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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 訪オーストラリア・ニュージーランド ミッションを終えて 団長所見

2014年3月21日
経団連国際経済本部

経済的に緊密な関係にあり、今後も高い成長が期待されるアジア太平洋地域の経済統合を進め、同地域の安定と豊かさをともに追求することは、わが国の持続的成長にとって不可欠である。その際、民主主義、法の支配などの基本的価値を共有する先進国であり、また、資源・エネルギー、食料の供給国でもあるオーストラリア、ニュージーランドとの良好な関係を強化していくことは、経済面のみならず、外交、安全保障等、わが国の国家戦略の観点からも重要である。また、両国は環太平洋経済連携協定(TPP)、東アジア包括的経済連携(RCEP)の推進のためにも、重要なパートナーとなっている。

このような認識に基づき、経団連では、3月16日~22日の日程で、渡審議員会議長、副会長8名、審議員会副議長2名を含む総勢46名のメンバーで、オーストラリア、ニュージーランドの政府、経済界首脳らを訪問した。経団連からは、アジア太平洋地域の経済統合に向けた考え方と取り組みを説明し、TPPおよび日豪EPAの早期妥結を働きかけた。両国政府、経済界首脳からは、アジア太平洋地域の経済統合を進める上で、日本政府首脳のリーダーシップと政治的決断に対し、強い期待が表明された。また、資源、エネルギー、環境、インフラをはじめ、日本が両国との経済関係を拡大・深化できる分野等について、双方で建設的な意見交換を行った。

それらを踏まえ、以下にミッション団長として所見を申し述べたい。

1.アジア太平洋地域の経済統合の推進

訪問先では、第二次安倍政権の下で、日本経済の再生に向けた政策により着実な景気回復が続き、デフレ脱却が目前にあること、また、アベノミクスの三本目の矢である成長戦略の実現に向け、その重要な柱である経済連携推進の中でもTPPの早期妥結を経済界が重視していることを説明した。また、TPPが妥結した暁には、それを梃子にRCEP等を実現し、2020年のアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構築につなげ、成長著しいアジア太平洋の活力を取り込み、わが国の持続的成長を確実なものとする方針を紹介した。

両国の政府、経済界のリーダーからは、アベノミクスの成功に対する高い期待が表明され、両国およびアジア太平洋地域の持続的な経済成長に不可欠であるとの認識が示された。特に、アベノミクスの三本目の矢である成長戦略に関して、両国の現政権ともに同様の政策を進めていることから、安倍首相による本格的な構造改革への取り組みが注目されていることが確認された。

アジア太平洋地域における経済連携については、両国の政府、経済界のリーダーともに、2020年のFTAAP形成に向けて、TPP、RECP等に国の将来をかけて戦略的に取り組む姿勢が明確であった。この点について、我々と目指す目標を共有していると確信した。今後はTPP等の交渉で、包括的で高いレベルの協定を実現するため、両国との連携が交渉の早期妥結の上で欠かせないと認識した。

ニュージーランドのキー首相からは、同国にとり、TPPは米国とのFTA、日本とのFTAという二つの面から重要であるとの発言があった。また、グローサー大臣はじめ経済閣僚からは、現在の交渉状況を踏まえ、早期妥結に向けて首脳レベルでの英断について期待が表明された。

オーストラリアのアボット首相からは、日豪EPAの締結への強い期待が表明され、EPAにより日本からオーストラリアへの投資がさらに拡大し、相まってより良い関係が構築されるとの発言があった。ロブ貿易・投資大臣からは、日豪EPAを高いレベルで合意することができれば、日本の決意を他のTPP参加国に示すシグナルとなり、TPP交渉の加速化も期待できるとの見解が示された。

2.両国との貿易投資関係の強化

両国とは、資源・エネルギー、食料の供給国としてわが国と相互補完的な関係にあり、長年に亘る信頼を基盤に確固たる関係を築いてきた。一方、両国の政府、民間から、これまでの関係をより高いレベルに引き上げるとともに、新たに協力分野を拡大したいとの意見が強く表明された。

(1) オーストラリア

日豪の協力関係をより高いレベルに引き上げる上で、その基盤となる日豪EPAの早期妥結の必要性について、日豪双方とも認識を共有した。4月にはアボット首相の訪日、それ以後に安倍首相の訪豪が予定されており、双方とも日豪EPAの妥結に向けた期待を表明した。また、ロブ貿易・投資大臣からは、日本の求める投資、自動車・自動車部品で動く準備がある一方、日本側でも牛肉等の農産品で努力が必要との見解が示された。

また、新たな協力分野として、マクファーレン産業大臣から、日本とは付加価値型のハイテク産業や科学技術分野で協働したいとの提案があった。経団連側からは、クリーンコール・テクノロジー、石炭火力発電、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、水素燃料など、資源分野や環境分野での提案を行い、先方からも関心が示された。

(2) ニュージーランド

地熱発電等の再生エネルギー分野、環境や省エネ、ガス探査等の資源エネルギー、震災の経験の共有を踏まえた安全な都市づくり、観光等について双方から提案があった。また、ニュージーランドからは、同国の農業の自由化の際の成功事例(ワイン産業や酪農)を踏まえ、日本の農業の構造改革に協力していきたいとの提案があった。

3.人的・文化的交流の促進、科学技術分野での協力強化

両国との確固たる経済関係は、人的交流や文化的交流の促進、科学技術分野での協力強化を図り、両国との関係を重層的なものへと拡大する好機をもたらしている。政府首脳、経済界リーダーとの会合では、経団連側からも、観光や留学・研修等の分野での交流促進について説明した。

(1) オーストラリア

同国とは近年、外交・安全保障面での関係が強化されつつあるが、ビショップ外務大臣からは、アジア太平洋地域における災害救助、人道活動、平和維持活動を含む分野における日本の活動を高く評価するとともに、日豪間の協力がさらに進むことへの期待が表明された。

また、同大臣からアジア太平洋地域との関係を拡大するイニシアティブである「新コロンボ計画」について、オーストラリアの学生が同地域の国に留学するための奨学金を設け、大学に通うとともに、企業でインターンシップも行うプログラムを準備しているとの説明があった。2014年はパイロット期間として、日本をはじめ4カ国を指定している。経団連としても、要請を踏まえて協力をしていきたい。

さらに、今回の訪問では、キャンベラにある国立科学技術センター(通称「クエスタコン」)の25周年記念行事に日本の経済界を代表して列席した。同センターは、設立に際して日本政府と経団連が総建設費の半分を拠出しており、現在、オーストリア最大の科学教育センターとして同国の科学人材の輩出に貢献するなど、高い評価を得ている。また、同センターは本年、日本科学未来館と協力し、東北地方の被災地を訪れるサイエンスサーカス・ツアーを主催するなど、両国の科学教育交流において中核的な役割を果たしている。経団連としても、本分野における交流の拡大に向けて、引き続き協力していきたい。

(2) ニュージーランド

ニュージーランドと日本はほぼ同じ時期に、クライストチャーチ地震、東日本大震災を経験する中、救援チームを相互に送り合うなど、強い絆を培ってきた。このような震災の教訓を共有し、企業も参画しつつ、両国で震災復興、防災、安全な町づくりなどの協力を進めていくことの重要性を確認した。

また、スポーツや文化面での交流を活発化させるため、2019年の日本でのラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックの開催を念頭に、両国企業レベルでの交流を増やしていくことで認識が一致した。

以上

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