一般社団法人 日本経済団体連合会
【AI】
〔AIの急速な進展に伴うリスクへの認識や、安全性を踏まえた活用のあり方について問われ、〕AI活用にかかる危険性や課題についてはこれまでも指摘されてきており、足もとでは、巨大テック企業の経営者からも問題提起がなされていると承知している。こうした指摘は真摯に受け止める必要がある。一方、重要なのは、リスクへの対応とイノベーションの促進を両立させることである。AIは今後の経済社会を考える上で中核的なテーマであり、来春に向けて取りまとめる提言では、リスクも含め、AIが経済社会にもたらす構造的な変化を幅広く見据えつつ、前向きな構造転換の力として活用していく観点から検討を深めていきたい。
〔AI活用の進展を踏まえ、企業が今後求める人材像や採用のあり方について問われ、〕AIの導入・活用により、短い労働時間で成果を上げやすくなるとともに、成果に応じて処遇する傾向がより強まり、柔軟で自律的な働き方が一層促進される可能性がある。一方、特にホワイトカラーを中心に(企業が求める)人材像が大きく変わる可能性もあり、採用の規模や時期を含め、採用のあり方はより柔軟になっていくと考えられる。
〔AIスキルを学生に求めるのか、入社後に企業が育成していくのかについて問われ、〕AIスキルについては、社会全体にAIがどの程度浸透し、どの程度のスキルを標準レベルと考えるのかを踏まえる必要がある。その上で、入社時点で身に付けているAIスキルを企業内教育によってどの程度高めていくかというバランスが重要となる。企業には、社会全体におけるAIの浸透を丁寧に見極めながら、採用・人材育成戦略や企業内教育のあり方を考えていくことが求められる。
【日中関係】
日本国際貿易促進協会の訪中を踏まえた日中関係改善の可能性や、経団連の今後の取り組みについて問われ、〕日中関係の改善に向けて率直な意見交換が行われたことを期待している。対話による意思疎通を通じて、関係改善に向けた努力を継続していくことが重要である。経団連としても、さまざまなチャネルを通じた意見交換の機会を模索していきたい。現時点では、11月に、中国委員会企画部会による小規模の訪中団を派遣し、中国の地方部における先端技術や産業集積の最新動向を視察することを検討している。
〔王毅外相が台湾問題に関する日本側の発言について、従来の「撤回」要求から「是正」を求める表現となったことへの受け止めを問われ、〕外交関係において言葉の使い方は極めて重要であると認識している。今回の会談で実際に表現の変化があったのかよく分析する必要がある。他方、事実関係を確認できていないため、現時点でのコメントは差し控えたい。
【原子力バックエンド対策(再処理、最終処分)】
〔六ケ所再処理工場の竣工が遅れる可能性について、受け止めを問われ、〕経団連として六ケ所再処理工場を視察(9/17)した際に、日本原燃から竣工時期に関する言及はなかった。現地視察での最大の収穫は、現場の方々が安全最優先で懸命に努力されていることを確認できたことである。いずれにしても、竣工に向けた最終段階にあると理解しており、時期に関する認識に変わりはない。バックエンドが進展しなければ、いずれフロントエンドにも影響が及びかねない。核燃料サイクルの確立が重要であり、日本原燃には、安全確保を最優先に、着実に工程を進めていただきたい。
〔六ケ所再処理工場の竣工が見通せない中、むつ市の中間貯蔵施設への使用済み燃料の新規搬入が認められていないことの影響について問われ、〕青森県が使用済み燃料の新規搬入を認めていない背景には、再処理工場の竣工時期が関係していると推測している。ただし、現時点では、2026年度末の竣工時期に変更はないと認識しており、中間貯蔵施設への搬入の見通しについて申し上げる段階にはない。
〔高レベル放射性廃棄物の最終処分を進める意義と、経団連としての今後の取り組みについて問われ、〕再処理や最終処分を含めたバックエンド対策を推進していかなければ、いずれ発電そのものにも滞りが生じかねないという問題意識を持っている。最終処分はバックエンド対策の推進に不可欠であり、経団連としても、近く、最終処分に関する研究を行う幌延深地層研究センターを視察する予定である。
【長期金利】
〔長期金利の上昇に伴う国債の利払い費増加が、政府の政策余地に与える影響について問われ、〕内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」における「成長戦略実現ケース」の下では、金利上昇に伴い利払い費が増加することになるが、成長率が実効金利を上回る状態が続くため、政府の成長戦略に必要な投資が一方的に制約されるわけではなく、一定の財政余地は確保され得ると試算されている。一方、財政の持続可能性や市場の信認を確保する観点から、市場に対する適切な発信が重要である。
【予算編成】
〔今後の予算編成に向け、経済財政諮問会議の民間議員として政府に求めることを問われ、〕予算編成の過程においても、常にマーケットからどのように見られているかを意識することが重要である。例えば、消費税減税については、できるだけ早期に財源を明確化する必要がある。地政学リスクなどを契機に日本の金利に影響が及ぶ可能性もある中、市場の信認を確保するため、政府として継続的かつ粘り強く発信していくことの重要性を主張していきたい。
【災害対応】
〔相次ぐ自然災害への被災地支援や、気候変動による災害の激甚化を踏まえた企業のBCPのあり方について問われ、〕経団連として、これまでも大規模災害に際して支援に取り組んできた。災害が頻発化・大規模化し、各地で相次いで発生する中、会員企業の声に加え、被災地の自治体や地方経済団体のニーズを丁寧に把握し、経団連への要望に真摯に対応していく必要がある。
企業はこれまでもBCPの策定・充実に相当程度取り組んできたが、従来とはステージが変わったとの認識の下、BCPの見直しを検討していく必要がある。経団連としても、BCPのあり方について企業間で議論・共有する場を活用し、議論を促進していきたい。
【日本経済】
〔日本経済の成長に向けた突破口について問われ、〕バブル崩壊後の30年間、企業は設備・債務・雇用の「三つの過剰」に直面し、賃金を抑えながら雇用を維持するとともに、国内よりも海外への投資を進めてきた。個々の企業にとっては合理的な行動であったとしても、経済全体としては縮小均衡に陥ったと考えている。
一方、足もとでは名目GDPが高い伸びを示し、賃上げも高い水準が続くなど、デフレからの完全脱却に向けた動きが始まっており、決して八方ふさがりではない。設備投資、研究開発投資、人への投資を起点に、成長と分配の好循環を回す「投資牽引型経済」を定着させることが重要である。
また、人口減少は国力を左右する最大の要因であり、少子化対策の再検討と、人材の「密度」を高める教育が今後の国の戦略の重要な柱となる。加えて、社会保障制度改革、地域経済活性化、外国人政策などにも取り組む必要がある。AIが日本の将来に及ぼす影響や、その課題解決に企業が果たす役割についても、今後、経団連の重要なテーマとして提言につなげていきたい。