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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(4/20)における筒井会長発言要旨

2026年4月20
一般社団法人 日本経済団体連合会

【防衛装備移転】

〔政府が今週にも防衛装備移転三原則の運用指針の改定案を閣議決定する見通しであることへの受け止めを問われ、〕安全保障環境が厳しさを増す中、同盟国・同志国との連携強化と地域の平和・安定への貢献は重要であり、適切な防衛装備移転はその有力な手段の1つと認識している。

今回の見直しの具体的な内容はまだ明らかになっておらず、今後精査していきたいが、単なる輸出拡大が目的ではなく、あくまで同盟国・同志国との連携強化が主目的と理解している。これが、ひいてはわが国の防衛生産・技術基盤の維持・強化にも資するものと認識している。実効性のあるルールとするためには、政府主導の下での一層の官民連携強化が求められる。政府には、国内外への丁寧な説明、適切な装備品の移転管理、国内調達と海外展開を両立する戦略の策定、そして国内生産・技術基盤の維持・強化への支援等を求めたい。

〔さらに、同運用指針の改定に伴う関連産業への期待を問われ、〕現時点では、防衛装備品の海外移転は僅かなものにとどまっていると認識している。今後、国内での防衛生産・技術基盤を維持・強化する必要があることを前提とすれば、国内調達と海外展開の間で適切なバランスを確保することが不可欠である。こうした前提に立ち、デュアルユース(軍民両用)を推進していく中で、民間の生産拡大の可能性を見通していきたい。

〔同運用指針の改定に伴い、従来の国内調達体制の見直しの必要性を問われ、〕安全保障環境が厳しくなる中で、一義的には、わが国の防衛体制の確保に向けて、官民で十分に議論を尽くすことが必要である。こうした中、関連産業の供給能力の維持・強化に向けて、国内投資が必要な局面も生じると理解している。他国との防衛装備品の共同開発も既に具体化しつつある。国内だけではなく、同盟国・同志国との連携という観点から、防衛装備品の供給能力の維持・強化が装備品の移転にもつながっていく。現時点では大きなビジネスにはなりにくい領域であるが、今回予定されている運用指針の改定は、地域の安全保障環境の基盤を確立する契機となると考えている。

【中東情勢】

〔戦争終結に向けた米国とイランの再協議を巡る直近の動向に対する見解を問われ、〕事態の不透明さは依然として変わっておらず、先行きを見通すことのできない状況を深く憂慮している。米国とイランの再協議が何としても実現されることを望む。再協議が実現した際は、ホルムズ海峡の航行の安全確保を含む早期の事態鎮静化に向けた前進が見られることを強く期待している。

〔中東情勢の緊迫化を受けて、石油・石油関連製品の流通の目詰まりに関する現状認識を問われ、〕石油・石油関連製品について、備蓄の放出、各社が保有する在庫の活用、そして官民を挙げた代替調達により、現時点で国内の供給量の確保に支障はないと理解している。

石油関連製品は、社会の至るところに存在し、サプライチェーンも多岐にわたり、多段階化しているものもみられる。こうした中、一部流通に滞りが生じている部分については、関係閣僚はじめ政府が事態の解決に向けて懸命に努力していると認識している。会員企業からは事態の長期化に伴う影響を懸念する声が聞かれ、既に価格改定に取り組んでいる企業も多々ある。価格改定が経済全体に波及して物価が上がることで、景況感が落ち込むリスクが強く懸念されている。政府においては、事態の長期化に備え、需給両面での総合的な検討が必要であろう。

〔さらに、仮にホルムズ海峡の封鎖が解除された場合における事態の正常化に要する期間への想定を問われ、〕ホルムズ海峡の周辺国を含めて石油関連施設の破壊もみられる中、仮にホルムズ海峡の封鎖が解かれたとしても、復旧・復興に数ヵ月を要するのか、あるいは1~2年を要するのかを見通すことはできない。一定期間こうした状態が継続することを見据えて、様々な政策面での検討が必要となろう。

〔中東情勢の緊迫化を踏まえ、今後の日本のエネルギー政策のあり方を問われ、〕事態の正常化に向けて、米国とイランの交渉が早期に妥結することがベストである。足もとでは官民双方の懸命な努力により、国内の原油等の供給量の確保に直ちに支障がない状況が実現している。一方で、そもそも日本は、中東地域をはじめとした海外からの化石燃料の輸入に大きく依存しているというリスクを抱えている。このため、金融市場でも特に影響を受けやすいという側面がある。今回の経験を踏まえれば、カーボンニュートラルを見据えたトランジションの段階では化石燃料が必要との前提の下で、調達先の多角化によりリスクを確実に軽減しつつ、長期的な見通しをもってエネルギーのベストミックスを追求することが重要である。その際、グリーントランスフォーメーション(GX)の推進やサーキュラーエコノミーの実現による資源循環を念頭に置きつつ、「投資牽引型経済」への転換を確実に実現することが今後大きな流れとして必要と考えている。

【金融政策決定会合】

〔来週27~28日に開催予定の日銀の金融政策決定会合に向けた展望を問われ、〕利上げの要否やそのタイミングは、日銀が適切に判断されると考えている。中東情勢の先行きに対する不透明感が払拭されない中、短期のみならず、中長期的に経済や物価に与える影響の程度や波及の範囲を現時点で予測することは非常に難しい。当面の間は、非常に不透明な要素が大きいのが事実であるが、日銀において最大限の情報収集やデータ分析を行った上で、適切な判断を下されると考えている。

〔なお、先週16日のG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、金融政策を巡って、「今は様子見」とする意見が多く出たと聞いているが、中東情勢の先行きに対する不透明感と金融市場のボラティリティの大きさを背景としたものと受け止めている。いずれにせよ、日銀がどのような判断を行うかを注目していきたい。

〔仮に、次回の金融政策決定会合で利上げが見送られた場合、現下の経済情勢に照らして政策対応が後手に回る、いわゆる「ビハインド・ザ・カーブ」の状態に陥ることになるかについての見解を問われ、〕明確な回答は難しいが、その都度行われる政策判断が事後的にどのように検証されるかに尽きる問題と考えている。現在日本経済は、物価上昇と景気の停滞が併存するスタグフレーションに陥るリスクに直面している。政策対応が適時に行われたか否かを検証する際には、将来の各時点から現在を振り返ったときに、スタグフレーションが適切に認識されていたか否かが1つのポイントになろう。難しい状況ではあるが、こうしたことも意識しながら、今後日銀として適切に判断を行うものと認識している。

【分厚い中間層】

〔日本経済を支えてきた中間層が縮小した最大の要因について所見を問われ、〕バブル崩壊、それに続く金融危機を受けて、厳しい経営環境に直面する中、コスト削減に強く傾斜したことが要因として挙げられる。雇用の面では、雇用の維持を優先する一方で、賃金引上げに経営者の意識が十分に向かなかった面がある。また、生産・投資の面では、グローバル化の流れで国内よりも海外に収益の源泉を求めていった。こうした個々の企業の行動が、日本経済全体では縮小均衡をもたらした可能性がある。その結果として、特に低所得者層を中心として中間層の趨勢的な縮小につながったということを経済界として十分に認識する必要がある。

こうした観点から、経団連は、企業自らがマインドセットを転換して、国内の設備投資、研究開発投資、そして賃金引上げを含む人的投資を積極果敢に拡大し、「投資牽引型経済」の実現の必要性を掲げている。これを起点として、全体最適の視点から「成長と分配の好循環」をしっかりと回していくことで、分厚い中間層の形成にもつながると考えている。

〔さらに、正社員と有期雇用等労働者の格差是正に向けた同一労働同一賃金法制の見直しの必要性や労働分配率の向上に向けた考えを問われ、〕全体的にみれば、多くの企業が同一労働同一賃金法制を踏まえた対応を行ってきた。また、地域別最低賃金の大幅な引上げが続く中で、企業が賃金引上げや正社員化の推進等に取り組むことで、有期雇用等労働者の賃金引上げ・待遇改善は一定程度進展していると認識している。今後も、労働に対する適正な評価に基づいた賃金決定、正社員と同様の能力開発・キャリアップ支援、そして積極的な正社員登用等を通じて、引き続き有期雇用等労働者の賃金引上げ・待遇改善を経団連としても呼びかけていきたい。

なお、有期雇用等労働者の拡大の主な要因として、いわゆる非正規という働き方を選択して労働参加が進展したことが挙げられる。選択した理由として、総務省の調査によれば、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く、全体の3分の1超を占めている。これは労働の供給側の要因であるが、企業側ではコストの効率化の観点から有期雇用等労働者への需要を強めたという側面もあろう。経団連としては、賃金引上げの力強いモメンタムの「さらなる定着」には、雇用者の約4割を占める有期雇用等労働者の賃金引上げの実現が不可欠であり、これが結果として労働分配率の向上にもつながると考えている。

【裁量労働制の拡充】

〔厚生労働省の審議会において、裁量労働制の適用労働者に係る実態調査を検討するとの考えが示されたことへの受け止めを問われ、〕各種検討体で、裁量労働制の拡充に向けた議論が盛り上がる中、直近の実態を反映したデータが必要との認識は正しく、実態調査に取り組む必要がある。

〔さらに、本年夏の成長戦略の取りまとめに向けて、裁量労働制の対象拡大等をどの程度明確化していくべきかを問われ、〕裁量労働制の拡充を希望する対象業務としては、特定顧客に特化した商品等開発提案業務を指す「課題解決型提案業務」が挙げられる。例えば、顧客の課題を調査・分析し、そのソリューションとなるシステム等の商品・サービスを企画・開発し、提案する業務が考えられる。また、非対象業務が一部混在する業務への拡充にも期待したい。このほか、人事における「シェアードサービス業務」への拡充も求めている。これらの業務は、裁量労働制の対象にふさわしい業務として、会員企業からのニーズが高く、単なる営業への拡大を求めている訳ではない。

日本が直面する厳しい労働供給制約や国際的に見た労働生産性の低迷に鑑みれば、多様な労働者が活躍しやすい、より柔軟で自律的な働き方の導入が極めて重要な課題である。こうした観点から、本年夏の成長戦略の取りまとめに向けて、今後実施予定とされる実態調査の結果はもちろんのこと、会員企業からのニーズに即した形で、具体的な対象拡大のあり方が反映されるように取り組んでいきたい。

【「酷暑日」の名称決定】

〔気象庁が最高気温40度以上の日の名称を「酷暑日」と決定したことへの受け止めや、当該日に向けた対策の想定を問われ、〕気候変動を背景として、最高気温が40度を超える日が連続して発生することは、リスクとして想定しておかなければならない。何よりも人命が大切との認識に立って、働き手の健康確保やその家族の支援も視野に、安全衛生という枠にとどまらず、健康経営という大きな側面から、暑さ対策を企業経営の中に取り込んでいく必要がある。これは、サステナビリティにも関連する課題と受け止めている。

以上

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