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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における中西会長発言要旨

2018年12月3日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【春季労使交渉】

働き方改革を推進するべく、長時間労働削減、同一労働同一賃金など様々な課題に取り組んできた。経営者の立場から見れば、働くということの意味あいが大きく変わってきた中で、働く人にとって働き甲斐のある処遇・環境をどう整備するかが大事である。例えば、Society 5.0の実現に向けて、働く環境をどう整えていくか、生産性向上のための処遇改善をどう図るかということについて、闘争としての「春闘」ではなく、「春季労使交渉」として労使間でしっかり議論していくことが重要である。

賃金は処遇における重要な要素であり、経労委報告でも賃金決定の大原則、すなわち適切な総額人件費管理の下、自社の支払能力を踏まえ、労働組合等との率直な意見交換を経た上で自主的に賃金を決定する、を掲げている。

経営環境については、企業収益が拡大する中、特段の構造不況業種もない。それを見れば、経営環境は良いと言えるかもしれないが、貿易摩擦など自由貿易に逆行する動きがある。消費増税と賃上げは別次元の問題ではあるが、これも景気に対する下押し圧力になり得る。このように、日本経済の見通しは不透明である。こうした中、産業構造の変化に適応できるように企業は体質を変えていくことが求められている。働く人にとっても大きな変化であることから、これに適応し、しっかりやる気を出して働いてもらえるよう環境整備を進めていく必要がある。ただ業績が良いからということではなく、収益が拡大した企業は賃上げに前向きに取り組み、働く人のやる気を高め、企業体質を強化し、変化に対応していくことが重要である。

物価、消費の底上げといった観点から、政府が賃上げを経済成長戦略の一つの柱にしたいと考えるのは当然であろう。そうした考え方については、経団連も共有している。そもそも賃上げは政府に要請されて取り組むものではない。労使の話し合いを通じて、従業員の処遇を改善していくというのが基本スタンスである。政府も経済界のこのスタンスを理解していると思う。

【教育改革】

新卒一括採用に関して問題提起をしたとき、大学教育の改革についても併せて求めた。それに関する提案を間もなく公表する。大学教育の問題は、無論、企業側にも責任があるが、社会生活を送るにあたってのベースとなるリベラルアーツやデータサイエンスの基礎となる数学は在学中に最低限勉強してほしいと要望している。加えて、大学と経済界が直接意見交換するチャネルの開設も提案している。

大学は大変幅広い機能を持ち、重要な役割を担っている。知を育む場であり、大変貴重な社会の財産である。そのような存在であるからこそ、経済界からも意見を出していきたい。そもそも企業にとって最も重要な経営資源は人材である。人材育成は一企業の中だけで完結できるものではない。大学のみならず、他の企業とも連携しながら、キャリア形成の体験の場を作ることは重要である。採用の問題はその一側面に過ぎない。経済社会が発展するためにどのような人材が求められるのか。具体的にどのようなスキルを持ってもらいたいのか。どのような物の見方をしてほしいのか。経団連の考えを明示していく。

【国際リニアコライダー】

わが国が国際リニアコライダーという国際機関のホストになることで、日本に外国から研究者が集まり、技術が集積していくといったメリットが期待される。ホスト国としてリニアコライダーの研究開発に貢献していくことは大変有意義である。ただ、資金の確保が大変難しい課題となっていることは承知している。

【企業の品質を巡る問題】

昨年から企業の品質を巡る問題が続いているが、これは日本企業への重大な警鐘であると認識している。品質は現場に密着した課題であり、日本の現場力に陰りが出てきたと見ることもできる。あるいは、大量生産を前提とする高度成長期の生産モデルから脱皮し、新たな現場づくりを目指す時期に来ているのかもしれない。それが手つかずのままであるため、経営層と現場との間に認識のギャップが生じているのではないか。看過できない事態である。

【G20】

最近の首脳会談などを見ていて改めて感じるのは、トランプ大統領は二国間のディールに持ち込んで物事を解決しようという傾向が強いということである。ただ、G20サミットではAPEC首脳会議と違って、首脳宣言を取りまとめることができた。バイではなく、マルチの場でも一つの文書ができたのは成果である。他方、今後は従来とは違った形で通商を巡るルール作りが進んでいくのではないか。なお、米中の問題は貿易摩擦だけの話ではなく、両国によるグローバル市場での覇権争いといった戦略的な要素が絡んでおり、根が深いと見ている。日本はG20議長国として、自由貿易推進を前面に押し出して問題提起をし、貢献していく必要がある。

【会長就任から半年】

経団連の活動範囲は広い。3つの重点課題(Society 5.0、構造改革、民間経済外交)への取り組みを進めてきた。各々で手ごたえを感じているが、大変な仕事だという実感もある。政府との関係について、距離がどうこう言われるが、そうした見方は今の時代にふさわしくない。官民が目標を共有して、力を合わせて重要課題に取り組まなければ達成できない。

以上

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