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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(4/6)における筒井会長発言要旨

2026年4月6
一般社団法人 日本経済団体連合会

【中東情勢】

〔ホルムズ海峡の船舶の通航に対してイランが通航料を課しているとの報道があるなか、通航料に関し、日本として個別にイランと交渉すべきかと問われ、〕まずは、政府が事態の早期沈静化に向けて、国際的な協調とあらゆる外交努力を展開されていることを高く評価する。ホルムズ海峡に関する、40カ国以上が参加した外相オンライン会合では、英国によって通航料の拒否や経済制裁の検討などの議長声明が発出されたと承知している。

その上で、とりわけホルムズ海峡経由のエネルギー供給に依存しているわが国としては、一日も早いホルムズ海峡の開放が求められる。商船三井の船舶を含めて既に複数の船舶の海峡通過が確認されていることを踏まえれば、あくまで国際連携の上に立って、アジア諸国の連携を日本がリードする形で、イランとの外交交渉に臨んでいくことも選択肢の一つとして検討する必要があるのではないか。

なお、通航料に関して、航行の自由が原則であり、今回の商船三井の船舶の航行に通航料が課されていたかどうかは存じ上げないが、わが国としては、あくまで航行の自由を目指すべきと考えている。

〔原油やナフサの供給不安への対応として、医療等の重点分野に優先的に供給する仕組みづくりの必要性について問われ、〕現在、備蓄の放出、在庫の活用、中東以外からの代替調達により、国内の原油やナフサの供給量確保に支障はないと聞いている。しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化すれば安定供給に重大な影響を及ぼしかねず、強く懸念している。本日の会長・副会長会議においても、非常に活発な議論が行われ、長期化した場合の危機感が各副会長から表明されたところである。したがって、供給不安の長期化を想定した次の打ち手も検討していく必要があると考えている。ナフサの場合、非常にサプライチェーンが複雑で、影響が日用品にまで広く波及する可能性がある。早期に実態把握をした上で、状況に応じて、需給両面でどのような対策が必要となるか、優先的な供給といった仕組みづくりまで踏み込むべきかどうかも含めて、総合的な検討を急ぐべきである。

〔石油の節約の必要性について問われ、〕中東情勢は日々刻々、非常に緊迫化している。4月2日のトランプ米大統領の演説も非常に激しいトーンであり、非常に憂慮している。石油の安定供給に万全を期すべく、政府も備蓄の放出や代替調達先の確保といった努力を傾けていることを評価したい。

現時点で石油備蓄に余裕はあるが、余裕があるうちに、長期化を想定した、需給両面での総合的な検討を急ぐべきである。需要抑制策の検討に際しては、当然、マクロ経済への影響も斟酌しなければならない。また、検討にあたっては、省エネ・節電等に関し、経済界として必要な対応を政府に進言し、協力もしていく決意である。他方、需要抑制策の検討は、国民のマインドに大きな影響が出てくる可能性があるため、十分なアセスメント(評価)が必要である。混乱を回避し、冷静な対応を促すため、安心の確保という観点に留意した発信が必要であろう。

どのような節約の方法が考えられるのかという点について、具体的には申し上げないが、国際エネルギー機関(IEA)が例示した対応策も踏まえ、わが国の特徴も考慮した形での需給両面での対策の中身、さらに発動の条件や対象を十分に検討する必要がある。

〔節約策の実施に向けた政府からの打診や聞き取りの有無について問われ、〕現時点ではない。

〔事態がどの程度長期化すれば石油等の供給に大きな影響を及ぼすことになるのか、その期間の想定を問われ、〕今日の会長・副会長会議でターム(期間)の問題について意見や要望はなかった。企業ごとの製品在庫の日数といった諸要因や、業種、扱う製品の分野によって変わってくる。消費者の観点では、例えば衣食住に関わる分野で、具体的にどのような製品群にどの程度のタームで影響が出てくるのかについて、一定の検討が必要である。分野ごとの精緻な分析は難しいが、概略的な分析に基づいてどの程度の節約をお願いしていくのかを検討すべきであろう。

〔経済界として、事態の長期化に対する懸念に関してステートメントを出すという想定はあるかと問われ、〕本日の会見での私の発言が、一番の発信であると考え、臨んでいる。より訴求力の高い、経団連全体としての発信が必要な段階になれば、ステートメントを出すといった対応も必要であろう。

〔現時点で石油備蓄は十分であり、国民に対して節約をお願いする段階にはないという日本政府のこれまでの発信に対する受け止めを問われ、〕事態が長期化すれば大きな危機が生じるという懸念を過剰に流布させず、企業や国民のマインドに不必要な混乱を招かないためのメッセージが先に立つべきだと考えており、政府も同様の認識だと考えている。

ただし、備蓄が十分に確保されている間に、長期化した場合の危機対応策を総合的に検討していくことの重要性は、当然、政府も認識されているだろう。特に経済の実業に関わる立場としては、エネルギーや原料の供給が途絶え、減産を余儀なくされ、消費者に十分な製品を提供できなくなる可能性がある、という感覚を持っているため、あえて今、こうした発信をしているところである。

【トランプ関税】

〔トランプ米大統領による相互関税の発表から1年が過ぎた中で、トランプ関税の日本経済への影響や、医薬品とその原材料への新たな関税による影響について問われ、〕トランプ関税によって、非常に不確実性が高まり、企業の投資案件についての予見可能性が低下した1年であった。マクロで見ると、日本経済への影響は-0.2%という見方もあり、当初懸念したよりも限定的との印象である。これは、増加した関税負担分を、各社の経営努力によりサプライチェーンの中で吸収したため、需要の下押し圧力が弱まったこと、また日米合意によって関税率が(当初米国が設定していた水準よりは)引き下げられたことも、影響緩和の要因であろう。

他方、価格転嫁した企業やサプライチェーンの見直しを迫られた企業もあり、ミクロで見れば、相応の影響を受けてきた企業も多くあると感じている。

医薬品への関税について、昨夏の日米関税合意では、日本が他国に劣後しないように措置することが盛り込まれている。今回、新たに公表された医薬品関税は、日米関税合意の通りではある。ただし、これまで医薬品は世界的に関税ゼロを原則としてきており、今回の措置が患者の医薬品へのアクセスにどのような影響を及ぼすか、よく注視していかねばならない。また、長年に亘って米国に投資し、医薬品の安定供給に貢献してきた、わが国の製薬業界への影響にも注視が必要である。

【税・財政・社会保障一体改革】

〔給付付き税額控除と、食料品に係る2年間の消費税減税に対する考え、およびその内容を、近く公表予定の税・財政・社会保障一体改革に関する提言に反映させていくのかを問われ、〕近年、賃金引上げのモメンタムを強化していく中で、引上げの効果が社会保険料負担によってやや減殺されていると認識している。そのため、給付付き税額控除について、勤労世代の実質的な負担を軽減するという意味で、中・低所得者の負担する社会保険料の一部に相当する額を給付する方向で検討することが望ましく、社会保障国民会議の有識者会議においてもそうした視点から発信している。実現に向け、個々人の負担能力の把握の観点から、マイナンバーの徹底活用も重要である。

なお、本来は、所得や社会保険料・税の負担と給付の情報連携のための基盤整備が必要だが、一定の時間を要するため、基盤整備を進めつつも、まずは簡易な形で給付の仕組みを導入し、段階的に制度を精緻化していくことも十分考えられるのではないか。

このように、経団連としては、給付付き税額控除を積極的に推進すべきものと位置付けている。

消費税減税については、消費税が社会保障を支える重要な安定財源として位置付けられてきたという歴史的な積み重ねを十分に意識しつつ、国民会議で徹底的に議論してほしい。消費税減税を検討する際、市場の信認の維持と社会保障の持続性の確保の観点から、代替財源の明確化が大前提となる。国民会議の実務者会合におけるヒアリング等において、そうした発信をしている。当然、税・財政・社会保障一体改革に関する提言の中にも、申し上げたような考え方は盛り込んでいく予定である。

〔政府が、給付付き税額控除の制度の導入までのつなぎとして、飲食料品に係る年2年間の消費税減税を掲げていることについて、その順序に対する考えを問われ、〕国民会議の有識者会合においても、給付付き税額控除の必要性について高いコンセンサスが形成されつつあると聞いている。この機を逸することなく、給付付き税額控除の制度導入に着手していく必要があろう。さらにいえば、簡易な形で導入することで、2年を待たずに導入することも必要だと考えている。そうした兼ね合いの中で、消費税減税についても実務者会議で現在、議論がなされていると理解している。

【会社法改正】

〔会社法改正に向けた法制審議会の中間試案(4月2日公表)の評価を問われ、〕全体として、成長戦略の一環として、企業の成長に資する改正が検討されていると捉えている。例えば、株主提案権の行使要件について、300個以上の議決権を有するという要件を廃止する案が検討されている。近年、投資単位が引き下げられ、また、およそ可決される見込みのない株主提案も多くなされているという現状にあって、経団連の提言「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」(2025年12月公表)でも求めているとおり、「300個」という議決権数の要件の廃止は、株主総会のあり方として評価できる。今後、経団連としても中間試案に対するパブリックコメントに意見を提出する予定である。

【コーポレートガバナンス・コード改訂】

〔金融庁の「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」に示された改訂案について、新設される解釈指針や、現預金等に関する記述が盛り込まれたことも踏まえた受け止めを問われ、〕全体としては、成長投資へと舵を切るもの、つまり「投資牽引型経済」へ転換していく方向のものである。その点に今回のコード改訂の狙いがあり、改訂案には概ね賛同している。

解釈指針は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、あくまでも原則の背景となる考え方・目的、さらには参考となるベストプラクティス等を示すものである。したがって、解釈指針は、各原則についての実質的な対応を支援する役割を担うものであり、各原則の趣旨や精神に沿った対応であれば、具体的な実現方法は各社に委ねられている。その意味で、企業の自律的な取り組み・創意工夫によってガバナンス改革を実践していくことが重要であるという考え方に沿っているのではないか。

また、現預金等については、近年、内部留保という観点からさまざまな意見が出されているが、現預金が多いことが一概に問題ということではない。大事なことは、現預金を含めた多様な経営資源をどう配分するかという、キャピタル・アロケーションのあり方である。これは基本的に各社の経営上の判断に委ねられるべき事項である。現預金だけでなく経営資源全体について成長投資等への活用がなされているかを、不断に検証すべきであり、経営資源の配分こそが経営戦略だと考えている。配分先として、投資、従業員への還元、またリスク事象に備えたバッファーとしての内部留保にも重要な役目がある。したがって、経営資源全体の配分として検証に取り組んでいくことが重要である。

【長期金利上昇】

〔長期金利の代表的な指標である10年物国債の利回りが急激に上昇し、本日2.4%を超える水準まで上がったことについて問われ、〕中東情勢が緊迫化して以降、非常にボラティリティーが高い状況が続いている。背景には、実需だけでなく、短期筋の投機性の高いファンドが動いていることもあろう。ただし、資源を外国に依存している国は、金利だけでなく為替も含め、ほぼ同様の動きが共通して生じており、日本の動きもその一環として捉えるべきだと考えている。今後、高市政権の掲げる「責任ある積極財政」が市場の信認を受けていく上で、金利の動きには特に注視していかねばならない。

なお、中立金利の水準については議論が多いところであるが、現在の実質金利の水準を考えると、日銀が目指している正常化路線は継続する必要があろう。

以上

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