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Policy(提言・報告書) アジア・大洋州 第6回 日中韓ビジネス・サミット 共同声明

【仮訳 正文英語
2018年5月9日
於:日本・東京

日本経済団体連合会、中国国際貿易促進委員会、大韓商工会議所は、日中韓サミットの開催に併せて、2018年5月9日、日本・東京の経団連会館において、第6回日中韓ビジネス・サミットを共催し、包摂的成長とイノベーション創出に向けた協力につき議論を行い、本共同声明を取りまとめた。

日中韓三カ国は、地理的に近接するとともに、最も重要な隣国として、長きにわたり政治・外交・経済・文化等幅広い分野で交流を深め、緊密で互恵的な関係を構築してきた。とりわけ、経済面では、密接な貿易・投資交流や第四国市場での協力などを通じ、互いにかけがえのないパートナーとなっている。加えて、日中韓三カ国は、成長著しいアジアの大国として、世界の持続的な成長を牽引し、その恩恵を広く共有する包摂的な成長のエンジンとしての役割とともに、共に協力し地球的課題の解決に貢献する重要な役割を担っている。こうした強固な経済・産業協力関係を一層発展させ、世界において期待される主導的な役割を果たしていくためには、三カ国間の持続的な友好・協力関係基盤として、安定した政治・外交関係が極めて重要となっている。

日中韓の経済界は、第7回日中韓サミットの開催とその成果を高く評価するとともに、日中韓サミットはじめ、首脳間の往来や様々な政府間対話の定期的かつ継続的な実現が、安定的な政治・外交関係の構築に貢献するとの考えを共有する。併せて、包摂的成長とその原動力であるイノベーションの推進に向けた課題の解決と協力方策の強化について、下記の通り提言する。

1.包摂的成長に向けた協力

  1. (1)包摂的な成長のためには、自由で開かれた多国間通商システムが不可欠である。また、多くの経済主体に対し、グローバルなバリューチェーンに参画する機会を可能な限り広く提供していかねばならない。とりわけ、世界的に反グローバリズムや保護主義の台頭が懸念される中、日中韓三カ国が共に自由貿易の旗を高く掲げ、自由で開かれ、公正な多国間通商システムを維持・強化し、ヒト・モノ・資本の国境を越えた移動を促進していくことが極めて重要となっている。このため、現在交渉中の日中韓FTAやRCEP(東アジア地域包括的経済連携)等の地域経済連携の強化は、アジアひいては世界経済の発展のために不可欠であり、早期かつ高いレベルでの実現を求めるものである。

  2. (2)包摂的な成長のためには、産業活動および国民生活の基盤であるインフラの整備が不可欠である。とりわけ、アジア地域が成長センターとして持続的に発展するとともに、全ての人々がグローバリゼーションによる成長の恩恵を享受していくためには、質量両面でのインフラ整備を着実に進めていかなければならない。こうしたインフラ需要に対応すべく、日中韓三カ国は、インフラ整備を推進し、第四国市場での協力等を通じて物理的・制度的・人的連結性の強化に貢献していくべきである。

  3. (3)包摂的成長のためには、経済発展と環境との調和が不可欠である。とりわけ、アジアは世界の温室効果ガス排出量の40%以上を占めるとともに、省エネ・環境保全への高い関心と意識を有することから、日中韓三カ国は協力して環境との調和ある発展の実現に積極的な役割を果たしていくべきである。今後とも、民生・運輸部門を含めたエネルギー効率が良く環境負荷の小さな技術・製品・サービスの開発・普及促進に向け、日中韓企業間の協力を進めるとともに、その基盤として公正・透明な制度整備を求めたい。このため、日中韓の経済界は、地域の環境問題に取り組み解決を図っていくとともに、TEMM(日中韓三カ国環境大臣会合)などの三国間協力への積極的な参加や支援が期待される。

2.イノベーション創出に向けた協力

  1. (1)包摂的成長を推進する原動力はイノベーションである。日本における、超スマート社会を目指す「Society5.0」、中国における「中国製造2025」や「インターネット+」、韓国における「ヒト中心の第4次産業革命を達成するための革新的な成長」の実現に向けた取組みは、経済成長だけでなく、資源・エネルギー、環境・気候変動、災害、衛生、健康等の世界的な課題解決を図り、ひいては国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献するものである。日中韓の経済界はその実現に向け、IoT、人工知能、ビッグデータ、ロボットといった革新的技術を含めた幅広い分野での協力・連携方策を追究していく。

  2. (2)イノベーションにより、新たな市場や協力分野を創出することも重要である。とりわけ高齢化は日中韓三カ国共通の課題であり、日中韓の経済界は医療・ヘルスケア・介護関連製品・サービスの分野での協力を進展させ、国民生活の向上、更には全世界の福祉の向上に貢献する。また、観光は、人と人との交流を通じ、相互理解と信頼関係の構築を促す有望な協力分野である。日中韓の経済界は人的交流が三カ国間の協力の基盤であるとの認識に立ち、継続的に人的交流の拡大に尽力する。とりわけ、2018年の平昌冬季、2020年の東京夏季、2022年の北京冬季と続く北東アジアでのオリンピック・パラリンピック開催を重要な人的交流の機会として活用していくべきであり、政府には文化や観光等での実務的な協力策の検討を求めたい。また、日中韓の経済界は、文化やスポーツ、教育等の分野における人材交流を進める。

  3. (3)これらのイノベーションを担うのは人材である。持続的なイノベーション創出に向け、日中韓の経済界は、女性・若者・高齢者を含めたイノベーション創出を支える幅広い人材の育成と活用、国境を超えた交流、ならびにアントレプレナーシップを備えた人材の育成を進める。

日中韓の経済界は、以上の実現に向け官民が連携して取り組むよう、三カ国首脳はじめ政府関係者の引き続きの理解と協力を求める。経済界としても、第7回日中韓ビジネス・サミットを、日中韓サミットに併せて中国において開催し、その進展の評価・分析を行い、さらなる取り組みの充実・強化を図っていく決意である。

以上

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