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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 経済の電子化に伴う課税上の課題に対する第2の柱
“GloBE” (Global Anti-Base Erosion Proposal) に関する公開諮問文書に対する意見

2019年12月2日

OECD租税政策税務行政センター
国際協力・税務行政課 御中

一般社団法人 日本経済団体連合会
税制委員会企画部会

経済の電子化に伴う課税上の課題に対する第2の柱
“GloBE” (Global Anti-Base Erosion Proposal) に関する公開諮問文書に対する意見

1.はじめに

公開諮問文書に対しコメントする機会に感謝する。

第2の柱はBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの残された課題に対処するとともに、租税政策に関する「底辺への競争」を防止することが目的とされる。政策の遂行には財源が必要であり、一定の税収確保に向けた各国の問題意識自体は理解できる。

しかし、租税回避の防止という意味では、移転価格税制、CFC税制(外国子会社合算税制)、利子控除制限、ハイブリッド・ミスマッチの無効化、条約の濫用防止等、既存のBEPS勧告の実施により十分に対処できる領域が多くあり、重複感が強い。

また、近年、BEPS勧告への対応により企業の事務負担が急増している中、新たなる負荷が懸念される。軽課税の状態のみに着目した、経済実態を考慮しない制度が導入されるならば、クロスボーダーの貿易・投資にマイナスの影響が生じる。加えて、底辺の競争が問題だとしても、今回の提案のように企業にミニマム税率を負わせるという形での国際的なルールの協調が正しい解決策かどうかには大いに疑問がある。第1の柱に基づく長期的解決策の合意が先決であり、第2の柱を急いで採用する必要性を感じない。第2の柱と第1の柱の相互関係性と適用順序についても検討されるべきである。一方の柱のもとで必要とされた調整により、他方の柱の計算結果が影響を受けるようなケースもあり得る。第2の柱のそれぞれの措置の適用にあたっても考え方の整理が必要であり、所得合算ルールが適用された場合は、軽課税支払いルールを認めないようなルールにすることで、事務負担と複雑性を軽減しうると考える。

各国の抱えるBEPSリスクは様々であり、過去の様々な議論の経緯を踏まえた国際租税制度がすでに存在する。仮に第2の柱の導入が避けられない場合でも、こうした制度との接続を考慮すべきである。また、第2の柱の枠組みについて幅広い参加国の合意を得ることが望ましいが、合意内容については、事務負担の軽減の方策や二重課税の排除などの各国間の調整が必要となる部分を中心とすべきである。導入時期についても猶予期間を設定し、各国の裁量に委ねるべきである。

制度の導入に際しては、事務負担の軽減の観点から、とりわけCFC税制との重複の排除・事務負担軽減に十分に配慮すべきである。追加の制度を導入するのではなく、既存のCFC税制がBEPS行動3で提案されたCFC税制と整合的であれば、CFC税制との選択制にすることも一案ではないか。また、二重課税および追加の事務負担を避けるために、最終親会社のみがその所在地国においてのみ課税される制度とすべきである。

これらの観点を踏まえ、以下、各質問項目についてコメントする。

2.質問項目への回答

(1) 課税ベースの決定

1a) 財務会計をスタート地点として使用することで、適切な課税ベースを提供するとともに、ルールを簡素化しコンプライアンスコストを低減させるということに同意するか。

財務会計をスタート地点とすることが簡素化に繋がるか否かは、どのレベルでのブレンディングを行うかにより評価が大きく異なる。

全世界ブレンディングの場合、連結財務諸表に表示された勘定科目を用いて課税ベースへの調整を行い、かつ、重要性の観点から連結財務諸表に含まれていない子会社を計算に含めないのであれば、事務負担の軽減に資すると考えられ、財務会計をスタート地点とすることに合理性はある。但し、最終親会社所在国とそれ以外で数値を分割する場合は、追加の事務負担が生じる。

財務会計を使用する場合、ブレンディングの方法に応じて何らかの数値の分割を行う必要があるが(最終親会社所在国とそれ以外の区分、国・地域単位での区分、事業体単位での区分)、連結財務諸表では連結内取引(例えば連結グループ内の商品売買に伴う未実現利益など)は消去されているため、数値の分割を行う際には、こうした連結修正を元に戻し、所定の区分に正しく割り振る必要が生じる。つまり、所定の区分への数値分割に辿り着くまで、連結財務諸表の作成作業を遡る作業が必要となることから、財務会計をスタート地点としてもそれほど簡素化に繋がらない懸念がある。また、子会社がサブ連結グループを組成して親会社宛の連結決算報告を実施している場合には、親会社ではサブ連結グループを構成する各社の会計情報まで遡ることが出来ないため、別途子会社に数値分割作業を依頼する必要があり、子会社における事務負担増加と正確性の担保が難しい課題となる。

少なくとも国・地域単位もしくは事業体単位のブレンディングの場合は、結局、全社につき個社単位の数値まで遡る必要が生じるため、財務会計をスタート地点とするメリットがない。個社単位の数値を使用するのであれば、財務会計をスタート地点とする手法の一律適用に拘ることなく、例えば日本のようにCFC税制において実効税率の計算方法が確立している場合には、CFC税制において計算した数値をそのまま使用することを選択肢として認めることが、事務負担軽減の観点で望ましい。さもなければ、CFC税制と第2の柱とで、実効税率の計算が二重作業となり、多大な追加事務負担が生じる。

なお、連結財務諸表をスタート地点とし、課税ベースを提供する場合、標準となる会計基準への調整の確認は監査人が行うことになる可能性があるが、調整による確認が複雑となり、コスト増とならないよう、ルールは限りなく簡素なものとすべきである。

1b) 企業グループの最終親会社に対して適用される会計基準を使用することの帰結は何か。その他のアプローチの提案はあるか?

日本を最終親会社所在地国とする多国籍企業においては、連結財務諸表の各構成会社はそれぞれが所在する国・地域のローカルの会計基準を使用して自社の財務諸表を作成しているケースが多い。

連結財務諸表の各構成会社について、それぞれが使用する会計基準から最終親会社が採用する会計基準への修正データは存在するが、連結内取引消去等のその他の連結修正データと区分管理していない企業も多いため、個社ごとに修正対象データだけを取り出して、最終親会社が採用する会計基準に基づく会計数値を算定することは相当の事務負担及び誤謬リスクを伴う。従って、国・地域単位もしくは事業体単位でのブレンディングとする場合に、最終親会社が採用する会計基準の使用を求めることは現実的でない。このため、最終親会社が連結財務諸表に採用する会計基準を使用することの帰結は全世界ブレンディングとなると考える。

なお、重要性の観点から連結財務諸表に含めていない子会社は、そもそも第2の柱から適用除外すべきであるが、仮にそうしない場合、これらの子会社については所在する国・地域の会計基準に基づく会計数値しか存在せず、それを調整し、監査人が確認する場合、納税のためだけに事務負担が増加し、追加のコストが発生しうることから、同数値を許容すべきである。

1d) 課税ベース決定のためのスタート地点として、複数の会計基準の使用を許容することは、各国間の会計基準の相違により、特定の企業グループに優位性を与える懸念があるか。

のれんの償却等、会計基準により取扱いが異なるものの、事業のライフスパン全体で見れば、会計上の利益は必ずキャッシュフローに一致するため、極言すればすべての会計基準の差異は時間的差異であると言える。従って、長期的に考えれば、複数の会計基準の使用を許容することで特定の企業グループに優位性を与える懸念はないと考える。

もっとも、会計基準間の比較可能性の観点からは、IFRS(国際会計基準)、USGAAP(米国基準)、JGAAP(日本基準)等、使用できる会計基準を一定程度制限する必要があると考えられる。また、第1の柱のAmount Aで使用される会計基準との整合性も考慮すべきである。なお、使用できる会計基準を制限する場合、その妥当性をどうやって担保するのかを検討する必要がある。IFRSだけを見ても、原則主義のもと、各国における実務処理に差異があるため、課税に活用するにあたって許容できない差異があるかどうかを検討する必要があるかもしれない。

2a) 2つ目の柱の政策目的を毀損せずに課税ベースから除くことが可能と考える各国共通の財務会計上の所得と課税所得の間に存在する実質的な永久差異は何か。

事務負担軽減の観点からは、極力調整項目を少なくすることが重要である。多くの国に共通の重要な永久差異は受取配当の益金不算入額である。二重課税排除の観点からもその額は課税ベースから除くべきである。なお、キャピタルゲイン・ロスについては国ごとに課税・免税の相違が大きいため、取扱いにつき慎重な検討を要する。

2b) 永久差異への対応として取りうる方法について意見はあるか。
2c) 永久差異の調整の実務上の対応可能性について意見はあるか。

対象の特定と実務上の割り切りによる簡素化が必要であり、連結財務諸表から取得可能な情報の範囲での調整とすべきである。税引前当期純利益から永久差異を除外する方法が適当である。

受取配当については、各国の税法が異なる中で、税法通りの調整を行うと事務負担が増加する。会計上、収益計上した受取配当金は、全額控除するなどの簡素な計算方法とすべきである。

3a,b,c) 一時差異の対応のためのメカニズムとして損失及び超過税額の繰越、税効果会計、及び複数年平均の実効税率を使用することに対し意見はあるか。

現時点で、特定の方式を支持するものではないが、想定される事務負担を鑑みれば、税効果会計方式が比較的望ましい。以下の問題意識を有している。

【損失及び超過税額の繰越】
損失及び超過税額の繰越は、会社のライフスパンを通してみれば一時差異は最終的に解消されることを前提とすれば、使用する数値が通常の連結決算で使用される範囲にとどまる限り、考え方としては理解できる。もっとも、この方式を機能させるためには、比較的長期間の繰越とする必要があるが、事務負担の著しい増加が懸念される。
なお、特に固定資産の加速度償却に係る影響について留意する必要がありうる。加速度償却がなされた場合、実効税率が最低税率を下回り課税を受ける可能性が高くなり、損失及び超過税額の繰越による方式の下では課税のタイミングが早まり、実質的に加速度償却のメリットが失われるおそれがある。リース業など加速度償却に立脚したビジネスが確立している分野においてビジネスが成り立たなくなり、グローバルに資産の流動性の低下や金融の停滞が引き起こされる懸念がある。
【税効果会計方式】
財務会計をスタート地点とすることとの整合性の観点からは、既に存在するデータを利用できることもあり、比較的簡素かつ現実的なアプローチである考える。
ただし、繰延税金資産の評価性引当金の扱いにつき検討が必要である。会計上、繰延税金資産にはその回収可能性に応じて評価性引当金が計上される。この引当金は一時差異の発生とは独立した事象である回収可能性の見積りに応じて変動するため、ボラティリティを生む要因となる。したがって、評価性引当金を実効税率の計算から除外すべきかもしれない。一方、繰延税金資産に最終的に回収できない部分が生じた場合には、その部分に対する評価性引当金を実効税率の計算に反映させることが適当と思われ、より詳細な検討が必要と考えられる。
なお、全世界ブレンディングでなければ、税効果会計の実効税率の算定は困難であり、一時差異を所定の複数年で調整するような割り切りの考え方が必要となるのではないか。
【複数年平均方式】
比較的短期で解消する一時差異が大半である場合には機能するが、実際には、投資有価証券の有税減損など長期に亘る一時差異が多いため、複数年平均による税率平準化の効果は限定的であり、一時差異対応のメカニズムとしては不十分と見られる。平均期間を長くとれば、事務負担が増加する。

なお、持分法損益は親会社における一時差異となるが、配当や売却がなされるまで長期に亘り解消しない場合が多い。従って、いずれの方式においても、持分法損益(及び「税効果会計」方式採用時の持分法損益に係る税効果)は、課税ベースから一律除外すべきと考える。

また、会計年度のタイミングのズレにも配慮が必要である。第2の柱の計算は年次ベースとすることも確認したい。

(2) ブレンディング

4a) 3つのブレンディングに関する一般的なコンプライアンスコストや経済効果について、どのように評価するか。

企業グループが現状集計していないレベルでの計算は納税者にとって非常に事務負担が大きく、税務上の紛争を招くおそれがある。特定の方式を支持するものではないが、少なくとも、現時点では、事務負担が比較的少ないという観点から、基本的に全世界ブレンディングが実行可能なオプションと考えられる。各方式については以下の問題意識を有している。特に、事務負担の観点からは、国・地域別ブレンディングは問題が大きいと考える。なお、税率がどの程度の水準になるかにより影響が異なるため、早期に税率について具体的な水準が示されることを期待する。

【全世界ブレンディング】
財務会計をスタート地点とする場合は、全世界ブレンディングが最もコンプライアンスコストが低い。パートナーシップの取り扱いに係る問題も解消されると見られる。また、多国籍企業のグループレベルでの過度の租税回避を防止するという目的との適合性の観点でも、全世界ブレンディングが適切と考えられる。もっとも、米国のGILTI(グローバル無形資産低課税所得)のように全ての国外子会社に係る所得及び法人税額を漏れなく集計する手続きを要する制度設計がなされる場合には、コンプライアンスコストは最も過重になると思われるため、連結財務諸表の情報に基づき最低税率未満か以上かを判定する制度とすることが必須と考える。
なお、本店所在地国以外における租税回避が懸念されていることは理解するが、著しい事務負担の増加を回避すべく、最終親会社所在地国とそれ以外の区分は行われるべきではない。少なくとも、グループ全体の実効税率が最低税率を一定以上上回っている場合には、最終親会社所在地国とそれ以外の区分を行う必要はないのではないか。あくまで連結財務諸表を基礎に最低税率と比較を行うことが最も実行可能なやり方であり、その上で、最低税率については、GILTIの水準なども参照しつつ、低い水準で設定されるべきである。
【国・地域別ブレンディング】
財務会計をスタート地点にするにしても、税務をスタート地点にするにしても、全ての個社数値を把握した上で、本支店間の配分を含め、国・地域単位で所得・税額を集計・配分しなければならず、また、税効果会計の数値も集計していないため、システム改修投資が必要となり、コンプライアンスコストが最も大きくなるため、推奨されない(上記「1a) 」も再度参照されたい。)。
【事業体ブレンディング】
CFC税制においてエンティティアプローチを採用している国では、CFC税制で計算した実効税率をそのまま申告の際に使用することが選択肢として認められれば、コンプライアンスコストの増加を回避でき、望ましい。また、第2の柱とCFC税制の趣旨は、互いに実効税率が低い場合に親会社側で追加納税する、という制度であり、特に第2の柱で事業体ブレンディングが採用された場合、両制度の性質は非常に類似するため、「1.はじめに」でも述べた通り、少なくとも第2の柱の対象会社に対しては事務負担も考慮してCFC税制適用を免除する、もしくは租税回避の防止の観点から十分なCFC税制が導入済みの場合、第2の柱の導入は見送りCFC税制で代替するという方策も検討すべきである。
5a) 第2部で議論された一時差異への対応のメカニズムが不在の場合に、全世界ブレンディングが、ボラティティの管理に効果的であると考えるか。

理論的には全世界ブレンディングによりボラティリティは低減されるが、効果的とまでは言えないのではないか。一次差異への対応メカニズムを導入しなければ、一部の事業体でのれんの減損や退職給付引当金など巨額な一時差異が発生したケースなどにおいて、ボラティリティを吸収しきれず、不合理な結果となりかねない。

7a, 8a) 事業体の本支店間の所得及び課税上透明体の所得をどのように分配することを提案するか。また、その所得分配は、税目的で行われている原則に従うべきと考えるか。

基本的には税目的で行われている原則に従うこととなる。ただし、海外支店の課税ルールは各国で異なり、また、パススルー事業体の課税上の取扱いも各租税条約で定められている場合があり、これらを逐一親会社で正確に把握する追加の事務負担が大きくなる。その意味でも、国・地域ブレンディングは難易度が高いと言わざるをえない。

9a) 国・地域又は事業体ブレンディングにおいて、他の国・地域又は他の事業体で発生した帰属税額をどのように取り扱うことを提案するか。

実際には当該所得に対する十分な税金を支払っているにも拘らず、本ルールの対象となって課税を受ける不合理は排除する必要がある。したがって、対応する所得を認識した国・地域又は事業体に、当該帰属税額を付け替えることが望ましいが、実務的にはハードルが高く、検討を要する。源泉税の取扱いや移転価格税制で二重課税が生じているときの税の帰属の決定も検討すべきである。

9b) 子会社や支店所得に対して、中間国・地域又は中間事業体で支払われた税の控除の実務上の対応可能性について意見はあるか。

子会社や支店所得について、最終親会社で支払われた税を把握することはできるが、中間国・地域又は中間事業体で支払われた税や、最終親会社所在国所在の子会社で支払われた税の内訳までは現状把握していない。特に、中間国・地域や中間事業体については、支払税金の情報を収集するのみならず、制度や法令を理解しておく必要もあり、対応のための事務負担が非常に大きくなることを懸念する。

例えば、以下のような場合に、国・地域ブレンディングではどのように計算することになるのかルールを定めておく必要がある。また、情報を収集し、理解する事務負担は非常に大きくなることを懸念する。

例:ある日系企業がX国に持株会社を有しており、その子会社である欧州A国にある海外子会社(法人)が、A国と東南アジアB国に支店を有している場合において、X国のCFC税制により当該海外子会社が課税されたとする。X国のCFC税制で課税された税額は、どの国にアロケーションすべきか。

(3) 適用除外・閾値

11a) 簡素性、コンプライアンスコスト、安定性、インセンティブ及び企業行動への影響等の要素を踏まえ、適用除外の制度設計について意見はあるか。11b) 特定のタイプの適用除外について、技術上及びコンプライアンス上の懸念事項はあるか、又は、適用除外なしを提案するか。

BEPS最終報告書で確認された「経済活動の行われた場における課税」という基本原則を踏まえれば、事業実体の伴う所得について親会社で課税を行うのは行き過ぎであり、適用除外は必須である。

理論的には研究開発税制や設備投資による税額控除、及び一定の投資優遇を目的とした軽減税率または所得控除の適用による税の軽減については、事業実体が伴う限り、適用除外とすることが望ましい。また、行動5に基づき有害税制ではないと判定されたものは、除外することが原則である。

もっとも、上記のような事実及び状況に即した適用除外は事務負担の増加につながる。連結財務諸表をスタート地点とする全世界ブレンディングの場合は、実体を有する子会社の会計数値を切り出す作業が非常に煩雑となる。事務負担の観点から全世界ブレンディングの場合には個別具体的な適用除外項目を特定し、影響を排除するような制度とするべきではない。仮に適用除外を設定するとしても、有形固定資産に対する一定の割合を控除する手法の方が馴染むかもしれない。

なお、対象会社が欠損の場合の取り扱いを検討すべきである。

11c) 納税者の規模に応じた閾値の設定を好ましいと考えるか。そうであれば、その理由と使われるべきと考える基準を提示していただきたい。

コンプライアンスコスト低減の観点から、納税者の規模に応じた閾値の設定は必須である。少なくとも導入当初は、連結ベースの収入金額又は利益が大きいグループに対象を限定すべきである。国別報告書の収入金額が750百万ユーロという基準は1つの参考値とはなるが、さらに対象を限定するという考え方もあるのではないか。実務上の簡素化の観点からは、第2の柱の閾値は第1の柱に設定される閾値と一致させることも検討すべきである。

多くの多国籍企業グループにおいては一部の構成会社が大半の所得を稼得していると思われるため、事業体ブレンディングを採用するのであれば、容易に判定可能な個社ごとのデミニマス基準を設定することは事務簡素化に役立つ。

なお、連結財務諸表を構成しない子会社は、金額的重要性の観点から除外されることに鑑み、GloBEの計算上も除外すべきである。

以上

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