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Policy(提言・報告書) 総合政策 「Society 5.0 for SDGs」で新たな時代を切り拓く 2019年度事業方針

2019年5月30日
一般社団法人 日本経済団体連合会

時代の新たな節目を迎え、日本経済は新しい安定成長の仕組みを築く時にある。この機を捉え、わが国の、ひいてはグローバルな経済社会の安定と成長に貢献していくために、経団連は、成長戦略の推進、経済構造改革の推進、持続可能なエネルギー・環境政策の実現、民間経済外交の展開という4つの重要課題に取り組む。

成長戦略の推進の柱となるのがSociety 5.0である。デジタル化の波は、世界経済全体の枠組みを急速なスピードで変えようとしている。経団連は、夢のある未来社会を構築するため、総力を挙げて「Society 5.0 for SDGs」を実行フェーズに移す。技術革新を基盤に、イマジネーション(想像)とクリエーション(創造)の二つの「ソウゾウ」で人間中心の社会を作るべく変革を主導する。このため、デジタル・トランスフォーメーションを横展開して、経済の力強い成長、国民生活の利便性向上、ヒト・モノ・カネの効率的な配分を実現するとともに、社会課題の解決を通じて国連の採択したSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献していく。その際、産業構造の新陳代謝を促進し、企業の規模に関わらず新たな挑戦を促す競争環境の整備にも聖域を設けず果敢に取り組む。

経済構造改革の推進に向けて、国民の将来不安を払拭するため、経済成長との両立を図りつつ、社会保障制度改革ならびに財政健全化を働きかける。また、企業活動の活性化に資する規制改革や税制改革等を通じて、日本を世界で最もビジネスがしやすい国へ変革するよう活動する。

エネルギーにおけるS+3E(安全性の確保を大前提とした、安定供給、経済効率性、環境性のバランス確保)の実現は国民生活や事業環境の基盤である。また、パリ協定の採択やESG投資の拡大を契機に気候変動対策への国際社会の関心が一層高まっている。経済成長と両立する持続可能なエネルギー・環境政策の実現に向けて、建設的な意見発信により抜本改革を促すとともに、自主的取り組みを推進する。

米中摩擦、英国のEU離脱、北朝鮮問題など、極めて不透明な国際情勢が続く中、わが国が長期安定政権であることの強みを活かして、積極的に民間経済外交を展開する。B7/B20サミット等を通じて経済界の立場からルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の重要性を積極的に発信し、その維持・強化に貢献する。

併せて、震災復興の着実な推進による東北の再生・創生や、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年大阪・関西万博といった国家的イベントの成功に向けて、引き続き国を挙げて取り組む。

こうした方針の下、我々は発信力と実行力に一層の磨きをかけ、下記に掲げる政策課題に取り組み、活力ある経済社会の構築に邁進する。

1.成長戦略の推進~Society 5.0 for SDGs 実行へのアクションプラン

企業が変わる
  1. (1) Society 5.0の実現
    〔重要分野の検討〕
     ①ヘルスケア、②農業、③観光、④物流、⑤防災・減災、⑥金融、⑦教育
  2. (2) SDGsへの企業の取り組みの推進
  3. (3) イノベーションエコシステムの構築
  4. (4) 働き方改革
  5. (5) 女性活躍とダイバーシティの推進
  6. (6) 高齢者や障害者の多様な働き方の実現
人が変わる
  1. (7) 外国人材の受け入れ
  2. (8) 人材育成の推進
行政・国土が変わる
  1. (9) デジタル・ガバメントの推進
  2. (10) 地方創生
  3. (11) 都市機能の充実
データと技術で変わる
  1. (12) データ活用の促進
  2. (13) 自由な越境データ流通の確保
  3. (14) サイバーセキュリティの強化
  4. (15) イノベーションの促進
  5. (16) AI(人工知能)の活用の促進
  6. (17) 消費の喚起

2.経済構造改革の推進

  1. (1) 財政健全化
  2. (2) 社会保障制度改革
  3. (3) 規制改革
  4. (4) 税制改革
  5. (5) 子育てに優しい社会の実現に向けた環境整備
  6. (6) 企業法制改革、コーポレート・ガバナンス改革、
    投資家との建設的対話を通じたSDGs関連投資の促進

3.持続可能なエネルギー・環境政策の実現

  1. (1) S+3Eのバランスを確保したエネルギー政策の推進
  2. (2) 経済成長と両立する環境政策の実現

4.民間経済外交の展開

  1. (1) ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化
  2. (2) わが国主要経済パートナーとの関係強化
  3. (3) インフラシステムの海外展開の促進

5.国家的イベントの成功

  1. (1) 東京オリンピック・パラリンピック等
  2. (2) 2025年大阪・関西万博

6.震災復興の着実な推進と東北の再生・創生


参考資料

アクションプログラム

1.成長戦略の推進~Society 5.0 for SDGs 実行へのアクションプラン

企業が変わる

(1) Society 5.0の実現

提言「Society 5.0 -ともに創造する未来-」(2018年11月)の具体化に向けて、個別分野に関して検討を深め、アクションプランの実行に努める。地方および中小企業におけるSociety 5.0の認知度向上を目指して、セミナーの開催等、周知・広報活動を強化する。

〔重要分野の検討〕

  1. ヘルスケア
    ヘルステック戦略検討会の下で産業界のアクションを検討するとともに、政府への働きかけを行う。医療界等との対話を継続し、産学官医の連携を推進する。次世代ヘルスケアを実現するための医療・介護データの民間利用の促進を働きかける。

  2. 農業
    提言「農業 先端・成長産業化の未来 -Society 5.0の実現に向けた施策-」(2018年9月)に基づき、生産基盤強化や輸出・海外展開の加速化等、イノベーションを通じた農業の先端・成長産業化につながる施策の展開を働きかける。
    JAグループをはじめとする農業界との連携強化を通じて、農業界のニーズと経済界の技術シーズやノウハウとを融合させることで、生産性・付加価値等の向上を目指す。

  3. 観光
    「観光立国推進基本計画」の着実な推進に向けて、観光の「質」の向上に取り組む。良質なDMO(Destination Management/Marketing Organization)の形成促進とともに、国内観光需要の喚起と平準化に向けて、引き続き学校休業日の分散化および企業における年次有給休暇の取得の促進に取り組む。高度観光人材を育成するため、「経団連観光インターンシップ」を継続実施する。

  4. 物流
    提言「Society 5.0時代の物流―先端技術による変革とさらなる国際化への挑戦―」(2018年10月)で主張した諸施策の実現に取り組む。物流におけるデータ利活用の推進等に向けて必要な施策の実現を働きかける。
    持続可能な物流の実現に向けて、トラック事業者をはじめとする物流事業者の働き方改革を推進するとともに、船舶燃料油の環境規制強化への対応について社会全体の理解・協力を促す。

  5. 防災・減災
    政府と連携しつつ、「国土強靭化計画」の着実な実行を働きかけるとともに、企業のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)・BCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)の実効性向上など、わが国における防災・減災、国土強靭化を推進する。防災に資するICTの利活用をはじめ、Society 5.0の防災分野における取り組みを進める。

  6. 金融
    金融分野における最先端技術の活用により、一人ひとりのニーズに合った多様な金融サービスの提供や、社会全体への効率的・効果的な資金配分を通じ、経済的な自立や生活水準の向上、所得格差の解消などを図る未来像と、そこに至る具体的な取り組みを検討する。

  7. 教育
    教育分野における最先端技術の活用により、Society 5.0時代の人材に必要となる教育をすべての人々が受けられる未来像と、そこに至る具体的な取り組みを検討する。

(2) SDGsへの企業の取り組みの推進

企業のCSRの実践にSDGsの概念を取り込み、企業行動憲章の周知徹底、「Society 5.0 for SDGs」の普及・推進、企業の社会貢献活動の推進等を通じて、社会的課題の解決および経済社会全体の持続的発展につながる取り組みを促す。併せて、日本企業のSociety 5.0 for SDGsへの取り組みを国内外に発信し、産学連携に向けたプラットフォームづくりを支援する。

(3) イノベーションエコシステムの構築

提言「Society 5.0実現に向けたベンチャー・エコシステムの進化」(2019年2月)の周知、大企業におけるオープンイノベーションの定着・本格化を働きかける。さらなるスタートアップ振興に向けて、会員企業とスタートアップの対話の場を引き続き設けるとともに、スタートアップ先進国における政策動向やオープンイノベーション拠点のあり方を調査する。

(4) 働き方改革

2018年度よりスタートした「働き方改革 toward Society 5.0」を継続し、経済界全体の働き方改革の加速に向けた各種活動を展開する。2019年4月より段階的に施行される働き方改革関連法に関する企業の対応を支援する。企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については、引き続き必要性への理解を求めるとともに改正法案の早期の再提出・成立を働きかける。

(5) 女性活躍とダイバーシティの推進

女性活躍推進法案の成立後に労働政策審議会で行われる省令・指針の議論への対応にあたり、企業実務に即した内容となるよう経済界の意見反映に努める。

経団連幹部による各社女性役員向け「メンター・プログラム」をはじめ、各キャリアステージに合わせた人材育成プログラムや、理工系女子学生育成イベントの実施等、女性活躍とダイバーシティを通じた企業の競争力強化に取り組む。

(6) 高齢者や障害者の多様な働き方の実現

高齢者の活躍推進に向けて、65歳を超える高齢者の就業機会の拡大に際し、企業の主体的な取り組みが尊重されるよう政府に働きかける。また、障害者雇用に伴う諸課題の解決に向けて、働き方の選択肢拡大など就業環境の改善に引き続き取り組んでいく。

人が変わる

(7) 外国人材の受け入れ

Society 5.0 の実現の基盤となりうる、多様な人材が生き生きと働く社会を実現していく観点から、これまで同様、高度外国人材の受入れを図る。4月から発足する14業種35万人の新たな外国人材の受入れ制度について、受入れ企業の責務等を中心に制度内容を周知するための活動を行う。

(8) 人材育成の推進

大学教育の質の向上および大学改革に向けて、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において、Society 5.0の実現に資する人材育成のための大学教育や中長期的な企業の採用のあり方、インターンシップのあり方、地域の活性化や地方創生に資する人材の育成・還流に向けた施策などについて検討を重ねる。また、課題解決に向けた具体的なアクションを提示して、大学と産業界とがこれに共同で取り組む。

デジタル革新や職業人生のマルチステージ化を見据えて、企業における社員の自律的な成長を促す方策について検討し、報告を取りまとめて発信する。

行政・国土が変わる

(9) デジタル・ガバメントの推進

行政のデジタル化の早期実現に向けて、2019年通常国会におけるデジタル手続法案および関連法案の確実な成立を目指す。さらに、国・地方公共団体を通じた「デジタル3原則」(①デジタルファースト、②コネクテッド・ワンストップ、③ワンスオンリー)が実現するよう、政府の関係組織と連携しながら、経団連の意見を発信していく。

(10) 地方創生

地方経済懇談会の開催や地方自治体の首長との懇談、会員企業と地域の中核的企業とのマッチング等「地方創生に向けた経団連アクションプログラム」を引き続き実行する。第二期まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定等、政府の動きを注視しつつ、道州制、広域連携など地域の主体性発揮につながる統治機構改革等を柱とする提言を取りまとめる。

(11) 都市機能の充実

Society 5.0の実現に向けて、デジタル革新による都市や住宅に関連する経済社会課題の解決を図る。東京圏をはじめとする大都市の国際競争力を強化し、わが国全体の成長につなげるべく、提言を取りまとめる。政府と連携しながらスマートシティーの実現に取り組む。PPP(Public Private Partnership)やPFI(Private Finance Initiative)の活用拡大など、まちの活性化や公的サービスの維持・効率化に資する施策を推進する。

データと技術で変わる

Society 5.0の実現に向けて、引き続き、個人データを含むデータの利活用促進に向けた環境整備、サイバーセキュリティの強化等に重点的に取り組む。

(12) データ活用の促進

個人データを含むデータの利活用促進に向けて、個人が納得・信頼できる個人データの保護・活用の仕組みを検討し、提言を取りまとめる。個人情報保護法の3年ごとの見直しに向けた動きが本格化することから、提言取りまとめに向けた検討内容を踏まえ、適宜、個人情報保護委員会等に対して意見を述べる。

(13) 自由な越境データ流通の確保

データの自由な越境流通を実現するための枠組み作りに向け、DFFT(Data Free flow with Trust)を掲げる政府とも連携をして検討を進めるとともに、引き続き、米国や欧州をはじめとする各国との政策対話に参画する。

(14) サイバーセキュリティの強化

経営者向けセミナーの開催等、サイバーセキュリティに関する意識の向上を促す取り組みを継続するとともに、企業が具体的なアクションを起こしていくための指針や企業のサイバーセキュリティへの取り組みを可視化するための方策について議論する。また、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)等と連携しながら、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた官民の情報共有体制のあり方について検討を行う。

(15) イノベーションの促進

「Society 5.0の実現に向けた『戦略』と『創発』への転換~政府研究開発投資に関する提言~」(2019年4月)に基づき、第6期科学技術基本計画が、Society 5.0の実現に資する計画となるよう政府に働きかける。企業間や大学・国立研究開発法人とのオープンイノベーションの推進に向け、大学・国立研究開発法人と意見交換を進めつつ、必要な制度整備を政府に働きかける。

(16) AI(人工知能)の活用の促進

AIをはじめとする先端技術について、個別分野での活用を検討するとともに、各企業でのAI活用を促すための活動を行う。とくにAIを活用する段階にいたっていない企業に対しては、AIを活用するための準備(AI-Ready化)を働きかけていく。

(17) 消費の喚起

キャッシュレスやシェアリングなど、個人消費を取り巻く環境が大きく変化する中、デフレ脱却、持続的な経済成長を実現するため、その喚起につながる活動を展開する。個人消費の一層の拡大へ向け、プレミアムフライデーをはじめ、官民一体となった施策を需給両面から引き続き推進する。

ユニバーサル社会のあり方や生活者の利便性・快適性向上に寄与する製品・サービス等について検討を深め、企業による事例を中心とする報告書を取りまとめることで、経済界における取り組みを促す。

2.経済構造改革の推進

(1) 財政健全化

2019年央を目途に策定予定の「骨太方針2019」に対して、経済財政諮問会議、財政制度等審議会等を通じて、財政健全化目標の実現に向けた歳出改革の推進を働きかける。同時に、2019年10月には、これまで二回延期された消費税率10%への引き上げを確実に実施するよう求める。併せて、海外の経済動向や、消費税率引き上げ前後の経済情勢等を注視しながら持続的な経済成長に向けた政策対応の必要性について引き続き検討する。

さらに、今後の課題として、社会保障制度に対する将来不安を払拭し、広く国民全体で支える観点から、望ましい負担のあり方について、国民的な議論を喚起していく。

(2) 社会保障制度改革

生産年齢人口の減少がピークを迎える2040年を視野に入れた社会保障制度のあり方について、持続可能な全世代型社会保障制度の構築に向け、医療・介護サービス分野における生産性の向上策や給付・負担面からの経済界としての提言を取りまとめ、その実現を働きかける。

給付・負担のあり方に関する改革事項について、早期の検討と実現に向けて関係団体とも連携を図りながら対応を働きかける。健康経営の裾野拡大に向け、引き続き周知活動を展開していく。

(3) 規制改革

7月の規制改革推進会議の設置期限後に従来以上に強力な推進体制が構築されるよう、「規制改革の推進体制の在り方に関する提言」(2019年3月)の実現を関係方面に働きかける。規制改革要望の実現可能性を高める観点から、要望の作成方法を見直す。具体的には、規制改革推進会議の後継組織とも連携しながら、重点テーマを設定し、会員企業・団体の要望を踏まえて提言を取りまとめる。

(4) 税制改革

わが国企業の国際競争力強化および日本国内への投資促進の観点から、企業活動にかかる実質的な税負担の軽減や連結納税制度の負担軽減等について、税制改正提言を取りまとめ、制度の充実や必要な見直しを働きかける。

また、電子経済課税に関する世界的な議論に対応していく。

(5) 子育てに優しい社会の実現に向けた環境整備

子ども子育て分野における事業主拠出金事業について、「事業主団体との協議の場」等を通じて、運営規律の徹底、PDCAサイクルの強化を図り、事業内容を厳しく精査し、適切な拠出金率が設定されるよう、政府との交渉にあたる。

社会全体として子育てを支えていくための環境整備に向けた取り組みを継続する。第4次少子化社会対策大綱策定に向けた政府の検討に対応すべく、今後の少子化対策のあり方について、関係委員会と連携し具体策を検討する。

(6) 企業法制改革、コーポレート・ガバナンス改革、投資家との建設的対話を通じたSDGs関連投資の促進

実効あるコーポレート・ガバナンスの実現に向け、先進事例の収集、会員企業への情報発信に努めるとともに、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの運用状況を把握し、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」等を通じ、必要に応じ改善を働きかける。また、コーポレート・ガバナンス改革、企業と投資家による建設的対話への取り組みを通じSDGs関連投資を促進する。独占禁止法における秘匿特権制度が実効的なものとなるよう働きかける。

3.持続可能なエネルギー・環境政策の実現

(1) S+3Eのバランスを確保したエネルギー政策の推進

わが国の地理的・経済的特徴を踏まえ、あらゆる選択肢を確保し、ベストミックスを実現することを通じて、S+3Eのバランスが確保されるエネルギー政策の実現に取り組む。その一環として、電力投資の好循環実現を通じたS+3Eの高度化に資する次世代電力システムの構築に向け、提言「日本を支える電力システムを再構築する」(2019年4月)で提起した課題への対応を具体化すべく、政府における関連施策の審議の場に参画するなど、働きかけを行う。

(2) 経済成長と両立する環境政策の実現

経済成長と両立する環境政策の実現に向け、引き続き、自主的取り組みを推進するとともに、関係方面への働きかけを行う。

政府に対し、地球規模の温室効果ガスの削減を目指し、経済成長と両立する気候変動政策の推進を働きかける。とりわけ、長期戦略の策定にあたり、「パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言」(2019年3月)の反映を図る。COP等の機会を活用し、日本の経済界の自主的取り組みの知見や成果を国際的に発信するとともに、長期・地球規模での温室効果ガス削減に向けた方策等について、主要国の経済界・政府等と意見交換を行う。

「『プラスチック資源循環戦略』策定に関する意見」(2018年11月)を踏まえ、海洋プラスチック問題の解決や国内資源循環の推進に貢献する。

4.民間経済外交の展開

(1) ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化

保護主義的・一方的な措置が広がる中、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序を維持・強化するため、TPP11参加国の拡大を図るとともに、TPP11や日EU EPA等に盛り込まれた先進的なルールが他の経済連携協定(EPA)等に盛り込まれるよう働きかける。

東アジア包括的経済連携(RCEP)、日中韓FTAの質の高い水準での早期実現に向けて、アジア・ビジネス・サミット、日中韓ビジネス・サミット、日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム、日中企業家及び元政府高官対話等の場を通じて政府首脳への働きかけを行う。

提言「新たな時代の通商政策の実現を求める―WTOの改革を中心に―」(2019年1月)に基づきWTO改革を引き続き働きかける。新たな時代に即して、越境データ流通の自由の確保を含む電子商取引・デジタル貿易に関する高いレベルのルール作りに向けて交渉の開始・推進を働きかける。

投資家対国家の紛争解決制度(ISDS:Investor-State Dispute Settlement)を含む高いレベルの投資協定が着実に締結されるよう各国政府に引き続き働きかける。社会保障協定については、二重払いのリスクが特に大きい、ベトナム、タイ、インドネシア、メキシコとの社会保障協定交渉の早期開始を働きかけていく。

米国の機微技術管理強化への対応策を引き続き検討し、必要に応じて意見表明を行う。

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に向けて各種協力を行う。アフリカが直面する課題の解決に向けて、アフリカ各国首脳や日本政府に働きかける。

(2) わが国主要経済パートナーとの関係強化

(米国)
わが国にとっても最も重要な同盟国であり、パートナーである米国との経済関係の更なる強靭化に向けて、米国における日本企業および経団連の存在感を高めるとともに、日本企業にとって関心の高い政策課題についての発信を強化する。そのため、再編後のアメリカ委員会連携強化部会を中心に、訪米ミッションの派遣、米国の政策動向の把握と働きかけ、米国の連邦・州・市の行政府・議会・経済界要人との懇談、全米知事会との連携、米国経済団体等との対話・連携の強化等の活動に取り組む。

(中国)
日中企業家及び元政府高官対話の開催、日中経済協会および日本商工会議所との合同訪中代表団の派遣など、中国政府幹部や経済界首脳との交流・対話を通じて、日中の戦略的互恵関係の強化・発展を図る。加えて、経済構造改革、外資参入規制、情報セキュリティ、知的財産権保護、輸出管理政策等、中国のビジネス環境の改善を働きかける。

(アジア・大洋州)
アジアの持続的な発展に貢献することが日本の経済成長につながるとの認識の下、アジア大洋州地域の二国間・多国間関係の強化、他地域との連携を推進する。アジア・ビジネス・サミット、日中韓ビジネス・サミットをはじめ、アジア各国政府・経済界との相互理解、協力を促進する。安倍総理訪印に合わせて日印ビジネス・リーダーズ・フォーラムを開催し、引き続きインドのビジネス環境整備を働きかける。

(欧州)
日EU EPAを基盤とする日欧経済関係の強化に向けて、EPAの活用を促すとともに、規制協力等に関する欧州経済界との対話・連携を深める。英国のEU離脱に関し引き続き情報収集を行うとともに、経済活動への打撃を最小化すべく、必要に応じて英国およびEU双方に働きかける。

(ロシア)
8項目の「協力プラン」実現に向けて協力する一方で、日本企業が直面する障害を除去し、対露投資の好循環を創出すべく、経済特区や投資誘致制度ほかビジネス環境の現状を会員企業に周知する等、日露ビジネスの拡大と深化に向けて取り組む。

(3) インフラシステムの海外展開の促進

提言「戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて」(2018年度版:2019年3月、2019年度版:2019年度内予定)等、インフラシステムの海外展開に係る日本経済界の要望事項等を取りまとめ、政府が取りまとめる「インフラシステム輸出戦略」への反映や、わが国政府による各種支援策の充実等を通じて、官民一体で競争力の強化を図り、質の高いインフラシステムの海外展開を推進する。

5.国家的イベントの成功

(1) 東京オリンピック・パラリンピック等

ラグビーワールドカップ2019ならびに東京オリンピック・パラリンピックの開催を成功に導くため必要な情報提供や呼びかけ、日本代表選手・チームの活躍に向けたアスリート支援などに取り組む。また、オリンピック・パラリンピック等経済界協議会を通じて、大会の成功に向けた機運醸成、安全・快適に観戦できる環境づくり、レガシー形成などの活動を全国で展開する。

(2) 2025年大阪・関西万博

2025年大阪・関西万博がSociety 5.0 for SDGsを達成した未来社会の発信の場となるよう取り組む。

6.震災復興の着実な推進と東北の再生・創生

震災を風化させないという決意の下、復興を着実に推進し、東北の再生・創生を重点的に進める。そのため、復興庁をはじめ関係者との密接な連携の下、主に産業の再生・復興に資する活動を展開する。「復興期間」終了後の施策等の展開状況を注視しつつ、「東北復興応援フェスタ」の実施、会員企業・団体に対する東北産品の利用促進・消費拡大および東北への視察・観光推進の呼びかけ等に取り組む。

以上

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