて、G7サミットにおいて、日米首脳間の接点が持たれることが肝要であり、前向きな方向となることを期待する。

もちろん、「急いてはことを仕損じる」ということわざもあり、石破総理や赤澤大臣のおっしゃった「ゆっくり急ぐ」、十倉名誉会長の言われた「じっくり急ぐ」というスタンスで、今後の交渉の展望が開けることを期待する。

〔日本政府の交渉スタンスに対する見解を問われ、〕交渉では、あくまで一連の関税措置の撤廃を求めることを基本線とすべきである。各論の交渉状況は承知していないが、交渉を進める上で、日本としてどのように米国側の要請にこたえることができるかという観点も重要である。

【イノベーション】

〔新設の科学技術立国戦略特別委員会での検討状況を問われ、〕科学技術立国戦略特別委員会について、6月に第1回会合を開催予定である。その後、夏季フォーラムを含め、2~3ヵ月に一度のペースで約1年かけて議論し、戦略を示す予定である。積極的な戦略を打ち出していきたい。

〔「FUTURE DESIGN 2040」で掲げた科研費(科学研究費補助金)の早期倍増の実現に向けた取組みの方向性と財源のあり方について問われ、〕科学技術立国戦略特別委員会においては、基礎・応用・社会実装まで一気通貫で捉え、産業競争力強化に向けた戦略を考えていく。その中で、必要な研究開発投資を官民でいかに行っていくべきか大局的に議論していきたい。科研費を含めた基礎研究への投資についても、重要なパーツとして議論する予定である。

 科研費は倍増する勢いで積み増していただきたいと考えており、その財源のあり方についても、特別委員会や夏季フォーラム等において大枠で議論し、必要に応じて提案していきたい。

〔スタートアップと大企業との連携が十分に進まずイノベーションが阻害されているのではないかと問われ、〕そのような声があることについて真摯に受け止めたい。一方で、世の中の流れが変わってきていることも事実である。大企業に就職するよりもスタートアップへの就職を志向する学生が増えてきていると承知している。大企業側では、スタートアップに対するリスクマネーの供給は根付いてきた。これに加えて、大企業が協業ビジネスも含めスタートアップと関わることにより、大企業とスタートアップをともに成長させていくという観点が重要であり、経団連としても、そのような方向に変えていきたい。そうした取り組みも通じ、スタートアップの数とレベル(時価総額の大きい、いわゆるユニコーン企業の数)の双方を一層拡大すべく、「スタートアップ躍進ビジョン」(2022年3月)の実践に引き続き取り組んでいきたい。

【選択的夫婦別姓】

〔選択的夫婦別姓に係る野党3案への見解と筒井会長自身のスタンスを問われ、〕1997年以来28年ぶりに国会で議論の俎上に載ったことは極めて意義深い。各党が法案を取りまとめられたことに敬意を表したい。肝要となるのは、「選択肢のある社会」を実現することである。社会制度として、一人ひとりの「選択肢」を増やしていく観点から、法制審案をベースとした制度の実現に向けて、与野党間で建設的な議論がなされ、積年の課題が解決されることを期待する。経団連としても私個人も同様のスタンスである。自身の出身会社である日本生命の社員の約9割は女性であり、このテーマに対する問題意識を有する方も少なからず存在すると承知している。

〔国会審議の場で、各党が党議拘束をかけるべきか否かを問われ、〕党議拘束をするかどうかは、各党で判断すべき事項であり、コメントは差し控えたい。

【日韓関係】

〔韓国の李在明大統領の新政権発足に対する受け止めを問われ、〕李在明氏にお祝い申しあげる。混乱はあったものの、国を挙げて内外の諸課題に取り組む体制が整うことを期待する。国際秩序が大きく揺らぐ中、自由、民主主義、法の支配といった価値観を共有する韓国との連携・協力によって、秩序を維持・強化することが不可欠である。6月22日に日韓国交正常化60周年の節目を迎える中で、日韓関係の更なる発展につなげていくべく、あらゆる分野で対話・交流を強化することが不可欠である。

〔経団連としての取組み姿勢を問われ、〕カウンターパートである韓国経済人協会(韓経協)と緊密に連携したい。2023年に設立した未来志向の日韓・韓日未来パートナーシップ基金の活動を通じて、両国関係の一層の発展に貢献していきたい。

【賃金引上げ】

〔政府が実質賃金1%上昇のノルムの定着を打ち出す方向であることへの受け止めと必要な取組みについて問われ、〕6月6日開催の新しい資本主義実現会議に初めて参加し、実質賃金1%上昇のノルム定着等を記載した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版案」を議論した。同改訂版案には、経団連が「FUTURE DESIGN 2040」で示した、「科学技術立国」と「貿易・投資立国」の実現に向けた具体的な取組みが網羅的に盛り込まれ、評価している。また、(2%程度の)持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇をノルムとして定着させることは経団連の考え方にも合っている。経団連としても、賃金引上げのモメンタムの「定着」に向けて、これまで以上の熱量で取り組みたい。

〔日本商工会議所の「中小企業の賃金改定に関する調査」(6月4日)の集計結果で、2025年度の賃金引上げ実施について、価格転嫁の遅れや米国関税措置等で先行き不透明感を懸念する声もあり、「現時点では未定」の回答が昨年度より増加したことへの受け止めを問われ、〕多くの中小企業は、トランプ関税を巡る交渉状況が見通しづらく、先行きの不確実な状況に置かれているため、「未定」とする回答が増加していると思う。一方で、価格転嫁について、経済三団体長連名による「社会全体における『価格転嫁の商習慣』の定着に向けて」(2025年1月)と題する要請を発出するなど、「パートナーシップ構築宣言」の浸透に注力しており、価格転嫁は一定程度進捗しているのが実態ではないか。もちろん、価格転嫁は道半ばの状況であり、消費者としても物価上昇が進む中で、価格に敏感になっている側面もあると思う。こうした状況を企業としても慮る部分はあろうが、引き続き「パートナーシップ構築宣言」の浸透に注力し、価格転嫁が一層進むよう努力したい。

〔日本商工会議所や連合の調査結果によれば、2025年度の中小企業の賃金引上げ率が4%台であることへの評価を問われ、〕これまでの流れからすると、一定程度の引上げ率を示しており、このことは中小企業の努力の賜物と認識している。

【財政健全化】

〔「骨太方針2025」(原案)における、財政健全化目標や、国債の安定的な消化に向けた記述を受けて、財政健全化に係るスタンスを問われ、〕「骨太方針2025」はまだ閣議決定されておらず、中身について言及することは差し控えたい。一般的に、国債の安定消化は重要なテーマと認識している。財政健全化の問題は、社会保障制度改革にも通底している。財政健全化に対するわが国の取組み姿勢が世界から注目されていることは事実であり、日本国債への信認を維持することが重要である。

【経団連幹部のダイバーシティ】

〔女性副会長が現在1名であることについて、ダイバーシティ推進の観点からの受け止めを問われ、〕ダイバーシティの観点は常に意識しており、今後も性別や年齢、業界・業種にとらわれず、人格・識見、経営手腕、指導力に優れた多様な方々を、広く積極的に登用していく姿勢に変わりはない。なお、女性という点に着目すれば、新たにボストンコンサルティンググループの秋池日本共同代表に副議長に就任いただいたことに加え、副会長をお務めいただいたディー・エヌ・エーの南場会長に副議長に就任いただいた。委員長としては、日本航空の鳥取社長に消費者政策委員長に就任いただいた。今後も、多様なバックグラウンドの方々からご助言・ご指導をいただき、ご活躍いただくことを期待する。

【読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄氏ご逝去】

〔長嶋氏の訃報への所感を問われ、〕私自身は小学生の頃、少年野球に取り組んでおり、当時の長嶋選手は憧れの象徴というべき存在だった。巨人軍ファンであるか否かを問わず、国民的なスーパースターであり、沢山の夢と勇気を与えてくださり、感謝の念に堪えない。心より哀悼の意を表したい。

以上

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