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Policy(提言・報告書) 総合政策 夏季フォーラム2012 議長総括-新しい日本を創る-

2012年7月20日
一般社団法人 日本経済団体連合会

激化するグローバル競争と、わが国の立地競争力の低下の中で、企業は存続をかけて成長を模索し続けなければならない。企業の生き残りのみを考えた場合には、海外に生産拠点を移すことが一つの解となるが、それでは次世代にわたって、安全・安心で豊かな国民生活を実現することは難しい。今こそ、6重苦の解決に向けた政策の断行と、経済界自ら克服する知恵と努力が必要である。

このような問題意識のもと、今回の夏季フォーラムでは、外交、資源・エネルギー、政治、経済等の幅広い分野について、わが国の強み・弱みといった身の丈を確認した上で、目指すべき姿とそれを実現する戦略等について討議した。

1.わが国を取り巻く内外の環境

アジア等の新興国の台頭やわが国の立地競争力の悪化、人口減少に伴う国内市場の縮小等を背景に、日本経済の地盤沈下が懸念される。加えて、社会保障制度の持続可能性や財政破綻リスクも危惧される。
昨年の東日本大震災を契機に、経済成長に必要なエネルギーの確保に対する不安が広がっている。
外交面でも、TPPやEPAの立ち遅れ、ODA予算の減少等があり、国際社会におけるプレゼンスは低下している。
わが国企業は、グローバルサプライチェーンの重要な担い手であり、モノづくりや環境・エネルギーの技術水準は国際的に高い。しかしこの強みも、国を挙げてイノベーションを加速化しなければ、たちまち諸外国に遅れをとる。
今後とも経済大国の地位を維持できるのか、わが国は今、その分水嶺にある。

2.わが国の目指すべき姿

世界の中の日本を強く意識し、日米同盟の強化を図りつつ、豊かで安定し開かれたアジア太平洋地域を実現する。新興国等の需要を積極的に取り込みながら、環境・エネルギー・安全・安心等における先進分野で世界をリードし、世界とともに発展していく、新しい日本を創る。
経常黒字を確保し、実質2%、名目3%程度の持続的な経済成長を通じて雇用を確保するとともに、社会保障制度の維持を図り、豊かな国づくりを実現する。
また、エネルギー問題が経済成長の足かせとならないよう、今後、3~5年の電力確保の道筋を明らかにするとともに、中長期的には、安全性を大前提に、エネルギー源の多様な選択肢を保持する。こうした観点から、政府が公表した「エネルギー・環境に関する選択肢」については、成長戦略との整合性を図りつつ、原子力維持の考えをベースに、省エネや再生可能エネルギーの導入量を現実的なものとして再構築すべきである。

3.新しい日本の創造のために

(1) 経済界の取り組み

経済界は、民主導の持続的な経済成長を実現するため、イノベーションを創出し、世界最高水準の財・サービスを国内外に提供していく。その一環として、以下に取り組み、東日本大震災からの早期復興と新しい日本の創造につなげていく。

  1. 世界に誇れる先進分野では、国内に研究開発、企画、生産、販売、サービス等の供給体制を一貫して堅持し、日本市場の開拓に努める。日本で成功した財・サービスについて、世界各国のニーズに合致した形でローカライズする。
  2. 次世代を担うグローバル人材の育成に努める。
  3. 政府・自治体・関係業界等との連携のもと、国内外の需要の発掘に取り組む。
    • 未来都市プロジェクトを推進する。その成果を復興にも役立てるように努める。また、その一環として、快適な街づくりに向け、環境・エネルギー・安全・安心等のイノベーションをビルトインし、海外展開も可能な先進的な都市を実現する。
    • 農商工連携や輸出振興等を通じて、力強い農業の構築に貢献する。
    • IT化の推進やロボット等の関連機器の開発・実用化など、医療・介護関連産業におけるサービスの高度化と生産性向上に寄与する。
    • 内外からの観光客誘致に資する様々なイベントの実施など、観光産業を振興する。

(2) 政府ならびに政治に期待する役割

政府には、新しい日本の創造に資する諸施策の早期実現を強く求める。具体的には、経団連の2012年度事業方針で掲げた、「本格的な復旧・復興の加速化」、「成長の実現と雇用の創出」、「持続可能な社会保障・財政構造の確立」、「エネルギーの安定供給とエネルギー・環境政策の再構築」、「経済統合の促進と海外インフラの整備」を最重要課題として取り組むべきである。
政治においては、上記最重要課題の解決に、より一層強力なリーダーシップを発揮し、「決断し実行する」政治を確立すべきである。

以上

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