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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 ASEANミッション 団長所見

2012年3月9日
団長 米倉 弘昌

  1. 1.会長就任以来2度目のASEANミッションを組成し、3月4日から10日にかけて、ベトナム、マレーシア、フィリピンを訪問した。

    2015年に予定されるASEAN経済統合以降のアジア経済を見据え、域内にハード・ソフト両面でシームレスで良好なビジネス環境を構築するための二国間および多国間の協力について、各国政府ならびに主要経済団体の首脳と具体的政策に踏み込んで意見交換を行い、所期の目的を達成することができた。

  2. 2.地域経済統合については、訪問先で、2020年のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築に向けて、まず環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を進め、これを推進力に東アジア包括的経済連携(CEPEA)を進めるべきであるとの経団連の考えを紹介した。また、訪問した各国では、ASEANの経済統合を中核に据えて、プラス3、プラス6と外延を拡大し、最終的にアジア太平洋地域まで広げていく考えが紹介され、基本的に経団連の考えと一致していることを確認することができた。

    わが国のTPP交渉への早期参加については、既に交渉に参加しているベトナムとマレーシアから高い期待が表明され、引き続きこれらの関係国と連携していくことで合意した。ベトナムでは、サン国家主席から、アジアの経済状況をよく知るわが国がTPPに参加することを歓迎するとして、改めて支持を頂いた。また、マレーシアでは、ナジブ首相をはじめとする首脳より、同国と貿易投資関係の緊密な日本の参加について、国内にポジティブな意見が多数あることが紹介され、日本の参加がTPPの価値を高める上で重要であり、一刻も早く国内手続きを完了して、交渉スケジュールに沿って対応を進めてほしいと強く求められた。

    交渉に参加していないフィリピンでも、ドミンゴ貿易産業大臣より、同国のTPP参加について関心が示唆されるとともに、わが国のTPPへの早期参加に期待しており、交渉においてはASEANを一体とみなしてほしいとのコメントを頂いた。

    CEPEAについては、本年の東アジアサミットでの交渉開始に向けて協力することで、各国首脳と意見が一致した。

    また、わが国との二国間の経済連携協定(EPA)については、各国との間で貿易投資の活性化に貢献しているとの評価で一致した。今後はマレーシアやフィリピンとの再協議を通じて、更なる関税の引き下げ、サービス貿易の自由化、人の移動の活性化などで高度化を図ることで合意した。

  3. 3.インフラ整備については、各国が主に物流、電力(火力、原子力、再生可能エネルギー)、省エネ・環境技術関連に優先度を置いていることが紹介され、世界最先端の技術やノウハウを有するわが国企業の参画を求められた。

    また、これらのインフラ整備を進めるうえで官民連携(PPP)スキーム策定への支援が求められたほか、環境・省エネルギー協力の観点から、わが国との間でパイロットプロジェクトが進められている二国間オフセットメカニズムを早期に本格導入すること、価格だけではなく機能、品質を評価する公正な入札制度を構築すること、民間資金のインフラ整備への活用のためアジア債券市場を整備することなどの課題について話し合った。

    その他、各国からは、人的交流を促進する観光産業、法制度を含むソフトインフラ、人材育成での日本の協力に関心が示された。

  4. 4.訪問3国では、それぞれの成長戦略とビジネス環境整備をめぐり、具体的項目について対応策を含め意見交換を行った。

    ベトナムでは、ベトナム新政権の下で進行中の公共投資、国有企業、金融の再構築や2020年までの経済社会開発10カ年戦略とこれに基づく2015年までの5カ年計画、そして、工業化戦略について話し合い、重点的に育成すべき基幹産業の特定について両国の合意に基づいて進めていくことで一致した。また、ビジネス環境の整備にあたっては、日本企業の声に耳を傾け取り組む方針が紹介され、日越共同イニシアティブの第4フェーズでは達成率が7割近くを見込んでいるとの説明があり、意を強くした。

    マレーシアでは、ナジブ首相より、本年がマレーシアの発展に大きく寄与した東方政策の開始30周年にあたることから、今年中に第2次東方政策を打ち立てる準備を進めていることが紹介され、その中で環境面での両国協力を進めたいとの期待が表明された。すでに1人あたりGDPが8,500ドルの同国は経済改革プログラム(ETP)の下で2020年までに先進国入りを目指しており、わが国の民間直接投資の一層の拡大で、これを支援してほしいとの期待が表明された。そのためにも、(1)外国人労働者に関する規制緩和、(2)再投資に係る優遇措置の延長、(3)鉄鋼免税の継続などを求めたところ、いずれも前向きに検討中であり、改めて週末の閣議で取り上げることが約束された。

    フィリピンでも、わが国の民間投資拡大への期待が寄せられたことから、税制の改善、社会保障協定交渉の開始、日本方式の地上デジタル放送の採用などが課題であることを説明した。また、日比EPAの下でフィリピン人看護師・介護福祉士の受け入れの実現のための経団連の取り組みを紹介するとともに、引き続き連携していくことで一致した。

  5. 5.今回の訪問を踏まえ、経団連では、ASEAN諸国からも、わが国のTPP交渉への早期参加が強く期待されていることを各界各層に報告するとともに、その実現を関係方面に対して強力に働きかけてまいりたい。

    また、パッケージ型インフラ輸出については、アジアの成長を支えていく上で不可欠であることから、政府と連携して強力に推進してまいりたい。

    なお、来月予定される日メコン首脳会議やASEAN各国経済大臣との懇談会、さらには、7月にバンコクで開催される第3回アジア・ビジネス・サミットなどの機会も活用して、今回の成果を具体的なアクションにつなげてまいりたい。

以上

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