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Policy(提言・報告書) 都市住宅、地域活性化、観光 豊かな住生活の実現と住宅市場の活性化に向けて ~平成23年度住宅関連税制改正・予算等に対する要望~

2010年9月14日
(社)日本経済団体連合会

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わが国の住宅市場は、新設住宅着工件数がリーマン・ショック以降、急激に落ち込んだまま低迷するなど、依然として厳しい状況が続いている。政府が住宅エコポイント制度の創設、住宅ローン金利の引下げ措置の拡大など大規模な対策を講じたことを受けて、やや持ち直しの兆しを見せつつあるものの、先行きを楽観できない状況にある。

住宅投資は内需の柱として、住宅建設による経済効果に加え、入居に伴う耐久消費財の購入等を含めれば、経済や雇用に対して極めて大きな波及効果を有する。わが国経済が本格的な回復軌道を描くためには、住宅市場の動向を見極めつつ、政府として予算、税制、規制緩和といった支援策を間断なく講じていく必要がある。

一方、住宅は人々の生活の基盤であるとともに、街並みや地域コミュニティを形成する社会的資産である。国民がライフステージやライフスタイルに応じた快適な住まいを享受するとともに、地球環境問題、少子高齢化、安全・安心といった社会的課題を克服するためには、社会インフラとしての良質な住宅ストックを形成し、循環させることが重要である。遅れている住宅の省エネ化、バリアフリー化、耐震化等の取組みを新築・リフォーム両面で進め、住宅ストックの質を底上げする抜本的な対策が求められている。

とりわけ、国をあげて地球温暖化問題への対応を迫られるなか、家庭部門における対策の柱として、住宅の省エネ化を加速させるための政策対応が急がれる。また、1981年の新耐震基準以前に建築された住宅が依然として1,000万戸以上存在し、その耐震化が進まないなか、耐震性に問題がある住宅の建替え・改修の推進に向け、税制、補助金、規制緩和等の政策支援の強化が必要である。

こうしたなか、政府の新成長戦略や国土交通省成長戦略では、住宅分野における成長戦略として、「住宅投資の活性化」、「質の高い新築住宅の供給と既存住宅流通・リフォームの促進」、「環境に優しい住宅の整備」などの政策とその実現に向けた工程表が示された。今後、新たな成長産業としての住宅市場の活性化を図るための具体的な施策の立案と着実な実行が求められる。

当面の住宅市場の着実な回復とともに、質の高い住宅ストックの蓄積を通じて広く国民が豊かな住生活を享受できるよう、平成23年度税制改正及び予算編成に対して以下要望する。

1.平成23年度住宅関連税制改正に関する要望

(1) 新築住宅等に係る固定資産税の減額措置の堅持

平成22年度税制改正大綱において、(1)新築住宅、(2)長期優良住宅、(3)省エネ・バリアフリー改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置については、優良な住宅ストック重視の観点から今後1年間で見直しを検討することとされた。
これらの措置は、良質な住宅の新築、改修を通じて、わが国全体として住宅ストックの質の向上を図るための支援措置として中心的な役割を果たしてきた。また、平成12年以降、住宅取得費や借入金の年収倍率が年々上昇するなか、住宅取得の初期段階での負担軽減にも大いに貢献してきた。仮に、本措置がなくなれば、ようやく回復の芽を見せつつある住宅市場への影響は計り知れず、わが国の経済や雇用に大きな影響を及ぼすことが予想される。
これらの措置が国民の住宅取得・保有・改修の負担軽減に長年貢献してきた経緯に鑑み、同措置については維持、恒久化すべきである。

(2) 住宅の取得に係る贈与税の非課税限度額の維持

住宅取得等資金に係る贈与税の特例措置(非課税限度額を平成22年は1,500万円、平成23年は1,000万円とする)は、世代間の所得移転を通じて住宅市場の活性化を図るうえで大きな役割を果たしている。1,400兆円の個人金融資産の半分を占める高齢者の金融資産を住宅投資に回し住宅市場の腰折れを回避するため、平成23年以降も非課税限度額を1,500万円に維持すべきである。

(3) 住宅に係る登録免許税の軽減措置の延長

住宅の取得、保有に係る負担軽減の観点から、一定の住宅を新築、取得し、居住した場合に住宅に係る登記の登録免許税を軽減する特例措置(平成22年度まで)を延長すべきである。そもそも登録免許税については、本来、登記する際の諸費用という性格に鑑み、手数料化も含め検討すべきである。

(4) 不動産売買契約書、建設工事請負契約書に係る印紙税の軽減措置の延長

住宅購入に係る負担軽減の観点から、不動産売買契約書、建設工事請負契約書に係る印紙税を軽減する特例措置(平成22年度まで)を延長すべきである。

(5) 省エネ・バリアフリー改修税制の延長

住宅の長寿命化と質的向上を図るためには、既存住宅のリフォームやメンテナンスを促す措置が重要である。住宅の省エネ性能の向上、バリアフリー化は地球温暖化防止、高齢化社会への対応といった社会的要請にも資するものである。平成22年中に期限切れを迎える、既存住宅に省エネ改修・バリアフリー改修をした場合に所得税額を控除する特例措置を延長すべきである。

(6) 高齢者向け優良賃貸住宅建設促進税制の延長

高齢者向け優良賃貸住宅に係る固定資産税を減額する等の特例措置(平成22年度まで)を延長すべきである。

2.平成23年度住宅関連予算編成、その他制度改正に関する要望

(1) 住宅エコポイント制度の延長・拡充

住宅エコポイントは住宅購入者にとってメリットが分かりやすく、住宅市場の起爆剤として高い効果を発揮している。同制度は政府の「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」において、平成23年12月末まで延長されることになった。低迷する住宅市場を着実に回復軌道に乗せるとともに、質の高い住宅の普及を強力に進めるため、本延長措置を着実に実行するとともに、以下のような制度の拡充を図るべきである。
現在、非木造住宅については、省エネ法に基づくトップランナー基準相当の住宅が適用対象とされている。現行の省エネ基準相当の新築・改修についてもポイントを付与し、トップランナー基準相当の新築・改修についてはポイントを加算するような、性能基準に応じた段階的なポイント制度へと改めるべきである。

(2) 住宅ローンの金利引下げ幅拡大の延長

平成21年度第2次補正予算において、省エネ性能等に優れた優良住宅向けの住宅ローン「フラット35S」について、平成22年末までの時限措置として、当初10年間の金利引下げ幅が0.3%から1.0%へと拡大された。
同措置は政府の「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」において、平成23年12月末まで延長されることになった。同措置は低迷する住宅市場のてこ入れに大きな効果を発揮しており、回復の兆しを見せる住宅市場が腰折れを起こすことのないよう、本延長措置を着実に実行すべきである。

(3) 共同住宅に係る長期優良住宅の認定基準の見直し

国土交通省成長戦略は共同住宅に係る長期優良住宅の基準の見直しを打ち出している。民間事業者は従来より住宅性能表示制度に適合した質の高い共同住宅を提供し、省エネ、耐震等の面で住宅ストックの質の向上に実質的に貢献しているが、長期優良住宅の認定件数は伸び悩んでいる。共同住宅の長期優良住宅の認定基準について、こうした実態を踏まえ現実的なものとなるよう、抜本的な見直しが必要である。

なお、政府は、住宅の省エネ化に向けた取組み方針を明確にした工程表を平成22年中に作成し、将来の省エネ基準の義務化に向け、対象、時期、支援策等を位置づけることにしている。しかしながら、現行の省エネ基準(平成11年基準)の達成率は極めて低い水準に留まっており、省エネ基準の義務化を進めようとしても実現は厳しい状況にある。周辺機器の設置を支援する補助制度も含め、中長期に及ぶ継続的かつ強力な予算、税制、金融上の支援措置が不可欠である。

また、現在、住宅の取得時において、土地、家屋に対して不動産取得税、登録免許税、印紙税、消費税など重層的な課税がなされており、このような諸課税の整理、簡素化が必要である。今後、消費税の見直しを含む税制抜本改革にあたっては、住宅の購入に係る税負担が住宅市場の縮小を招かないよう一定の配慮が求められる。

以上

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