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Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 わが国経済外交のあり方に関する提言 -官民連携を通じた積極的な海外展開に向けて-

2015年4月14日
一般社団法人 日本経済団体連合会

1.はじめに(基本的な考え方)

わが国はこれまで「貿易・投資立国」として経済成長を実現するとともに、技術・ノウハウの移転や政府開発援助(ODA)等を通じて、アジア太平洋地域をはじめとする国際社会の平和と発展に貢献してきた。とりわけ資源の獲得や市場の拡大に重点を置いた「経済外交」の展開により、わが国経済の発展に資する国際経済環境の創出に一定の成果を上げてきた。

しかし、これまでにない多様なリスクがグローバルに拡大、波及する今日、成長の基盤である国際社会の平和と安定をいかに維持し強固なものとするかが重要な課題となっている。こうした情勢下、わが国は自由や民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済等の普遍的価値に立脚した積極的な外交を通じて、国際社会から高い信頼を勝ち取っていくことが求められる。また、経済外交の分野においても、国際環境の変化に対応した新たな取組みが必要とされている。

折しも本年は、アジア近隣諸国との関係の改善、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や日EU経済連携協定(EPA)等の重要な協定の妥結、また、気候変動や持続可能な開発といった地球規模の課題に対する日本の取組みが問われる節目の年でもある#1。経済界としても、世界最高水準の技術・ノウハウの移転はもとより、地域社会との共生やモノづくりに対する姿勢など、日本ならではの企業文化・経営理念のもと、グローバルなビジネス展開を強化し、国際社会にこれまで以上に積極的に貢献していく必要がある。

経団連の経済外交委員会ではこのような問題意識のもと、2013年6月の設置以来、わが国経済外交のあり方、とりわけ資源・エネルギーや食料の安定的な確保、テロや紛争時の在外邦人の保護や企業の危機管理、政府の体制や官民連携のあり方等について、総合的かつ多面的な検討を深めてきた。年頭に公表した新たな経団連ビジョン#2の柱となる、グローバルなビジネス展開を支える経済外交を戦略的に推進する観点から、日本政府はじめ関係方面に以下提言する。

2.わが国を取り巻く環境に対する現状認識

(1)新興国の台頭に伴うパワーシフト

米国や中国、韓国など諸外国で堅調な成長が続いてきた中、世界のGDPに占める日本の比率は今日、1990年時点の半分以下にまで低下している#3。実際、経団連が実施したアンケート#4によれば、1990年代以降、国際社会における日本のプレゼンスやブランド力が低下しているとする企業が約半数を占めている(巻末図表1参照)。そのうち約6割の企業が、新興国の台頭による相対的な地位の低下、わが国の経済力、ODA予算の減少を指摘している。

一方、米国はアジア太平洋地域を重視する「リバランス政策」の下、同地域におけるプレゼンスを維持、強化していく方針を掲げており、わが国として、米国と緊密な同盟関係を維持していく戦略的な重要性はますます高まっている。

また、上記アンケート結果(巻末図表2参照)では、わが国のプレゼンス向上に必要なアクションとして、トップ外交やEPA・自由貿易協定(FTA)の推進、国際標準への官民一体の取組み、イノベーションやグローバル化による国際競争力強化等につき具体的な要望が挙げられていることも認識する必要がある。

(2)平和で安定的な地域の構築に向けてわが国が取るべき対応

わが国を取り巻く環境が大きく変化し、日本の存在感が著しく低下する中、世界の成長センターであるアジア太平洋地域の平和と安定に寄与しつつ活力を取り込むことによって、国民生活を豊かにし、改めてわが国のプレゼンスを向上させる必要がある。そこで、経済外交を戦略的に進めるための体制を強化し、価値を共有する国々との連携を通じて良好な環境を整備するとともに、技術やサービスなど日本の強みを世界に展開していくべきである。

具体的には、例えばTPPの早期妥結等を通じた透明性および規律の高い貿易・投資ルールの構築を主導することによって、アジア太平洋地域にTPP加盟国の互恵的な成長に資する環境を創出することなどが極めて重要である。

3.経済外交を通じて強化すべき基盤

平和で安定的なアジア太平洋地域の構築を図りつつ、わが国が国際社会で伍していくためには、資源・エネルギーおよび食料の安定的な供給を確保することが絶対不可欠な要件である。とりわけ資源・エネルギーおよび食料の大宗を海外からの輸入に依存する日本が豊かな国民生活と持続的な産業活動を営む観点からは、主要な輸入相手国と良好な関係を保ちつつ、国内基盤を強化していくことが大前提となる。

(1)資源・エネルギー安全保障の強化

現状、わが国の総発電電力量の化石燃料依存度は約88%を占めるに至っている(第一次石油危機時は約76%)。資源・エネルギーの供給を外国に依存するわが国にとって、とりわけ東日本大震災後、エネルギー安全保障の確保は国の存亡に関わる最重要課題である。また、CO2排出量も2010年度比で約1.4億トン増加するなど、地球規模の温暖化対策への取組みという視点も欠かせない。

北米をはじめとする地域でシェール革命が進展し、国際的な原油価格が他の化石燃料の需給に及ぼす影響等も勘案しつつ、資源・エネルギー安全保障のさらなる強化に向け、エネルギーミックスを策定することが喫緊の課題である。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)石炭・石油・天然ガス等の化石燃料に関する資源の権益確保と開発に向けて積極的に資源外交を展開し、資源国との重層的・互恵的な協力関係を構築。また、エネルギー・鉱物資源の安定供給確保のため、世界貿易機関(WTO)の輸出制限措置に係る規律適用を強化・明確化するとともに、EPAによりWTO協定以上に強化された規律を導入。
  2. (イ)資源・物資の輸送経路を確保する観点から、わが国の領土・領海・領空の保全に万全を期すとともに、インド洋はじめ地政学的に重要なシーレーンの防衛、海洋安全保障戦略を強化。特にソマリア沖・アデン湾における海賊対策を継続的に実施。
  3. (ウ)化石燃料利用のさらなる高効率化・低炭素化に取り組むとともに、安全性確保を大前提とした原子力発電所再稼働プロセスの加速化、省エネの推進、水素の本格的な利活用、再生可能エネルギーの普及促進。
  4. (エ)メタンハイドレートなど、わが国の中長期的なエネルギー安全保障上、極めて重要な国内資源の開発に注力。

(2)食料安全保障の強化

わが国が食料供給の約6割を輸入に依存する中#5、世界人口の増大や新興国の経済発展等に伴い、国際的な食料需給が中長期的に逼迫することが懸念されている。低価格と安定供給を所与としてきた輸入食料の確保が脅かされつつある中、食料安全保障の観点から、有事への対応を見直すことが急務である。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)国内生産基盤の強化によって、農業・水産資源をフル活用すると同時に、穀物備蓄を拡大しつつ、輸入先多角化に対応。
  2. (イ)平時よりわが国の主要な食料輸入相手国と良好な関係を維持することによって、食料の安定供給確保に注力。また、特定品目の輸出制限措置の導入を回避・制限する仕組みを整備するため、WTOの規律適用を強化・明確化するとともに、EPA(例:日豪EPAにおける食料供給章)によりWTO協定以上に強化された規律を導入。
  3. (ウ)不測時への対応の一環として、ODA等の支援ツールも戦略的に活用し、途上国等における農業生産性の向上に資する投資を促進することによって、わが国ならびに地球規模での食料安全保障を強化。
  4. (エ)併せて、アジア地域における農産物・食品の安全・安心・衛生に関連した認証基準の整備、効率的流通・輸送システムの整備支援、農業開発協力など、農業生産を軸とした海外との協力体制を構築。

4.経済外交推進のための体制/能力の強化

2013年12月、わが国の安全保障戦略を立案・実施する一元的組織である「国家安全保障会議」が発足し、わが国初の国家安全保障戦略が策定された。内閣総理大臣、内閣官房長官、外務・防衛両大臣等が外交・安全保障上の諸課題を日常的に審議し、政治の強力なリーダーシップを発揮できる環境が整備され、臨機応変な対応が可能となったことは評価できる。

多様なリスクがグローバルに拡大、波及する情勢下、外交・安全保障上直面する諸課題の解決に向けて機動的に対応すべく、同会議の機能をさらに強化すべきである。

(1)情報収集能力・発信力の向上

1.情報収集

わが国政府内には独立した対外情報収集機関が存在しないのが現状である。これまでインテリジェンス・コミュニティ(内閣情報調査室、外務省、防衛省・自衛隊、警察庁、公安調査庁)に一体性が欠如している旨指摘されてきたが、今後は、国家安全保障会議および内閣官房国家安全保障局の下、情報収集に関する縦割りの弊害除去が期待される。

自ら対外情報を入手する体制が整って初めて、各国情報機関との情報共有・連携が可能となるのが世界の現実である。世界のパワーバランスが急速に変化し、日本企業や在外邦人を取り巻くリスクがとみに増大する中、わが国が独自の経済外交を展開していくためにも、「情報収集」「情報分析」「政策決定」に資するインテリジェンス機能を強化していくことが不可欠である。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)海外テロ情報や邦人保護に関わる情報機能(情報の集約・共有・分析)を強化。
  2. (イ)各国情報機関間の人事交流や財源・人的資源の重点的配分を実施。
2.情報発信

日本の魅力や比較優位のある分野の国際社会の認知を高めることは、わが国の持続的成長を図る上で有効な手段となる。日本のソフトパワーとブランド力(ジャパンブランド)を強化することにより、国内にヒト・モノ・カネ・情報を呼び込みつつ、日本人や日本企業が国際的に活躍するための基盤を堅固なものとする必要がある。その際、「和魂洋才」や「おもてなし」など、自分と異なるものを吸収し、他者とともにより良い世界を創ろうとする、日本ならではの「共創力」を発揮し、「世界と共に成長する」をキーワードに、文化・技術・社会・経済など様々なレベルでのオープン・イノベーションを国内外で創出・発信し、自国に還元することが肝要である。

また、天然資源の乏しいわが国においては、人材こそが最大の資源かつ成長の重要な基盤である。とりわけ経済外交の担い手たる人材について、官民を問わず、論理的思考力、課題発見能力、英語によるコミュニケーション力等の国際競争力を質量ともに拡充していくことが喫緊の課題である。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)官民の緊密な連携の下、ジャパンブランド戦略をはじめ、パブリック・ディプロマシーを積極的に推進することにより、日本研究者や日本ファン(親日派・知日派)を発掘・育成。
  2. (イ)今後設置される「ジャパン・ハウス」(仮称)と他の在外公館との連携拡充等を通じて、日本に関する情報を戦略的に発信。
  3. (ウ)国内外の安全等に配慮しつつ、国際観光の振興を通じて国民同士の草の根交流を促進することによって、政府間の外交関係を下支え。

(2)在外日本企業・邦人の保護対策の拡充

世界各地で、政治・宗教上の理由や民主化要求運動等に派生する政情不安・暴動が頻発し、深刻化の一途を辿っている。アジア近隣国の一部では対日関係の悪化に伴い反日感情が増大する一方、中東・アフリカ地域等では邦人がテロ行為に直接巻き込まれるリスクが増大している。

さらに、気温上昇や洪水、ハリケーン等の自然災害が激化し、グローバルにビジネスを展開する日本企業の生産拠点やサプライチェーンにますます甚大な影響を及ぼすようになっている実態にも留意しなければならない。

経団連が実施したアンケート(巻末図表3参照)によれば、今後、自社の事業に影響を与えると考えられるリスクについては、「政治・宗教上の理由や民主化要求運動等に派生する政情不安・暴動」が最も多く、続いて、中国や韓国など近隣諸国において見られる「対日関係の悪化に伴う反日感情の高まり」を挙げる回答企業が多数あった。こうした中、在外日本企業・邦人の保護対策は、わが国として万全を期すべき最優先課題である。民間企業として平時より危機管理に万全を期すことは言うまでもないが、自助努力による対応では限界がある領域については、政府の積極的な支援が必要不可欠である(巻末図表5参照)。とりわけ領事機能の強化は喫緊の課題である。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)現地の安全対策連絡協議会の機能を強化。同協議会が未整備の国・地域については、官民連携の下、早急に設置。
  2. (イ)テロ・暴動等、危険地域等の治安情勢に関する確度の高い情報収集・分析、ならびに民間企業との双方向の情報共有を定期的に実施。
  3. (ウ)専門的なノウハウ・スキルを備えた危機管理担当官の常駐ポストを拡充。
  4. (エ)当該国の政府・関係機関(特に治安当局)との折衝。在外公館の対外情報収集担当官や防衛駐在官が当該国の治安当局や欧米各国の駐在武官と緊密な関係を構築することにより、高度な情報の収集・分析、治安当局との調整を遂行。
  5. (オ)政府運用の航空機や車両等による救出等、危機発生時の邦人の保護・避難手段を拡充。
  6. (カ)安全対策に関する国際協力を通じて、企業が進出しやすい環境を整備。
  7. (キ)海外の安全保障情勢に関する情報を国内で発信する体制の充実。

(3)サイバーセキュリティの強化

日系企業が最近受けた被害の通り、ICTがグローバルな社会インフラとして定着するに伴いサイバー攻撃の問題が深刻化しており、サイバーセキュリティの強化に向けた情報共有や国際連携がますます重要な課題となっている。

しかしながら、わが国においては、国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼすサイバーセキュリティのリスクに対する認識が低いのが現状である。特に、重要インフラに対するサイバー攻撃により、行政運営や企業経営の根幹が脅かされ、社会に甚大な被害が生じることに留意しなければならない。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)昨年11月に成立したサイバーセキュリティ基本法に基づいて本年1月に設置されたサイバーセキュリティ戦略本部と内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の下、取組みを一層強化。
  2. (イ)具体的には、サイバーセキュリティ戦略(2013年6月策定)を踏まえ、政府機関、重要インフラ事業者、企業、一般個人など各々の主体の適切な役割分担・連携・情報共有の下、人材育成や技術開発、防御システムの能力向上、サイバー攻撃対処訓練・演習等の施策を拡充。

(4)新たな「開発協力大綱」を通じた日本企業の海外展開への支援拡充

わが国はこれまで、貿易・投資・ODAが三位一体となった重層的な協力関係をアジア諸国との間で構築し、「東アジアの奇跡」と称される経済成長の実現に大きく寄与してきた。

その後、ODAの質的・量的な変化に伴い、民間主体の国際協力が主流となる中、本年2月、わが国ODAの基本理念や重点事項を定めた「ODA大綱」が「開発協力大綱」と名称を改め、約12年ぶりに改定、閣議決定された。同大綱には、成長戦略の視点や現地におけるビジネス環境整備、顔の見える援助を進めるための技術協力の拡大、わが国官民の提案による相手国政府と一体となったプロジェクトの推進等、民間の視点が十分盛り込まれている。また、開発課題の多様化や民間セクターの役割増大ほか、グローバルな時代の変化に対応した内容となっており、評価できる。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)開発協力の理念(「わが国平和と安全の維持とさらなる繁栄の実現、国益の確保」)に則り、わが国の成長につなげるとともに、世界の平和と繁栄に非軍事的協力によって貢献。
  2. (イ)途上国の持続可能な成長への貢献を通じた貧困撲滅、国際社会の平和と安定に寄与するという基本的な考え方に立脚し、企業の海外展開への支援を一層拡充。例えば、パッケージ型インフラの輸出や運営管理等システム・ノウハウの移転、人づくり・制度づくり等のソフト面での支援を総合的に実施。特にインフラ輸出を推進する上で、ODA(円借款)の迅速な執行やJICA(国際協力機構)海外投融資の円滑な供与、わが国企業の現地事業活動への柔軟な貿易保険の付保(テロや戦争対応を含む)が極めて重要。
  3. (ウ)ODA供与に関する交渉において、受入国政府に対しコンプライアンスを徹底するよう強く要請。
  4. (エ)新興国等のOECD(経済協力開発機構)非参加国との公平な競争条件の確保。

(5)経済・貿易のルール・メーキングや国際標準化に向けた取組み強化

グローバル化の進展に伴い、企業法制や競争法制、標準等、企業活動に直接関係する分野のルール・メーキングが官民共通の重要な課題となっている。経団連が実施したアンケート(巻末図表7参照)からも明らかなように、政府の役割として、企業のグローバルな展開を支援する国際的なルール・メーキング(基準・規格等)や国際標準化に向けた取組みを強化すべきである。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)緊密な官民連携の下、EPAにおける知的財産章も活用し各国の知的財産戦略の動向等を把握・分析しつつ、自由で公正・公平な取引環境を整備。
  2. (イ)製品単位からシステム単位への国際標準の重要性を踏まえつつ、官民による国際標準化戦略を策定、実施。
  3. (ウ)途上国が経済成長と環境保全を両立させ、持続可能な国際社会の構築に貢献していく観点から、例えば"WIPO-Green"(世界知的所有権機関を活用した環境技術プラットフォーム)#6 等を通じて、環境・エネルギー分野をはじめ、日本が有する世界最先端の技術・製品を導入・普及。
  4. (エ)その際、研究開発の初期段階から現地のニーズを把握し、相手国政府・経済界との連携のもと、各国の実情を踏まえて柔軟に対応。

(6)国際機関・フォーラムの戦略的活用に向けた官民連携の強化

わが国がソフトパワーを発揮し、ルール・メーキング等を主導する観点からは、官民連携の下、国際機関やフォーラムを戦略的に活用することが効果的である。しかしながら、これら国際機関・フォーラムについて、わが国官民が緊密な連携を図り、民間の意見を反映させる仕組みとすべく戦略的に取り組んできたとは必ずしも言い難い。

こうした現状認識を踏まえ、政府には以下の取組みを要望する。

  1. (ア)国際フォーラムについて、日本が課題設定の初期段階から議論の主導権を握るべく、国際的な有志グループ(like-minded group)の組成に留意しつつ、問題領域(エネルギー、貿易・投資等)に応じて、どのフォーラムがより効果的に活用できるか戦略的に構想。
  2. (イ)国連等各種国際機関を戦略的に活用する観点から、より多くの日本人幹部・職員を派遣し、意思決定に関与する人材育成策等を強化。とりわけ民間人材も積極的に活用。

5.終わりに(経済外交推進にあたっての経団連の取組み)

経団連としても、経済外交委員会を中心とした横断的取組みを通じて、企業の危機管理能力の向上を促進していくとともに、会長や関係委員長を団長とするハイレベルミッション、二国間合同会議をこれまで以上に戦略的に推進していく。また、アジア・ビジネス・サミット(ABS)等でイニシアティブを発揮しつつ、米中はじめ諸外国の重要な官民メンバーとの人脈構築を通じて各国政府・経済団体等との連携を一層強化するなど、民間経済外交をさらに積極的に展開していく。

併せて、ルール・メーキングや国際標準化等に係る国際交渉に積極的に参画しつつ、官民合同会議や総理・閣僚同行ミッション派遣への協力、テロ・紛争等の情報の官民共有・人事交流等、日本政府との連携を一層強化していく。

多様なリスクがグローバルに拡大、波及する今日の国際社会において、テロ行為等に対する抜本的かつ最善の処方箋は、テロの温床となる貧困を撲滅し、生活の質を向上させる地道で予防的な取組みに他ならない。通商戦略や地球規模の課題への対応等において節目となる本年、わが国が国際社会から信頼される国となるべく、経済界はこれまで培ってきた技術や経験・ノウハウを通じてグローバルな課題を解決し、世界の平和と繁栄に能動的かつ積極的に貢献していく決意である。

以上

  1. 本年末にパリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、世界の温室効果ガス削減に向けた将来枠組みに関する合意がなされる予定。一方、開発分野における国際社会共通の目標である現行のミレニアム開発目標(MDGs)については、本年9月を目途に、2015年以降の国際開発目標(ポスト2015年開発アジェンダ)策定に向けた議論が国際社会で進められているところ。
  2. 『「豊かで活力ある日本」の再生 - Innovation & Globalization -』(2015年1月1日)
    http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/vision.html
  3. 世界のGDPに占める主要国・地域のGDPの割合は、1990年に米国26.5%、日本13.8%、欧州30.8%、中国1.8%、インド1.4%であったのに対し、2013年には米国22.4%、中国12.7%、日本6.6%、欧州21.5%、インド2.5%へと推移(出典:IMF "World Economic Outlook")。
  4. 「経済外交のあり方に関するアンケート」結果概要(2015年1月29日公表)。
    http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/013.pdf
  5. 小麦、大豆、飼料用とうもろこしの概ね9割以上を海外からの輸入に依存する一方、畜産物(肉類:生産額ベース自給率55%、牛乳・乳製品:同64%)や水産物(同55%)については、輸入、国内生産のいずれも需要に占める割合が高いのが現状(食料・農業・農村政策審議会企画部会(2015年1月28日)配布資料「不測時に備えた食料安全保障」)。
  6. 途上国に移転可能な環境関連技術をデータベース化する仕組み。2011年、日本知的財産協会がWIPO(世界知的所有権機関)とともに国際的に提案し、2013年11月28日発足。今後、WIPO-Greenを推進力として、知的財産の保護を図りつつ、低炭素技術を中心とした環境関連技術の移転をビジネスベースで進めていくことが期待されるところ。

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