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Policy(提言・報告書) CSR、消費者、防災、教育、D&I 次なる波に備えつつ、出口戦略に舵を切れ ─新型コロナウイルス感染症対策に関する提言─

2022年3月15
一般社団法人 日本経済団体連合会

はじめに

新型コロナウイルス感染症との共存は3年目を迎えた。日本では、2020年1月に国内最初の感染者が確認されてから、最初の波(第0波)、初の緊急事態宣言が発出された春の第1波、夏の第2波を経て、2021年1月の第3波を皮切りに3度(東京の場合)の緊急事態宣言を経て、2022年1月から第6波を経験した。ここまでのところ、周期的な波が押し寄せる状況は変わっていない。今後も感染の波が繰り返すことを覚悟し、ゼロ・コロナを目指すのではなく、Withコロナを基本として、これまでの教訓を生かしながら、予防・検査・治療の各段階で新たな手段を加え、備えを充実していく必要がある。

一方、世界では、新型コロナウイルスを特別な脅威とまではみなさず、社会経済活動の正常化に向けた取り組みが進みつつある。わが国においても、ワクチン・検査・治療薬や医療提供体制が整ってくる中で、強力な社会経済活動の制限を伴う対策からの出口を探り、段階的に、穏やかな対策で感染症と共存する対策、すなわちパンデミックではなく、エンデミック#1の対策に舵を切るべきである。

1.これからの感染の波に備える─今後の感染対策

政府は、昨年11月、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」を示し、夏のデルタ株による第5波の2倍の感染力に耐えうる医療提供体制の強化などを発表した。今冬のオミクロン株による第6波では、この取り組みもあり、重症病床のひっ迫状況は、従前より改善した。一方で、感染伝播のスピードが速く、小児にも感染が及ぶこともあり、軽症・無症状であっても陽性となる者の数はピーク時には1日に10万人を超え、第5波のピーク時の4倍近くになった。こうした中、抗原定性検査キットの不足、ワクチン接種の遅れ、オミクロン株の特性を踏まえた対策への切り替えの遅れに伴う医療機関や保育所・学校等の機能不全等が課題となった。

第6波の反省を踏まえ、以下の対策を講じることにより、これからの感染の波に備え、感染者の増加や重症化を極力、防ぐべきである。

(1) ワクチン接種の加速

第6波において、ワクチンの2回接種を終えた者と未接種の者との感染の程度を比較すると、ワクチンの有効性が改めて認識される。一方で、3回目の接種が諸外国に比べて遅れたことで、感染の波をより低く抑えることができなかった。政府・自治体・医療界・経済界一丸となって、職域接種を含む3回目接種の加速、1、2回目接種を受けていない人への接種を呼びかける。加えて、特に基礎疾患等のある5歳以上の小児への接種を進めるなど、接種を加速すべきである。

ワクチン接種のインセンティブとして、ワクチン・検査パッケージを早期に再開させるべきである。また、ワクチンの最終接種や感染の治癒から一定期間内であることか、一定時間前に陰性であったことをGo ToトラベルやGo Toイベントのキャンペーン利用条件に加えるなどの工夫をすべきである。

第6波での課題は、3回目接種のタイミングを2回目接種から8か月後に設定し準備を進めていたが、抗体量の減少スピードから考えれば、より前倒して接種すべきだったことである。政府は、専門家と相談し、早期に次回接種のタイミングを見極めたうえで、4回目接種に向け、国産ワクチンの承認審査状況も踏まえつつ、十分な量のワクチンの調達、確保を進めるべきである。

(2) 抗原定性検査キットのOTC化、確保

第6波の中、薬機法の承認を得ている抗原定性検査キットが薬局で購入可能になり、また企業等がキットをイベント会場等で配布して検査できるようになったこと、従業員が自宅等に持ち帰って検査できるようになったことは、感染の早期発見に貢献した。

他方、第6波での課題は、検査能力の不足に加え、感染拡大による行政検査の急激な増加と規制緩和によるセルフチェックでの需要増に生産・流通体制が追い付かず、感染のピーク時にキットやPCR検査用の資材が大幅に不足したことにある。さらに医療現場では検査資材が不足したため、検査なしでの「みなし陽性」での診断といった対応をせざるをえなくなった。第6波での経験を踏まえ、政府は、抗原定性検査キットの適正な使用方法や検査結果に対する理解や対処の仕方を普及・啓発するとともに、キットのOTC化#2を図り、普段から国民がドラッグストア等でキットを入手し、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの感染についてセルフチェックできるようにすべきである#3。一方で、精度の高いPCR検査へのアクセスを改善することも重要である。また、感染拡大等による急激な需要拡大に備え、政府は、一定量の抗原定性検査キットやPCR検査用の資材を確保して、戦略的備蓄をすべきである。

(3) 治療薬等の早期承認に向けた環境整備・確保

第6波において、モルヌピラビル、ニルマトレルビル・リトナビルという軽症段階で投与する経口治療薬が相次いで承認され、重症化の抑制に貢献した。

第6波での課題は、海外に比べて治療薬の調達・確保のタイミングが遅れたことである。緊急時の治験のあり方や承認手続を見直し、治療薬やワクチンの国産化を推進するとともに、新薬等の早期の調達・確保を行い、感染拡大初期に新薬が届けられる仕組みを整備すべきである。

(4) 安心してサポートが得られる自宅療養と医療へのアクセスの改善

第6波において、政府が重症病床をあらかじめ具体的な目標を定めて確保したことは、効果的であった。

他方、第6波での課題は、過去最高の感染者数となったこと、さらには医師や看護師が感染者や濃厚接触者となることにより、自宅等での待機を強いられる状況となり、人的資源が不足したこと、こうした事態により、病床が不足し、一般医療を圧迫したことである。自宅等での療養についても支援体制に混乱が生じたほか、発熱外来の設置を地方公共団体のホームページに公表しない診療・検査医療機関等があるなど、医療へのアクセスにも課題があった。軽症者や無症状の陽性者も安心してサポートが得られる自宅療養の仕組みを整えるべきである。また発熱外来については、情報公開を進め、患者がアクセスしやすい環境を整えるべきである。

(5) 変異株の特性に応じた科学的・合理的な対策

第6波においては、オミクロン株の相対的に毒性は低い一方、他人に感染させる期間は短いという特性を踏まえ、濃厚接触者や入国者の待機期間を、デルタ株の14日間から7日間に短縮したことは、社会機能の維持に貢献した。

他方、第6波の課題としては、オミクロン株の特性に応じた待機期間の短縮や、一律の人流抑制ではなく人数の抑制を訴えた専門家の提言の趣旨を、政府の基本的対処方針に反映させるのに時間かかり、ピークを迎える前に、国民が納得できる対策が浸透しなかったことである。

政府は、感染の初期段階で専門家に分析を依頼し、先行して変異株が流行している海外の事例なども参考にして、新しい変異株に応じた科学的・合理的な対策を打ち出せるようにすべきである#4

2.出口戦略の策定・実行─社会経済活動の活性化と平時からの体制構築

今後、新型コロナウイルス感染症がどのように変異していくのかは見通せていない。弱毒化するのか、あるいは現在接種されているワクチンや治療薬でも対応できないものになるのかは、現時点ではわからない。

しかし、次に感染の波を起こす変異株についても、その性質、毒性に応じた適切な対応をとることで、社会経済活動の犠牲を最小限に抑えることができる。ウイルスが変異した際には、その性質を素早くとらえ、科学的・合理的な対策を策定・実行することで、感染抑止とくらしや経済とを両立していくことが重要である。

生活・経済の正常化、緊急状況からの脱却を意識し、Withコロナに適応した、パンデミックからの「出口戦略」を早急に策定すべきである。その戦略を、最新の状況を踏まえて修整しながら、段階的に実行していくことが求められる。

出口戦略で最初に実行されるべき政策パッケージは以下の通りである。

(1) 社会・国民のマインドチェンジ

感染症からの出口に向かうためには、変異株ごとの特性に応じた科学的・医学的な情報・分析と合理的な対策を国民にタイムリーに提示していくことを通じて、社会全体のマインドチェンジを促していくことが肝要である。これまで、わが国国民の高い衛生意識や感染症への警戒心は、感染の抑制に貢献してきた。他方、社会経済活動を正常化するためには、新型コロナウイルスを「正体不明」の存在として不安視するマインドからは脱却する必要がある。

政府は、専門家の知見を活かし、科学的・医学的根拠に基づく「正しい恐れ方」を広く示していく必要がある。そのためには、国民に寄り添った丁寧でわかりやすいコミュニケーションが必要である。また、移動、外食、宿泊などこれまで自粛が要請されてきた社会活動について、科学的根拠に基づくリスクの少ない方法の提示など、さらに踏み込んだ発信が必要である。

(2) 国際的な人の往来の本格的な再開

グローバル社会の中で、国際的な人の往来なしにわが国の生活、経済を守り、人を育てていくことはできない。3月1日より、政府はオミクロン株の侵入を防ぐ段階で立てた出入国管理政策を転換し、段階的に入国枠の緩和を図ることとなった。国際的な人の往来を正常化するための第一歩として評価できる。

今後、最新の科学的知見や日本の感染状況を踏まえ、政府の渡航先諸国・地域の感染症危険レベルを見直すことにより海外赴任・出張や留学をしやすくすることが求められる。また、デジタル庁のVisit Japan Webと厚生労働省のMySOSの連携などによる、審査書類のデジタル化や出発前審査の導入による入国審査の効率化、到着地(空港)での検査の省略や簡素化を進め、入国者について1日あたりの受入れ人数枠#5の撤廃をすべきである。また、待機期間の短縮や指定施設での待機の撤廃など入国後の行動管理の簡素化も進めるべきである。そのうえでビジネス・教育研究・観光といった入国目的を問わず、自由に国際的な往来が可能となるよう、取り組むべきである。

さらに、海外に在留する邦人へのワクチン接種などのケアを行うこと、全世界的なパンデミックの収束に向け、ワクチンの共同購入・途上国への分配等に関する国際的な枠組みであるCOVAX等を通じた諸外国へのワクチン供給等による感染拡大防止の取り組みに貢献することも重要である。

(3) 感染症法の指定感染症の位置づけによる措置の簡素化等

現在、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上、最も多くの措置を講じることのできる疾病とされ、当初の「正体不明」の状態の位置づけのままとなっている。このことが保健所や一部の医療機関への過度な負担につながっている。

これまでの変異の経緯を踏まえ、必要のない措置については適用しないものとするよう政令を変更し、段階的に一般的な感染症に近づけていくべきである。

具体的には「無症状病原体保有者への適用」「積極的疫学調査の実施」「検体の収去・採取等」「汚染場所の消毒、物件の廃棄等」「ねずみ・昆虫等の駆除」「生活用水の使用制限」「建物の立入り制限・封鎖、交通の制限」といった措置を廃止すべきである。

さらに、ワクチンや治療薬が十分に行きわたる等の環境が整った段階で、段階的にワクチン接種や診療等に窓口負担を求めていくことも検討すべきである。

第6波においては、検査を行わずに症状だけから感染を診断する「みなし陽性」という取り扱いが行われたが、これは検査の資材もない非常時の対処である。医療機関において、いつでもPCR検査を伴う診断が下せるように環境を整備することが必要である。

一方で、抗原定性検査キット等を用いて、個人が保健所や医療機関等の判断を介することなく、自らの状況をセルフチェックできるようにすべきである。

また、職場等でもキットの扱い方や陽性だったときの行動ルールの徹底等について協力をし、濃厚接触者については、定められた日に抗原定性検査キット等で確認すれば、短期間の待機で制限なく行動できるようにすべきである。

また、新型インフルエンザ特別措置法上の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった措置は、肺炎等の発生頻度が、季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることが、発動の要件とされている。私権を制限する措置に関しては、法令上の要件を満たしているか、変異株の状況も十分踏まえた運用が必要であり、他の感染症における措置と整合をとるべきである。

(4) 業種別ガイドラインの簡素化

経団連や業種団体が策定する「業種別ガイドライン」は、各々の業種の実態を反映しつつ、専門家の知見を踏まえたソフトローとして、新型コロナウイルス感染症対策に大きな役割を果たしてきた。一方、対策の説明責任があいまいで、知見の集積に応じた改訂がなされないままになっているものも散見される。

経団連ではこれまでも感染症の推移に応じて、記述の追補や簡素化・削除を行ってきた。ガイドラインの策定主体の各団体においても、感染症の実態に応じて必要のない対策についての記述は削除し、今後も必要な対策だけに絞りこみ、対象となる企業・事業者等に徹底することを通じて、その活動を制約することなく平常状態への回復を図るべきである。

(5) 予防・検査・治療に必要な物資の安定供給を可能とする体制の整備

昨年9月、米国が発表した「パンデミック準備計画」は、①ワクチン、治療法、診断法の改善等の「医療防御の変革」、②早期警戒とリアルタイム監視による「状況認識の確保」、③緊急事態に対応した「公衆衛生システムの強化」、④個人防護具、備蓄品、サプライチェーン等の「中核的能力の構築」、⑤目的、コミットメント、説明責任等の「ミッション管理」を柱に、あらゆるウイルスに対応したワクチン、治療薬、診断に関する開発・生産体制などを示している。

日本でも、国民が安心できる医療提供体制や公衆衛生体制が必要である#6。加えて、物資の供給について、既に「医薬品産業ビジョン2021」「ワクチン開発・生産体制強化戦略」が策定されており、「医療機器基本計画」の改訂に向けた作業も進んでいる。予防・検査・治療の各段階で必要となる機器・部材・試薬等について、緊急時にも迅速かつ安定的な供給が可能となる備蓄や生産の体制を構築すべきである。

(6) デジタルヘルスの促進

コロナ禍で、ワクチン接種証明書がスマートフォンのアプリとして携行できるようになり、空港の検疫等の手続きもデジタル化が試行されている。

一方で、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)が整備されたものの、発生届や健康観察について、保健所の現場ではファクシミリが積まれていく状況にある。空き病床等医療リソースの把握のデジタル化も遅れている。現場の人員の負担軽減、感染状況等把握の正確性向上のために、情報収集・集計・連携のデジタル化を進めるべきである。そのうえで、ワクチン接種や感染・濃厚接触の履歴について、プライバシーに配慮をした上で、国立感染症研究所等が、ビッグデータでの感染状況解析をできるよう検討すべきである。

また、ワクチン接種に関しても、マイナンバーの全国民への普及を前提に、地方公共団体ではなく、マイナンバーで国が一元的に管理することが考えられる。そうすれば、紙の接種券の郵送やワクチン接種記録システム(VRS)への入力が不要となり、自治体を越えて転居した場合も遅滞なく接種を受けることができ、職域接種との連携も容易になる。 さらに、国民のヘルスケアデータをマイナンバーで連携できれば、感染状況やワクチン接種記録もマイナポータルで管理でき、国が基礎疾患を確認してワクチンの優先接種対象者を抽出し、速やかに接種を案内することもできる。こうした取り組みを通じ、国民一人ひとりが自身で健康情報を管理し、自らの健康状況に応じた予防行動を取り、医療機関と共有しながら医療を受けることができる、デジタルヘルス社会づくりに繋がることが期待される。

おわりに

私たちは、世界から新型コロナウイルスを消滅させるまで航海を続ける。まもなく、新型コロナウイルス感染症は、世界的に感染が爆発し、有効なワクチンや治療薬もなく死者が急増した荒れ狂う嵐の段階から、ワクチンや治療薬の普及により、人類と共存できる穏やかな波に変わることが期待される。そのときには、このことについて全国民で共有したい。政府には、できるだけ早期に「エンデミック宣言」を行い、高く帆を上げて、新しい世界へ進んでいくことを期待したい。

以上

  1. エンデミック(endemic)=医療・公衆衛生で、ある感染症が、一定の地域に一定の罹患率で、または一定の季節に繰り返し発生すること。疾病の罹患者が、通常の予測を超えて大量に発生するエピデミック(epidemic)よりも狭い範囲で比較的緩やかに広がり、予測の範囲を超えないものをいう。特定の地域に限定される場合は風土病という。一方、パンデミック(pandemic)は、エピデミックが世界各地で同時に発生した状態。(デジタル大辞泉より一部改編)
  2. 一般用検査薬(OTC(Over The Counter)検査薬)とは体外診断用医薬品のうち、一般用医薬品として取り扱うことが認められているもの。一般の人が日常において自らの体調をチェックすることを目的とするもの。検査結果から必要に応じて医療機関を受診し、 疾患等の早期発見につなげることができるようにする。現在、尿糖・尿蛋白・妊娠検査・排卵日予測検査で用いられている。(日本臨床検査薬協会、日本OTC医薬品協会)
  3. 新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの抗原同時検出が可能な抗原定性検査キットもある。
  4. 例えば2月25日の政府新型コロナウイルス感染症対策分科会には専門家有志の提言『オミクロン株感染蔓延期における「濃厚接触者」に関する作戦転換』が示されている。こうした指摘を受け、濃厚接触者の特定や行動制限を速やかに見直すべきである。
  5. 3月1日から、海外から日本への入国者数は1日あたり5000人まで(2月28日までは3500人まで)となっており、3月14日から1日あたり7000人まで(留学生入国円滑スキームで入国する留学生は別枠)となる。
  6. 経団連「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて-新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえて-」(2021年2月)では、医療体制の確保を含め、非常事態対応と社会経済活動の両立に向けた体制整備について、提言している。

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