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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 日印CEOジョイント・フォーラム共同報告書

(仮訳/英文正文
2011年12月28日

はじめに

  • 日印のビジネス・リーダーは、その提案に応え、日印両国政府の尽力により日本・インド包括的経済連携協定(CEPA)が本年8月に発効したことを歓迎する。
  • 日本側は、本年3月の東日本大震災に際し、インドとして史上初めてとなる緊急援助隊(NDMA Response Force)の派遣、物資協力、インド国会の上下両院における連帯決議の採択に謝意を示すとともに、サプライチェーンや基幹インフラの復興、防災対応に関する経験等について共有することを提案した。
  • 両国のビジネス・リーダーは、世界経済危機後に我々が直面している困難な経済状況を克服する上で、アジアが世界経済のエンジンとしての役割を果たすという認識を共有する。特に、民主主義、人権、国際法の順守といった価値を共有する両国が、二国間の経済連携の拡大と深化を通じ、この地域並びに世界経済の安定的かつ持続的な成長に貢献することができることについて、リーダー達は合意した。
  • 日本の民間部門におけるインドへの関心は高まっており、自動車・機械産業を中心に日系企業の進出は増加している。2011年10月現在で進出日系企業の拠点は1422拠点となっており、前年同月より186拠点増加している。
  • 日印のビジネス・リーダーは、2010年10月の第3回フォーラムに引き続き、日印間の貿易・投資において、経済的関係を強化し深化させるために意見交換を行い、両国首脳に以下のとおり共同報告書を提出する。

1.ビジネス環境の改善のための日印CEPAの活用の促進

  • CEPAは重要な制度的インフラとして、日印間のビジネスを一層活性化し磐石にする上で必須のものである。日本側からは、本年8月のCEPA発効以降、CEPAを活用した日本からの輸出は増加している事実が紹介されるとともに、インド側の通関当局へのCEPAの周知徹底による円滑な運用への要望が示された。
  • CEPAの枠組みにおいて設置されているビジネス環境の整備に関する小委員会等を、積極的に活用していくべきである。インドが国際競争力のある産業を育成し、日本の中小企業のインド進出促進にも資するよう、製造業・都市化・産業の成長のための合理的な価格での円滑な土地収用、重要なセクターでの外資規制緩和、社会保障協定の早期締結、税制の改革、査証取得手続きの簡素化・迅速化、通関手続き等の課題に焦点をあてて取組みを進めていくべきである。
  • インドのIT、ITES(IT Enabled Services)、専門職分野等のサービス部門は、日本市場に強い関心を有している。世界的に確固とした評価とビジネス実績を有するインドの製薬会社も、日本の市場アクセスに関心を示している。インド側は、インド企業が日本国内で日本企業と対等に活動でき、日本市場へのアクセスが改善することについて期待を表明した。
  • 両国のビジネス・リーダーは、両国間の人的交流の拡大を歓迎する。この観点から、商用・就労査証取得手続きの簡素化・迅速化等に向け課題を解決することで、人の移動はさらに加速するという認識を共有する。

2.インドにおけるインフラ整備の重要性と日印協力の推進

  • 双方の経済界は、インドの産業化を推進する上で、電力、道路・鉄道・港湾・倉庫等のロジスティクス、工業団地等のインフラ整備が喫緊の課題であるとの認識を共有するとともに、インド政府の第12次5カ年計画のインフラ整備の方針を評価した。
  • 双方は、DFC(デリー・ムンバイ間の貨物専用鉄道)については、その確実かつ迅速な推進を図ることについても、認識を共有した。また、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)及びインド南部中核拠点開発構想で提案されているプロジェクトについては、インフラ全般に亘って日本企業の技術と専門知識、日本の長期的な資金を活用する観点から、閣僚級の官民政策対話、DMIC-PPP推進協議会、セクター別の協議等の場を活用し、課題解決型の確実な推進を継続して要請いくことで認識を共有した。
  • インド側は、インド政府の国家製造業政策による包括的な枠組みによって、DMICの概念は大きな利益を得るとの考えを示した。双方のビジネス・リーダーは、DMICプロジェクトによる進展とプロジェクトのための回転資金の創設を歓迎した。
  • インドのインフラ整備では民間資金がますます必要とされているため、PPPが有効に機能するよう、民間が参加しやすい環境づくりが求められる。双方の経済界は、日印両政府がPPPによるインフラ整備を支援する枠組みの整備を進めることを求めていくことで合意した。双方は資本規制の緩和、ファイナンス面の支援、PPP参加条件の改善等について、民間同士や両国政府との対話の場が拡大することを要望する。

3.戦略的分野における協力の強化

  • 技術開発と技術移転は両国の経済関係を強化する上で欠くことができない。例えば、日印のビジネス・リーダーは、日印エネルギー対話の着実な進捗を期待するとともに、「スマート・コミュニティ」や「エコ・シティ」のような新技術を基盤とするプロジェクトを推進する日本側の提案を歓迎する。
  • 自動車、機械、化学等の製造業分野に加え、電気機器製造、通信機器、重工業、鉄道輸送システム、製造業における先端技術、農業や環境管理のセクターにおける技術交流も重視することが必要である。
  • インドにおける電力部門のインフラ改善の一環として、原子力発電プラント建設における日印協力は戦略的に重要である。この観点から、このプロセスを容易にするために、我々は、原子力協定の締結を含む両国政府の一層の協力と取り組みを求める。
  • 希少資源をめぐる国際的な競争を踏まえ、レアアースのような戦略的に重要な資源をインドで開発する、新たな日印共同イニシアティブの実現が期待される。
  • このような戦略分野での共同事業を推進する上で、ソフトインフラとしての良質な人材の育成が不可欠である。日印の経済界は、スキルの訓練と認定、日印の学生の相互交流や企業でのインターンシップ等を通じ、官民におけるスキルの向上と開発を拡充することの重要性について、認識を共有した。

4.アジア・太平洋地域における日印協力

  • 日印のビジネス・リーダーは、アジア・太平洋地域における貿易・投資の自由化を促進するための努力がこれまで以上に求められており、日印による共同の取り組みは、この目的に向けての動きに弾みをつけることになるとの認識を共有した。
  • 両国は、日印戦略的グローバル・パートナーシップが重要であり、これがアジア・太平洋地域の経済発展に好ましい影響を及ぼすことを認識した。
  • 日印のビジネス・リーダーは、日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)や印ASEAN自由貿易地域(FTA)を包含するASEAN+6から成る東アジア包括的経済連携協定(CEPEA)の構築に向け、共同でイニシアティブを発揮することで合意した。これは同地域における生産ネットワークの拡大やサプライチェーンの強化に貢献することとなる。

5.日印外交関係樹立60周年

  • 両国の経済界は、日印外交関係樹立60周年を祝う官民の交流及びビジネス活動を活性化するため、2012年にインド及び日本でビジネス・セミナー等を開催することに合意した。

総括

  • 来年、外交関係樹立60周年を迎える日本とインドは、歴史的に誠実かつ友好的な関係を共有してきた。加えて、両国には、相互補完的な関係及びこの連携の地政学的重要性に基づいて戦略的経済連携を発展させうる大きな潜在性がある。例えば、インド洋における海賊問題への対応では、日印の連携が有効であり、シーレーンの確保の観点からも重要である。
  • 日印CEPAは、こうした連携をさらに発展させ確立する上での基盤となり、日本とインドの官民は、CEPAが両国企業に利益をもたらす強靭な経済アライアンスへと育つように、協力して努力をする必要がある。
  • 本フォーラムは、アジアでも主要な二つの民主主義国家の共同の取り組みを通じて、アジア太平洋地域の安定と繁栄に寄与することを祈念する。
  • 最後に、本フォーラムのメンバーは、日本の野田首相とインドのマンモハン・シン首相が我々に寄せていただいた信頼に対し、深い謝意を表するものである。
以上
ジュビラント・ライフ・サイエンス共同会長
兼社長
日印CEOジョイント・フォーラム共同議長
ハリ S バルティア
日本経済団体連合会会長
住友化学会長
日印CEOジョイント・フォーラム共同議長
米倉 弘昌

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