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Policy(提言・報告書) CSR、消費者、防災、教育、DE&I オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン

制定:2020年5月14日
改訂:2020年12月1日
再訂:2021年4月13日
三訂:2021年10月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

四訂版(2022年6月17日)はこちら

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1.はじめに

企業は、従業員、顧客、取引先、地域住民はじめ関係者の生命と健康を守り、新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けた、様々な取り組みを展開し、感染症の抑制に成果を上げてきた。一方、今後、感染症の収束までの期間が長期にわたることを考えると、一層感染防止のための取り組みを進め、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止していく役割に加え、事業を通じた国民生活への貢献拡大という役割が求められる。

本ガイドラインは、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針#1(3月28日。5月4日変更。以下「対処方針」という)」や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の分析・提言#2などを踏まえ、事業者のオフィス(ここでいうオフィスとは労働安全衛生法上の事業場の概念であり、従業員が事務作業を行う事業場をいう)において、個々の業界や事業場の実態に応じた新型コロナウイルス感染予防対策を行う際の基本的事項について、参考として整理したものである。

事業者は、対処方針の趣旨・内容を十分に理解した上で、本ガイドラインに示された「感染防止のための基本的な考え方」と「講じるべき具体的な対策」や、所属する業界団体などで示される指針等を踏まえ、必要に応じ、衛生委員会等を開催し、個々のオフィスの様態などを考慮した創意工夫を図りながら、新型コロナウイルスの感染予防に取り組むよう努めていただきたい。

また、自らの事業場の感染予防対策に留まらず、情報の提供・共有などを通じ、取引先企業、医療関係者を含む他の事業者の感染拡大防止対策の支援に積極的に貢献していくことをお願いしたい。

本ガイドラインは、緊急事態宣言下はもとより、緊急事態宣言が解除された段階においても、新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡に関するリスクが低減し、企業の関係者の健康と安全・安心を十分に確保できる段階に至るまでの間の事業活動に用いられるべきものである。本ガイドラインの内容は、関係省庁や専門家の知見を得て作成したものである。今後も、感染症の動向や専門家の知見、対処方針の改定等を踏まえ、適宜、必要な見直しを行うものとする。

2.感染防止のための基本的な考え方

事業者は、職場における感染防止対策の取り組みが、社会全体の感染症拡大防止に繋がることを認識した上で、対策に係る体制を整備し、個々の職場の特性に応じた感染リスクの評価を行い、それに応じた対策を講ずる。

特に、従業員への感染拡大を防止するよう、通勤形態などへの配慮、個々人の感染予防策の徹底、職場環境の対策の充実などに努めるものとする。

3.講じるべき具体的な対策

(1)感染予防対策の体制

  • 経営トップが率先し、新型コロナウイルス感染防止のための対策の策定・変更について検討する体制を整える。
  • 感染症法、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の関連法令上の義務を遵守するとともに、労働安全衛生関係法令を踏まえ、衛生委員会や産業医等の産業保健スタッフの活用を図る。
  • 国・地方自治体・業界団体などを通じ、新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報を常時収集する。
  • 従業員に対し、ワクチン接種を強制することはせず、その意義と位置づけを周知啓発する#3
  • 従業員がワクチン接種を受けやすいよう、ワクチン接種の当日やその後に副反応の見込まれる日については、あらかじめシフト調整、勤務免除、休暇付与などにより、職場における環境を整備する。その際、不特定多数の人と接触する機会が多い職場や従業員については、ワクチン接種の重要性に鑑みて、希望者がワクチン接種を速やかに受けることができるよう、一層の配慮をすることが有益である。

(2)健康確保

  • 従業員に対し、健康観察アプリの活用などを通じ、毎日の健康状態の把握を奨励する。出勤時に、体調の思わしくない者には各種休暇制度の取得、医療機関での検査#4や受診を奨励する。また、勤務中に体調が悪くなった従業員には、厚生労働省承認の抗原簡易キット#5を利用できるようにするなど、検査を受けやすい環境を整備する。検査で陽性だった者及びその接触者については行政検査を受けるように指示する。
  • 発熱などの症状により自宅で療養することとなった従業員は毎日、健康状態を確認した上で、症状がなくなり、出社判断を行う際には、学会の指針#6などを参考にする。症状に改善が見られない場合は、医師や保健所への相談を指示する。
  • 上記については、事業場内の派遣労働者や請負労働者についても派遣事業者・請負事業者を通じて同様の扱いとする。

(3)通勤

  • テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務)、時差通勤、ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務)、変形労働時間制、週休3日制など、様々な勤務形態の検討を通じ、公共交通機関の混雑緩和を図る。
  • 自家用車など公共交通機関を使わずに通勤できる従業員には、道路事情や駐車場の整備状況を踏まえ、通勤災害の防止に留意しつつこれを承認することが考えられる。

(4)勤務

  • 従業員に対し、始業時、休憩後を含め、定期的な手洗いを徹底する。このために必要となる水道設備や石けんなどを配置する。また、水道が使用できない環境下では、手指消毒液を配置する。
  • 従業員に対し、常時、適切なマスク#7着用に努めるよう徹底する。ただし、人との距離を十分確保できる場合には、状況に応じてマスクを外すこともできる。
  • 飛沫感染防止のため、人と人との間に一定の距離を保てるよう、アクリル板・透明ビニールカーテンなどの仕切りのない対面の人員・座席配置は避け、可能な限り対角に配置する、横並びにするなど、工夫する。仕切りがなく対面する場合には、顔の正面からできる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、工夫する。マスク着用時も大声や長時間の会話を控えるよう呼びかける。
  • 建物全体や個別の作業スペースの換気に努める。窓が開く場合1時間に2回以上、窓を開け換気する(寒冷期はこまめに。昼食場所の換気は特に留意。)。なお、機械換気の場合は窓開放との併用は不要である。換気の効果を確認するうえでCO2モニター等を活用する方法もある。
  • オフィス内の湿度については、事務所衛生基準規則等に基づき、空調設備や加湿器を適切に使用することにより、相対湿度40%~70%になるよう努める。寒冷期は適度な保湿が感染拡大防止に有効であると考えられていることに配慮する。
  • 他人と共用する物品や手が頻回に触れる箇所を工夫して最低限にする。
  • 外勤は公共交通機関のラッシュの時間帯を避けるなど、人混みに近づかないようにする。出張については、地域の感染状況や出張先の感染防止対策に注意する。外勤時や出張時には面会相手や時間、経路、訪問場所などを記録に残す。
  • 業務による車両での移動の際にも、適切なマスクの着用、大声や長時間の会話を控えること、換気等を徹底する。
  • 会議やイベントはオンラインで行うことも検討する。会議を対面で行う場合、マスクを着用し、換気に留意する。また、椅子を減らしたり、机に印をつけたりするなど、近距離や対面に座らないようにしたり、会議の時間を短くしたりするなどの工夫をする。
  • 株主総会については、事前の議決権行使を促すことなどにより、来場者のない形での開催も検討する。
  • 採用説明会や面接などについては、オンラインでの実施も検討する。
  • 対面の社外の会議やイベントなどについては、感染防止対策などを確認したうえで、最小人数とし、マスクを着用する。
  • テレワークを行うにあたっては、厚生労働省のガイドライン#8などを参照し、労働時間の適正な把握や適正な作業環境の整備などに配慮する。

(5)休憩・休息・喫煙スペース、食堂

  • 共有する物品(テーブル、椅子など)は、定期的に消毒する。
  • 使用する際は、入退室の前後の手洗いを徹底する。食事、着替え、喫煙などでマスクを着用していない時は、会話を控え、会話をする場合は、必ずマスクを着用することを徹底する。
  • 喫煙を含め、休憩・休息をとる場合には、できる限り2メートルを目安に顔の正面から距離を確保するよう努め、一定数以上が同時に休憩・喫煙スペースに入らないよう、スペースの追設や休憩時間をずらすなどの工夫を行う。
  • 特に屋内休憩スペースについては、常時換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。
  • 食堂などで飲食する場合は、時間をずらす、椅子を間引くなどにより、顔の正面からできる限り2メートルを目安に距離を確保するよう努める。施設の制約などにより、これが困難な場合も、仕切りの設置や対面で座らないような配慮をする。

(6)トイレ

  • 便器は通常の手順による清掃で問題ない。
  • 共通のタオルは禁止し、ペーパータオルを設置するか、従業員に個人用タオルを持参してもらう。ハンドドライヤー設備は、メンテナンスや清掃等の契約等を確認し、適切な清掃方法により定期的に清掃されていることを確認する。

(7)設備・器具

  • ドアノブ、電気のスイッチ、手すり、エレベーターのボタン、ゴミ箱、電話、共有のテーブル・椅子などの共有設備については、頻繁に洗浄・消毒を行う。
  • ゴミはこまめに回収し、鼻水や唾液などがついたゴミがある場合はビニール袋に密閉する。ゴミの回収など清掃作業を行う従業員は、マスクや手袋を着用し、作業後に手洗いを徹底する。
    ※ 設備・器具の消毒は、次亜塩素酸ナトリウム溶液やエタノールなど、当該設備・器具に最適な消毒液を用いる#9

(8)従業員に対する感染防止策の啓発等

  • 従業員に対し、感染防止対策の重要性を理解させ、日常生活を含む行動変容を促す。このため、政府・専門家の発表している「『新しい生活様式』の実践例」#10「職場におけるコロナ感染症対策のお知らせ」#11(特にトイレや休憩・休息スペース等、“場の切り替わり”での対策等)を周知するなどの取り組みを行う。
  • 公共交通機関や図書館など公共施設を利用する従業員には、マスクの着用など咳エチケットを徹底し、車内など密閉空間での会話を控えることなどを徹底する。
  • 発熱、咳、咽頭痛や味覚・嗅覚障害といった新型コロナウイルス感染症にみられる症状以外の症状も含め、体調に思わしくない点がある場合、濃厚接触の可能性がある場合、あるいは、同居家族で感染した場合、各種休暇制度や在宅勤務の利用を奨励する。
  • 患者、感染者、医療関係者、海外からの帰国者、その家族、児童等の人権に配慮する。
  • 新型コロナウイルス感染症から回復した従業員やその関係者、ワクチン接種を受けていない従業員が、事業場内で差別されることなどがないよう、従業員に周知啓発する。回復した従業員の円滑な職場復帰のための十分な配慮を行う。
  • 政府から入国制限されている、または入国後の観察期間を必要とされている国・地域などへの渡航並びに当該在住者との濃厚接触がある場合、必要な期間、自宅待機を指示する。
  • 取引先企業にも同様の取り組みを促すことが望ましい。

(9)感染者が確認された場合の対応

① 従業員の感染が確認された場合

  • 保健所や医療機関の指示に従う。
  • 感染者の人権に配慮し、個人名が特定されることがないよう留意する。なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした個人データについては、個人情報保護に配慮し、適正に取り扱う#12
  • オフィス内で感染者が確認された場合の公表の有無・方法については、個人情報保護に配慮しつつ、公衆衛生上の要請も踏まえ、実態に応じた検討を行うものとする。

② 複数社が混在する借用ビル内で同居する他社の従業員で感染が確認された場合

  • 保健所や医療機関およびビル貸主の指示に従う。

(10)その他

  • 総括安全衛生管理者や安全衛生推進者は、地域の保健所の連絡先を把握し、保健所の聞き取りなどに協力する。
以上

  1. 新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針はその後、累次の改訂がなされている。
    ( https://corona.go.jp/news/news_20200411_53.html )
  2. 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月4日)
    ( https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/senmonkakaigi/sidai_r020504_1.pdf )
  3. 予防接種法第9条は、予防接種を受ける努力義務を定めている。厚生労働省「新型コロナワクチンについて」 ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html ) など参照。
  4. 家庭等で、体調が気になる場合等には、薬局で入手できる厚生労働省承認の抗原簡易キットを使用することもできる。 ( https://www.mhlw.go.jp/content/000836277.pdf )
  5. 厚生労働省・内閣官房「職場における積極的な検査の促進について」
    ( https://www.mhlw.go.jp/content/000819118.pdf )
  6. 日本渡航医学会-日本産業衛生学会作成「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」(第5版)など ( https://www.sanei.or.jp/?mode=view&cid=416 )
  7. マスクは布やウレタンよりも、不織布の方が、効果が高いことが示されている。
     内閣官房新型コロナウイルス感染症対策ウェブサイト「いつでもマスク」
     ( https://corona.go.jp/proposal/ )
     厚生労働省「国民の皆さまへ (新型コロナウイルス感染症)」
     ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html ) を参照
  8. 厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」
    ( https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000683359.pdf ) などを参照
  9. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
    ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html ) を参照
  10. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html
  11. https://corona.go.jp/proposal/pdf/facing_shokuba_20210319.pdf
  12. 個人情報保護委員会「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて」 ( https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/covid-19/ ) などを参照。

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