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Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言 ─ 民主導のイノベーションを通じた脱炭素化への挑戦 ─

2019年3月19日
一般社団法人 日本経済団体連合会

はじめに

2015年12月、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、「京都議定書」に代わる新たな地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が採択された。パリ協定は、2020年までに、今世紀後半(2050年以降)を展望した自国の「長期低排出発展戦略」(長期戦略)を提出するよう、締約国に招請しており、日本政府としても、今年6月に開催するG20大阪サミットまでに、わが国の長期成長戦略(成長戦略としての長期戦略)を策定することを目指し、検討を進めている#1

2015年の国連におけるパリ協定やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の採択を背景に、世界では、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に積極的に取組む企業への投資であるESG投資拡大の動きもみられるなど、地球温暖化対策、とりわけ温室効果ガスの長期大幅削減(脱炭素化#2)への国際社会の要請はますます高まっている

こうした中、初のG20サミットの議長国となる日本としては、今般策定する長期成長戦略を通じて、イノベーションを軸とした地球温暖化問題への取り組みを経済成長につなげ、SDGsの達成に貢献していく、という積極的な「攻め」の姿勢を国際社会に示すとともに、こうしたビジョンや考え方を各国と共有していくことで、世界の温暖化対策をリードしていくべきである。

長期温暖化対策に関する経団連のスタンスは、これまでも、「パリ協定長期成長戦略懇談会」での議論の場や、「今後の地球温暖化対策に関する提言」(2017年10月)の中で示してきたが、同懇談会での検討が佳境に入りつつある今、改めて、わが国が取りまとめる長期成長戦略(以降「長期戦略」と表記)のあり方について提言する。

1.長期大幅削減(脱炭素化)の鍵となる民主導のイノベーションを促す

2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)における安倍総理の演説#3でも指摘されているように、世界の経済成長を実現しつつ、温室効果ガス排出量を地球規模・長期にわたって大幅に削減(脱炭素化)していく鍵は、民主導の非連続なイノベーションの創出にある。わが国は、幅広い革新的技術の開発と低コスト化による円滑な社会実装に取り組み、イノベーションによって脱炭素化に挑戦する姿勢を、長期戦略を通じて国内外に強く発信すべきである#4

政府には、イノベーションの担い手である企業の活力を最大限に引き出すため、民間の研究開発・投資原資の維持・拡大を図りつつ、官民連携のもと、規制・制度改革をはじめとする投資環境・事業環境の整備に注力すべきである#5。併せて、初期需要創出から国際競争力獲得まで企業努力を引き出すシームレスな支援策の展開や、民間だけでは取れないリスクの補完に対する強力かつ継続的な施策も求められる。さらに、ESG投資が世界で拡大する中、イノベーションに積極的に取り組む企業が評価され、そこに資金が集まるよう取り組んでいくことも重要である。

既存技術のコストダウンも含めたイノベーションを地球規模で創出していくためには、国際連携を加速していくことが欠かせない。その際、例えば、日本政府主催のICEF(Innovation for Cool Earth Forum)といった国際会議の機会を捉えて世界の英知を結集し、イノベーションにかかる課題の共有、国際連携に向けた方策等について議論を交わし、国際的に発信していくことも有効である。

なお、炭素税や排出権取引制度といった明示的カーボンプライシング#6の強化は、既に国際的に高水準にあるわが国のエネルギーコストのさらなる上昇を通じた経済活動の減退と国際競争力の低下をもたらすばかりか、企業の研究開発・投資原資の減少にもつながることから、長期温暖化対策に必要となる民主導のイノベーションを阻害するものであり、経済界は一貫して反対の立場である。

2.S+3Eを高い次元で確保したエネルギー転換を実現する

わが国の温室効果ガスの約9割はエネルギー起源CO2であることから、温暖化対策とエネルギー政策は表裏一体の関係にある。そのため、長期戦略は「第5次エネルギー基本計画」と整合を図り、日本の地理的・経済的事情を踏まえつつ、S+3Eのバランス#7を最大限追求したエネルギー政策を構築していく必要がある#8。とりわけ、経済成長を実現しつつ、温室効果ガスの長期・大幅削減(脱炭素化)を実現するためには、「エネルギー効率」の一層の改善に取り組むことはもちろんのこと(具体策については「3.グローバル・バリューチェーンを通じた地球規模の削減に挑む」で後述)、S+3Eを高い次元で確保した「エネルギー転換」に最大限取り組んでいく必要がある#9

エネルギー転換を実現する上では、再生可能エネルギーの「低コスト化」「安定供給」「持続的事業」の3要件の実現を通じた「主力電源化」を進めていくことが不可欠である#10。併せて、安全性確保を大前提とした原子力の継続的活用、調整電源として重要な役割を果たす火力の高効率化、エネルギー効率の向上やレジリエンスの強化に資する分散型エネルギー源の普及拡大、さらに、これらを結ぶ次世代電力ネットワークの整備等が必要となる。蓄電池や水素、CCUS#11等の技術的・経済的課題が解決され、社会実装が進むことも期待される。加えて、わが国における自然災害等の緊急時に石油が果たしてきた役割についても、S+3Eの観点から十分な考慮が必要である。

また、国際的に様々な議論がある石炭火力発電は、エネルギー転換・脱炭素化が実現するまでの過渡期において、内外で一定の役割を果たすと見込まれている#12。こうした中、当面、日本として、国内で高度な石炭利用技術を培うとともに、これを世界に展開することが、地球規模での温暖化対策への貢献となり得る。そのため、経済的に利用可能な最良の技術(BAT:Best Available Technologies)を採用した高効率発電設備については、国際的な市場動向等を丁寧に見極めつつ、引き続きOECDルール#13の下、新興国等への国際展開に取り組むことも重要である。

一方、わが国では、エネルギー転換を進めるために必要となる電力分野や熱供給分野への投資の循環が十分でない。現状を放置すれば、パリ協定が求める長期大幅削減(脱炭素化)が困難となるばかりか、国民生活や事業活動の基盤となるエネルギー供給にも支障が生じかねない。

長期大幅削減に必要なエネルギー転換を実現するため、政府には、「第5次エネルギー基本計画」を踏まえ、「エネルギーシステム間」でのコスト・リスク検証や、技術革新の進展・フィージビリティ等を見極めながら重点を柔軟に決定・修正していく「科学的レビュー」を速やかに実施し、主体別の責任・規範の明確化も含め、将来にわたって持続可能な電力システムおよびエネルギーシステムの絵姿を示していくことで、エネルギー供給者・需要側双方の予見可能性を高め、民間投資を促す環境を整備していくことが求められる#14

3.グローバル・バリューチェーン(GVC)を通じた地球規模の削減に挑む

世界の温室効果ガス排出量は、新興国・途上国における人口増加や経済発展を背景に、過去20年間で急増しており、今後も大幅な増加が見込まれている。地球温暖化問題は、文字通り「地球規模」の課題であり、一国に留まらないグローバルな取り組みが求められている。

今日、企業はグローバルに事業活動を展開し、バリューチェーンを構築している。わが国企業は、省エネ・低炭素型製品・サービス等のライフサイクル全体、すなわちグローバル・バリューチェーン(GVC)を通じた温室効果ガス削減に取り組むことで、新興国の成長を取り込むなど「環境と経済成長の好循環」の実現を図り、実効性ある地球規模の温暖化対策に貢献していく#15

日本政府は、世界全体のエネルギー効率の改善に向け、各国企業が有する高効率技術・製品等の市場展開を通じて世界全体での削減貢献を競い合うゲームチェンジを仕掛けていくべきである。その上で、日本がこの国際競争を勝ち抜くために、エネルギー効率の改善に資する技術・製品等にさらなる磨きをかけ、国内外での実装・普及に、官民連携して取り組んでいくことが求められる。

その際、政府として、わが国企業の省エネ・低炭素型の製品・サービス等の海外展開先における政策・制度構築に協力するなど、その普及に向けたビジネス環境の整備に取り組むことで、経済界によるGVCを通じた削減貢献を後押しすべきである。

こうしたGVCを通じた削減貢献は、国連のSDGsに通じる取り組みであり、日本の強みを活かすことにもつながることから、今般策定する長期戦略の大きな柱となるコンセプトとして、全面的に打ち出していくべきである。

4.企業・団体の主体的な取り組みをエンカレッジする

以上で述べたように、民間企業は地球規模・長期の排出削減に必要となるイノベーションやグローバル・バリューチェーンの主要な担い手である。さらに、わが国企業・団体はかねてより、主体的な地球温暖化対策にも取り組んできた。

例えば、わが国経済界は、「経団連 低炭素社会実行計画」を通じ、「国内事業活動における排出削減」、「主体間連携」(製品のライフサイクル等を通じた削減)、「国際貢献」、「革新的技術開発」を4本柱として、PDCAサイクルを回しながら、地球規模での温室効果ガス削減に積極的に取り組み、着実な成果をあげている#16

さらに、パリ協定の採択やESG投資の拡大等を捉え、多くの企業・団体が2050年を展望した「長期ビジョン」を策定しており、策定に向けた動きはさらなる広がりを見せている#17。この「長期ビジョン」では、例えば「パリ協定の長期目標を念頭に置き、水素還元技術等による最終的な『ゼロカーボン・スチール』に挑戦する」(日本鉄鋼連盟)、「炭素循環、プロセス・エネルギー革新、LCAの観点からGHG削減に繋がるソリューションを提案・実行し、幅広く地球温暖化対策に貢献する」(日本化学工業協会)、といった野心的な方向性が掲げられるなど、長期温暖化対策を通じた持続可能な社会の実現に向けた、経済界主体の大きなモメンタムが生まれつつある。経団連として引き続き、こうした民主導の動きの拡大・深化を図っていく。

政府は、こうした企業・団体の「長期ビジョン」に示された考え方を、わが国の長期戦略に最大限取り入れるとともに、事業環境・投資環境の整備等を通じて、企業・団体によるイノベーションに向けた主体的な挑戦を後押しすべきである。

5.「ビジョン」・「ゴール」に向けた複線シナリオの下、さらなる高みを目指す

(1)「ターゲット」としての中期目標、「ビジョン」・「ゴール」としての長期目標

わが国は、パリ協定の採択に先立つ2015年7月、温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で26.0%削減する中期目標(NDC)を策定し、国連に登録している。これは、S+3Eのバランスを取った2030年度のエネルギーミックスや、経済的に利用可能な最良の技術(BAT)、さらには「経団連 低炭素社会実行計画」といった対策を最大限積み上げて策定した野心的な目標であり、官民挙げて全力で達成しなければならない、いわば国際公約と言うべきものである#18

一方、2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、長期目標として、一定の条件#19の下で「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」ことが掲げられている#20。この2050年の長期目標は、目指すべき方向性としての「ビジョン」・「ゴール」との位置づけであり、達成すべき「ターゲット」である2030年度の中期目標とは明確に書き分けられている。

2050年は今から31年後である。今から31年前(1988年)の時点において、現在(2019年)の国内外における経済・社会・技術を十分見通せていなかったように、現在において2050年の絵姿を正確に見通すことは極めて困難である#21。長期の「ビジョン」・「ゴール」をあたかも「ターゲット」のように捉え、直線的に排出量上限を引き戻して(バックキャストして)、硬直的な進捗管理を行ってしまえば、温室効果ガスの大幅削減に不可欠となる非連続のイノベーションの芽を摘むことにもなりかねない。

そのため、今般策定する長期戦略においては、「民主導のイノベーションを通じた脱炭素化」といった目指すべき方向性としての「ビジョン」・「ゴール」を示し、そこへ向かう柔軟かつしなやかなアプローチを提唱することとし、中期目標の「ターゲット」とは明確に区別して扱うべきである。

(2)わが国が掲げる長期目標のあり方

パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃より低く抑える「2℃目標」を、世界全体で目指すべき長期の方向性(ゴール)として掲げているほか、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求する、いわゆる「1.5℃目標」も努力目標として掲げている#22

前述のとおり、わが国はすでに、「地球温暖化対策計画」において「2050年80%削減」という極めて野心的なゴールを掲げており、また、わが国企業・団体も自ら「長期ビジョン」を策定し、様々な革新的技術の開発・普及に向けたチャレンジを行おうとしている。

こうしたことから、わが国の長期戦略では、数値目標の多寡を競うのではなく、「パリ協定の長期目標等のゴールに向けて、『民主導のイノベーション』、『S+3Eのバランスを確保したエネルギー転換』、『GVCを通じた地球規模の削減』といった取り組みを総動員し、温室効果ガスの長期大幅削減(脱炭素化)に挑戦する」といった野心的な姿勢を示すべきである。

その際、パリ協定の長期目標等のゴールに向けた、野心的な複線シナリオとあらゆる選択肢を「科学的レビュー」を通じて検証していくプロセスが有効と考えられる#23。科学的レビューを通じて、技術的・経済的に実現可能な選択肢を見出し、そこに重点的な投資を行うことで、さらなる高みを目指していくことは、イノベーションを重視するわが国らしい説得力のある戦略と言える。

おわりに

来るべき6月のG20大阪サミットの成功に向け、温暖化問題をはじめとする国際社会が直面する諸問題について、解決に向けた方策を提示し、各国からの共感を得ることで、日本のリーダーシップを、官民連携のもとで発揮すべきである。

今般、政府が取りまとめる長期戦略は、長期温暖化対策に関するわが国としてのメッセージを世界に初めて発信し、国際社会における日本のプレゼンスを高める機会となる。政府には、以上に示した経済界の考え方を長期戦略に盛り込み、「民主導のイノベーションを通じた脱炭素化への挑戦」というビジョンを全面に打ち出すことで、各国からの共感・支持を得るとともに、世界の温暖化対策の取り組みを加速させていくことを、強く期待する。

経済界としても、引き続き、イノベーションやグローバル・バリューチェーンの主たる担い手として、地球規模・長期の温暖化対策はもとより、幅広いSDGsの達成に主体的かつ積極的に貢献していく。

以上

  1. 昨年8月には、経済界・学界など各界の有識者による「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」(パリ協定長期成長戦略懇談会)が、内閣総理大臣の下に設置され、長期戦略に関する検討が進められている。近く、懇談会としての報告書が取りまとめられ、今春には、報告書の内容を踏まえた政府としての長期戦略策定に向けた検討作業が行われる見通しである。
  2. 昨年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、「脱炭素化」を「今世紀後半の世界全体での温室効果ガスの人為的な排出量と吸収源による除去量との均衡の達成に向けて、化石燃料利用への依存度を引き下げること等により炭素排出を低減していくこと」と定義している。
  3. 全文は外務省HP参照。 https://www.mofa.go.jp/ecm/ec/page4e_000973.html
  4. 将来の技術動向は、予見し難い形で大きく変化し得ることから、特定のエネルギー・環境分野の技術に決め打ちするのではなく、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といった基盤技術をはじめとする広範な分野におけるイノベーションを促すことで、大幅な排出削減(緩和)はもとより、気候変動の影響軽減(適応)や、温暖化対策に留まらないSociety 5.0を通じたSDGsの実現につなげていく視点が重要となる。
  5. 研究開発に加え、過去数十年にわたって莫大な資金とエネルギーが投じられた社会資本ストックを最先端のものに入れ替えていくためには、莫大な投資資金が必要になる。こうした投資の前提となるのは、持続的な成長と活発な経済活動である。
  6. OECDの定義によれば、カーボンプライシングのうち、炭素排出に直接価格をつける炭素税や排出量取引のような手法を「明示的カーボンプライシング」という。一方、石油石炭税等のエネルギー諸税やFIT賦課金、省エネ法等のエネルギー効率規制のように、炭素排出に直接価格をつけないが排出削減に効果がある手法を「暗示的カーボンプライシング」と呼ぶ。このような明示的・暗示的カーボンプライシングに関する経団連の基本スタンスは、「カーボンプライシングに関する基本的考え方」(2017年10月)を参照。http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/077_honbun.pdf#page=15
  7. 安全性(Safety)の確保を大前提に、エネルギー安全保障(Energy Security)、経済性(Economy)、環境適合性(Environment)のバランスを取るという考え方。
  8. 上述のとおり、明示的カーボンプライシングの強化といったエネルギーコストの増加につながる施策は、経済性の悪化を通じてS+3Eのバランスを崩し、日本の国際競争力の低下につながることに留意する必要。
  9. 「茅恒等式」(次式参照)によれば、CO2排出量は、「エネルギー効率」と「エネルギーの炭素集約度」と「経済活動量(GDP)」の3要素によって決定される。「経済活動量」を可能な限り増加させながら、CO2排出量を将来にわたり大幅に削減していくためには、「エネルギー効率」の向上と「エネルギーの炭素集約度」の改善(エネルギー転換)を進める必要。
    「茅恒等式」
  10. 具体的な施策は、経団連提言「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組みの加速を求める」(2018年10月)参照。http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/081.html
  11. CO2の回収・利用・貯蔵の技術(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)。例えば、排出されるCO2を活用した化学製品活用やメタネーション等。
  12. IEAのWorld Energy Outlook 2018の新政策シナリオでは、2040年の世界の電源別発電量のうち、石炭が26%と最も高い発電比率を占める見通し。
  13. 石炭火力に関するOECDルール(公的輸出信用アレンジメント)の概要:
    1. (1) 2015年、OECDは高効率案件に限り、公的輸出信用供与を認めることで合意。
    2. (2) 「第5次エネルギー基本計画」ではOECDルールに則って対応する旨明記。
    3. (3) 今後、OECDでは、石炭火力への公的輸出信用をフェーズダウンしていくべく、2019年6月末までに現行ルールのレビューを行った上、2021年1月から適用される新ルールについて検討を行う予定。
  14. 特に、停滞するわが国の電力投資をめぐる問題については、持続的な経済成長を下支えする電力投資が今後、十分に行われるよう、現下の課題認識および解決に向けた施策・制度設計のあり方等について、4月に経団連として提言を取りまとめ、政府・関係方面との積極的な議論を行っていく予定。
  15. 経団連は、GVCを通じた削減貢献に関するコンセプトブックを2018年10月に刊行し、その考え方や具体的な事例を、COPなどの場を通じて国内外にPRしている。
    http://www.keidanren.or.jp/policy/vape/gvc2018.pdf
  16. 「経団連 低炭素社会実行計画」は、わが国が国連に登録している中期目標(NDC)や、2016年5月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」において、2030年度の中期目標達成に向けた主要施策と位置づけられていることから、経済界として引き続き、わが国の中期目標の実現に向け、主体的・積極的に貢献していく。
  17. 経団連は、2018年10月、会員企業・団体に、2050年を展望した「長期ビジョン」の策定に向けた検討と情報提供を呼びかけた。2019年3月1日時点で、250を超える企業・団体から、「長期ビジョン」を策定したこと(69社・団体)、あるいは策定に向けた検討を行っていくこと(189社・団体)を表明。「長期ビジョン」に関するわが国企業・団体の取組みについては、経団連ホームページを通じて、積極的な情報発信を図っている。
    http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/001.html
  18. 「地球温暖化対策計画」(2016年5月閣議決定)でも、2030年度中期目標は「達成に向けて着実に取り組む」ものとされ、政府・企業・国民といった主体がそれぞれ取り組むべき施策が具体的に明記されるなど、達成すべき「ターゲット」と位置づけられている。
  19. ①全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組みの下、②主要排出国がその能力に応じた排出削減に取り組むよう国際社会を主導し、③地球温暖化対策と経済成長を両立させる、という「3条件」。
  20. 地球環境産業技術研究機構(RITE)のシミュレーション分析によれば、2050年に日本の温室効果ガス排出を80%削減しようとすると、実行可能解があっても、限界削減費用(=目標を達成する最後の1トン分のCO2を削減する際にかかる費用)は$6,000/t-CO2程度、BAU比の排出削減費用は年間43~72兆円が必要と試算されている。
  21. 例えば、1988年の人々が、今日のスマートフォンやインターネットの世界的普及をどの程度見通せていたか、という問いが考えられる。
  22. 昨年10月には、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による「1.5℃特別報告書」が公表されている。同報告書は、気温上昇を1.5℃以下に抑制すれば、海面上昇といった様々な気候変動の影響が緩和されることを指摘する一方、1.5℃目標の実現に向けて、世界全体の正味CO2排出を2030年までに45%削減(2010年比)、2050年までにゼロにする排出経路を描き、2℃目標の場合と比べてトータルコストが3~4倍に上昇することを指摘するなど、現実的に極めて困難な道筋であることが示唆されている。
    こうしたことから、昨年12月に開催されたCOP24では、「1.5℃特別報告書」が完成したことについては「歓迎する」(welcome)とされたものの、報告書自体については「歓迎する」との文言は採択されておらず、単なる努力目標を超えた「1.5℃目標」を前提とした各国の野心の引き上げは、国際社会のコンセンサスを得られていない。
  23. 「第5次エネルギー基本計画」においても、2030年度のエネルギーミックスの確実な実現に全力を挙げることが掲げられた一方、2050年については、非連続の技術革新を含め、エネルギー転換・脱炭素化の過程に数多くの不確実性が横たわることから、野心的な複線シナリオとあらゆる選択肢の可能性を追求していくとの方針が示されている。

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