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会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言 定例記者会見における十倉会長発言要旨

2023年11月20
一般社団法人 日本経済団体連合会

【賃金引上げ】

〔一部企業が既に来年度の大幅な賃金引上げを表明していることの受け止めを問われ、〕各企業が「賃金決定の大原則」に則り、労使交渉を経て自社の実情に適した賃金引上げを行うことが基本と考えている。ただし、一部企業が労使交渉を待たずに経営の意思として大幅な賃金引上げを発表することで、機運醸成にプラスの面があると思う。

〔中小企業の賃金引上げについて問われ、〕「パートナーシップ構築宣言」には、経団連会員企業のうちサプライチェーンの中核を成す、資本金100億円以上の企業の8割近く、時価総額ベースでは全会員企業の約9割が参画している。発注側、受注側を問わず、コストや付加価値を価格転嫁していくことをソーシャル・ノーム(社会的規範)にすべく、社会通念を変えていく必要がある。経団連の「企業行動憲章」の改定も検討していきたい。

〔実質賃金のマイナスが続く現状について問われ、〕実質賃金を公表している毎月勤労統計調査には、ベースアップは反映されるものの、定期昇給などの制度昇給は数値として十分に表れない。今年の賃金引上げ率(経団連集計:3.99%)には制度昇給が含まれており、うちベースアップ分は2%強と推定している。現在はコストプッシュインフレで(生鮮食品及びエネルギーを除く)コアコアの物価上昇率がプラス3.8%と、政府・日銀の目指す「適度な」物価上昇率プラス2%を大きく上回っており、ベースアップだけで対応することは難しい。企業による賃金引上げと、政府による給付金などの経済対策を両輪に、官民連携によるデフレからの完全脱却、賃金と物価の好循環の実現を目指すべきである。今年以上の熱量で賃金引上げに取り組みたい。

【日経平均株価】

〔日経平均株価がバブル崩壊後の最高値を一時更新した(20日)ことの受け止めを問われ、〕株の値動きは投機的な動きによるところもあり、諸手を挙げて喜ぶことはできない。一時的な株高をもって、日本経済がデフレから完全脱却し力強さを取り戻していると短兵急に結論を急ぎすぎるのではなく、評価にあたっては、中長期的に見る必要がある。

【外形標準課税】

〔総務省が検討する外形標準課税の制度見直しについて受け止めを問われ、〕外形標準課税を逃れるために意図的に減資することは、経営者の矜持が問われる行為である。資本金と資本剰余金の合計額が一定金額以上の法人を一律に外形標準課税の対象とすることは、本来の中小企業への大きな影響が懸念される。意図的な課税逃れと見られる事例に絞って対象にすべきである。

【四半期報告書廃止】

〔企業の四半期報告書の廃止などを盛り込んだ、改正金融商品取引法が成立(11月20日)したことの受け止めを問われ、〕四半期ごとに決算短信と四半期報告書の両方に対応することに企業は重複感を感じていた。第1・第3四半期について四半期報告書が廃止され、決算短信に開示が一本化されることを歓迎する。

【COP28】

世界の平均気温を産業革命以前に比べて1.5℃の上昇に抑えるには、2030年の温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減する必要があるところ、各国が約束した排出削減目標を完全達成しても2019年比5.3%の削減にとどまる、と国連報告書(11月14日公表)で推計されている。カーボンニュートラルは一国では成しえず、地球全体で取り組むべきであり、COP28の果たす役割は非常に大きい。

〔2050年までに世界の原子力発電の設備容量を3倍にする誓約をCOP28で表明すべく英米仏などが主導しているとの報道の受け止めを問われ、〕事実であれば、経団連としてはよく理解できる。各国固有の経済的、地理的な状況を踏まえてカーボンニュートラルを達成するには、多様な道筋があるが、原子力は人類の英知といえる。ゆくゆくは、原子力発電よりもはるかに安全で、放射性廃棄物もほぼ出ない核融合発電を実現すべきである。わが国は、核融合発電の一刻も早い実現に向け、技術開発を加速させなければならない。

【NTT法】

〔NTT法の見直しについて問われ、〕経済安全保障の重要性の高まりや、携帯電話等の急速かつ広範な普及など情報通信技術をめぐる環境の変化を踏まえ、近未来を視野に、必要な対応を行うべきである。その際、①事業者間の公正な競争環境、②わが国情報通信産業の国際競争力の強化、③経済安全保障、④ユニバーサルサービスの提供、の4点を確保することが不可欠である。その上で、NTT法を廃止するのか、廃止せず見直すのか、といった判断は政府に帰すると考える。

【内閣支持率】

〔内閣支持率が20%台と異例の水準に低下している現状について問われ、〕岸田政権は、グリーントランスフォーメーションの推進やデフレ脱却に資する総合経済対策など、待ったなしの政策を矢継ぎ早に遂行しており、また、外交も積極的に進めている。一つひとつの政策、外交活動は正しい方向であり、岸田政権の取り組みは評価に値する。内外情勢の変転が著しいなか、急な施策が求められることが多く、また、政策の背景も複雑であることから、政府の考えや狙いがよく伝わりにくい面もあるのではないか。個々の政策の目的・効果は何か、それが「新しい資本主義」など政府が掲げる大きなコンセプトの中でどう位置づけられるのか、といったことを国民に正確に理解してもらえるよう、わかりやすく、丁寧に情報発信することが肝要と考える。

【大阪・関西万博】

〔万博開催に否定的な国民の声が多い現状について問われ、〕コロナ禍や各地の紛争により、世界中の人々が、生命の尊さと、分断の時代における連携の大切さを身をもって感じている。大阪・関西万博は、まさに「いのち」をテーマとした意義深いものであり、多様性に満ちた世界を一つにつなげる意味合いもある。建設中のリングは、そうした理念のシンボルである。万博への批評は承知しているが、開幕まであと500日余りとなった今、そうした理念やコンセプトを体現させ、世界に訴えることが我々の使命と心得ている。今の時代に沿った価値を提供すべく取り組んでいる。完成した姿を見て、改めて大阪・関西万博を評価してほしい。

〔万博協会の執行管理について問われ、〕博覧会協会の理事会は、しっかりとしたコスト意識で執行管理している。会場建設費の精査に際しては、工事内容の見直しなどにより約160億円の経費削減を行った。今後、今まで以上に、役員全員で厳格な執行管理、コスト削減に努めていく。

以上

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