Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策  平成24年度科学技術重要施策アクションプラン
(パブリックコメント募集案)に対する意見

2011年7月8日
(社)日本経済団体連合会
産業技術本部

経団連では、震災の影響を踏まえた第4期科学技術基本計画の見直しにあたり、本年4月に「『第4期科学技術基本計画』の見直しに向けた考え方」を公表し、「安心・安全な国づくり」に資するイノベーションの重要性等について言及したところである。今般、「平成24年度科学技術重要施策アクションプラン」へのパブリックコメントが募集されたことから、下記の通り、意見を表明する。

II.復興・再生並びに災害からの安全性向上

1.目指すべき社会の姿

原案では、「目指すべき社会の姿」として、「東日本大震災からの復興・再生を遂げ、地域住民が安全に暮らせる社会」、「東北地域の復興・再生をモデルとして、より安全、かつ豊かで質の高い国民生活を実現する国」を掲げている。

ただし、今回の震災の影響を踏まえれば、今後の科学技術イノベーション政策を推進する上で、数値的データに基づく国民の「安全」の確保のみならず、国民が「安心」して暮らすことのできる社会の構築までを視野に入れることが極めて重要である。よって、「安全」に加え、「安心」というキーワードを「目指すべき社会の姿」の中に盛り込むべきである。

2.政策課題

(1)災害から命・健康を守る
(地震)

地震による被害の防止・軽減に向け、「地震予測シミュレーションの高度化」、及び「ライフライン(電気・ガス・水道)、あるいは道路、空港、港湾等の社会インフラの強靭化」を追記すべきである。

被災者を継続的に支援できる医療体制を構築するためにも、広域での医療情報の連携や診療目的での医療情報の参照を可能とする「災害時医療支援基盤の整備とその機能検証」を追記すべきである。

医療・介護等における被災者の円滑かつ継続的な支援を実現するため、被災地を特区として被災者に電子被災者カード(被災者向けの個人番号カード)を発行し、本人確認の仕組み、セキュリティ・プライバシーの確保、匿名化技術等、「税・社会保障の共通番号制度」で想定されている個人番号制度の機能検証を前倒しで実行することが求められる。また、より確実な本人確認を行うために、個人番号と生体認証を組み合わせた方法も検討すべきである。

(津波)

津波による被害の防止・軽減に向け、「津波予測シミュレーションの高度化」、及び「津波監視システムの高度化」を追記すべきである。

(放射性物質による影響)

「原子力発電の安全性向上に資する研究開発の促進」を追記すべきである。具体的には、放射線モニタリング、放射性廃棄物・汚染水の除去・処理・処分に関する研究開発、また、廃炉まで視野に入れた災害ロボットの研究開発・実用化が求められる。

放射性物質については、放射線種類、半減期、体内蓄積、日常浴びている放射線の量等の基礎的情報について分かりやすく示すことが重要であることから、「放射性物質に関する基礎的情報の確実な公開」を追記すべきである。また、風評被害の防止等に向け、有識者による判断差の無い基礎的情報と、有識者間でも意見差の大きい過去データに基づく判断情報の区別を明確化することが求められる。

(2)災害から仕事を守り、創る

「ものづくり中小企業の事業継続性支援」を追記すべきである。ものづくり中小企業が災害に見舞われたときに備え、ものづくりのための基本情報のバックアップ等による緊急時の代替生産、迅速な事業再立ち上げのための技術の研究開発を推進する必要がある。また、特に中小企業については、災害時のみ他企業と緩やかな連携が取れるような仕組みを行政レベルで事前に検討しておくことも検討すべきである。

(3)災害から住まいを守り、造る

個人にとって住居が大事である理由の一つは、そこにある個人資産(預金通帳、印鑑、アルバム等思い出につながるもの)が大事だからである。クラウド技術の活用等により、こうした個人資産を守る仕組みを構築する必要がある

(4)災害からモノ、情報、エネルギーの流れを確保し、創る
(地震)

「ICTインフラの強靭化及びICT利活用の推進」を追記すべきである。具体的には、戸籍等の住民データのバックアップシステムの構築、非常時における情報伝達手段の多様化、保険証やカルテの電子化・ネットワーク化、災害予測シミュレーションや災害監視のためのリモートセンシング技術の高度化、高齢者にもやさしいICTツールの開発等が必要となる。

今回の災害において、被災者が最も必要としていた情報は家族等の安否確認であったことを踏まえ、家族同士の安全な情報伝達手段を日常からの情報交換手段として定着させていく取組みを重要課題と位置づけるべきである。また、今般、電力不足から発生した計画停電において、実施面で多くの問題が露呈したことを踏まえ、納得性のある計画停電の仕組みや技術的課題の洗い出し、解決策の検討が必要である。

III.グリーンイノベーション

1.政策課題

(クリーンエネルギーの安定的供給)

今回の原発事故により、エネルギー政策の重点を原子力発電から再生可能エネルギー等へシフトすべきとの世論が高まりつつある。しかし、発電量の約3割を原子力発電が占めているわが国の現状に鑑みれば、安定的なエネルギー供給と低炭素化を実現するためにも、再生可能エネルギー等の研究開発・実用化の促進のみならず、原子力発電の安全性向上に資する研究開発及び実用化を併せて推進することが重要である旨、明記すべきである。

V.基礎研究の振興及び人材育成の強化

第4期科学技術基本計画では、基礎研究のみならずイノベーション創出までを視野に入れる方向で議論が進められていることから、アクションプランにおいても基礎研究に限定するのではなく、応用研究、実用研究を含め、イノベーション創出を意図したものとすることが必要である。

以上