1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 地域別・国別
  4. アジア・大洋州
  5. 第2回アジア・ビジネス・サミット共同声明

Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 第2回アジア・ビジネス・サミット共同声明 民間主導によるアジア経済の持続的成長を実現する

英文正文
2011年9月29日

ダイナミックな成長力を有するアジアが、世界経済において大きな役割を果たしている。アジアの成長を持続的なものとし、民間主導による豊かな経済社会を形成していく上で、アジア経済界が相互の連携強化を通じて主体的な役割を果たすことが重要である。そこで、昨年の第1回アジア・ビジネス・サミットに引き続き、2011年9月29日、経団連主催の下、アジア11のエコノミーから13の経済団体の代表者が東京において一堂に会し、第2回サミットを開催した。

今般のサミットでは、アジア経済の成長に向けた方策、地域経済統合の推進、イノベーションの推進、アジア域内のインフラ整備、金融分野における協力、環境・エネルギー問題等の共通課題について活発に意見交換を行った。また、東日本大震災後に必要性が強く感じられた災害対応における域内の協力のあり方についても検討した。

アジア経済界は、下記の提案を達成すべく、APEC首脳会議や東アジア・サミット等に働きかけるとともに、自らその役割を果たしていく。

1.アジア経済の持続的成長に向けて

  1. (1)アジア経済は2008年の経済危機から着実に回復しており、新興国を中心に世界経済の成長エンジンとしての役割を着実に果たしている。今後、この成長軌道を持続的かつ均衡のとれたものとするため、魅力ある生産拠点、開かれた消費市場、有能な人材が協働する研究・開発拠点等の整備を通じて、公平、自由かつシームレスなビジネス空間の構築を目指すべきである。
  2. (2)われわれアジア経済界は、民間主導の持続的な経済成長を実現すべく、地域経済統合の推進、イノベーション、ソフト・ハードのインフラ整備等の面で主体的に貢献していく。また、公平かつ自由な貿易を堅持し、保護主義的な措置に断固反対する。

2.地域経済統合の深化・発展

  1. (1)第1回アジア・ビジネス・サミットでは、2020年を目処に開放性、公平性、透明性、互恵性、包含性、機能性を原則とし、APEC規模の広がりをもつ Free Trade Area of the Asia Pacific (FTAAP)の実現を目指すことを提案した。昨年11月のAPEC首脳会議で合意された「横浜ビジョン」に、包括的な自由貿易協定としてFTAAPを追求していく旨が明記されたことを評価する。我々は、既存の経済連携協定、自由貿易協定の活用促進と共に、FTAAP実現のための経路として各エコノミーの事情とニーズに応じて、ASEAN+3経済連携協定、ASEAN+6経済連携協定(CEPEA)、環太平洋経済連携協定(TPP)等の締結に向けて取組むことを支持する。
  2. (2)質の高い地域経済統合を実現すべく、専門的な知識・技能を有する人材の国境を越えた活動の促進、外資制限の緩和や不透明な国内規制の是正による投資・サービスの自由化、さらなる関税の引き下げ、輸出規制等の撤廃に向けた取組みを強化することが重要である。そのために、アジア経済界は、経済連携協定・自由貿易協定締結に向けた産官学共同研究やビジネス環境整備委員会等の場で主導的な役割を果たす。
  3. (3)地域経済統合の推進と多国間の貿易投資自由化は車の両輪である。各エコノミーがWTOドーハ・ラウンド妥結に向け真摯に取り組むよう、アジア経済界として引き続き要望する。

3.環境・エネルギー問題、震災復興への対応

  1. (1)アジア地域が将来に亘って持続的に発展するためには、限られた資源・エネルギーの域内における安定的な供給を確保すると共に、省資源・省エネ・リサイクルを官民連携で推進する必要がある。再生可能エネルギー、原子力等の代替エネルギーの導入は、多くのアジア諸国にとって重要な選択肢である。アジアでの取組強化は、地域の成長のみならず、世界全体の安定的な経済発展にも資する。
  2. (2)気候変動問題に関しては、公平で実効的なポスト京都議定書の国際枠組を構築し、全ての主要排出国が温室効果ガス排出削減に向けた努力を続けることが求められている。アジア経済界は、セクター別の省エネ技術の移転、環境に優しい製品の普及、キャパシティ・ビルディング等に取組むことで、低炭素社会の実現に貢献する。
  3. (3)東日本大震災をふまえ、アジア経済界は、域内のサプライチェーンが世界の生産活動に及ぼす影響の大きさを再認識し、その円滑な機能の回復・維持に協力する。また、基幹インフラの復興、防災対応に関する経験・ノウハウの共有等について、官民連携で取組む。
  4. (4)アジア経済界は、環境・エネルギー、災害対応のニーズに適した未来型の都市づくりに向けて協力する。

4.イノベーションの推進

  1. (1)アジア地域は、その持続的発展のために、研究・開発の拠点としての役割を強化することが重要である。イノベーションによって付加価値の高い製品や新しいビジネス・モデルを世界に対して発信し得る環境を整備すべく、アジア経済界は官民連携の下、共同研究・開発の場の提供、高度な技能を有する人材の自由な交流促進、職業訓練や専門性の高い教育の実施に向けた取組を強化する。
  2. (2)規格の統一は技術の共同開発、技術移転の推進の大前提である。標準化は一つの発明以上の効果を有するという認識の下、IT、環境・エネルギー、電気・電子、機械、化学等の重要分野において、アジア域内の標準化を推進すると共に、これを国際標準につなげていく。併せて、基準の相互承認についても推進していく。
  3. (3)イノベーションや技術移転を推進するため、我々は、知的財産権の確実な保証、研究開発投資を適切に回収できる市場環境の整備、民間の研究開発能力を最大限に引き出す環境づくりを行う。これに関連し、経済界は、実際に生じている問題等を集約し、知的財産権保護の枠組を各エコノミーの政府に提案していく。

5.官民連携によるアジア域内のインフラ整備の推進

  1. (1)持続的成長の確保、豊かな生活基盤構築の観点から、特にアジア域内の道路、鉄道、港湾等の基幹インフラ、原子力発電、高効率火力発電等の省エネ・低炭素に資するインフラ、住宅、上下水道等の生活・都市インフラを重点的に整備する必要がある。インフラ整備には莫大な資金を要することから、基礎部分を公的資金で整備し、採算が見込める部分は民間が手がける官民連携(PPP)制度の導入とその活用を推進する必要がある。アジア経済界としてこれに積極的に関与すると共に、PPPが有効に機能する枠組の整備を各エコノミーの政府に働きかける。
  2. (2)高品質で環境負荷が少なく、かつ、中長期的な費用対効果が高いインフラ・プロジェクトが推進されるよう、アジア経済界は各エコノミーの政府に対し、公正で透明度の高い国際入札制度の構築を求める。
  3. (3)アジア経済界は、低炭素技術を海外に移転した場合、当該技術によるCO2削減を技術供与国の貢献分としてカウントする二国間オフセット・メカニズムの導入に関する提案に留意する。二国間オフセット・メカニズムは受入国側のファイナンス手段の多様化ならびに環境に優しいインフラの普及に貢献する。
  4. (4)アジア経済界は、インフラ整備に関連する国内法の整備、プロジェクトに携わる人材の育成等、ソフト面の支援を官民連携で推進する。

6.アジアにおける金融分野の協力推進

  1. (1)インフラ整備に際して、アジアの民間資金を有効活用すべく、アジア経済界は、域内債券市場の整備等、金融分野の協力を推進する。この点に関し、我々は2011年2月の21世紀政策研究所による報告を歓迎する。
  2. (2)アジアの民間金融機関は、債券市場整備の牽引役となる機関投資家の育成や投資家の裾野を拡大するための商品開発等に連携して取り組むと共に、自ら積極的に債券市場に参加していく。また、中小企業の金融市場へのアクセス改善に貢献していく。
  3. (3)アジア経済界は、各エコノミーの政府に対し、引き続きアジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の成果を活用し、債券市場制度の拡充、格付制度の確立、取引や企業情報の透明性確保、投資ニーズに応える金融商品の供給に関する機能の強化等を図るよう求める。
以上

「地域別・国別」はこちら