1. トップ
  2. 会長コメント/スピーチ
  3. 記者会見における会長発言
  4. 定例記者会見(9/7)における筒井会長発言要旨

会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 定例記者会見(9/7)における筒井会長発言要旨

2026年9月7
一般社団法人 日本経済団体連合会

【財政政策】

〔米国のベッセント財務長官が日本の財政政策に言及する等、財政政策のあり方に変化が求められる時期に差し掛かっているという指摘への所見を問われ、〕片山財務大臣は、ベッセント財務長官からの財政政策の転換に係る要請があったことを明確に否定していると承知している。

私としては、財政の持続可能性や市場の信認の維持・確保にしっかりと軸足を置きながら、デフレからの完全脱却に向けた兆しが見えつつある今こそ、「投資牽引型経済」の確立に取り組む必要があると考えている。「投資牽引型経済」の確立に向けては、民間による国内投資の予見可能性を高めるため、いわば「呼び水」として官側の投資も重要である。

こうした認識の下、債務残高対GDP比の安定的な引下げを主としながら、国債の利払い費やプライマリーバランス等の各種指標をフォローし、官側の投資支出管理を行っていくことが「骨太方針2026」でも明記されていると理解している。同方針を踏まえ、官民が一体となって危機管理投資・成長投資を続けていくべきである。今後も継続して、財政の持続可能性と市場の信認を維持・確保するための発信を継続的に行うことが必要である。

【景気動向指数】

〔本年7月の景気動向指数について、景気の現状を示す一致指数が前月を上回り、景気拡大期間が戦後最長の「いざなみ景気」を超えた可能性があることに関する所感と、個人消費の伸び悩み等、景気改善の波が広く全体に渡っていないのではないかとの指摘に対する見解を問われ、〕基調として、景気は緩やかな回復を続けていると認識している。特に、日銀短観や法人企業統計等をみると、企業の業況感や先々の見通しも含めて、中東情勢が緊迫している中にあっても堅調と受け止めている。

一方で、個人消費については、足もとで必ずしも力強さを取り戻していない。消費者の実感として、中東情勢を受けたインフレが今後も継続するのではないかという見通しもあり、消費マインドの低迷につながっているのではないかと懸念している。

経済界としては、今後、経営労働政策特別委員会(経労委)で来年の春季労使交渉・協議に向けた検討を進めるにあたり、ベースアップ実施の検討を引き続きスタンダードと位置付けていきたい。物価の上振れリスクが継続するかもしれないという前提の下、賃金引上げの力強いモメンタムをしっかりと維持し、個人の所得の底上げにつながれば良いと考えている。賃金引上げを含めた「人への投資」は、経団連の目指す「投資牽引型経済」の重要な一角を占めるという認識で、今後も鋭意取り組んでいく所存である。

〔さらに、業種毎の景況感にばらつきがみられることへの見解を問われ、〕経済は「生き物」であるため、業種毎の景況感に一定の濃淡が生じることはやむを得ないことと思う。重要なのは、景気回復の動きが国民、働く方々の目線からみた生活実感の向上にどのように寄与しているかを把握することである。特定の産業の就業者と、それ以外の就業者間での報酬格差が拡大するという予測もあるが、こうした動きを注目していく必要がある。また、物価上昇の緩和を目的としたエネルギー関係補助金政策が、低・中所得者の方々に対して実効性のある形で貫徹されているかどうかについても、今後注視していく必要があろう。

【消費税減税等】

〔消費税減税の財源として法人税を引き上げるという考え方に対する見解を問われ、〕賛成できない。理由は2点ある。

1点目として、企業・経営者自身がマインドセットを転換して「投資牽引型経済」を確立し、潜在成長率を引き上げようと官民一体で取り組もうとしており、こうした動きを是非サポートしていただきたい。 

2点目として、国際競争力の観点から、わが国の法人実効税率は主要先進国の中でも現状でも十分に高いことが挙げられる。主要先進国の中でドイツの法人実効税率が最も高いと認識しているが、同国でも法人税減税をすることが決まっており、わが国の法人実効税率が主要先進国の中で最も高くなる。国際競争力の観点も加味して投資環境の整備を是非サポートしていただきたい。

〔消費税減税の財源として、法人税関係の租税特別措置の見直し等を含めて、法人税引上げが妥当という見解への是非について問われ、〕消費税はあくまで社会保障制度の重要な財源であると考えている。併せて、消費税減税は2年間限定ということで、2年間という期限に対して法人税引上げで対応することは折り合わないと認識している。なお、法人税関係の租税特別措置については、様々な議論があることは承知している。同特別措置の投資促進に係る効果や適用実態等に関する分析・検証結果については、十分な議論を踏まえ、尊重したいと考えている。

〔今後、防衛費増等の歳出圧力の高まりが見込まれる中、消費税減税以外の政策に必要な財源であっても、法人税の引上げは難しいと考えるのかと問われ、〕防衛財源について、既に対GDP比2%の達成に向けて、法人税でも一定の協力を行っている。今後、防衛のみならず、税・財政・社会保障の一体改革等を含めて、歳出圧力を適切にコントロールすることが重要である。その際、政府と民間による議論が重要である。経済界としても、単純に法人税引上げに賛成できないと押し通すつもりはない。将来の様々な国家課題に対して、経済界として協力すべきことについては、真摯に議論に応じるべきと考えている。

〔さらに、政府が財源を確保する際、法人税引上げ以外にどのような方策を考えるべきか問われ、〕政府として他に財源を求める場合については、ワイズ・スペンディングを通じた歳出改革等が重要である。現在実行途上にある「日本版DOGE」の基金の見直し等も含めて、真に効果のある領域に歳出が行われているかという観点から、聖域なき不断の歳出改革の視点を堅持していただきたい。

【令和9年度予算概算要求】

〔先月末に出揃った来年度予算概算要求において、事項要求もあり金額全体が見えづらい中、財政の持続可能性や市場の信認維持に向けてどのような発信が必要かを問われ、〕継続的に粘り強く、回数を重ねて発信することが必要である。現段階では、約143兆円という数字が前面に出ることで、財政の持続可能性を懸念する向きがあることも承知しているが、これまで常態化してきた補正予算分も当初予算として加味したものであることに留意が必要である。

こうした事実をしっかりと発信すると同時に、「骨太方針2026」の策定に際し主張してきた通り、債務残高対GDP比の安定的引下げという主要な目標の達成に向けて財政運営を行うということを繰り返し発信することに尽きると考えている。

年末にかけての予算編成過程では、各府省庁からの予算要求の有効性や効率性等を含めて、真に効果のあるワイズ・スペンディングの徹底が必要であり、これに関連する発信も重要である。

経団連としては、国内設備投資、研究開発投資、さらには人的投資の拡大を通じて「投資牽引型経済」を確立することで、中長期的に財政の持続可能性や市場の信認の維持・確保に貢献していきたい。

【令和9年度税制改正】

〔令和9年度税制改正に関する提言の方向性を問われ、〕新たな官民目標である2040年度に250兆円の国内投資実現に向けて、法人税制を「投資牽引型経済」の実現を支える基盤と位置付け、民間企業の成長力強化に資するものとすべきという思いが提言の基調を成している。

具体的には、事業ポートフォリオを改変して強化することが重要との認識の下、事業再編の促進に資する税制措置を求める他、サプライヤー等にまたがるサプライチェーン全体の視点で人材育成の支援を後押しする税制措置等も盛り込んでいる。さらに、持続的な社会保障制度の構築のために、「所得に連動したきめ細やかな給付」の導入に合わせ、一元的な情報基盤整備やマイナンバーの徹底活用を進めるべきとしている。

〔さらに、本日開催の会長・副会長会議での同提言に関する審議の模様を問われ、〕提言公表時に経団連として特に注力すべき分野を明確にすることが重要という指摘があった。法人実効税率に関しては、国内民間投資を促進するとともに、海外資本も国内に誘致し魅力ある投資環境を整備するという観点から、国際競争力の視点がやはり重要という意見があった。

【金融政策と為替動向】

〔日銀の次回金融政策決定会合における利上げ観測が高まる中、現在の政策金利の水準や為替動向に対する見解を問われ、〕歴史的な低金利が長らく続き、現在はそこからの正常化の過程にあると認識している。マーケットでは、日銀に対する利上げ要請が高まってきていると承知している。日銀自身も物価の上振れリスクを意識した発信を行っている。こうした背景の下、日銀は、物価が経済や暮らしに与える影響、為替動向が物価に及ぼす影響をしっかりと検討の上で、適切に判断されると考えている。

為替動向について、足もとの変動は各国の金融政策等の先行きや、それを受けた金利・債券市場の動きに対する投機筋を含む様々な市場参加者の思惑の表れと理解している。併せて、AI投資の高まりを背景とした旺盛な資金需要も影響していると考えている。

こうした中、足もとでは円安是正の動きがみられる。円キャリー取引の巻き戻しや投機筋のポジション整理等の様々な要因があると考えられるが、円安是正の動き自体は好ましいと捉えている。望ましい為替水準については申しあげにくいが、今後の日米両国の金融政策の動向を注目していきたい。

【ガソリン補助金】

〔ガソリン補助金の延長がワイズ・スペンディングと逆行するものではないかと問われ、〕中東情勢の緊迫化という緊急事態に際し、国民の暮らしを支えるための緊急的激変緩和措置として打ち出されていると受け止めている。激変緩和措置であるからには、やはり期限は示されてもよいと考えている。一方で、当該措置が長く続いた場合の財政に対する負荷や市場の信認への影響、さらには海外との比較も考慮に入れるべきである。

こうした観点から、強く申しあげたいのは「出口戦略」であり、高市総理も柔軟に検討していく旨を明言されていると承知している。今後、原油価格の動向を見つつ、かつ国民の暮らしに急激な影響を与えないような形で出口戦略を提示していくことが重要であろう。

以上

「会長コメント/スピーチ」はこちら