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Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー 「新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針(案)」に関する意見 -パブリック・コメント募集に対する意見-

2017年9月5日
一般社団法人 日本経済団体連合会
環境エネルギー本部

1.基本的考え方

<該当箇所>

2ページ 13~15行目、全体

<意見内容>

「環境・経済・社会課題の解決に統合的に取り組む」との姿勢は、経団連が重要視する「環境と経済の両立」と合致するものであり、賛同する。
そのうえで、環境・経済・社会課題に統合的に取り組むとの視点に立てば、経済合理性や費用対効果、実効性、現在検討が進められている第5次環境基本計画をはじめとする国の他計画との整合性の確保、トレードオフの関係への対処など、考慮すべき重要な視点がある。基本計画には、こうした視点が重要である旨を明記し、各施策の立案や評価に生かすべきである。
また、項目ごとに用いられた「施策について示す」との表現は、必ずしも、基本計画に具体的な施策を示すということではなく、施策の実施の是非を含め、今後、具体的な施策の内容について検討することであることを確認したい。計画の案文作成にあたっては、各課題に対し、その重要性や実効性、費用対効果などを踏まえて、丁寧に議論し書き分けるべきである。

2.バックキャスティング的な検討

<該当箇所>

2ページ 1~2行目

<意見内容>

バックキャスティング方式を活用する際には、明確かつ具体的なゴールの設定が必要である。しかし、循環分野において、具体的なゴールや目標年次の設定が可能かどうか、あるいは、そもそも数値目標などの具体的なゴールを国として設定すべきか、現時点では明らかではない。
循環型社会形成の推進にあたり、重視すべきは、むしろ、目指すべき方向性やその政策のあり方を、関係者のコンセンサスを得ながら丁寧にまとめていくことであり、今後の計画案文の検討においては、その点に留意する必要がある。

3.ライフサイクル全体での資源循環

(1)上流側での取組の強化

<該当箇所>

3ページ 5~7行目

<意見内容>

「各主体が連携してライフサイクル全体での効果的・効率的な資源循環を徹底するための施策について」検討するとの方針に賛同する。
しかしながら、前提条件のように示された「上流側での取組を強化し、」との説明は、規制的な手法により一部の事業者の負担を強化するともとれるため、今後の計画案文の検討にあたっては、一部の事業者に責任や負担を課し、関係者の自主性や主体性を損なうことにならないよう、留意すべきである。

(2)拡大生産者責任の適用、経済的インセンティブの活用

<該当箇所>

3ページ 12~14行目

<意見内容>

拡大生産者責任は、OECDのガイダンス・マニュアルにおいて、各国の経済・社会・文化的事情を考慮し、そのなかで最も自国にあった方式をとることが推奨されている。すなわち、必ずしも全面的に生産者に責任を移転させるものではなく、拡大生産者責任を適用するか否かは、画一的に定められるものではない。個別の政策検討のなかで、いたずらに事業者の責任を強化することにならないよう、基本計画において「拡大生産者責任」との言葉を用いる場合は、丁寧に記述されたい。
また、「経済的インセンティブの活用について示す」について、その財源確保にあたっては、一部の事業者に過度な負担を課さないよう、慎重な検討が求められる。

4.プラスチックなど多種多様な製品に含まれている素材

(1)海洋中のマイクロプラスチック問題

<該当箇所>

3ページ 23~25行目

<意見内容>

海洋中のマイクロプラスチックは、指摘のとおり国際的な課題であり、施策の検討にあたっては、実効性と国際的な公平性を確保することが重要となる。基本計画には、実態把握の必要性とともに、それらの視点についてしっかりと明記すべきである。

(2)多様な製品に含まれるプラスチック等の資源循環施策

<該当箇所>

3ページ 26~31行目

<意見内容>

個別リサイクル法の対象に留まらず、多種多様な製品に含まれるプラスチック等の資源循環を進めるための施策について示すこととされているが、その具体的な内容が不明である。施策の検討にあたっては、国・自治体・事業者・国民の役割分担、かかる費用の問題、リサイクル品の品質確保の問題など、考慮すべき課題は多い。拙速に規制を導入し、一部の関係者に多大な負担を課したり、既存のリサイクルルートによる資源循環が阻害されたりすることのないよう、慎重な検討を行う必要がある。

5.適正処理のさらなる推進

(1)電子マニフェスト

<該当箇所>

6ページ 1~2行目

<意見内容>

電子マニフェストの使用率の向上のためには、排出事業者・収集運搬業者・処分業者の3者が揃って確実に使用するための方策の導入が重要である。現状、規模の小さい収集運搬業者など電子マニフェストの普及が未だ進まない関係者は多く存在する。収集運搬業者・処分業者が対応しないことにより、排出事業者が電子マニフェストを使用できず、排出事業者責任が問われることは公平性を欠くため、基本計画には、収集運搬業者・処分業者を対象とした加入率向上の施策を講じていくことについて、しっかりと明記すべきである。

(2)廃棄物処理分野における情報の電子化

<該当箇所>

6ページ 5~7行目

<意見内容>

廃棄物処理分野における情報の電子化の推進の重要性について、盛り込んだ点を評価する。
そのうえで、基本計画には、電子化の推進により期待される効果や目指すべき姿などを示し、併せて、処理業者の許可情報等の公開・一元管理、電子マニフェストの活用を含めた各種報告手続の電子化および合理化など、具体的に推進すべき項目を整理すべきである。また、計画策定後、電子化を推進するための検討会を設置して取り組む旨を、明記すべきである。

6.指標・数値目標

<該当箇所>

7ページ 7~9行目

<意見内容>

これまでの基本計画において、経済社会におけるものの流れ全体を把握する物質フローの入口断面を示すものとして、目標値が設定されてきた資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)について、目標値の設定を廃止すべきである。
資源生産性は、国民・企業の努力だけで改善できるものではなく、国内外の経済情勢、資源価格、為替等による変動が大きい。現に、直近の第三次基本計画の進捗状況の第3回点検結果報告書において、2008年度の世界金融危機の影響による実質GDPの変化や、2009年度までの大規模公共工事の減少による天然資源投入量の変化が、資源生産性の変動要因として記されている。
第4次環境基本計画において、「限りある天然資源の消費を抑制し、より効率的な資源利用を図る観点から、次期循環型社会形成推進基本計画の中で、物質フロー指標の質的改善を図る。」と明記されていることを踏まえ、次期循環型社会形成推進基本計画では、国民や企業の努力がしっかりと反映される指標に絞って、目標値を設定すべきである。

以上

意見募集ページ(環境省)
http://www.env.go.jp/press/104431.html

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