会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における十倉会長発言要旨

2022年5月23
一般社団法人 日本経済団体連合会

【日米首脳会談】

国際情勢が緊迫する中、両首脳の間で様々な重要政策課題が話し合われ、認識が共有された意義は極めて大きい。とりわけ、①IPEF(インド太平洋経済枠組み)への日本の参加表明、②日本の国連安保理常任理事国入りへのバイデン大統領の支持、③日本の防衛力強化へのバイデン大統領の支持、④次回G7首脳会合の広島開催、の4点は注目すべき成果である。

【IPEF(インド太平洋経済枠組み)】

IPEFは、インド太平洋地域に自由で開かれた経済圏をつくるという米国の意気込みの表れであり、歓迎する。貿易のみならず、先端技術、デジタル、サプライチェーン強靭化といった経済安全保障に関わる重要事項、気候変動対策など幅広い分野を対象とする枠組みのようだ。日本がいち早く加わることにより、アジアの国々の参加を促すことになろう。

〔米国のTPP復帰について問われ、〕米国にはTPPに戻ってきてほしい。まずIPEFを進めることが現実的である。第一歩としては良しとすべきであろう。

〔米国がマルチの枠組みに回帰しているという認識か、と問われ、〕バイデン大統領就任時、「America is back」と言われた。IPEFはその姿勢を示すものの一つである。パンデミックや気候変動への対処には、国際協調が不可欠である。まずは価値観を共有する国々が、競争しつつ協調すべきである。世界には様々な価値観を持つ国があるが、異なるからと言って永久に排除することは望ましくない。協調しなければ地球規模の重要課題は解決できない。

【日本の防衛力】

日米安保の実効性をより高め、自国をしっかりと守るために防衛関係費を増やしていくということは理解できる。一挙に対GDP比で2%に増やすということではないのではないか。

〔防衛関係費増大と専守防衛の関係について問われ、〕現実的、実効的に考えれば、抑止力の強化は必要である。専守防衛をめぐる議論は、サイバー攻撃や極超音速ミサイルといったものが現実化している現在の状況を予測できない頃に始まっている。G7首脳会合の広島開催には、核なき世界を目指すという意志が込められているのではないか。

【GX経済移行債(仮称)】

必要な政府資金をGX経済移行債で先行して調達し、速やかに投資支援に回すという総理のご英断を歓迎する。GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向け、民間が主体的に投資に取り組むが、投資環境整備の呼び水として、国債発行等により、年平均で約2兆円の政府資金を投ずる必要がある。

【女性活躍推進法の省令改正(男女賃金差の開示義務付け)】

男女賃金差の公表は、企業で継続的に働き活躍することを志す女性にとって、最適な職場を見つける指標となるのと同時に、女性活躍支援に積極的に取り組んでいる企業にとって励みになる。双方にとって良いことであり、支持する。

〔男女賃金差と経済成長の関係について問われ、〕人口減少下、日本経済を活性化していく上で、女性の活躍推進は不可欠である。現状、夫婦間の育児時間は女性のほうが圧倒的に長い。女性が働きやすい環境の整備を一層進め、男女が真のイコールパートナーとなる社会を実現すべきである。

【外国人観光客の入国再開】

岸田内閣はコロナ収束後の出口戦略に向けて着実に前進しており、これまでの取り組みを評価している。総理は、6月には他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるようにすると表明されており、その一環として、入国者の1日の上限数を2万人程度とすることにしたのだろう。国民の納得を得て、さらに緩和されるものと大いに期待している。2万人というのはプロセスであり、これから5万人、10万人と増え、G7各国に遜色のない、自由で開かれた入国管理となることを待ち望んでいる。

【中国に対する認識】

世界は中国なしでは立ち行かず、中国もまた、世界なしではやっていけない。相互依存関係にある以上、価値観の違いがあっても、対話、交流を絶やしてはならない。今年は日中国交正常化50周年という節目の年であり、日本はこのスタンスで対応すべきである。

【経団連・日経連統合20年】

先達の大英断による統合であった。今井経団連会長は当時、労働問題と経済問題が密接不可分の課題となっていたことから、新たな時代に対応できる総合経済団体が必要であると明言されている。今の状況を正確に見通された、卓見である。現在、「人への投資」という言葉が成長戦略、賃金格差、社会保障、労働移動など様々なテーマで使用されている。これは労働分野と経済分野が密接不可分であることの証左である。今こそ総合経済団体の底力を発揮したい。

以上