TPPについて、国論を分かつ議論が行われる中、第二次安倍政権発足から半年も経たない2013年3月、総理をはじめとする政治の強いリーダーシップにより、わが国は交渉参加を表明、7月から正式に交渉に参加した。それから大筋合意までの2年余りの間、経団連は、協定に盛り込むべき具体的な要望を政府に提出する一方、国内外の経済団体と連携して共同提言を取りまとめ公表するとともに、交渉会合が開催される現地に度々実務ミッションを派遣するなど、交渉の推進を働きかけてきた。
交渉が大詰めを迎えた昨年7月末のハワイにおける閣僚会合では、残念ながら合意に至らず、アトランタに舞台を移した10月5日に歴史的な合意が実現した。経団連も、閣僚会合が開催された現地にハイレベルミッションを派遣して後押しするとともに、政府交渉団の粘り強い努力を目の当たりにした。アトランタでも何度も日程が延長されるなど、舞台裏は薄氷を踏む思いではなかったかと想像される。こうした経緯を想い起こすと、年が明け、2月4日に協定署名に至ったことは、わが国の通商交渉史上、画期的なことである。政府・与党はじめ関係各位、またわが国とともにTPPを構成する11か国の関係者の多大なる尽力に、深く敬意を表したい。この上は、わが国、米国をはじめ各国の批准が円滑に進み、一日も早く協定が発効することを強く期待する。
改めて述べるまでもなく、成長著しいアジア太平洋地域には既に企業のバリューチェーンが構築されている。TPPは、これを制度的に支え、さらに高度なものへと発展させるとともに、これまで外国との取引や交流には縁の薄かった産業や企業にもグローバリゼーションの機会を提供するものであり、それがわが国の成長に大きく貢献すると確信している。これを一層後押しすべく、参加国の拡大を進めることが重要である。
そこで、当シンポジウムを開催し、「TPPを活かす」と題し、TPPの経済効果と企業としての活用戦略、TPPを活用した農業の成長産業化と地方創生に焦点を当て、国を挙げたTPPの活用策を議論頂くこととした。関税撤廃にとどまらず、サービス貿易、投資、電子商取引や知的財産に関する規定をはじめ、21世紀型のルールにより構成される膨大なTPP協定には、多くの宝の山が隠されている。そのような宝の山を掘り起こすため、今後はTPP参加国の方々も交えて議論する機会も設けていきたい。
政府、経済界、農業界、労働界、地方・中小企業、有識者を含む幅広い登壇者から披瀝される様々な活用の可能性を、皆様にはぜひ、今後の事業活動の参考として頂きたい。そこから多くの新たなビジネスチャンスが生まれ、わが国経済のさらなる成長につながることを願っている。