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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(6/24)における筒井会長発言要旨

2025年6月24
一般社団法人 日本経済団体連合会

【中東情勢】

〔イスラエルとイラン間の停戦合意が発表されてもなお、中東情勢の先行きが不透明であることへの所見と日本企業・経済への影響を問われ、〕今後は、当事国間での停戦手続きが順調に進むことを強く期待する。その際、中東に火種が残ることや、他地域へ影響が及ぶことがないかどうかを注視していく必要がある。日本は、原油の90%以上を中東からの輸入に依存しており、中東情勢が日本企業・経済に与える影響は極めて大きい。エネルギーの安定供給はもとより、サプライチェーン、人的交流への影響がどのように推移していくのか注視が必要である。企業間、政府との連携を密にして、対応していくことが求められる。

〔万一、今後ホルムズ海峡が封鎖された場合の見方を問われ、〕イラン議会が同海峡封鎖を承認したということだが、どのような推移を辿るのかを注視したい。そのようなことにはならないように、わが国としては日米のパートナーシップの下で外交努力を尽くすことが重要である。

【東京都議会議員選挙】

〔6月23日投開票の東京都議会議員選挙の結果の受け止めと、同選挙結果に対する「政治とカネ」の問題の影響を問われ、〕都民の判断の結果と受け止めている。第1党となった都民ファーストの会は、政策を丁寧に有権者に訴求し、結果として支持が浸透したと捉えている。一方で、自民党は議席を大きく減らしたが、政治資金の問題が背景のひとつとして指摘されている。自民党には、選挙結果を踏まえ、今後緊張感をもって政権運営にあたっていただきたい。

【参議院選挙】

〔7月20日投開票の参議院選挙で重要視する点を問われ、〕同選挙は、国政を左右する重要な選挙と認識している。国際情勢が不透明である中、政策を前進させるような論戦を期待したい。各党は、多岐に亘る項目を盛り込んだ公約を掲げており、力が入っていると承知しているが、国民目線からみた一番の争点は、物価高対策であろう。消費減税や給付金の是非が主な論点となるのではないか。

一方で、参議院議員の任期は6年と長く、中長期的な事項についても論点となることを期待したい。例えば、賃金引上げの土台となる生産性の向上や、潜在成長率の引上げにつながる改革はもちろんのこと、社会保障制度改革や、財政運営のあり方にも論戦が及んでほしいという期待も有している。

【企業・団体献金】

〔今通常国会で、企業・団体献金の見直しについて結論が出なかったことの受け止めを問われ、〕民主主義に必要なコストの負担のあり方と、政治資金の透明性の確保をめぐる重要な議論であり、引き続き議論を尽くしていただきたい。経団連としては、民主主義を適切に維持していくためには、相応のコストを要することから、企業による政治寄附は社会的役割の一環として重要性を有するというスタンスに変わりはない。

〔自民党を含む主要政党の政策評価と政治寄附実施の呼びかけのあり方を問われ、〕例えば、イノベーションや、選択的夫婦別姓等の各論について、主要政党の政策評価を行った上で、大枠での議会制民主主義という政治体制を護持していく観点も踏まえ、総合的な判断に基づいて、政治寄附の実施の呼びかけをしかるべく行っていく。

【日米関税交渉】

〔米国による相互関税の上乗せ分の適用停止期限を7月9日に迎える中、日本政府のとるべき対応を問われ、〕日米間の合意には、依然として距離があり、双方の認識が一致しない点が残っていると感じている。一方で、G7サミットの機会を捉えて、首脳会談が実現したことは、担当閣僚間で引き続き協議する上でも意義深い節目であったと考えている。今後の担当閣僚間の協議に向けて、中長期の観点から、国益を損なうことがないよう、粘り強く交渉いただくことを期待している。相互関税、品目別関税等の各論の交渉状況は承知していないが、あくまで一連の関税措置の撤廃を求めることを基本としつつ、適切に判断し、交渉されるであろう。

〔適用停止期限が迫る中で、本当に「じっくり急ぐ」というスタンスで交渉に臨むべきかと問われ、〕今後の交渉に向けて、もちろん期限の問題はあるものの、国益を損なうことのないように交渉に臨むべきという思いを「じっくり急ぐ」という言葉に込めており、このスタンスを貫くべきである。

〔現時点でのトランプ関税の日本企業・経済に対する影響を問われ、〕日本企業は、当面は収益の下振れリスクに直面するとともに米国への積極的な投資判断を固めることもできていない。また、中長期的な視点からの経営のあり方、すなわち事業ポートフォリオの見直しについても、今回のリスクに直面して、従来にも増して取組みを進める必要があるという声を聞いている。

一方で、トランプ関税は、日本経済に現時点で大きな影響を与えている訳ではない。設備投資や企業収益が堅調に推移する中で、日本経済は緩やかに持ち直していると認識している。こうした状況下で、日米関税交渉の行方は大きな不透明要因であり、特に影響の大きいと考えられる自動車業界を注視したい。また、不確実な状況にさらされている中小企業に対しては、国内での適切な対応を期待する。

【日本製鉄によるUSスチールの買収】

〔日本製鉄によるUSスチール買収の成功に対する評価を問われ、〕長い期間に亘って、USスチールの買収交渉を進め、今回合意に至ったことを大いに歓迎する。根気強い交渉に敬意を表したい。本買収は、将来にわたり、米国における産業競争力強化や、雇用の確保にくわえて、日本産業界のポジション向上にも貢献し、日米のパートナーシップを強化する軸になると思う。

なお、今回の買収成功が日米関税交渉を良い方向に後押しすることを期待するが、実際にどのような影響を与えるかは分からない。

【SDGs】

 〔「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」のSDGs達成度ランキングで、日本の順位が昨年の18位から19位に後退し、欧米諸国に劣後していることの理由、とりわけ「ジェンダー平等」や「気候変動対策」で取組みが遅れている理由を問われ、〕国会議員の女性比率の低さや、男女の賃金格差等を理由として、「ジェンダー平等」で劣後しているとの評価を受けている。経団連は、女性の活躍について、2030年までに女性役員比率30%を目指す運動「2030年30%チャレンジ#Here We Go」を展開しており、個社の取組み姿勢は進化を続けている。役員に占める女性の割合は、昨年7月時点で、政府がターゲットとする東証一部上場・プライム市場の上場企業で15.6%まで増加しており、着実に「ジェンダー平等」に向けた取組みは進んでいる。また、「気候変動対策」について、日本は、欧州に比べて、化石燃料の使用量の削減が進んでいない。一方で、グリーントランスフォーメーション(GX)、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブの一体的推進という形で、エネルギー源のポートフォリオも考慮しながら、産業活動や国民生活に大きな影響を与えることのないよう気候変動対策に取り組んでいることに留意が必要である。

〔6月の会長・副会長会議でのSDGsに係る議論の模様と今後の経団連としてのSDGs達成およびポストSDGsに向けた取組みについて問われ、〕経団連としての考え方や取組みをいずれまとめて公表したい。先般、SDGs達成および2030年以降のポストSDGsに向けて、企業としてどのようにリーダーシップを発揮していくかという基本的な考え方を副会長と共有した。具体的には、5つの基本的な考え方を基に取組みを進めていきたい。例えば、社会貢献でもあるサステナビリティを企業にとっての成長機会と捉えて、経済成長と国民生活のウェルビーイングの向上につなげようという考え方が挙げられる。また、マルチステークホルダーとの対話や連携の強化といった考え方も有しており、現在、経団連は新たなステージに向けて取組みを深化させようとしている。

【株主総会】

〔有価証券報告書の開示の現状とあるべき姿に関する所見を問われ、〕開示は、堅実な実務が伴うことが大前提である。開示内容を間違えると、レピュテーションを損ね、企業価値を毀損することにもなりかねない。足もとで、本年は経団連会員企業でも、有価証券報告書を株主総会の前日ないし数日前に出すよう対応したケースが増えたと認識している。しかし、今後、サステナビリティ情報開示制度が導入される等、有価証券報告書のボリュームが大幅に増加することが想定される。こうした中、実質的に意味のある、投資家にとっても十分な分析期間を確保できる開示について、企業の自助努力だけで実現することは現実的ではない。本来の目的を達成するためには、企業、投資家、行政当局、関係機関といった各主体の横断的なコミュニケーションを行いながら、会社法と金融商品取引法の制度横断的な改革を前向きに進める必要がある。

〔「骨太方針2025」における「有価証券報告書の株主総会前の開示の後押しにつながる制度横断的な検討」という記述は、経団連の主張に即したものかと問われ、〕経団連は、制度横断的な改革を主張しており、その趣旨が「骨太方針2025」に盛り込まれたものと評価している。

【日産自動車】

 〔日産自動車の株主総会で、株主から経営陣への批判が相次いだことを受け、同社の経営再建に対する所感を問われ、〕同社は、地域社会、ひいては日本経済に大きな影響を与えている企業であり、是非経営再建プロセスを確かなものとしていただきたい。

株主総会の詳細を把握しておらず、具体的なコメントはできないが、株主との建設的な対話を通じて、株主の声を収集し、経営課題の解決を図ることで、経営再建、中長期的な企業価値の向上に結び付けていくことが重要である。

【フジテレビ】

〔フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの株主総会の開催(6月25日)に際し、問題発覚以降の同社の取組み姿勢に対する評価と日本生命のCM出稿再開に対するスタンスを問われ、〕政府は、同社が本年4月末に公表した「再生・改革に向けたプラン」を着実に実行に移していると評価しているものと認識している。同社には、プランの実現をもって信頼回復に努めていただきたい。

もっとも、個々の企業のCM出稿再開は各社の経営判断である。株主総会に注目することは重要だが、同社が信頼回復に向けた道筋をどのように描き、実現していくのかについて確証を得た上で、CM出稿を再開したい。株主総会を経てすぐに再開ということにはならないと思う。

以上

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