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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 東北地方経済懇談会後の共同記者会見における筒井会長発言要旨

2025年9月18
一般社団法人 日本経済団体連合会

【東北経済】

〔東北経済の現状と今後、データセンター誘致の進展等を踏まえた東北経済が持つ可能性について問われ、〕東北経済の現状は、企業による設備投資が牽引役となる下で、生産も増加傾向にあり、全体として持ち直している。また、こうした状況には、半導体関連企業の集積が寄与しているという認識を有している。データセンターや電力、工業用水等の産業インフラ基盤を含め、東北の地域資源や特性を活かした企業の誘致・立地・集積による地域経済の活性化を期待している。

また、女川原子力発電所2号機の再稼働は、関係者の尽力による安全性の確保、地元自治体および住民の理解が相まってのことである。是非、こうした動きが、東北地方の他の原子力発電所にも良い影響を与え、好循環を発生させ、さらに日本全国の原子力発電所の再稼働に繋がっていくことを期待している。

加えて、コメをはじめとした農業は東北の基幹産業の1つである。スマート農業を通じた生産性向上への取組みが農業全体の活性化に結びつき、地域経済の活性化に寄与することが期待される。

【新たな道州圏域構想】

〔経団連が「FUTURE DESIGN 2040」(以下、FD2040)で示した「新たな道州圏域構想」に対するスタンスと今後の取組みの方向性を問われ、〕広域連携の推進が鍵となり、「新たな道州圏域構想」に結び付いていくという考え方をかねてから主張してきた。これまで、東北地方経済懇談会をはじめ各地域での懇談会に参加した際には、各地域の経済団体、自治体、大学等が一体となって各地域の活性化に向けた広域ビジョンを掲げ、着実に取り組もうとしている姿を目の当たりにしてきた。

経団連として、引き続き、こうした広域ビジョンを踏まえながら、「新たな道州圏域構想」のコンセプトの社会への浸透を図り、各地域の創意工夫による切磋琢磨が進むような風土づくりに取り組むとともに、政府にも働きかけを行う必要があるとの思いを新たにした。政府も「新たな道州圏域構想」の考え方と軌を一にした「広域リージョン連携」を掲げており、新たな支援制度を今月初めに創設したところである。本日の懇談を通じて、広域連携の重要性を改めて感じたところである。

【女川原子力発電所の視察】

〔明日(9/19)の女川原子力発電所の視察に際し、経団連会長としてのねらいと施設内でどのような点に着目したいかを問われ、〕経団連がFD2040の実現に向けて取り組む上で、私は会長就任時に5つの重点政策テーマに加えて、その実現の基盤としてエネルギー政策の重要性を強調した。すなわち、国際的に遜色ない価格での安定的なエネルギー供給体制を確立し、エネルギー安全保障を確保することが様々な政策実現の基盤であるという思いを有している。2050年カーボンニュートラルの達成、エネルギー安全保障、産業競争力強化、ひいては経済成長を実現する上で、原子力の活用の重要性は極めて大きいと考えている。この趣旨は、政府の「第7次エネルギー基本計画」にも盛り込まれていると理解している。こうした認識の下、経団連会長である私が、再稼働した女川原子力発電所を視察することは、政府が目指す方向性の実現の一助にもなると思っている。明日の視察では、再稼働に際しての東北電力や多くの協力企業による安全対策への徹底的な取組みはもちろんのこと、地元自治体や住民の理解を得る努力、そして理解が得られた経緯や取組み、苦労などを直接見聞したい。 その上で、視察を通じて得られた知見を、東北地域の他の原子力発電所や全国の原子力発電所の再稼働に繋げるための糧にしていきたいと考えている。

【経済対策】

〔米国による自動車関税が15%に引き下がったことを受けて、今後政府に対してどのような経済対策を求めていきたいかを問われ、〕まずは、自動車関税合意の着実な実施を求めていきたい。経済への影響は少なくはないので、来年度の概算要求において、関税措置の影響に対応するために予算の増額が盛り込まれていると承知している。その実現に向けて、政府内部の調整が図られることを期待する。

【労働移動の推進】

〔「2026年版経労委報告」に今秋取りまとめ予定の労働移動の推進策を反映させる方向であることのねらい等を問われ、〕各企業の努力を通じて、賃金引上げの力強いモメンタムが実感として「定着」し、数字の上でも確認できている状況にある。こうした中、労働移動の推進という観点から、他の先進国の状況を眺めると、一人ひとりの働き手が、複数の職場を移りながら、自身の価値とやりがいを高めていけるような社会が実現できている。日本においてもそのような傾向が出てきていることは事実である。今後、労働移動の円滑化をさらに推進していくためには、その前提となる柔軟な働き方やダイバーシティの推進等に継続して取り組むとともに、働き手一人ひとりの働く権利をしっかりと守りながら、総合的に検討していくことが不可欠と考えている。労働移動は、社会全体、そして働き手個人の双方に価値をもたらすものでなければならない。企業や経済全体に新たな価値をもたらす好循環の創出に資する労働移動の推進を目指して、必要な施策を考えていきたい。

【米国の利下げ】

〔米国の利下げに伴う日本経済への影響を問われ、〕利下げ自体は、既にマーケットの期待に織り込まれており、実際に利下げによって将来の不確実性が低減したことで、足もとのマーケットの動きに結び付いたと捉えている。米国の利下げが年内1回だけではないという見方が多数を占めており、マーケットが活況を呈する傾向は当面続き、そのプラスの影響は日本経済にも波及するだろう。一方で、日米関税交渉が合意に達したとは言え、これまでよりも企業活動に負担がかかることは事実であるため、短期的には企業収益や、日本経済全体にとって厳しい局面が続くと考える。しかし、こうした局面がどの程度の期間続くかと言えば、長期には及ばないのではないか。これまで25%とされた相互関税率が15%で決着し、予期されていたよりも負担感は軽減されるだろう。この微妙なバランスの下で、短期あるいは中期の比較的短い時間軸で、関税措置による重荷を克服して、企業収益の回復を伴いながら、景気が浮上してくるのではないかとみている。

【日経平均株価】

〔本日(9/18)の日経平均株価の終値が過去最高値を超えた背景を問われ、〕基本的に、世界経済の大きな流れが意識されたと理解している。米国の利下げ自体は、マーケットの期待に既に織り込まれていた。加えて、日米関税交渉が合意に到り、税率自体は25%から15%に決着をみたことで、相互関税による負担が従前と比べて重くなるとは言え、将来の不透明感や不確実性が一定程度緩和されたことも寄与していると考える。さらに、実体経済面では、企業の設備投資が牽引役となり、日本経済が堅調に推移していることも株価上昇につながっているのではないか。もっとも、株価自体は、短期間で変動するものであることに留意が必要である。経団連が掲げている中長期の重要課題に対して全体最適の視点から取り組んでいくことを政府としっかりと共有し、常にマーケットから見られていることを意識しながら、必要な施策を進めていくことが重要である。

【今後の経団連の取組み】

〔東北地方経済懇談会を終えて、今後どのように経団連としての取組みを進めるかを問われ、〕東北地方経済懇談会を通じて、東北経済連合会の皆様と経団連が様々な意見交換を行うとともに質疑に応じた。今回は、「人口減少時代の地域イノベーション~2040年を見据えた、選ばれる地域・企業を創る経済界の挑戦~」という基本テーマを設定した。日本経済が活力を維持しながら持続的な成長を遂げていく上で、参加された各企業が自社の成長、自社の従業員の繁栄を願って日々経営に当たっておられることを痛感した。この企業の有する姿勢や思いを大切にしながら、経団連はそれらを集約して、必要な政策を実現していく。日本に山積している重要課題を一つずつ全体最適の視点から解決に向けて努力していくことが極めて重要であり、本日の参加企業の皆様の心根とも通底していると考えている。

以上

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