一般社団法人 日本経済団体連合会
【フランス大統領選挙】
親EUのマクロン氏が当選したことは、3月のオランダの総選挙に続き、欧州における反EU、ナショナリズムの拡大に歯止めをかけることになり、大きな意味を持つ。ドイツの地方選挙でも、与党CDUが勝利しており、メルケル首相への支持が得られている。
EUが安定を取り戻せば、回復しつつある欧州経済も安定成長軌道に乗るだろう。米国経済の足取りも力強く、世界経済全体は明るい方向に進んでいく。また、EUの枠組みが維持されることは、特に欧州の事業活動を行う日本企業にとって重要である。
マクロン氏は39歳と若いが、閣僚経験もあり、人脈も豊富と聞いている。フランスの舵取り、EUの運営・発展に大いに貢献されると思う。
【憲法改正】
安倍自民党総裁が憲法改正に向けた明確な方向性を打ち出した。経済界としても重要かつ重たい発言であると受け止めている。経団連は2005年1月に提言「わが国の基本問題を考える~これからの日本を展望して~」を取りまとめ、憲法についての基本的な考えを示した。その後、国際安全保障情勢など状況は大きく変化し、自衛隊への国民の認識や期待も変わりつつある。そこで、経団連としても改めて憲法問題に係る考えを取りまとめることとした。まず、総合政策特別委員会において、部会レベルで論点整理を行う。その上で夏季フォーラムで経団連幹部による議論を行いたい。
憲法の施行から70年が経過し、この間、わが国は平和憲法の下、平和と繁栄を享受してきた。この意義は大きく、高く評価したい。この点をしっかり踏まえて、憲法の問題を考える必要がある。基本的には平和憲法の精神は維持し、その上で自衛隊の存在意義を考えていく。他方、この70年間、日本を取り巻く状況は政治、経済、安全保障など大きく変化した。国際社会における日本の位置づけや役割、また国民の考え方も変わってきている。年内を目途に経団連としての見解をまとめ、何らかの意見を示していきたい。ただし、繰り返し申しあげているように、安倍政権には経済最優先で取り組んでもらいたい。憲法論議も勿論、大事で必要なことであるが、経済最優先の中で取り組んでほしい。
【デフレからの脱却】
緩いペースではあるが、着実にデフレ脱却の方向に向かっている。一部の小売業では、日用品の値下げの動きがあるものの、業界によっては値上げの動きもある。経済活動全体としては、物価2%目標の達成に向けて進んでいると認識している。
【TPP】
経団連は一貫して12カ国でのTPPの実現を要望してきた。トランプ大統領の就任後もTPPを諦めることなく、その意義を訴えてきた。しかし、米国がTPPから撤退することになり、先日、来日したペンス副大統領もTPPは「過去のもの」と明言している中で、当面、12カ国でのTPPは実現できそうにない。こうした中、重要なことは、TPPの意図するところ、即ちアジア太平洋地域に質の高い、包括的な自由で開かれた枠組みを構築することである。現在、議論されているTPP11はその実現に向けた一歩であり、12カ国でのTPPにもつながるだろう。経団連として、TPP11を追求する政府の取り組みを支持したい。トロントでの首席交渉官会合では、参加国の間に様々な思惑があり、一様ではなかったようだが、TPPの意義そのものついては共有できていると思う。5月のハノイでの閣僚会合を経て、11月のAPEC首脳会議の機会にTPP11が実現の運びとなることを期待したい。
【経済外交】
経済外交は経団連の最重要課題のひとつである。米国、EU、ロシア、中国、ASEANなど地域毎に課題を整理して、経済関係の強化に取り組んでいる。各地域とも重要だが、当面は日米関係の強化を最優先課題に位置づけている。今月はアメリカ委員会によるミッションを派遣し、秋には私が団長として訪米する予定である。また、対中関係では、中国政府からの要請を受けて、今週末より自民党の二階幹事長とともに北京で開催される「一帯一路国際協力サミットフォーラム」に参加する。日中両国は、2017年に国交正常化45周年、2018年に平和友好条約40周年の節目を迎える。これに合わせて、さまざまな周年事業も行われることから、二国間交流を密にしていく。一帯一路構想に関して、アジア地域でインフラ整備を進めることは重要な課題の一つであり、ADBとAIIBの協調融資などを通じて推進していく必要がある。