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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(1/27)における筒井会長発言要旨

2026年1月27
一般社団法人 日本経済団体連合会

【消費税減税】

〔衆議院選挙において殆どの与野党が消費税減税等を公約として掲げ、争点となっていることへの受け止めを問われ、〕消費税は社会保障を支える重要な安定財源という考え方に全く変わりはない。政治的にも経済的にも社会的にもそのように位置付けられてきた点を十分に踏まえ、今後「国民会議」での徹底的な議論が必要である。消費税減税を検討する上では、市場の信認の維持と社会保障の持続性の確保の観点から、代替財源の明確化が大前提となる。選挙後、速やかに「国民会議」を設置し、システム対応、中小事業者への影響、そして給付付き税額控除との関係という論点とあわせて代替財源のあり方についても議論・検討を尽くすべきである。

〔消費税減税等を公約に掲げる政党は、十分な財源確保策を提示していると認識しているかと問われ、〕高市総理はいくつかの財源候補に言及しているほか、財源確保策に言及している党はあると理解している。是非消費税減税等を公約に掲げる政党には、市場の信認の維持とともに有権者からの理解と納得を得ることのできる説明を今後も尽くしてほしい。そして、「国民会議」で徹底的に議論・検討すべきである。

〔高市総理が消費税減税の財源の1つとして租税特別措置の見直しを挙げていることの是非について問われ、〕高市総理は、「強い経済」の実現に向けて、「危機管理投資」「成長投資」を大胆に推進する観点から、来年度の各種予算・税制措置を講じた他、複数年で機動的な財政出動を可能にする予算編成も目指している。こうした成長戦略の推進の方向性と消費税減税に係る財源確保策の間の整合性をどのように確保するかが論点の1つと認識している。投資促進に関わる法人税関係の租特はすべて重要であるが、仮に政治として消費税減税の実施を決断するのであれば、この点をしっかり意識して議論に臨みたい。

〔さらに、代替財源として法人税率そのものの引上げをどのように考えるかを問われ、〕「FUTURE DESIGN 2040」(2024年12月)では、税・社会保障の一体改革の推進に際し、応能負担の徹底でも財源確保が十分でなければ、消費増税、あわせて企業の応分の負担等の検討に言及している。今後「国民会議」で、消費税減税に伴う代替財源確保のあり方、減税に係る時間軸、そして減税効果に関する議論・検討を尽くし、政策としての適切性の判断の下で確立されるのであれば、企業による応分の負担増のあり方を検討の俎上に載せることはやぶさかではない。

〔飲食料品に限った消費税減税の効果を問われ、〕各国の消費税率・付加価値税率の状況をみると、食料品軽減税率の状況は異なっている。現時点で、飲食料品だけに限った消費税減税の効果について詳細に分析することはできていないが、特に低・中所得の方々の暮らしを下支えする側面はあろう。一方で、飲食料品に限った消費税減税をどのような時間軸で実施するかという点に加えて、中小事業者、特に飲食業に携わる事業者の価格設定行動にどのような影響を与えるかという点も十分に検証されなければならない。これらの論点を含めて、様々な課題を「国民会議」に提起し議論・検討を尽くすことが、結果として国内の有権者の目線を含めた内外からの市場の信認につながると考えている。

【為替の動向】

〔レートチェック実施の報道を受けて、為替が急激に円高に動いたことへの受け止めと選挙期間中に為替に急激な変動が生じた場合の対応についての考えを問われ、〕レートチェック実施の有無は承知していないが、行き過ぎた円安が一定程度是正されたことは、肯定的に受け止めている。各企業の事業計画の前提となる想定為替レートは、足もとで概ね1米ドル145円から150円の間で設定されていると理解している。このレンジに実際のレートがさらに近づき、定着すれば、物価高の緩和にも好影響を及ぼすのではないか。

衆議院選挙期間においても、世界情勢が激動していることを踏まえ、外交面はもとより市場の変動に対する毅然とした目配りが必要である。その際、どのような論戦が行われているかを世界も注目していることに留意して、市場の信認の維持を意識した発信を行い、為替相場の動きを注視すべきである。

〔中長期的な為替の動向に関する考えを問われ、〕今後の為替相場の動きには、日米の金融政策の方向性も影響すると考えられる。日銀は引き続き適時適切に判断されると思うが、米国の金融政策の方向性に応じて、為替相場は変動し得る。仮に、為替が激しく変動し、円安が過度に進行する場合には、為替介入の実施は手段の1つとしてあってしかるべきである。ただし、為替介入は、相場が急変動した場合の一時的な対処法であり、経済のファンダメンタルズそのものを高めることがより重要である。そのためにも、経団連の掲げる「投資牽引型経済」を定着させ、中長期的な視点から潜在成長率を引き上げることが必要である。これにより、日本経済の実力に見合った形での為替レートを実現することにつながると確信している。

【2026年春季労使交渉・協議】

〔「デマンドプル型インフレ」への移行において、働き手に対する積極的な分配が必要な理由を問われ、〕過去30年以上続いたデフレの下で、企業は株主への利益配分と働き手の雇用維持を重視するあまり、ベースアップを含めた賃金引上げに慎重だったと捉えている。しかし、わが国は労働供給制約という大きな壁に直面しており、多様な人材の就労促進が重要である。こうした中、企業としても優れた人材の確保・定着が課題であり、賃金の魅力を高めながら、人材育成・人的資本形成を推進して企業価値の向上につなげていくことが一層必要となっている。まさに、企業の成長戦略の中に、賃金引上げを含む人的投資が位置付けられるようになっていると理解しており、足もとにかけての賃金引上げの力強いモメンタムにもつながっている。

現在、日本経済全体で需給ギャップはほぼ解消しているが、今後は需要の増加に見合った形で供給力を強化することも重要となる。そのためには、設備投資とともに人的投資の拡大を通じて、労働供給制約の壁を乗り越えていくことが求められる。こうした観点から、2026年版経労委報告では、ベースアップ実施の検討を「賃金交渉におけるスタンダード」と打ち出しており、「デマンドプル型インフレ」への移行の中で、重要な意義を有していると考えている。

〔仮に2026年春季労使交渉を通じた賃金引上げの目安を5%前後とした場合のベースアップの占める割合に関する想定を問われ、〕連合のデータによれば、5%以上の賃金引上げのうち約6~7割をベースアップが占めていると理解している。過去30年間を振り返ると、ベースアップが実施されない時期もあったが、足もとにかけてベースアップが牽引役となり5%以上の賃金引上げを実現したという流れをしっかりと定着させることが重要である。こうした思いもあって、2026年版経労委報告では、賃金引上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」を掲げ、ベースアップ実施の検討を「賃金交渉におけるスタンダード」と打ち出した。今年の春季労使交渉・協議を通じて、1社でも多くの企業でベースアップが実施されるように取り組んでいきたい。今後、経団連は全国約50ヵ所で中小企業も対象に含めて、2026年版経労委報告に係る講演を実施予定である。一連の周知活動を通じて、労働供給制約に直面する中での人的投資拡大の重要性を訴求し、ベースアップが牽引役となる賃金引上げの実現に寄与したい。

【衆議院選挙】

〔衆院選において与野党にどのような論戦を期待するかを問われ、〕高市総理は、総理就任以降矢継ぎ早に打ち出してきた「危機管理投資」「成長投資」に係る各種政策の是非とあわせて自民党と日本維新の会による連立政権の枠組みに対する国民の信を問うべく、解散を決断されたと理解している。有権者の関心が高い物価高対策に関する論戦が展開されているが、減税や分配に傾斜して個別最適の議論に陥っているようにも見受けられる。一方で、社会保障制度改革に対する有権者の関心も一定程度高いと理解している。国民が抱く将来不安を払拭するためにも、全体最適の視点から、税・財政・社会保障の一体改革に向けた中長期的な議論も今回の論戦の射程に含めていただくことを期待したい。

〔衆議院選挙の公示と春季労使交渉の事実上のスタートとされる連合との懇談会の開催が同日となったことへの所感を問われ、〕政治には、「政治空白」が生じないように、市場の信認を維持するように配意していただきたい。選挙後、速やかに来年度予算案の審議に入り、審議を尽くした後は迅速に執行していただきたい。仮に、来年度予算案の年度内成立が困難となるのであれば、つなぎの措置を十分に講じていただき、国民生活や経済に支障をきたさないようにすることが求められる。併せて、世界情勢が慌ただしく変化する中、選挙期間にあっても外交面での毅然とした目配りが不可欠である。

春季労使交渉はあくまで交渉事であり、衆議院選挙期間のスタートが直接的な影響を与える可能性はないと思われる一方で、各政党と労働組合の間には歴史的な関係もあるため、そうした点での影響はあるかもしれない。春季労使交渉に際しては、有権者であると同時に働き手・生活者でもある人々の暮らしを支えるという観点から、次期の賃金はどうあるべきかを重視して取り組む必要があり、この点を経済界としても心がけていきたい。

【プルデンシャル生命における金銭不祥事等】

〔プルデンシャル生命が顧客の金銭を詐取していた問題を受けて、筒井会長の出身企業の同業としての所感を問われ、〕個別企業に関する事案であり、全容を詳細に把握できている訳ではないので、コメントは差し控えたい。しかし、報道を見る限り、生命保険業界の信頼を揺るがす事案であり、同業界に長らく関わってきた者として極めて重く受け止めている。同社には、発生した事案に真摯に向き合い、同社のみならず生命保険業界全体の信頼回復に向けた努力を積み重ねてほしい。

残念ながら各事案の性質は異なるとは言え、私の出身企業である日本生命を含めて業界の信頼性を揺るがす不祥事が発生している。昨年報道された日本生命の事案について、改めてこの機会にご心配をおかけしたことをお詫びしたい。

以上

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