会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  記者会見における榊原会長発言要旨

2015年10月27日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【採用選考活動】

今年から採用選考活動のスケジュールが変わり、色々な課題・問題点が指摘されている。経団連では、会員企業へのアンケート調査を実施し、回答を集計しているところである。回答率は高く、会員企業がこの問題に強い関心を持っていることを示している。現在、調査結果を踏まえつつ、雇用政策委員会で議論を行なっている。できるだけ早い時期に経団連としての考えをまとめられるよう、鋭意検討している。

加藤勝信1億総活躍担当大臣が11月4日に開催するとしている就職・採用活動時期の後ろ倒しに関する実務者会合に、経団連もメンバーとして参加する。新しい採用スケジュールについて、いくつかの論点が関係方面から指摘されており、この検証に向けた議論を始める趣旨だと受け止めている。会員企業向けのアンケート調査結果を踏まえ、関係者と話をした上で、経団連の考えをとりまとめ、公表したい。

新スケジュールを巡っては、「長い」「暑い」というキーワードに代表されるように、とりわけ学生側への負担が大きかったと思う。また、学業への配慮という点でも、夏休みの卒論作成の時期に学生が就職活動に奔走しなければならなくなってしまった。さらに、企業にとっても、広報活動開始から選考活動まで非常に長い期間が必要になった。学生、大学、企業のいずれにとっても今回の新スケジュールは問題が多かった。しかし、ネガティブな評価だけではない。広報活動の開始時期を3年生の12月から3月に遅らせたことで、3年生の間は学業に専念できるようになった。また、留学生からは就職活動を行いやすくなったという声を聞く。

今年始めたものをすぐ変えるのかという批判があることは承知しているが、きちんと検証・議論を行なったうえで、本質的な問題が確認されるのであれば、変えることを躊躇すべきではないと考えている。ただ、来年度についてはすでに説明会場の予約など実務面での準備が始まっており、大幅に変えることには支障がある。見直すにしても、現行制度の枠組みをいかしつつ、色々な課題を最小化することにならざるをえない。選考開始時期を8月から6月に前倒すという日商の案も選択肢の一つであろう。再来年以降について、大きく変えるとなれば、相当な議論が必要になる。もう少し時間をかけて議論していく。

【消費増税に伴う負担軽減策】

軽減税率については、経団連、日商、同友会など経済界は反対の立場を表明し、単一税率を要望してきた。その大きな理由は中小企業の事務負担が非常に大きくなることであり、低所得者対策としては簡易な給付措置が望ましいと考えている。また、もう一つの大きな理由は、軽減税率を導入することで、消費税の歳入が減少し、社会保障財源への影響が懸念されることである。歳入を維持するという観点からも、軽減税率の導入には反対の立場をとってきた。

この考え方は変わらないものの、安倍総理は軽減税率の導入を指示し、宮沢自民党税調会長は「軽減税率を目指すというより導入する」と明言している。経済界は反対の立場を崩さないが、政府が導入するというのであれば、中小事業者への事務負担を極力軽減する形で導入してほしい。また、消費税の歳入が大幅に減少することのない形で導入してもらいたい。

【春季労使交渉】

連合は10月22日に「基本構想」をまとめており、今後、これをベースに地方連合や産業別労働組合を集めて議論を行ない、最終的な「闘争方針」を11月末に決定する予定と聞いている。連合の考え方に対する経団連の見解については、闘争方針が正式にまとまった後に検討し、来年1月公表予定の「2016年経労委報告」の中で、春季労使交渉に臨む基本方針を明らかにしていく。

【1億総活躍国民会議】

第3次安倍改造内閣の発足に合わせて、アベノミクスの第2ステージとして新三本の矢が示された。この中で、経済界としては、一本目の矢である強い経済の実現を最優先課題と位置づけている。1億総活躍国民会議において、新三本の矢を巡って、どのような議論をするのかまだ承知していないが、経済界としては強い経済の実現に向けて、積極的に協力していく。勿論、第二、第三の矢についても、経済界の立場から発信していく。

【日中関係】

今年も最高顧問として日中経協訪中団に参加する。今回は日中経協、経団連、日商のオール財界による65社、220名からなる大規模ミッションとなる。国家指導者や国家発展改革委員会の幹部との会談を予定している。

昨年は、汪洋副総理とお会いした。その際、中国には約2万3千社の日本企業が進出しているが、経済活動の基盤は安定的な政治・外交関係であり、関係改善を強く要望申し上げた。その時点では日中首脳会談が開催されていなかったが、その後、昨年11月、今年2月と二度の首脳会談が実現し、来月1日には日中韓首脳会談と合わせて、日中、日韓の首脳会談も開催される見通しである。このように、両国間の政治・外交関係は改善基調にあり、経済界のかねてからの主張が実現しつつあるという実感を持っている。今回の訪中でも引き続き、政治・外交関係の安定的な発展を要望していく。

訪中におけるもう一つの重要なテーマは中国経済の展望である。国家指導者が今後の中国経済についてどう考え、どう見通しているのか考えを聞き出したい。中国では、改革路線の深化として、様々な構造改革が進められている。経済についても中速成長が打ち出され、「新常態(ニューノーマル)」という方向性が示されている。今後の展望について国家指導者の考えを聞いてみたい。中国経済の先行きについては、日本の経済界だけでなく、世界も注目している。

以上