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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2018年11月5日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【Society 5.0】

本日の会長・副会長会議で「Society 5.0 -ともに創造する未来-」について審議し、承認されたので、この場で公表する。Society 5.0を実現するためのいわば行動指針であり、構成は大きく二つからなる。まず第一章では、不確実な世の中であっても、デジタル革新を課題として捉えるのではなく、明るい未来を創っていこうという強いメッセージを発している。経団連の政策提言は、まず課題を列記するスタイルが多いが、今回は未来社会をともに創っていこうという呼びかけ、提案である。経団連会員企業に向けて、経済界が進むべき方向性を示している。第二章では、Society 5.0の実現に向けた課題を具体的に記している。全体を通じて、自信を持って「日本はできる」という前向きな論調にしていることも特徴である。また、経済界の行動宣言という側面もあり、ただ提言をして終わりではない。

Society 5.0の実現に向けて、かなり議論を深めている産業分野もあれば、どう進めるべきか不透明な分野もある。これがさらに幅広い分野に広がり、デジタル化を前向きに捉えることができるようになれば、日本の産業競争力も向上していく。

米国では、ベンチャー育成やイノベーションエコシステムが確立している。次々とベンチャー企業が生まれ、成長したベンチャー企業を大企業がM&A等で獲得し、他方、起業家は売却でエグジットして再び創業に取り組む。こうしたシステムは人の流動性がなければ成り立たない。米国とは環境が異なる日本で、米国と同じようなベンチャー企業の育成はそう簡単ではない。そこで、大企業に人材が集まっている日本の現状に照らし、大企業の中に「出島」のようなフリーゾーンを立ち上げることを提案している。

【コーポレートガバナンス】

コーポレートガバナンスは経営そのものであり、政府や株主に言われたからという理由で取り組むものではない。経営の質を高めようとすれば、みずからコーポレートガバナンスの強化に取り組んでいくのである。コーポレートガバナンス・コードでは、Comply or Explainが求められているが、そもそもその前にまず企業がみずから考える。その上で自社のガバナンスが世の中の常識に照らしてどうか、不断にチェックすることが重要である。経営者として組織をどう運営していくか、様々なステークホルダーに説明していくことも求められる。

【データに係る規制】

データはその重要性がこれまでよく認識されておらず、資産としての価値を有しているとも考えられていなかった。このため、データは誰のもので、どう活用するのかについて、ルールもなかった。しかし、デジタル技術の進展に伴い、相当にデジタル化が進んだことで、データを誰が所有し、どう活用するのか、ルールづくりが求められている。今般、政府がルールの策定に向けた議論を始めていることは当然である。今後、どのようなルールが策定されるのかを注視しながら、議論していきたい。Society 5.0では当然、データが財産になるので、その取り扱いについて、透明性・公平性の高いルールが求められる。

【品質問題】

企業で品質に関わる問題が続いている。高度成長期から今日まで日本企業が堅持してきた品質に対する自信に綻びが出始めている。品質管理の取り組みは企業活動そのものであり、現場をどう管理するのかということに尽きる。日本の製造業への信頼に陰りが出かねないため、経団連は引き続き警鐘を鳴らしていく。

【プラスチック資源循環】

日本のプラスチックの生産量は多いが、リサイクル率が極めて高く、世界でもトップレベルである。国内の資源循環を高度化していくことに加えて、国際的にも評価の高いわが国のプラスチック資源循環に係る技術力をさらに磨き、海外へ展開していくことが重要である。日本はこの分野における先進国である。日本の技術や取り組みをG20等の場でアピールしていく必要がある。

【日韓関係】

日韓関係は、戦後70年経っていても、懸案が絶えない。難しい二国間関係である。ただ、経済関係全般において、直近で何か問題に直面しているということはない。元徴用工に係る判決については、韓国の最高裁の判断であり、両国の外交を通じた適切な対応を求めたい。

【米国によるイランへの制裁】

イランから日本への原油輸入については、当面は米国の制裁の対象外になったが、イランは経済のみならず歴史的にも文化的にも日本と関係が深い国である。核の問題だけでなく、諸外国とイランの関係など複雑な国際関係が背景にあり、難しい問題であると認識している。

【入会資格規程の改定】

Society 5.0の実現のためには、より幅広い企業に経団連活動に参加してもらう必要がある。そこで、経団連の入会資格規程を改定した。具体的には、直前の決算期の決算における純資産額を10億円以上から1億円以上に引き下げた。今の経団連に伝統的な大企業が多いことは否定できない。ベンチャー企業はじめ様々な企業に入会してもらい、本当の意味で経済界を代表する組織になることが重要である。

以上

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