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Policy(提言・報告書) 中南米 日本メルコスール経済連携協定へ向けたロードマップ 経団連・ブラジル全国工業連盟共同報告書(抄訳)

英文正文
2018年7月23日

【日メルコスールEPAの意義】

日本とブラジルは1895年の修好通商航海条約の締結以来、120年を超える外交関係の中で、政治・経済・文化・スポーツ・人材など多くの分野で交流を深め緊密で良好な関係を構築してきた。特に、経済面では、日伯両国は農業、資源・エネルギー、インフラ、製造・サービス業など幅広い分野で協力関係を構築し、互いに重要なパートナーとなっている。

このような中、経団連とブラジル全国工業連盟(CNI)は、1974年にブラジル・リオデジャネイロで第1回日本ブラジル経済合同委員会を開催して以来、貿易・投資をはじめとする経済交流の拡大に向けた対話を重ね、相互理解と信頼関係の絆を深めるとともに、様々な分野における協力プロジェクトを共同で推進し、日伯経済関係の強化に貢献してきた。とりわけ、2017年にブラジル・クリチバで開催された第20回合同委員会では、日伯双方の代表者は、自由で開かれた国際経済秩序の維持、強化の重要性を共有した上で、両国間の更なる貿易・投資の拡大に向けて、日本とメルコスール(南米南部共同市場)との経済連携協定(EPA)の早期交渉開始を各国政府に働きかけるべく、経団連とCNIが2015年9月に取りまとめた「日伯EPAに関する共同研究報告書」を2018年の合同会議までにアップデートしていくことで合意した。世界的に反グローバリズムや保護主義の台頭が懸念されるなか、日メルコスールEPAは自由で開かれた経済圏の形成と強化につながり、締結には極めて大きな意義がある#1

そこで、経団連とCNIでは、日メルコスール経済関係の現状とビジネス上の課題や企業の要望等を踏まえ、あり得べき日メルコスールEPAの意義や同協定に盛り込むべき内容等について検討を重ね、今般本報告書を取りまとめた。

【提言】

メルコスール間の貿易・投資交流をはじめとする経済関係は堅調に推移してきたものの、両地域の有する経済力を鑑みるところ、更なる経済・産業協力を推進する潜在性は極めて大きい。このため、物品・サービス貿易の自由化、投資障壁の撤廃に加え、電子商取引をはじめとする各種ルールの整備やビジネス環境の更なる向上を目的とした法的枠組を新たに確立することにより、日メルコスール間のより緊密で互恵的な経済関係を構築し、両地域ならびに世界の繁栄と平和に貢献していくことが期待される。

従って、日本とメルコスールは、WTOルールとの整合性確保を基礎としつつ、下記分野をはじめ包括的で高度な自由化とルール整備を実現するEPAを早期に締結すべきである。日メルコスールEPAでは、双方にとって互恵的でバランスのとれたWIN-WINの状況を目指すとともに、各国のセンシティブ分野に対しては然るべき配慮をしつつも建設的かつ積極的に対応し、他の多国間FTA/EPAに遜色のない質の高い内容を目指すべきである。

  1. 物品貿易
  2. 原産地規則
  3. 貿易円滑化および税関手続
  4. 貿易の技術的障害(TBT)および衛生植物検疫措置(SPS)
  5. 貿易救済措置
  6. 投資・サービス
  7. 知的財産権
  8. エネルギー・鉱物資源
  9. 自然人の移動
  10. 電子商取引
  11. 政府調達
  12. ビジネス環境
  13. 紛争解決

* 必ずしもこれらに限られるものではない

こうした意欲的な日メルコスールEPAを早期に実現するには政治の強いリーダーシップが必要である。EPA早期実現に向けた政治的意思が各国首脳から示されるよう期待する。また、日伯の経済界としてもこうした政府の取り組みに協力し、EPAの実現に向けた活動をしていきたい。

以上

  1. 「日メルコスールEPAに関する意識調査結果」
    http://jp.camaradojapao.org.br/upload/files/Summary%20of%20survey%20result%20for%20HP%281%29.pdf
    日メルコスールEPAの意義を示す調査の一つに、ブラジル日本商工会議所・日メルコスールEPA準備タスクフォースがブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイのメルコスール4か国日系商工会議所会員および進出日系企業348社を対象に2018年5月に実施した調査がある。「日メルコスールEPA必要性」について尋ねたところ、回答259社全体の84%(ブラジル:180社/216社・83%、アルゼンチン:30社/33社・91%、パラグアイ:6社/6社・100%、ウルグアイ:4社/4社・100%)が「必要性を感じる」と回答した。

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