一般社団法人 日本経済団体連合会
【夏季フォーラム2026】
2日間にわたり、多岐にわたる論点についてお互いの意見に耳を傾け、じっくりと議論することができた。4名の講師からは大変示唆に富む講演をいただき、非常に密度の濃い意見交換をすることができた。また、4つのテーマ別分科会の討議の様子も拝見する中で、「投資牽引型経済」の実現に向けた道筋について、幹部の皆様から様々な示唆をいただいた。これら検討の成果を総括文書として取りまとめることができた。後日高市総理にお渡しする機会を設けて、高市政権の掲げる「強い経済」の実現に向けて、官民連携を一層強固なものとしたい。
〔2日間の討議を振り返り、「投資牽引型経済」の実現に求められていることや経済界の果たすべき責務について問われ、〕長きにわたるデフレからの脱却の兆しがみられる中、本格的な成長軌道を実現する上で、企業がフロントランナーとなって、国内での成長投資を促進・蓄積していくようにマインドセットの転換を図る必要がある。こうした認識の下、経団連としても企業・経営者に対して強く呼びかけていく。今回、総括文書に取りまとめた内容について、本フォーラムを起点としてPDCAサイクルをしっかりと回し、具体的な提言等の活動につなげていきたい。
〔さらに、厳しい国際情勢の中での今後の国内回帰のあり方に関する所見を問われ、〕企業の国内回帰を通じて、新たな生産・製造のスタイルを志向していくことが必要である。もちろん、少子化の中での国内回帰は決して容易なことではないものの、国内需要の創出・喚起に加えて海外市場を開拓することが引き続き重要である。その際、厳しい国際情勢を踏まえ、経済安全保障の考え方を経営や資本の論理の中にしっかりと落とし込み、投資家に理解を求めていくことも重要であろう。
〔総括文書において、フィジカルAI等に関する記述があることを踏まえ、「投資牽引型経済」の確立に向けたAIへの期待を問われ、〕「投資牽引型経済」の確立や中長期での潜在成長率の引上げの障壁となるのは、労働供給制約と考えている。これを打破する有力な手段のひとつがフィジカルAIである。総括文書では、経済界の役割として、「フィジカルAI等の日本の勝ち筋を見極め、研究開発から社会実装を加速」と記載した。経済安全保障上の戦略的自律性や戦略的不可欠性の観点からは国産で対応していくことも重要であろう。
また、総括文書では、「政府への期待」として、「ソブリンAI実現への取り組み強化」を挙げている。フィジカルAIは、官民投資ロードマップにおいても十分に位置付けられており、民間によるフィジカルAIへの投資に関する予見性が向上するように政府に引き続き働きかけていきたい。
〔総括文書における「真に効果性のあるワイズスペンディング」の記述に込めた考えを問われ、〕高市政権の発足以降、経済財政諮問会議で「責任ある積極財政」の考え方の下で議論が行われきたが、私は市場の信認確保や財政の持続可能性の重要性を強く発信してきた。ワイズスペンディングは歳出改革の一環と捉えており、過去の経済財政諮問会議でも言及されてきたと認識している。このため、今回の総括文書に唐突にこの文言が出てきた訳ではない。
骨太方針2026では、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を中核として、引き続きプライマリーバランス等の財政指標を複眼的に確認するという方針が設定されており、歳出面での努力も引き続き重要である。こうした観点から、総括文書では、「真に効果性のあるワイズスペンディングや資源配分の全体最適化に資する制度整備(独立財政機関等)」と記載した次第である。
〔総括文書において、「(時間外労働の)上限規制の画一的適用は支障が強く、撤廃という意見もある」と記述した背景について問われ、〕分科会の討議では、働き方改革はワークライフバランスの点で一定の効果があったという評価の一方で、事業運営や人材育成において上限規制の画一的な適用による支障が強いという意見もみられ、同規制は撤廃してもよいのではないかという問題提起もあった。
「投資牽引型経済」の確立に向けて、労働供給制約を克服することが最も重要と認識している。このため、働き方の選択肢を増やすべく、濫用防止策と併せた裁量労働制の拡充と同時に、各業種・企業の状況を踏まえた自律的かつ柔軟に働くことのできる新しい労働時間法制の創設が必要という議論になった。こうした意見は真摯に受け止めるべきと考え、総括文書に記載した次第である。
〔さらに、過去の事案を踏まえ時間外労働に係る上限規制が設けられた経緯がある中で、撤廃に言及することの是非を問われ、〕過去の個別事案や上限規制の導入に至る経緯は当然認識している。一方で、個別事案を極力尊重し、かつ適切な防止策も確保しながら、労働供給制約を克服することの重要性も鑑みる中で、上限規制に関する議論が出たと受け止めている。なお、新しい労働時間法制の創設は、「FUTURE DESIGN 2040」にも記述している大きな方向性であり、今後個別事案もしっかり踏まえながら議論し、提言につなげていきたい。
〔さらに、日立製作所の裁量労働制の運用実態に係る一部報道を踏まえ、同社の事案が今後裁量労働制の拡充に係る議論に与える影響について問われ、〕個別事案についてのコメントは控える。今後、濫用防止策とセットで裁量労働制の拡充を検討することとなるが、仮に法的措置も含めて議論の俎上に載った場合には、我々としても真摯に対応したい。個別企業の課題や工夫についての運用事案を十分に踏まえながら、適切な濫用防止策を検討していく必要があろう。
〔高市総理が定時総会に続き夏季フォーラム2026にも臨席できなかったことへの所感を問われ、〕特別国会会期中で重要法案の審議が行われているため、臨席がかなわずビデオメッセージを寄せていただくことはやむを得ないことと受け止めている。なお、経済財政諮問会議や日本成長戦略会議等で十分に経団連の意見を発信する機会を持っており、高市総理との対話を行うことができていると捉えている。
【コーポレートガバナンス改革】
〔今後のコーポレートガバナンス改革の進め方について問われ、〕先日、コーポレートガバナンス・コード改訂が行われた。経団連は、形式的ではなく、実質的な対応が必要と長らく主張してきた。今回の改訂は、原則数の削減も含め、「攻めのガバナンス」の実現を通じて、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を促すものであり、その方向性を評価している。「投資牽引型経済」を確立する上で、企業経営も「投資牽引型経営」を志向する必要があり、今回の改訂はそれを後押しする内容と認識している。
【副首都法案】
〔副首都法案の成立に伴う経済活動や企業活動への影響について問われ、〕「国家社会機能の継続性の確保」や「多極分散型経済圏の形成」が副首都法案の目的であり、わが国の持続的な成長と強靭な経済社会を実現する上で重要な視点と認識している。
ただし、今後具体化される副首都の指定要件や選定過程においては、候補地の選定自体を目的化することなく、客観性、透明性、公平性を十分に確保することが重要である。
【政治情勢】
〔直近の世論調査で、高市政権の支持率が下落していることの要因について所見を問われ、〕支持率下落に関する報道自体は承知しているが、様々な要因があろう。高市政権の発足以降、各種政策が力強く推進されてきたと理解している。足もとの国会運営でも、十分な審議が行われるように努力が傾けられていると認識している。
〔さらに、支持率下落の背景として、物価高対策と経済政策が後回しになっているという指摘があることについて所感を問われ、〕物価高対策の観点からは、エネルギーやガソリン価格等について、諸外国と比較して、いくつかの大きな施策が講じられていると認識している。
昨今の物価高は、中東情勢の緊迫化の延長線上にあり、国民の暮らしにとって相当程度重荷になる状況と理解している。一方で、今後さらなる対策が必要という世論の盛り上がりがない限りは、財政への負荷や市場の信認という観点から、敢えて現状よりも規模の大きい対策に踏み込む必要はないと現時点では考えている。