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Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー エネルギー政策に関する第1次提言

2011年7月14日
(社)日本経済団体連合会

1.基本的な考え方

  1. (1)東日本大震災により、福島第一原子力発電所は、極めて深刻な事故に見舞われた。多くの住民が長期の避難生活を余儀なくされ、また、農林畜水産業を中心に様々な被害をもたらした。関係者が一丸となって、事故の早期収拾に引き続き全力を尽くすことが何よりも重要である。

  2. (2)電力等のエネルギー供給力も大きく毀損された。現在、各企業は電力不足問題を乗り越えるべく、懸命の努力を続けている。しかし、対策の多くは、事業コストの上昇要因ともなっており、こうした状況が続けば、震災からの復興はおろか、企業活動全体や雇用維持の足かせとなる。
    また、企業が今後の国内での生産、設備投資を計画するうえで、エネルギーが経済性のある価格で、安定的に供給されることが重要な要件の一つとなる。わが国は、大震災以前より、重い法人税負担、円高、行き過ぎた温暖化対策や労働政策、通商政策の遅れなど様々な問題を抱え、企業の立地競争力が、欧米やアジア諸国に大きく劣後する状況が続いてきた。こうした状況に加えて、将来のエネルギー供給についての見通しが立たなければ、企業の製造拠点等の海外移転、国内での新規設備投資の抑制など、日本経済の空洞化の一層の加速は避けられない。
    政府のエネルギー政策において、まず取り組むべき課題は、今後5年程度の電力の安定供給の道筋を早急につけることである。他方、電力やエネルギー価格の上昇に繋がる施策は慎むべきである。

  3. (3)そのうえで、2020〜30年に向けた中長期的な視点に立ち、エネルギー安定供給、経済性、環境配慮のいわゆる3E間の優先順位を、東日本大震災後の状況を踏まえて見直し、エネルギーの新たなベストミックスを構築すべきである。
    近年、わが国のエネルギー政策は、温暖化防止に大きく軸足をおいてきた。しかし、国民生活の向上とともに、産業の空洞化を防止しながらわが国が安定的な成長を続けていくためには、安全性を大前提に、国内におけるエネルギーの安定供給や経済性に、より力点を置いた政策が求められる。
    他方、温暖化対策については、国内に閉じた政策ではなく、官民一体となって世界最高水準の技術の開発・普及に引き続き取り組みながら、地球規模の温室効果ガス削減に貢献していく取り組みに重点を置くべきである。こうした観点から、経団連では、低炭素社会実行計画を引き続き着実に推進していく決意である。

  4. (4)発送電の分離や競争原理のさらなる導入等の電力事業のあり方は、電力の安定供給や経済性に複雑な影響を及ぼす。拙速な議論は避け、原子力事業に対する国の関与のあり方と併せて、地に足のついた議論を行うべきである。

  5. (5)エネルギーは国民生活や企業活動を左右する極めて重要なインフラである。今後、エネルギー政策を見直し、新たな目標や施策を決定する際には、費用対効果を含めあらゆる客観的・科学的な情報を開示し、透明で国民に開かれた議論を行うべきである。

2.当面の電力供給の確保に向け求められる緊急対策

  1. (1)政府は、今後5年程度の電力の安定供給確保に向けた工程表を早急に策定し、公表すべきである。

  2. (2)原子力については、定期点検終了後も停止したままとなっている発電所を、速やかに再稼働させることが何よりも重要である。
    政府は、これまで実施した緊急安全対策等の意義について、周辺地方自治体・住民に十分説明し、理解を得る必要がある。各地元の要望についても柔軟に取り入れながら、政府一体となって、一貫した方針のもと、強い責任感をもって再稼働に取り組むべきである。

  3. (3)他方、原子力発電や再生可能エネルギーの実情を踏まえれば、当面、火力発電が果たす役割が高まらざるをえない。その際、化石燃料の適切な価格での調達や国内輸送、さらには安全な国際輸送に支障が生じないよう、官民が協力して取り組む必要がある。

  4. (4)また、電力事業者や企業による、ガスタービンやコジェネ、燃料電池等の自家用発電設備や蓄電池の導入についても、政策的な支援を積極的に行うべきである。

  5. (5)家庭やオフィスの節電については、省エネ機器や電力の使用状況の見える化機器の導入支援や、断熱性能の強化、BEMS#1、HEMS#2の活用をはじめとする建築物の省エネ化支援、需給がひっ迫した場合の緊急の警報も含め、国民的な節電運動の展開を実施する必要がある。

  6. (6)現在、夏の需給対策として、自家用発電や操業シフトにかかる規制緩和が実施されているが、需給のひっ迫状況の改善が確実に見通せる状況となるまでの間は継続すべきである。

3.中長期的視野に立ったエネルギー政策の見直し

(1) 新たなエネルギーのベストミックスの必要性

準国産エネルギーである原子力の果たす役割は引き続き重要である。安全性確保を大前提に国民の理解を十分に得ながら、引き続き着実に推進していく必要がある。しかしながら、現行のエネルギー基本計画における原子力の計画は見直しを余儀なくされよう。これによる供給力の不足分は、化石燃料、再生可能エネルギー、省エネルギーにより補わねばならない。
今後のエネルギーのベストミックスを検討する際には、各エネルギーの長所・短所、技術革新の動向を現実的・客観的に分析すべきである。そのうえで、安定供給や経済性など国内でまず実現すべき目標を踏まえ、開かれた国民的な議論を行う必要がある。実現性やコスト負担のあり方等を十分に検証することなく、安易に政治的な数値目標を掲げるべきではない。
当面、重点的に推進すべき施策は以下の通りである。

  1. 原子力
    原子力を活用していくうえでは、国民・国際社会の信頼の回復が最優先課題である。
    東日本大震災を踏まえた事故の再発防止策の徹底と、安全基準の抜本的見直しを含めた安全性向上にかかる不断の取り組みが必要である。併せて、自治体や住民の意向を十分に踏まえ、情報開示のあり方についても再検討すべきである。
    また、わが国の英知を結集し、最高水準の安全性を備えた原子力の研究開発に取り組む必要がある。

  2. 化石燃料
    化石燃料は、安定調達・供給と高効率利用に向け、研究開発をはじめとする取り組みが重要である。
    官民協力による、上流権益の確保や、燃料源の多様化、調達先の分散化が求められる。その際、資源国や資源メジャーとの価格交渉のための国内体制のあり方も検討すべきである。
    さらに、火力発電の高効率化、CCS#3の実用化等の研究開発を強化する必要がある。

  3. 再生可能エネルギー
    再生可能エネルギーは、エネルギー自給率向上や地球温暖化対策等の観点から重要であるが、普及には高コスト問題の解決が不可欠である。
    まず、費用対効果や物理的な制約を踏まえたわが国の導入ポテンシャルについて、客観的な分析をしたうえで、わが国の自然環境に相応しい現実的な導入計画を策定していく必要がある。その際、高価格・低効率の機器の普及を急ぐよりも、研究開発や設備投資の支援、事業者間の競争によるイノベーションを通じた、高効率化、低コスト化をまず図るべきである。さらに、地熱発電や風力発電等については、思いきった立地規制等の緩和が不可欠である。

  4. 省エネルギー
    省エネルギーについては、ユーザーによる主体的な取り組みを後押しする観点から、引き続き、省エネ機器や電力の使用状況の見える化機器の導入、設備投資への政策支援、研究開発の重点化を図るとともに、国民運動として、国民のライフスタイル、ワークスタイルの見直しを進めるべきである。

(2) エネルギー供給システムのあり方

今回の大震災の経験を踏まえ、最新の技術をも駆使し、災害にも強靭なエネルギー供給システムを構築していく必要がある。

  1. 集中型電源と分散型電源の連携強化
    集中型電源と分散型電源については、相対立するものとしてとらえるのではなく、それぞれを強化しつつ、同時に相互補完関係を高めていく必要がある。これにより、安定供給、高効率、高い危機対応能力を兼ね備えたベストミックスを実現することが重要である。その際、有事のバックアップ用電源やそのコスト負担のあり方、さらには供給責任のあり方について、具体的に検討する必要がある。
    また、各種電源のさらなる効率化・コスト削減に向けて研究開発を強化すべきである。

  2. 災害に強いインフラの整備
    電力に関しては、有事の際の供給のバックアップを確保する観点から、周波数変換所の増強、地域間連系線の整備について、政府の支援のあり方を含めて検討すべきである。
    また、石油については、国家備蓄の活用も含めたサプライチェーンの維持・強化を図るとともに、今後のガスパイプラインの整備のあり方について関係者を交え検討する必要がある。

  3. スマートグリッドの構築
    スマートグリッドは、分散型電源による系統への負荷の低減はもとより、有事の際の電力需給バランスの緩和にも貢献することが期待される。
    日本企業はこの分野で多くの優れた技術を有していることから、モデル都市における実証プロジェクト等を積極的に進めることで、コスト低減策やリスク管理のあり方を含む課題の抽出、対応策の検証等を進め、実用化に向けた取り組みを加速していく必要がある。

(3) 今後の温暖化政策の見直しの必要性

わが国の温暖化政策に関しては、産業界の主体的な取り組みにより、製造プロセス・製品における世界最高効率の維持・向上を図るとともに、これらを海外展開することにより、地球規模の温暖化対策に貢献していくことが何よりも重要である。
政府は、二国間オフセット・メカニズムの具体化を加速し、わが国の温暖化対策の柱として推進すべきである。
温室効果ガスの中期目標や個々の温暖化対策については、今回のエネルギー政策の見直しを踏まえ、改めてゼロベースで国民的な議論を行う必要がある。

4.終わりに

今回の提言は、政府において「革新的エネルギー・環境戦略」の検討が開始されたことを踏まえ、当面エネルギー政策において緊急に取り組むべき課題と、主たる論点について意見をとりまとめた。
経団連では、政府による同戦略の策定やエネルギー基本計画の見直しに向けて、さらなる提言を行うつもりである。

以上

  1. Building Energy Management System:ビル・エネルギー管理システム。IT技術等の活用により、空調・照明等の最適運転を実現する等、ビルのエネルギー消費の管理を支援するシステム。
  2. Home Energy Management System:家庭用エネルギー管理システム。IT技術等の活用により、家電機器等の最適運転を実現する等、家庭のエネルギー消費の管理を支援するシステム。
  3. Carbon Dioxide Capture and Storage:炭素の回収・貯蔵技術。火力発電所等において排出される二酸化炭素を回収し、地中等で貯蔵する技術。

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