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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 「確約手続に関する対応方針(案)」に対する意見

2018年8月6日
一般社団法人 日本経済団体連合会
経済法規委員会 競争法部会

「確約手続に関する対応方針(案)」(以下、対応方針案)の策定は、法運用の透明性ならびに事業者の予見可能性の確保に資するものであり、評価したい。同手続により、競争法上の疑いの早期是正ならびに公正取引委員会と事業者による協力型の事件処理が実現することを期待し、以下のとおり意見を述べる。

1.総論

(1) 手続全体を通しての十分なコミュニケーション

確約手続通知の前はもちろん、手続に関係する全ての場面において、公正取引委員会と事業者とが密にコミュニケーションをとる運用としていただきたい。相互理解が不十分であることを原因とするタイムロスや、事業者にとって不意打ちとなる形での認定の却下がなされて通常手続に戻ることとなれば、本手続の主眼である競争法上の疑いの早期是正を十分に達成できず、双方にとり望ましくない。

(2) 手続の周知徹底

確約手続はわが国では全く新しい手続であり、競争法上の疑いの早期是正等手続の趣旨も含め、公正取引委員会には広く周知いただきたい。特に、確約計画の認定は違反を認定するものではないことについては、事業者がレピュテーションリスクを懸念してせっかくの手続の利用を躊躇うことのないよう、積極的に周知いただきたい。

2.各論

(1) 確約実施措置の確実性【対応方針案6(3)ア(イ)】

確約措置の内容が契約変更を伴う場合などは第三者との合意が必要となるが、確約認定申請時までの60日間でこの合意を成立させることは困難である。そもそも、確約認定申請時に措置の実施(合意の成立)まで求めることは疑問であり、措置の「計画」で足りるはずである。その観点から、「当該第三者との合意を確約認定申請時までに成立させなければ、原則として、措置実施の確実性を満たすと認めることはできない」とする部分は、削除ないし契約変更にかかる方針の提出で可とするなど、現実的な記載に修正いただきたい。

仮に、合意の成立まで要求するのであれば、60日の期間の延長を認めるか、公正取引委員会において通知をいったん取下げるといった運用を検討いただきたい。

(2) 意見募集【対応方針案7】

ウェブサイト等を通じた第三者からの広い意見募集については、被通知事業者が独占禁止法に違反したかのような印象が形成されることによるレピュテーションリスクや風評被害に対する懸念、濫用的な意見により公取委の判断が左右される懸念、さらには、取引関係やビジネスモデルなどの企業秘密の漏洩に対する懸念がある。

これらの懸念は、確約手続の利用にかかる事業者のインセンティブそのものを削ぎかねないことから、第三者からの広い意見募集を行うにあたっては事業者の事前の同意を必要とすべきであり、その旨を対応方針案に明記すべきである。

(3) 確約計画の認定に関する公表【対応方針案11】

公表の必要性については理解するが、全ての事案について必要的に公表する必要があるのかは疑問である。また、「公表に当たっては、独占禁止法の規定に違反することを認定したものではないことを付記する」こととされてはいるが、公表の仕方によっては、レピュテーションリスクに対する懸念は払拭できず、また、企業秘密等の漏洩も懸念される。

以上を踏まえ、公表する場合にはその内容について、事業者の事前の同意を必要とすべきである。

以上

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