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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(2/24)における筒井会長発言要旨

2026年2月24
一般社団法人 日本経済団体連合会

【米国の相互関税等違憲判決】

〔米国連邦最高裁判所が相互関税等を違憲と判断したことへの所感と、代替措置として発動した10%の新しい関税措置が日本経済に与える影響について問われ、〕司法の判決が出たことで、民主主義体制に不可欠なチェック・アンド・バランスが働いたと認識している。ただ、根拠法が違うだけで関税という手段が否定された訳ではない。中間選挙を控えたトランプ政権の動向を引き続き注視していく必要がある。10%の新たな関税措置が講じられ、さらに15%への引上げも検討中と理解しており状況の推移を見守りたい。

日本経済への影響は当然あると思われるが、どの程度かを言明することは現時点ではできない。EUは新たな関税措置に係る明確化を求めていると理解しているが、新しい関税措置の期限である150日後の状況も不透明であり、当面の間、日本企業にとっても予見可能性が低下することを懸念している。

〔今回の米国連邦最高裁判決が日本経済や企業に与える正負両面での影響に関する所見や、状況改善に向けて日本政府に期待することを問われ、〕今後、投資を検討する企業にとって、非常に不透明で予測困難な状況にあると認識している。新たな関税措置が効力を有する向こう150日間の状況が見通せないことに加えて、株主や投資家への説明責任を果たすために従来の相互関税の還付に向けた訴訟を起こす企業も今後出てくると想定される。こうした観点から、日本企業は、非常に不安定・不透明な状況に直面していると思う。

日本政府には、米国政府との適切なコミュニケーションをとっていただきたい。併せて、米国以外の主要国政府とのコミュニケーションにおいては、どのようなスタンスで今後臨んでいくのかも共有していただきたい。なお、現時点では、市場は冷静に反応していると受け止めているが、今後の動きについては、我々自身も良く注視していく必要がある。

〔さらに、投資判断が難しくなっているという認識に関して、日米戦略的投資イニシアティブを指しているのか、それとも一般的な投資を指しているのかを問われ、〕投資判断については一般的な話として申しあげた。すなわち、一般的に日本企業が米国のほかグローバルに投資活動を行っていく際に、当面の間は予見可能性の低下や先行きに対する不透明感が懸念されるという趣旨である。

日米戦略的投資イニシアティブは、日米関税交渉を通じて決定された経緯があり、足もとでは3つの案件を推進していくことで日米両国が一致した結論を得たと承知している。日米相互の利益、日本の経済安全保障、そして日米関係強化の流れにおいて、同イニシアティブは維持・継続されるべきと考えている。

〔さらに、個別企業の還付に係る訴訟に対する政府の関与等が必要かを問われ、〕還付に係る訴訟については、一定の毅然とした行動を示すことが求められていると思う。政府が個別企業の訴訟に関与することはあり得ないが、日米両政府間での適切なコミュニケーションを通じて、日本企業や日本経済に資する情報を提供していただくことは有意義であろう。

〔相互関税等の還付を提訴する企業について、株主や投資家に対する説明はどうあるべきかを問われ、〕各企業・業種の特性、米国への投資の歴史、そして米国内の進出先での地域社会との繋がり等を踏まえて、総合的に判断されるべきものである。株主や投資家の属性によっても、企業に対する説明の要求の仕方も当然変わってくる。こうした中で、株主や投資家の様々な要求に対し、どのように理解を得ていくかは、基本的には各企業の自助努力に帰すべき問題ではないか。日本政府には、米国政府との適切なコミュニケーションを通じて、日本企業・経済界が、今後円滑に対応できるような環境整備に注力していただきたい。

〔中間選挙を控えたトランプ政権の動向について、具体的にどのような点を注視しているか問われ、〕トランプ大統領に対する国内の支持基盤が今後どのように動いていくのかを十分に注視していく必要がある。米国第一主義自体は継続するにせよ、より強硬路線に走るのか否か、強硬の度合いはどの程度なのか等について注目することが求められる。国内の支持基盤の動向に応じて、安全保障を含めた国際的な影響力も変化していく可能性がある。

【中国による軍民両用品目の一部日本企業等に対する輸出禁止措置】

〔中国商務省が日本の20の企業等に軍民両用品目の輸出を禁止すると発表したことへの所感と、当該企業による事前の情報共有の有無について問われ、〕1月6日に輸出管理強化措置が講じられた中、今般の措置は、さらにわが国の特定企業に限定したものと理解しており、極めて遺憾であり、撤回を求めたい。経団連内での事前の情報共有はなく、私自身報道で初めて知った。それほど突然のことであった。

〔今般の措置の背景として、中国側は日本の軍事力強化等の抑制を挙げていることを受けて、平和主義への回帰と産業発展の重要性のどちらに重きを置くべきかを問われ、〕平和主義か産業発展かという二元論で捉えるべきではない。リアリズムの観点からは、わが国の安全保障の重要性は一層高まっている。こうした中、経団連は「科学技術立国」を目指す中で、軍民両用(デュアルユース)も射程に入れていかなければならないと考えている。高市政権も同じ方向を目指していると理解しており、わが国だけが世界で突出して、軍事力強化に傾いている訳では決してないと思う。今般の中国の措置は、世界のリアリズムの中の現象として捉える必要があろう。もちろん、同措置は、遺憾であり、撤回を求めていかなければならない。

〔さらに、輸出管理の対象リストに掲載された企業等のレピュテーションリスクについて問われ、〕個別企業について、詳細なコメントは差し控える。一般論として、厳しい国際情勢の中で、防衛や安全保障の重要性が一層高まっていることは、国民自身も強く認識していると思う。また、科学技術の面でも、軍民両用(デュアルユース)の有する重要性が国内でも共有されつつある状況である。このため、仮に当該リストに掲載されたとは言え、一般的に企業にレピュテーションリスクが発生する地合いではなくなってきていると捉えている。

〔今般の措置を受けて、日本政府の対応として期待することを問われ、〕今回の措置に対して、中国政府に適切な申し入れをしていくことが重要である。併せて、同措置により、対象リストに掲載された企業等に具体的にどのような影響を及ぼすのか、どのような事態が発生するのかを官民双方でしっかりと共有していくことが重要である。日米間の強固な同盟関係を基に、事態の打開に向かうこともあろうかと思う。これまでは政治的に非常に難しい局面だったが、それが経済面にも及び、今後企業活動等にも影響を及ぼす可能性がある段階に突入したと認識している。こうした観点から、まさにあらゆるレベル・分野において、意思疎通や対話をこれまで以上に求めていく姿勢が変わらず重要と考えている。高市総理は、常に対話にオープンであると繰り返し発信されている。経済界としても対話に向けた糸口を探っていかなければならない。

【EUの産業加速法案】

〔欧州委員会が提案予定の産業加速法案による日本企業への影響に係る見解を問われ、〕日本企業を排除するような形にならないようにすることが最も重要である。世界が分断・対立や気候変動問題に直面する中、経済安全保障や環境の観点から公共調達や補助金の要件として「非価格要素」を考慮することは、一定程度理解できる。しかし「非価格要素」の1つに「欧州製」であることが加わることで、厳しい国際情勢の中、日EUがパートナーとして協力すべき時に、これに逆行しないことが重要である。こうした点を経団連は、欧州委員の来日時や、昨年12月の訪欧ミッションでも重ねて伝達してきており、同じ立場である英国とも連携して働きかけている。こうした取組みにより、一定の理解は得られていると思う。自由で公正な貿易投資環境の維持に向けて、日EUは手を携えて取り組んでいくことが求められる。

〔EUをはじめ、域内の産業保護を優先する世界経済の流れが顕在化していることに対する見解を問われ、〕経済安全保障の強化や環境問題の重要性が増す中、各国が独自の産業政策を展開する動き自体は、一概に否定されるべきものではない。一方で、日本は、貿易・投資立国を図りながらこれまで発展してきており、自由で開かれた国際経済秩序を毀損しないよう、WTOをはじめとする国際ルールとの整合性を確保すべきという主張を国際社会の先頭に立って展開すべき立場にあると考えている。

【わが国の経済外交のあり方】

〔米中に過度に依存しない体制の構築の必要性について問われ、〕米中に過度に依存してはいけないという指摘はその通りと思う。基本は、自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化という大きな理念と方向性を堅持し続けることである。そのような中、世界の現実を考慮し、特定国に依存しないレジリエントな交易構造を作り上げることが重要である。こうした観点から、CPTPPの深化・加入国拡大、グローバルサウス、そしてEU等との連携など、民間経済外交を今後も一層推進していくことが求められる。

【税と社会保障の国民会議】

〔消費税減税に対する会員企業の認識や、国民会議での議論に経団連としてどのように関与していきたいかを問われ、〕経団連の中でも、財政に対する市場の信認を気にする向きが少なからずあることは事実である。消費税減税は、2年間の時限措置とは言え、巨額の財源を要する。このため、社会保障制度の持続性と財政に対する市場の信認の維持という観点からも、財源のあり方等について、国民会議でしっかりと検討し、提示していただきたい。

経団連としては、給付と負担の構造を「見える化」することで現状を把握し、どのような応能負担が望ましいかを含めて議論することが不可欠という観点から国民会議の設置を求めてきた。こうした点を今後同会議で議論することを期待しており、経団連としても積極的に関与していきたい。もちろん、当面は消費減税や給付付き税額控除の制度設計が議論の俎上に載ると理解している。例えば、システム対応や主に飲食を中心としたサービス産業の実務対応の問題、そして関連業界の売上への影響等を精査する上で、民間の視点・知見が必要となるため、国民会議に民間が参画する意義は大きいと考えている。

以上

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