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Policy(提言・報告書) 総合政策 今こそ競争力を強化し、成長を実現する - 2013年度事業方針 -

2013年6月4日
一般社団法人 日本経済団体連合会

昨年末の安倍政権の発足以降、行き過ぎた円高の是正と株価の回復が進み、TPP交渉への参加表明が行われるなど、日本経済にも明るい兆しが見え始めている。この足もとの動きが、デフレ脱却と真の経済再生につながるかどうかは、偏に成長戦略の成否にかかっている。まさにこれからが正念場である。

今こそ、企業や個人の経済活動のダイナミズムを高め、競争力強化に資する政策を積極果敢に実行しなければならない。これにより、名目3%程度の着実な成長軌道に乗せるべきである。

我々は「行動する経団連」として、内外の各界各層との連携を強化し、先頭に立って、豊かな国民生活と雇用の創出を実現する。このため、下記の重要政策課題の実現を迫るとともに、自ら「未来都市モデルプロジェクト」やグローバル人材育成事業をはじめとする様々な取り組みを推進し、民主導の持続的な経済成長に向けて邁進する。加えて、国益・国民本位で政策中心の政治を求めていく。

1.復興を加速する

震災から3年目を迎え、未だ震災被害に苦しむ被災地の生活と産業の再建は、まさに焦眉の急である。このため、復興庁の司令塔機能の強化や復興特区制度の大幅な拡充・柔軟化と関連手続の簡素化等、あらゆる手段を迅速に講じ、まちづくり事業の早期本格実施、農林水産業など地域の基幹産業の復興、企業立地の促進を図る。被災地が先進産業地域となる東北新時代を拓き、活力ある日本の再生につなげる。

国全体として防災・減災対策、地域インフラ整備に取り組む。企業・経済界は、事業活動の継続性を強化する。

2.事業環境を整備し、民間活力を最大限発揮する

経済を活性化し成長を実現するため、事業環境の国際的なイコール・フッティングを確保するとともに、世界に先駆けて、民間の創意工夫がより一層発揮され、生産性の向上に資する環境を整備する。企業は自らイノベーションを推進し、成長の機会を創出し新市場を開拓する。

(1) 大胆な規制・制度改革を断行する

情報通信、医療、介護、環境等における新技術の活用推進、農業の成長産業化等に向け、思い切って規制・制度を改革する。あわせて、総合特区制度を深化させ、国際的にも最先端な事業環境を整備し、新市場の創造につなげる。

(2) 科学技術力の強化とともに、産業を活性化する

総合科学技術会議の司令塔機能を強化するとともに、政府研究開発投資対GDP比1%、課題解決に資する基礎研究の強化、高度理工系人材の育成強化等を達成する。

生産・販売・物流等、企業活動全般に関する競争力強化策を政府一体となって立案・実施する。公共データの円滑な産業利用、個人データの保護と利用の適正なバランスの確保、観光産業やクリエイティブ産業等の振興と積極的な海外市場展開を支援する。

(3) エネルギーの安定供給と経済性を確保する

安全性が確認され地元の理解を得た原子力発電所の再稼働プロセスを加速する。加えて、安全面を含め、世界をリードする原子力技術を強化する。再生可能エネルギーについては、研究開発や規制緩和等を通じ、その導入を促進するとともに、国民負担の増大を招く現行の固定価格買取制度、地球温暖化対策税を見直す。また、化石燃料については、安価で安定的に調達するとともに、二酸化炭素回収・貯留の実用化を含め、利用方法の一層の高度化を推進する。

中長期のエネルギー政策については、現実を踏まえた合理的な議論を通じ、原子力を含む多様なエネルギー源保持の観点に立ち、安全保障(安定供給)、経済性、ならびに環境適合性の適切なバランスを確保する。同時に、温暖化対策を抜本的に見直す。

(4) 成長に資する税・財政・社会保障改革を進める

企業活動活性化により雇用を創出すべく、アジア近隣諸国並みの法人実効税率25%に向けて、法人課税の抜本改革の道筋を早急に明確化する。あわせて、研究開発・知的財産権に係る税制を拡充するとともに、自動車・住宅関係諸税を簡素化・軽減する。

成長と両立する社会保障制度改革に向けて、自助を基本に給付のより一層の効率化・重点化を進めるとともに、健康長寿社会を実現する。これにより現役世代と企業の社会保険料負担を抑制し、自助・共助・公助の適正化を図る。将来世代にツケを回さず財政を健全化すべく、消費税を着実に引上げるとともに、中期的な財政再建への道筋を明確にし、国民の理解と支持を得る。番号制度を着実に導入し効果的に活用する。

(5) 多様な人材が活躍する環境を整備する

少子高齢化と人口減少の中で成長を実現するには、一人ひとりに相応しい働き方が広がり、最大限能力を発揮することが不可欠である。このため、特に若年者と女性の就業機会の多様化・拡大と労働移動の円滑化に資する柔軟な労働市場環境を構築する。待機児童対策等の少子化対策に官民を挙げて取り組む。企業は自ら女性の活躍支援を推進する。

企業家精神に溢れ、世界を舞台に活躍できる人材を輩出すべく教育改革を推進する。企業はグローバル人材の積極的な育成・活用を図る。

(6) 海外の需要を取り込み、世界とともに成長する

経済外交力を強化し、経済連携、経済統合を推進する。TPP、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、日EU EPA等に向けた動きを一気に加速し、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築とグローバルなルールづくりを主導する。これにより国際関係の安定化とともに、通商立国としての確固たる成長の展望を拓く。

新興国をはじめとする諸外国に対し、官民連携でわが国のインフラ輸出等を推進し、省エネ、低炭素技術、環境保全型の農業再生産システム等の世界最先端の技術、ノウハウを積極的に提供する。その一環として、わが国発の技術、基準・認証、制度を基軸とし、サプライチェーン全体にわたる国際標準化戦略を構築する。投資協定や社会保障協定の締結を通じて、海外事業展開を支援する。

3.道州制導入を推進し、地域を活性化する

地域は、国民生活の場であり企業活動の拠点でもある。その活性化は日本全体の成長のために不可欠である。地域が自らの選択と責任により潜在的な魅力と強みを最大限発揮できるよう、道州制の導入に向け、道州制推進基本法を早期に成立させる。

あわせて道州制導入の前提条件である地方分権改革を重点的に推進する。行政の効率化、財政の健全化により、新たな成長につながる財源を確保すべく、国から都道府県、都道府県から市町村に、思い切って権限・財源・事務を移譲し、二重・三重行政によるムダを排除する。特に、意欲ある広域自治体に対しては、道州制特区推進法の要件を緩和し、権限等の移譲を加速する。電子行政を積極的に推進する。

以上

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