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Policy(提言・報告書)  地域別・国別 アジア・大洋州 第12回日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム共同声明

(和文仮訳/英文正文
2025年8月29

各国が内向きの姿勢を強め、世界が対立と分断の色を濃くする今日、グローバルに活動する企業・経済界同士が対話・交流し、国・地域を超えた連携・協力の機運を醸成することが、かつてないほど求められている。

そうした中、本日、日本とインド(以下、日印)のビジネス・リーダーは、東京において、12回目となる日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(以下、BLF)を開催した。

今次BLFにおいて、日印のビジネス・リーダーは、日印それぞれが戦略的自律性の向上を図るのと並行して、両国の間の相互補完性を活かして、国際秩序の維持・強化に向けて連携・協力を深めるとともに、持続的な成長の実現に向けて両国経済関係を高度化・多様化するための方策等について議論を行った。

以下は、これらの議論の成果を要約したものであり、双方は、本共同声明が日印経済関係を更なる高みに押し上げる契機となることを共に願っている。

両国政府および関係機関におかれては、本共同声明の趣旨を十分に斟酌し、今後の政策に反映されたい。

Ⅰ.国際秩序の維持・強化に向けた日印の連携・協力

1.ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化

まず、双方は、2011年に日インド包括的経済連携協定(CEPA)が発効し、また、2014年に両国関係が「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」に格上げされたことによって、経済関係が拡大・深化を遂げてきたことを歓迎した。また、インドが、世界最大の人口と拡大する中間層を背景に、世界経済において重要なウェイトを占める消費市場および製造拠点として高い潜在力を有すること、また、インド太平洋における要衝として、地政学的観点からも戦略的な重要性を有することを改めて確認した。

その上で、双方は、CEPAを改訂し、経済関係を一層強化するとともに、租税条約を改正し、インドの投資環境を改善することが重要であるとの認識で一致した。また、将来における、インドの「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)への加入実現に向けて協力していくことでも一致した。さらに、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向け、QUAD(日米豪印)の下、重要・新興技術、重要鉱物資源等の分野で具体的な協力を積み上げていくことが必要との認識を共有した。

これらインド太平洋を中心とする取組みに加え、グローバルなルールづくりを推進するためには、多角的自由貿易体制の立て直しが急務であり、その中核である世界貿易機関(WTO)を、新たな環境の下でリポジショニングし、改革を進めることが不可欠との認識で一致した。

2.官民連携による経済安全保障の確保

双方は、日印両国政府が2024年11月に立ち上げた「日印経済安全保障対話」の模様について政府から説明を受けた上で、日印を取り巻く経済安全保障上の脅威やリスクをめぐって情報・意見交換を行った。

双方は、①経済安全保障を確保するには、経済活動の主体である民間企業と安全保障に責任を有する政府との間の官民連携が不可欠である、②機微技術の流出防止を中心とする産業防衛策(protection)、重要技術の開発を中心とする産業促進策(promotion)、諸外国企業との国境を超えた連携(partnership)の三つのPが重要である、との基本的な認識で一致した。その上で、重要戦略物資の安定供給、重要インフラの保護、先端技術の研究・開発等の分野における協力の可能性について議論を行った。

その結果、双方は、日印両国政府からの期待をも踏まえ、企業・経済界の立場から、上記政府間対話に対しインプットを行うべく、日印経済界による情報共有・連携強化の場として「日印民間経済安全保障対話(仮称)」を立ち上げるべく、準備を進めることで一致した。具体的な対話のテーマ等については、日印それぞれにおける戦略的自律性の確保や戦略的優位性・不可欠性の獲得をめぐる国内検討を踏まえ、日本貿易振興機構(JETRO)、インド工業連盟(CII)、在インド日本商工会議所 (JCCII)による「Proposal for Joint Actions: Japan-India Economic Security Cooperation」をも参考に、追って決定していく。

3.脱炭素社会の推進

双方は、化石燃料への依存度が高く、また、温室効果ガスの排出量が大きいインドのエネルギー事情を踏まえ、クリーンアンモニア・水素の共同製造、アンモニアや水素への段階的な燃料転換等による火力発電設備の脱炭素化、LNG・バイオ燃料の活用、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術の普及、環境負荷の少ない交通インフラの建設等における連携の可能性を改めて確認した。

それらの連携を促進する上で、二国間クレジット制度(JCM)の構築は不可欠である。インドのネットゼロ達成目標年が2070年と日本のそれとの間に20年の時間差があるため、JCMの活用余地は大きいとの指摘があった。

Ⅱ. 持続的な成長の実現に向けた日印経済関係の高度化・多様化

1.日印経済関係の高度化

(1)「Make in India for the World」の推進

双方は、インド政府が推進する「Make in India」や、生産連動型優遇制度(PLI)による製造業振興策は、諸外国からインドへの直接投資の促進に寄与するとともに、国家製造ミッション(NMM)の下で先端製造業を戦略的優先分野として位置づける動きにつながっていることを確認した。また、2022年に日印首脳が合意したインドに対する「5年間で5兆円の官民投融資」目標の達成を歓迎した。さらに、日系企業による現地生産や第三国・地域への輸出は、インドにおける雇用の拡大に寄与するとともに、外貨獲得に貢献しており、「Make in India for the World」が進展していることを確認した。

今後について、日印両国企業が互いに持てる強みを活かしながら、双方にとっての重要分野において戦略的に連携することが重要との認識で一致した。とりわけ、スマート製造、ロボティクス等、日本が強みを有する先端製造技術と、インドの有する豊富な情報技術(IT)・人口知能(AI)人材を組み合わせることで、インドにおける製造業の高度化と生産性の向上、さらには輸出競争力の強化が期待できるとの意見が出された。現に一部の日系企業は、インド国内に研究開発拠点を設置し、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ、AI等を活用した製品開発やサービス提供に取り組んでおり、双方から一層の連携に期待が表明された。

また、インドにおいては、インド半導体ミッション「ISM(India Semiconductor Mission)」の下、半導体産業育成に大規模な政策的支援が講じられていることを踏まえ、双方は、日本が強みを維持する領域を中心に、サプライチェーン全体を視野に入れた連携を強化し、インドにおける信頼性の高い半導体生産基盤の構築に努力することで一致した。こうした連携は、両国の経済安全保障の観点からも極めて重要である。

なお、インドの投資環境は、依然として改善の余地が大きいとの指摘を踏まえ、双方は、税制の一貫性・透明性の確保、税務訴訟処理の迅速化、インド標準規格局(BIS)認証における透明性の確保・認証対象拡大時における十分な周知期間の確保・国際基準との整合性の確保、行政手続・司法手続の迅速化・透明性の確保・予見可能性の向上、土地収用に伴う煩雑さの解消、インフラの整備、対外送金規制の簡素化、模倣品取締りの強化や権利侵害に対する救済手続きの改善など知的財産保護の強化等に関する着実な取組みをインドの連邦・州政府に働きかけていくことで一致した。

(2)日本の中小企業・スタートアップの参画

インド中小企業の国際的志向の高まりと、サプライチェーン多様化という世界的な潮流を踏まえ、双方は、日本の中小企業にとって、インドの貨物輸送回廊のネットワークの拡大を背景に、インドと協力し強靱なグローバル・バリューチェーンを構築する上で大きな機会が存在することを認識した。

双方は、日本とインドの中小企業およびスタートアップ間の協力強化について、基盤技術や地域イノベーションにおけるインドの強みと、先端製造業、ロボティクス、自動化における日本の専門性との補完関係を強調した。こうした協力は、世界的に競争力のあるソリューションの開発を促進するとともに、インド産業の強靭性を強化するものである。インド側は、両国による中小企業支援プログラムの開始に期待を表明した。

(3)第三国市場における連携・協力の推進

双方は、中東やアフリカなど第三国市場におけるビジネス展開において、両国企業が協力を進める意義を共有した。インドは東アフリカ諸国と歴史的・人的なつながりが深く、現地事情に精通し、広範なネットワークを有している企業が多い。この点、双方は、日本政府が「アフリカの持続可能な経済発展のための日印協力イニシアティブ」として、アフリカへの貿易・投資拡大の産業拠点としての役割も念頭に置いたインドにおける産業集積を促進しており、日印企業の技術を用いてアフリカ諸国と共創し、革新的技術解決等を行うプロジェクトの実施を支援している点に留意した。また、FOIPの実現に貢献する形での第三国市場における連携・協力の在り方を継続的に検討していくことで一致した。

(4)人材交流の推進

人材の交流は、中長期的な日印協力を支える基盤となるものである。2017年に日印政府間で署名された「技能実習制度(TITP)」に関する協力覚書(MOC)および2021年に署名された「特定技能制度(SSW)」に関する協力覚書(MOC)を踏まえ、インド政府は、今後速やかに5万人以上の技能人材を日本に派遣する方針を堅持している。

今般、双方は、日本政府から、今後5年間で50万人の双方向の人材交流を行うという「日印人材交流アクションプラン」について説明を受けた上で、日印企業による具体的な貢献の在り方などについて議論を行った。席上、参加者からは、インド人材が日本企業に定着するためには、日本語や日本の文化・慣習に関する教育のみならず、DEI(多様性、公平性、包括性)の推進など多様な人材が活躍できる環境の整備、デジタル・トランスフォーメーションの推進が不可欠といった、日本企業における受入れ体制の整備に加えて、インド側においても、日本語やソフトスキルを習得させるなど、来日前研修の推進が必要であることが指摘された。その際、CIIが有する既存のインフラや教育機関、その他民間機関等を活用することが可能との意見も示された。

2.日印経済関係の多様化

(1)宇宙

双方は、①インドにおいて、月面探査機の着陸や太陽観測衛星の打ち上げなど、宇宙分野での研究開発が進展していること、②宇宙航空研究開発機構(JAXA)とインド宇宙研究機関(ISRO)が2016年11月に覚書を締結し、現在、チャンドラヤーン5/LUPEX(月極域探査機)のミッション#1を進めていること、③日印政府間で2019年に設置された「日印宇宙対話」においては、宇宙政策に関する情報交換に加え、安全保障、関係機関間協力、宇宙産業、測位衛星、宇宙状況把握および国際ルール・規範についての意見交換が行われていること(本年までに合計3回実施)、④これらの協力は両国の民間部門にも拡大しており、宇宙デブリ除去、衛星サービス、地上局ネットワーク等の分野において具体的に展開されていること、に留意した。

その上で、双方は、宇宙分野における両国間の協力の深化に向けて、民間企業間の一層の連携・協力が不可欠であるとの認識で一致した。また、そうした連携・協力を後押しするための両国政府による一層の取組みに期待を表明した。

1. 本ミッションは、月南極の永久影(PSR)周辺において、水を含む揮発性物質の調査を行うことを目的としている。

(2)エンターテインメント・コンテンツ

双方は、2024年におけるインドのエンターテインメント・コンテンツ(以下、エンタメ・コンテンツ)市場は2兆5,000億ルピー(約4兆2,500億円)を突破し、世界有数の規模と成長率を誇っている点に留意した上で、映画、アニメーション、ゲーム、XR(Extended Reality)などの分野における連携の可能性について情報・意見交換を行った。その際、2025年5月にインド・ムンバイで開催された「World Audio Visual & Entertainment Summit(WAVES)2025」において、日本アニメのインド市場展開やコンテンツ共同制作に対して高い関心が示されたことが紹介された。

双方は、日本のエンタメ・コンテンツのインド市場への展開や両国によるコンテンツの共同制作が、両国間の相互理解と交流拡大ならびに日印経済関係の多様化にも資することから、今後、そのために必要な環境整備の推進に努めていくことで一致した。

以上

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