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Policy(提言・報告書) 都市住宅、地域活性化、観光 平成23年度都市・土地・PFI税制改正に対する要望

2010年9月14日
(社)日本経済団体連合会

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グローバル競争の激化や少子高齢化による人口減少など大きな環境変化のなかで、わが国が持続的な成長を遂げるには、大都市が国際競争力を高め、魅力と活力に溢れた国際都市へと進化し、国全体の経済成長を牽引することが重要である。同時に、豊かな地域資源を活かしたまちづくり、まちの再生を進めることで地方が活性化を果たすことが必要である。

昨今の厳しい経済、金融情勢を受けて、不動産市場はやや明るさも見えつつあるものの、依然として低迷が続いている。こうしたなか、民間のノウハウや資金を活用して、土地や建物の流動化、有効利用を図り、良質な建築物や街並みを形成し、都市や地域の再生、高度化へとつなげていく必要がある。

また、わが国が厳しい財政制約のなかで、民間の能力や創意工夫を活用しつつ、効率的に社会インフラの整備、運営や公共サービスの提供を行うためには、PFI(Private Finance Initiative)やPPP(Public Private Partnership)の積極的な活用が求められる。こうした民間活力の活用にあたっては、単に行政コスト削減の観点だけでなく、民間の参入意欲を促すインセンティブのある制度づくりが不可欠である。

こうしたなか、政府の新成長戦略や国土交通省成長戦略が都市・地域政策、及びPFI・PPPに関して、「成長の牽引役としての大都市の再生」、「地域資源の活用による地方都市の再生」、「インフラ整備や維持管理への民間資金・ノウハウの活用(PFI/PPPなど)」などを掲げたことは大いに評価できる。今後、戦略に沿った具体的施策の着実な実行に向け、政治の強いリーダシップを期待する。

大都市の再生と地域の活性化を通じて、わが国の将来にわたる成長基盤を形づくるとともに、PFI・PPPの活用を通じて、民間主導による自立型の経済成長を遂げることができるよう、平成23年度の都市再生、土地、PFI関連の税制改正に対して以下を要望する。

1.都市再生・地域再生を加速するための施策

(1) 都市再生促進税制の延長

都市再生の政策支援の中核を成す都市再生特別措置法の枠組みは、税制・金融支援、都市計画の特例などの各種の支援措置が相まって、これまで多くの民間投資、経済波及効果を生んできた。
今後も民間の資金やノウハウを活用しながら、わが国の成長基盤、国際競争力の強化につながる都市開発プロジェクトを進めるとともに、低迷する不動産市場の活性化を図るためには、都市再生特別措置法に基づく大臣認定の申請期限(2012年3月末)を前倒しして延長するとともに、その延長期限とあわせて都市再生促進税制の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。あわせて、登録免許税に係る適用要件(大臣認定後3年以内に建築)を緩和すべきである。

(2) まち再生促進税制の延長

地方における民間プロジェクトの採算が総体的に厳しい状況にあるなか、まち再生促進税制は、事業者や地権者の税負担を大幅に軽減するものであり、民間の資金・ノウハウを活かしたまちづくりに大きく貢献するものである。
地域の持続的発展に向け、地域の関係者や民間事業者が主体となって必要なまちづくりプロジェクトを推進していくため、都市再生特別措置法に基づく大臣認定の申請期限(2012年3月末)を前倒しして延長したその延長期限とあわせて本税制の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。あわせて、本税制の面積要件(0.5ha以上)を緩和すべきである。

(3) 総合特区制度等に係る税制の創設

政府の新成長戦略(2010年6月)では、国際競争力等の向上、地域資源を最大限活用した地域力の向上に向け、「総合特区制度」の創設がうたわれた。具体的には、(1)大都市等の特定地域を対象とする「国際戦略総合特区(仮称)」、(2)全国で展開する「地域活性化総合特区(仮称)」の設置が検討されている。また、国土交通省成長戦略(2010年5月)においても、「国際競争拠点特区(仮称)」の設定がうたわれている。
こうした特区制度の創設にあたっては、民間主導による都市再生、地域再生を促すため、民間の意見を十分反映する形で、税制・財政・金融上の支援措置、規制緩和等の施策を講ずる必要がある。税制措置については、例えば、特区内に立地する企業に対する法人税の減免、一定の要件を満たす建築物に対する固定資産税の減免、市街地再開発事業の参加組合員や特定建築者に対する税制優遇などが考えられる。

(4) Jリート・SPCに係る不動産取得税の課税標準の特例の延長

民間資金を活用して、都市基盤の高度化を図り、地域経済の活性化や不動産証券化市場の拡大へとつなげていくため、Jリート・SPCが不動産を取得した場合の不動産取得税の軽減措置の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。

(5) 市街地再開発事業促進税制の延長

市街地再開発事業促進税制は、市街地における老朽化した建物や街並みの更新、高度化を進め、中心市街地の活性化や良質な生活環境の創出、防災性の向上などに大きな貢献を果たしてきた。
市街地再開発事業によって建築された建築物に係る税制優遇措置(所得税・法人税の割増償却、固定資産税の軽減)の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。

(6) 認定事業用地適正化計画に係る特例の延長・拡充

都市の中心部では虫食い的な低未利用地や細分化された土地が需要の高い大型建築物の建築や土地の有効活用を妨げている。民間都市開発を通じて都市機能の高度化を進める上で、こうした土地を集約、整形し、一体的な敷地として有効に活用していくことが必要である。
事業用地適正化計画に基づき、民間事業者が隣接地の取得等を行った場合における税制優遇措置(所得税・法人税の課税繰延、不動産取得税の軽減)の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。あわせて、大都市部における民間都市開発事業を推進するため、三大都市圏についても本税制特例の対象地域とすべきである。

(7) 都市の緑の創出に資する緑化施設に係る固定資産税の特例措置の延長

都市における地球温暖化対策やヒートアイランド現象の緩和を進めるとともに、緑を確保した良好な街並みを創出するため、認定緑化施設に係る固定資産税の軽減措置の適用期限(2010年度まで)を延長すべきである。

(8) 事業用資産の買換え特例の延長

2010年度末に期限切れを迎える特定の事業用資産の買換え特例(17号を除く)について適用期限を延長すべきである。

2.民間活力の活用促進に資する施策(PFI税制)

(1) サービス購入型・BOT方式のPFI事業に対する資産課税の非課税化

現在、わが国のPFIは施設整備型の事業が中心であり、運営・管理を業務の主体とする運営重視型の事業の件数はわずかに留まっている。しかし、運営重視型の事業は事業者の創意工夫を活かす可能性が大きく、コスト削減、公共サービスの質の向上に高い効果が見込める事業である。
しかし、従来型の公共事業やBTO方式の公共事業については、固定資産税、都市計画税、不動産取得税は非課税になると考えられる一方、サービス購入型・BOT方式の事業についてはこれら資産課税が課されており、同じPFI事業においても事業方式によって課税の扱いに齟齬が生じており、運営重視型事業が進まない要因の一つともなっている。
BTO方式とBOT方式の事業の間で税制上のイコールフッティングを図るとともに、運営重視型のPFI事業を拡大するため、サービス購入型・BOT方式の事業に対する資産課税についても非課税とすべきである。
なお、独立採算型・BOT方式の事業についても資産課税が課される一方、公共が行う同様の事業については非課税となっており、同じ公益目的事業にも関わらず競争上不利な扱いを受けている。今後、独立採算型の事業の増加が見込まれるなか、税制上のイコールフッティングを図る観点から、独立採算型の事業の課税のあり方について検討が必要である。

(2) BTO方式のPFI事業に対する資産課税の非課税措置の運用改善

BTO方式のPFI事業により整備される公共施設等に関しては、建物の建設完了後に所有権の移転を受ける主体が国や地方公共団体である場合、固定資産税、都市計画税、不動産取得税について、当然、非課税になると考えられる。
しかし、実際の運用においては、課税当局の判断により、課税・非課税が決定されている。事業者(SPC)が原始取得した場合には、「原始取得」の判断対象が落札から建設完了後という将来の話であることもあり、課税当局のその時点での判断が予測できず、課税と扱われる可能性が払拭できない。BOT案件の場合、不動産取得税、固定資産税、都市計画税の軽減措置について、地方税法附則の第11条ならびに第15条にそれぞれ明記されているが、BTO案件の場合、地方税法あるいは同附則に課税されない旨の明記がない。
BTO案件において、例えば、地方税法第73条の3または4、あるいは地方税法附則第11条などに明記する、あるいは政府が地方自治体に周知徹底するなど、運用上、事業者が納税義務者とならないよう対応する必要がある。

(3) 契約期間に見合った償却制度の導入

BOT方式のPFI事業においては、通常、契約期間が法定償却期間よりも短いため、契約終了時に未償却資産が残存する。この問題を解消するため、PFI事業の契約期間に見合った償却制度を導入すべきである。
なお、政府の新成長戦略や国土交通省成長戦略において、PFI制度に新たにコンセッション方式を導入することが掲げられた。コンセッション方式が導入される際には、法人税法上の減価償却期間を事業期間と一致させるよう措置すべきである。

(4) 大規模修繕等に備えた修繕積立金制度の創設

PFI事業において、施設については一定期間毎に大規模修繕が必要となるが、サービス対価の支払いは平準化されている場合が多い。そのため、修繕が必要となった際に修繕費用を捻出するため、一定期間内部留保を行う必要があるが、課税されるためインセンティブが働きにくい。必要な大規模修繕等が進むよう、例えば、修繕積立金制度等の特例措置を創設するなど対応すべきである。

以上

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