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Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 「科学技術・イノベーション基本計画」策定に向けて

2020年10月13日
一般社団法人 日本経済団体連合会

2016年から2020年に亘ったわが国の第五期科学技術基本計画が、間もなく終わろうとしている。同計画は、産業界の協力のもと、Society 5.0というコンセプトを打ち出し、その後のわが国の成長戦略に掲げられるに至った。

次期の計画は、2021年から2030年までの10年間を見据えた今後5年の計画となる。同計画は、策定の根拠法である「科学技術基本法」が、本年6月に「科学技術・イノベーション基本法」に改定され、法の対象に「人文科学のみに係る科学技術」「イノベーションの創出」が追加されたことを受けて初めて策定されるものであり、名称自体も「科学技術・イノベーション基本計画」となる。このことの含意は極めて大きく、骨太の方針や成長戦略が国家の将来ビジョンを描きえない中、同計画が、狭義の科学技術政策の枠を超え、今後5年の国家の進むべき方向性に関する重要な青写真となる可能性を秘めている。

世界は大きく変貌している。昨今の異常気象・自然災害等の急激な増加を背景に、気候変動は今や気候危機とも呼ばれており、サステナビリティ確保に向けた行動の必要性がこれまでになく高まっている。また、今次の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界同時蔓延というパンデミックにより、予てから存在していた様々な課題が、より先鋭化・顕在化した。さらに近年は、国際情勢の変化に伴い、経済と安全保障の関係も深まっている。そうした中、経団連では「科学技術・イノベーション基本計画」策定に向け、提言を行うものとする。

Ⅰ 基本認識

1.人類共通かつ最大の危機「サステナビリティ」のさらなる深刻化

産業革命後の世界的な人口急増#1と生活水準の向上を背景に、エネルギー消費量および温室効果ガス排出量は急増している。昨今、異常気象等が頻発する中、地球温暖化に伴い、今後、異常気象がさらに増加する可能性も指摘されている。今や地球は、人類が生存可能な限界「プラネタリー・バウンダリー」を超えつつあり、従来型の成長モデルと相容れなくなってきているとの主張もある。

人類は、自分たちが地質学的に強い影響を持つ存在となる新しい時代「人新世(アントロポセン)」に突入しているとも言われており、世界は、かつてないほどにサステナビリティを強く意識し、地球と人類の存亡をかけて叡知を結集しなければならない時代に本格的に突入している#2

こうした状況を背景とし、世界のグローバル企業は、サステナビリティを意識した経営へのシフトが顕著であり、各国において、環境・エネルギーに焦点をあてたイノベーション政策や、金融を含めた国際的な枠組み作りも進展している。国連で2015年に採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも同様の課題意識が色濃く反映されている。

予てより環境に関する卓越した技術と高い規範意識を有してきたわが国は、こうした地球規模での課題に挑戦する資格と責務を有する。従来と異なる評価指標を伴う新しい価値観・幸福感への転換といったトランスサイエンス#3とも言える課題にも積極的に取り組み、人類の将来に向けた次なる視座を示すことも求められる。

「科学技術・イノベーション基本計画」においては、こうした時代認識に立脚し、「知」の力で世界に貢献するとともにわが国の競争力強化を追及する国家になることを目指すべきである。

2.世界的な潮流変化

(1)サステナビリティを成長戦略に掲げる欧州

EU加盟国をはじめとする欧州諸国は、サステナビリティを強く意識し、例えば、「サーキュラーエコノミー」#4と称する政策を推進している。EUは、「欧州グリーンディール」#5が、COVID-19によって傷んだ世界経済の再起に向けた鍵であるとし、「グリーンリカバリー」を提唱している。

サステナビリティを意識した環境エネルギー政策は、今や欧州の新しい成長戦略であり、世界を牽引するための最重要国際戦略と位置づけられている。

(2)グローバル企業の行動変容とESG投資の高まり

各国企業も、2008年のリーマンショックを契機に、社会からの信頼獲得に向け、環境・社会への影響を考慮する「サステナビリティ経営」に移行している。こうした中、株主のみならず顧客や従業員等までをステークホルダーと捉え、より長期の利益創出を目指す「ステークホルダー資本主義」という考え方も生まれている#6

投資家にも変化が見られる。2006年に発足した「国連責任投資原則(PRI)」#7を契機に、環境、社会、コーポレートガバナンスを考慮して投資を行う「ESG投資」への取り組みが盛んになっている。特に近年、サステナビリティを投資の軸の一つに据える動きが強まっている。

(3)ミレニアル世代が迫る価値観の転換

2000年以降に成人になった「ミレニアル世代」#8以降の世代は、従来の世代とは大きく異なる価値観を有している。幼少時からデジタル環境に囲まれ、グローバル視点で物事を考え、「多様性」に対して価値を置き、モノの所有にこだわりが薄く購入でなく他者と共有する「シェアリングエコノミー」の傾向を持つ。地球環境問題にも関心が高く、人類の活動と気候変動を結びつけて倫理の観点から考える人の比率が高いとされる。

こうした特徴を持つ世代の価値観は、2030年には世界の主流となると考えられる。今後は、こうした世代の価値観を念頭に置いた製品やサービスの開発等で競争力強化を図ることが求められる。

(4)COVID-19と国際情勢の変化

COVID-19の世界同時蔓延は、サプライチェーンの分断を招き、大きな混乱や不安がもたらされた。世界規模での自然災害の頻発等のリスクも高まっている。さらに近年は、国際情勢の変化に伴い、先端技術をめぐる経済安全保障上の議論も高まりを見せている。

こうした不確実性の高い時代の中、国家としてのレジリエンシー#9の重要性が再認識されており、価値観を共有し、信頼できる国や地域との間での連携関係を強化することを基本としつつ、その連携先を極力拡大することが極めて重要になっている。

3.第五期科学技術基本計画の回顧と展望

(1)競争力の基盤「科学技術立国」再興の必要性

世界的な潮流変化が起こる中、わが国が今後とも国際社会において一定の地位を確保するためには「知」の力を磨くしか道はない。われわれは今、予てから掲げてきた「科学技術立国」の現実を謙虚に見つめ、国家の存立基盤として再興させることが必要である。

わが国が第五期科学技術基本計画で打ち出したSociety 5.0を実現するにあたっても、基礎となる「科学技術」の振興によって、国家のあらゆる競争力の強化を図り、イノベーション創出につなげていくことが不可欠である。

(2)Society 5.0の先見性 -認知科学で世界を変える

Society 5.0には、多くの先見的な考え方が含まれており、①サイバー空間とリアル空間の融合、②課題解決と経済発展の両立、③人間中心の第五段階#10の新しい社会であるとの世界観を提示した。その背景には、デジタル技術の指数関数的とも称される急速な進歩がある。大量かつ多様なデータを収集し、それらをAI(人工知能)による解析によって意味のある情報とし、判断可能なかたちに知識化することで、適切な解を見出す。こうした技術は、認知科学#11の粋を集めたものであり、現実空間で人間が認知できるよりはるかに多様な変数を考慮し、最適な打ち手を講ずることができる。もちろん、何が最適であるかは、最終的には人間の判断によることは論をまたない。

Society 5.0は、21世紀の石油とも称される「データ」を利活用して付加価値を生むものであることから、天然資源に乏しいわが国であってもグローバルな競争力を有する可能性が高い。そうした意味からもSociety 5.0は「科学技術・イノベーション基本計画」においても中核となるべき考え方である。

(3)Society 5.0の現状 -変化と停滞の混在

Society 5.0に実現に向けた潮流の変化は着実にこの国にも起こっている。第五期科学技術基本計画策定当初には必ずしも想定できなかったAI、ビッグデータ、IoT、データアナリシス等の用語は今や一般社会に浸透し、次なる社会への革新に向けた胎動が感じられる。

他方、Society 5.0が掲げられ、成長戦略でも中心課題とされてきたにもかかわらず、その実現に向けた動きは、官民とも停滞してきたと評することができる。現在直面しているCOVID-19は、その現実を白日のもとに晒した#12

Society 5.0は、コンセプトと技術が揃っただけでは実現が難しく、法規制から社会受容まで多様な課題が存在する。こうした課題を全体俯瞰し、システム思考でアーキテクチャーをデザインし、総合的に推進することが必要である。

(4)Society 5.0の潜在力 -知識集約型産業の集積国家へ

これまで人類は、地球環境に負荷をかけつつ経済成長を遂げてきたが、もはや限界に近い。他方で、サステナビリティを成長の制約と考えるだけでは人類の未来に向けた建設的な解はない。

そうした中、人文科学まで射程に入れて策定する「科学技術・イノベーション基本計画」は、Society 5.0の理念のもと、科学技術・イノベーションの力によって地球のサステナビリティとHuman Well-beingの両立を追求することが求められる。その実現は容易ではないが、そこにこれからの人類の新しい生き方やこれからの資本主義の方向性があり、そうした新しい価値の創出に向けた努力に新しい競争力の源泉が生まれうる。

COVID-19により、「新常態(New Normal)」が模索される一方、データの収集・蓄積・分析・処理の全てにおいて量と質の爆発的拡大が予想される中、わが国は、モノ自体に高い付加価値を持たせるのではなく、集約した知識を組み合わせて新たな価値を創造する「知識集約型」の社会へと転換すべきである。

Ⅱ Society 5.0の実現に向けた新しい社会のデザイン

1.Society 5.0の国家戦略化

(1)世界と国家を俯瞰し、進むべき進路を示せる真の「司令塔」の確立

これからの時代を展望すると、科学技術イノベーション政策が関与すべき領域は、ますます拡大することが見込まれる。

こうした時代に対応するためには、環境エネルギー政策をはじめ外交や安全保障等も踏まえて世界と国家を俯瞰し、今後の進路を示せる、国家としてのより総合的・統合的な科学技術イノベーション政策を立案・指揮するための強力な権限を有する、真の意味での「司令塔」が不可欠である。

(2)インテリジェンスと構想力あるシンクタンク機能の必要性

「司令塔」のもと、これからの新しい社会を構想・実現するためには、幅広い情報を収集・分析して政策提言する、高いインテリジェンス能力と構想力を有する、世界に通用するシンクタンク機能が不可欠である。

そのあり方については、現在、政府部内で検討されているところであるが、技術トレンドの把握に止まらず、法規制のあり方を検討すること、先端的な科学技術と外交・安全保障政策を戦略的に連携させて検討すること、将来社会の可能性に関して複数のシナリオを構想すること、さらには人間の本質を探究すること等も期待される。

これらに応えるためには、人文社会の知見も導入して総合的に社会デザインする機能を有するための「統合知」が不可欠であり、既存の研究開発法人#13やファンディングエージェンシー#14等の知見の活用も図りつつ、優秀な人材が集い、また優秀な人材を育成できる存在となることが必要である。

なお、シンクタンクには、EBPM#15を実施するための根拠となる、研究開発成果や政策効果等に関する客観的なデータ基盤が必要である。

(3)「デジタル庁」との連動

科学技術イノベーション政策は、イノベーション関連本部をとりまとめるべく2019年に「統合イノベーション戦略推進会議」が設立#16され、単年度毎に「統合イノベーション戦略」を策定している。同会議の狙いは正しく、戦略の内容も充実している。但し、Society 5.0実現に向けた社会変革のドライバーになっているとは言い難い。

他方、現在、デジタル関連政策の一元的に推進を目指し、「デジタル庁」創設の議論が始まっており、大いに注目される。デジタル関連政策の一元化は、経団連としても提言してきた経緯があり#17、2020年9月にも緊急提言をとりまとめた#18。詳細設計等は今後の課題ながら、創設されたあかつきには、社会全体のデジタル革新に向けた政府一丸となった取り組みを強く期待する。

(4)「未来への投資」の充実

わが国の存立基盤である「科学技術立国」を実現するためには、政府による予算の量の確保と質の向上が不可欠である。

量については、諸外国が政府研究開発投資の予算拡充を図る中、日本の伸びは低調である。今後はこれを転換し、補正予算の積み上げによらず当初予算での「対GDP比1%」をベースラインに、さらなる増額を目指すべきである。

質については、政府の研究開発投資が適切なポートフォリオのもとで行われることが重要である。経団連で提唱している「戦略」と「創発」#19という考え方のもと、国家として重要でターゲットが明確な研究を「戦略的研究」、必ずしもターゲットが明確ではないものの破壊的イノベーションをもたらしうる将来のシーズ創出を目指す研究を「創発的研究」とし、それぞれの考え方に沿った投資を、若手や女性研究者の活躍を支援する観点も重視しつつ行う必要がある。

なお、「戦略的研究」の推進に向けて政府が行うべき研究開発プロジェクトに求められる条件は、以下のとおりである。

あるべき国の研究開発プロジェクトが満たすべき条件

  • テーマは、技術だけでなく、Society 5.0の社会像をブレークダウンしたもので設定
  • プロジェクトの分野の特性に応じて、公的財源を傾斜配分
  • 参加企業の負担も、一律にせず、プロジェクトの分野の特性に応じて、柔軟に設定
  • 各プロジェクトのリーダーに対し、強力な権限と支援体制を付与
  • 産学官民の連携をプロジェクトに組み込む
  • プロジェクトと並行して、社会実装に必要な規制改革・法制度を整備
  • 実証実験のための特区は、複数のプロジェクトが対象となるような包括的な特区とする
  • これまで参加してこなかった海外の大学や企業、ベンチャー企業を巻き込む
  • 異なるプロジェクトを有機的に連携
  • プロジェクトの開始当初から、ルール形成に向けた活動を推進
  • プロジェクトの期間・体制の柔軟化
  • 各プロジェクトの評価は国際的なベンチマークを設定し適宜行い、評価手法の効率化も徹底
  • プロジェクトの過程で予期せぬ成果が生まれた場合、さらなる発展を後押し

2.「New Normal」時代の地球のサステナビリティとHuman Well-being

人類が生きる自然環境は危機に瀕しており、今後その放置は許されず、サステナビリティは人類共通の課題である。増加する異常気象・自然災害等を背景に、気候変動への対応が強く求められるとともに、発生後に迅速に回復できるレジリエンシー強化も必要である。

そうした中、新しい社会をデザインするにあたっては、COVID-19により「New Normal」が指摘され、経済社会の随所に変革の機運が高まっていることを強く意識しつつ、地球のサステナビリティとHuman Well-beingの両立を、データ利活用や技術革新等の多様なアプローチで追求することが求められる。

(1)環境エネルギー分野における革新的イノベーションの促進

政府においては、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」にて「脱炭素社会」#20を最終到達点として掲げた上、その実現に向け、2020年1月に「革新的環境イノベーション戦略」を策定した。経団連では、イノベーションの担い手である企業による脱炭素社会に向けた具体的アクションを力強く後押しするため、2020年6月に「チャレンジ・ゼロ」#21を開始した。

脱炭素社会の実現には、イノベーションの創出に加えて、気候変動対策と表裏一体の関係にあるエネルギー政策の再構築も不可欠であり、今後、策定される「第六次エネルギー基本計画」の内容も重要となる。

「脱炭素社会」に向けて取り組むべき技術開発のテーマは多岐にわたる。大きなテーマの一つは再生可能エネルギー#22の主力電源化である。基本的に国産エネルギーである再生可能エネルギーが低廉な価格で潤沢かつ安定的に供給されるようになれば、エネルギー供給の多くを輸入に依存するわが国の構造的な脆弱性を緩和できる可能性もあり、サプライチェーンのレジリエンシーの観点からも重要といえる#23。その他、CCUS・カーボンリサイクル#24をはじめとする各種の革新的な技術開発、エネルギーマネジメントシステムの導入、さらには交通を含めた都市システムの改革も視野に入れる必要がある。欧州に後れを取ることのないよう、水素社会実現に向けた戦略的取り組みの加速も重要である。

「脱炭素社会」の実現は容易ではないが、従来の技術の延長線上にない革新的なイノベーションは、その後の産業競争力に大きく寄与する事例も多い。政府においては、革新的技術の円滑な社会実装を可能とするコスト低減目標など、世界に訴求する野心的な目標の追求を掲げた上で、新規のプレイヤーも参入させつつ、各種関連政策を総動員すべきである#25

(2)働き方・ライフスタイルの変革

地球のサステナビリティにとっては、技術革新以外の方法論も重要である。

例えば、COVID-19により働き方やライフスタイルに見直しの機運が加速していることも大きい。リモートワーク、地方分散といった姿は、Society 5.0が描く世界観と同一のものがあり、都市一極集中の是正の観点からもサステナビリティに大きく寄与するものである。われわれは、COVID-19を奇貨としてこうした流れを加速させるべきである。

(3)産業・ビジネスモデルの変革

COVID-19を契機に、「Economy of Life(命の経済)」が重要となり、「命を守るための産業」が今後の主流になるとの指摘がある#26。具体的には、健康、予防、衛生、廃棄再生、水の供給・排水処理、スポーツ、食糧、農業、環境保護、物流、貿易、教育、研究、新事業創出、クリーンエネルギー、デジタル技術、住宅、公共交通、都市インフラ、情報、文化、セキュリティ、保険、信用等が挙げられており、サステナビリティに関連するものも多数含まれている。デジタルによる革新が進展する中、従来と異なる進化により、これらに関連する新産業が生まれてくることも期待される。COVID-19により産業構造の転換に向けた動きが出始めている。民間企業はCOVID-19前に戻るのではなく、さらなる変革に向けた投資を行うべきであり、政府としてもそうした動きを促す政策を講じるべきである。

前述のとおり欧州では「サーキュラーエコノミー」を推進しているが、その根底には、環境負荷と経済成長のデカップリング(分離)によって持続可能な成長を実現するとの考え方がある。その実現には、業界や立場を超えたあらゆる人々の協働による新しいエコシステム#27が必要となることから、様々な異業種・異分野連携が生まれ、地域のつながりの再構築や、オープンイノベーションにつながることも期待される。わが国も欧州の事例に学び、こうした大きな構想のもとでルール形成しつつ次の時代の競争力強化を模索する必要がある。

3.デジタル技術を活用したエッセンシャル分野の基盤強化

新しい社会をデザインするにあたっては、経済社会にとってエッセンシャルな分野におけるデジタル革新を進めることが極めて重要であり、クラウドを基盤としつつ、その推進を急ぐ必要がある。

(1)行政(デジタル・ガバメント)

政府のデジタル化たる「デジタル・ガバメント」については、致命的な遅れが明確となった#28。近年、「マイナンバーカード」#29「デジタル三原則」#30「対面原則・押印等の廃止」#31等に向けた取り組みが、一定程度進捗しつつあるが、依然としてその歩みは極めて遅い。

デジタル・ガバメントは、Society 5.0を支える極めて重要かつ基本的な基盤である。政府においては、中央省庁から地方公共団体まで含めた一元的な行政のデジタル革新にスピード感をもって取り組むべきである。

先述のとおり、現在、各府省のデジタル政策を統合すべく「デジタル庁」の創設が検討されているところであり、われわれはこの取り組みを強く支持する。

(2)医療(ヘルスケア・サービス)

ヘルスケア領域のサステナブルな発展のためには、経団連の提言「Society 5.0時代のヘルスケア」で示した①病気の治癒から未病ケア・予防へ、②画一的な治療から個別化医療へ、③医療関係者中心の医療から個人が主体的に関与する医療へという3点のパラダイムシフトを進める必要があり、これらを進めるための鍵となるのは、ヘルスケアデータの活用推進である。

COVID-19の中、公益目的であっても個人情報のデータ活用が十分に進んでいない現状#32もあり、個人情報の保護に配慮しつつ、これまで以上に個人情報を活用できる仕組みを構築する必要がある。

時系列のヘルスケアデータ(ライフコースデータ)が活用できるようになることで、病気の予防や早期治療が可能となり、健康寿命の延伸を実現することができる。こうした取り組みは、医療費を適正化し、日本の保険医療システムや社会保障制度を持続可能な制度にすることに資すると思われ、社会的課題解決の手法のひとつとして期待できることから、推進すべきである。

(3)教育

工業社会で効率的・効果的とされた、従来型のSociety 3.0的な画一的な教育では、これからの時代を生きる人材を育成することは難しい。これからは、基礎力としてのSTEAM#33教育の充実のほか、想像力と創造力をもって自ら課題を発見し、その課題に関するデータを、AIを駆使して解決し、新たな価値を創造する力や、多様性をもった集団でリーダーシップを発揮できる力が必要である。知識の陳腐化の速度が高まる中、リカレント教育#34も重要である。

COVID-19によって世界的に遅れが明白となったオンライン教育も有効活用し、EdTech#35による個々人にあった最適教育の実現を目指すべきである#36

なお、Society 5.0時代には、データを読み解き、活用する主体となれる情報リテラシーを身につけることが課題であり、デジタルデバイド#37対策を含めて推進すべきであることも指摘しておきたい。

(4)文化

人類にとって真にエッセンシャルな分野を突き詰めて考えたとき、残るものの中の一つに文化がある。COVID-19が蔓延し、社会が混乱する中、われわれは、文化の力をあらためて実感し、その重要性を再認識した。

現在、COVID-19によりダメージを受けている文化イベントが多数あり、深刻な状況にあるが、今後は、デジタルの力を最大限活用し、誰もが地理的な偏在なく文化を享受または発信することができる環境を作ることが必要である。

想像力や創造力がますます必要となるこれからの時代において、文化に触れることは極めて有益であり、科学技術イノベーション政策の射程が人文科学に拡張されたことも踏まえ、文化関連政策との連動性も深める必要がある。

4.アーキテクチャー思考に基づくSociety 5.0の推進

Society 5.0にとって技術は重要であるが、技術のみでは実現できない。信頼できる高度な技術的基盤の構築を追求することと併せ、ルールづくり、法規制の見直し等を通じ、社会受容性も高める必要がある。こうした全体像を俯瞰し、アーキテクチャー思考をもって各々を並行的に推進することが求められる。

(1)提供価値起点のビジョン

今後は大量かつ多様なデータの利活用が新たな価値を産み、産業、社会、人の暮らし等が大きく変化することが予想される。これを支えるためには、提供する価値をいかに最大化するかとの観点でビジョンを描く必要がある。

(2)データ連携基盤の整備

今後、各種の社会課題の解決に向けてデータが新たな価値を生む可能性を高めるためには、異分野のデータ連携を実現するための基盤が必要となる。そのためには、政府主導による地方公共団体まで含めた#38公共データのオープン化と情報連携基盤を整備するとともに、民間企業がそれらのデータの二次利用が可能となるような仕組みを構築することが不可欠である。

こうした考え方は、第五期科学技術基本計画でも「超スマート社会サービスプラットフォーム」という名称で謳われており#39、今後の具体化が必要である。民間においても自ら保有するデータを、プライバシー配慮やサイバーセキュリティ確保の上で、信頼できる多様な主体にオープンにし、データ共有のメリットを活かした新たなビジネスモデルの創造に努めることが望まれる。

(3)世界で価値を共有するできるデータ利活用ルール及び戦略の構築

データは一企業や一国で抱えていても、そのメリットを享受することに限界があることから、自由な越境流通を可能とする国際ルールが理想である。しかしながら現実には、プライバシー保護、自国内の産業保護、安全保障の確保、法執行・犯罪捜査等を理由として、越境データ流通を規制する「データローカライゼーション」の動きが進行している。

巨大プラットフォーマーが主導する米国は、基本的に自由を標榜しているが、州によっては、厳格な個人データ保護を制度化している#40。中国は、とりわけ自国の安全保障政策との連携を理由とした#41典型的なデータローカライゼーション実施国であり、その影響力が他国にも及びつつある。EUも、GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)#42によって個人データ保護を重視し、域内へのサーバー設置義務付け等は求めていないものの、域外への移転規制を設けている。但しEUは、データ利活用を欧州市民の利益につなげるための新しいデジタル戦略「Shaping Europe's digital future」#43を2020年2月に打ち出し、保護一辺倒からの脱却も目指している。

こうした中、わが国は、DFFT(Data Free Flow with Trust)#44を提唱している。その根底には、爆発的に増大するデータを社会が上手に使いこなし、実効ある成果を得られるためのルール、手法、標準が必要であるとの思想がある。わが国は、そうした考えを、信頼を醸成する仕組みやそのための国際標準を示しつつ国際発信し、各国と連携して国際ルールづくりを推進すべきである。

(4)サイバーセキュリティの対策強化

IoTにより全てがつながる時代においては、サイバーセキュリティ#45の確保が重要課題である。サイバー攻撃は、多様な主体によって行われているが、日々、巧妙化・悪質化の一途をたどっている。COVID-19の影響で、セキュリティが脆弱な状況でのリモートワークを強いられた結果、サイバー攻撃件数が急増しており、孤立した環境のため攻撃の発見が遅れる事例も多い。

サイバー空間を安全で信頼できるものとして維持することは極めて重要であり、官民をあげた各種の取り組みが不可欠である。その際、防御に関する先端技術への研究開発投資も重要である一方、完璧な防御が事実上不可能であることから、サイバーインシデントが発生した際のレジリエンシーも高める必要がある。その意味で、業界内等はもとより、官民での情報共有の仕組みも強化することが不可欠である。

(5)規制改革・法制度整備・特区の活用

イノベーションは社会実装までを含む概念であるが、わが国の研究開発は、実証実験でとどまっているものが多い。こうした状況を打破し、スピード感をもって社会実装まで進めるためには、研究開発段階から規制改革や法整備等について検討を深めておくことが不可欠である。社会受容性が問われるようなものについては、ELSI#46の議論も並行して実施することが重要である。

国家戦略特区のような制度の活用も、社会実装に向けて重要であるが、現実には、特区から全国展開に移行する例は多くない。今後は、特例措置の実施に特段の支障が見られない場合は、原則として規制の所管省庁が全国展開に向けた措置を講じるべきである#47

規制改革については、会議体の専門化・細分化が進み、目指す社会像が共有されていないため、個別の取り組みが部分最適に陥りがちとの指摘がある。今後は、「司令塔」のもとに規制改革に関する機能を一元化すべきである。

(6)国際標準の戦略的な活用

上述のとおり、イノベーションは社会実装まで含めた概念であり、国際展開まで拡張できることが望ましい。そのための鍵のひとつが、国際標準である。

従来の国際標準政策は、特定技術に関するデジュール規格#48の獲得を主目的としていればよかったが、今や標準をめぐる環境は大きく変化している#49

今後は、官民で情報共有しつつ、双方にとって望ましい新しい国際標準活動のあり方について議論を深める必要がある#50。民間においては、国際標準への取り組みを経営課題として認識し、戦略的にリソースを割くことが求められる。司令塔、シンクタンクと連携して、Society 5.0を標準に落とし込み、官民で目標を共有したうえで具体的取り組みを進めていくことが必要である。

(7)日本版NIST創設の検討

米国には、経済的な意味での安全保障を強化するとともに国民の生活の質を高めるべく、計量等に関する標準規格を定め、米国の産業技術の進歩や産業競争力の強化促進を行うNIST#51が存在する。

同組織は、自国の安全保障や産業競争力を念頭に置いて標準を策定する機関であり、米国のルール形成戦略にとって重要な存在である。翻ってわが国には同様の機能をフルで有する機関は存在しない。今後、同機関に学び、わが国にとって必要な機能・組織について検討を深めることが期待される。

(8)国民からの信頼と理解の獲得

Society 5.0時代は、データの利活用によって新たな価値が生まれる。他方、わが国には、データ利活用に慎重な意見を有する国民が多いのが現状である。

データ利活用を促進するために、データ利活用に関する国民の理解向上が課題である。データ利活用の意義や利点等について多面的に伝えるための国民との丁寧な対話を継続するとともに、人文社会科学の知見も取り入れつつ、データ利活用に関する公益とプライバシーのバランスをどう考えるかといった国民的な議論を行い、社会的なコンセンサスを形成することも重要である。

なお、根本的には、利用者にとって納得性ある魅力的なサービスを開発・提供し、データ活用の成功事例を示していくことが求められる。

5.イノベーション創出の「方法論」の進化

(1)オープンイノベーションの定義の拡張

これからの科学技術イノベーションは、研究開発のみでなく、市民視点を持ち、人文社会科学を含めた幅広い学問分野との連携のもと、社会に貢献することが期待される。その意味で、オープンイノベーションの定義も「産学官『民』」(Quadruple Helix:四重らせん)に拡大させ、大学・ 研究機関、政府・自治体、市民・ユーザー等、多様な関係者が多層的に連携・共創し合う循環体制の連携関係を基礎とし、社会課題の解決にまで活用することが求められる。

科学技術と社会が良好な関係を構築するためには、科学技術そのものを含め、社会からの信頼を得るための活動が必要である。すでに多くの企業が科学技術の重要性をSDGsと関連づけて説明する等の取り組みを行っている。こうした取り組みは、個別企業のみならず社会全体にとって有益である。COVID-19で科学技術への期待が高まっている中、その重要性を国民に正しく理解してもらうための科学技術コミュニケーションをさらに強化すべきである。

(2)産学連携の本格化による研究開発力の強化

大学に期待される役割も変化している。企業との連携も、「『組織』対『組織』」で向き合い、社会のあり方自体から共同研究する等、本格化する事例が増えつつある。こうした産学連携の好事例を増やすべく、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」#52や「大学ファクトブック」#53が策定されている。大学の企業との連携の推進に向けては、学内組織「オープンイノベーション機構」(OI機構)や、学外に「出島」を設立する「外部化法人」の制度も創設された。今後は、これらの制度も有効活用しつつ、大学が産業界からも頼られる「知の拠点」として機能し、企業連携によって様々な成果を社会に打ち出していける存在となることが求められる。

産学連携の深化により、大学と企業の間での人材循環を進め、産学間を橋渡しできる人材を育成することも可能となる。クロスアポイントメント制度#54を柔軟に機能させ積極活用することにより、さらにこれを進めることが期待される。また、COVID-19により、産業界では副業やリモートワークが促進されている。こうした環境変化を活かして、人材流動性を高めることも可能である。

多様性を高めるべくグローバルなネットワークを構築することも欠かせない。ファンディングの要件に、分野横断的なテーマの設定、若手、女性、海外研究者あるいは異分野研究者の参加等を加えることが効果的と考えられる。前述の若手研究者の育成を産学連携により行う視点も極めて重要である。

(3)スタートアップと大企業の連携の促進

今や、革新的な製品・サービスを生み出すためには、スタートアップの存在を欠くことはできず、スタートアップと大企業の連携が、わが国によるイノベーション創出にとっての大きな鍵である。

経団連では、スタートアップを含めたイノベーション・エコシステムの構築が重要との考え方#55のもと、スタートアップと大企業のマッチング支援#56や、スタートアップ視点での政策提言のとりまとめ#57等を実施している#58

現下のCOVID-19によって、スタートアップと大企業の連携の流れが失速するようなことのないよう、各種の政策的支援を総合的に講じるべきである。

(4)グローバル連携のあり方の模索

近年、技術革新のスピードが極めて速くなり、しかも先端技術の中には安全保障上重要なものも多くなっていることから、研究開発の行い方や成果の取扱い等が、大きな焦点となっている。

安全保障技術となりうる一方で社会や産業にとって有益な技術は、今後ますます増えると予想される。人類は、科学技術に光と影があることを認めつつ、より良い世界を志向することが求められる。科学技術の発展を止めることは基本的に難しいが、自国第一主義の蔓延や多国間主義の衰退が叫ばれる中、生み出された科学技術を地球のサステナビリティやHuman Well-beingのために有効に管理する知恵を、今こそ緊迫性を持ちつつ、出し合う必要がある。わが国も、そうした枠組みやルールづくりに対し、積極的に貢献すべきである。わが国の研究者コミュニティにも、建設的な議論を期待したい。

Ⅲ 新しい資本主義の模索と日本の活路

サステナビリティの危機に直面し、人類は今、従来型資本主義の枠を超えた新しい資本主義を模索する時代に突入している。新しい資本主義は、おそらく金銭的価値のみで換算できない豊かさを追求するものになりうる可能性が高い#59。これは即ち、「人間の幸せとは何か」を模索することであると言える#60

思えばわが国は、「三方よし」#61等の倫理観・価値観をかねて有しており、こうした考え方は今、あらためて新しい輝きを放つ可能性が高い。わが国は、こうした無形資産を、適正なかたちで世界にアピールし、新しい世界における新しい資本主義のあり方に一石を投じるべきである。

世界は今後、さらに大きな変化にさらされる可能性が高い。わが国は、その中にあっても、世界から期待され、いい意味で畏れられ、また友として頼られ求められる、競争力ある存在となることが必要である。「科学技術・イノベーション基本計画」は、そのための海図となるべきである。

以上

  1. 2020年で78億人に到達。国連では2057年には100億人を突破すると予測。
  2. 例えば、世界経済フォーラムの「2020年グローバルリスク報告書」では、「次の10年間に起こり得るリスク」の上位5件全てが環境問題や気候変動に関するものとなっている。
  3. 「科学に問うことはできるが、科学では答えることができない問題」を指す概念。米国の核物理学者アルヴィン・ワインバーグが提唱。
  4. 「Take(資源を採掘する)」「Make(作る)」「Waste(捨てる)」という直線型の経済システムの中で、活用されることなく廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源として捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組み。
  5. 温室効果ガスの排出削減等の従来の気候変動対策の枠を越え、経済社会に関する領域の政策も含めた包括的な政策パッケージ。2019年12月にとりまとめ。
  6. 2019年8月、米国のビジネス・ラウンドテーブルは、「企業の目的に関する声明」を公表。「どのステークホルダーも不可欠の存在である。私たちは会社、コミュニティ、国家の成功のために、その全員に価値をもたらすことを約束する」と表明。2019年12月、世界経済フォーラムは、「ダボスマニフェスト2020」において、「株主中心のShareholder Capitalismや国が経済を主導するState Capitalismから、Stakeholder Capitalismへの変革こそが、社会や環境の変化する時代に求められる資本主義のあり方だ」と主張。
  7. Principles for Responsible Investment。当時の国連事務総長であるコフィー・アナンが金融業界に対して提唱したイニシアティブ。機関投資家の意思決定に、受託者責任の範囲内で、ESGの課題を反映させるべきとの観点に基づく6原則で構成。
  8. 年代についての明確な定義は確立されていない。1981年~96年生まれを「ミレニアル世代」「Y世代」、1997年以降生まれを「ポストミレニアル世代」「Z世代」とする分類あり。
  9. 物体に対して外力が加わってストレス(歪み)が生じた際に、その歪みに対して元に戻ろうとする力。ビジネスの世界では、企業や組織の事業が停止してしまうような事態に直面した際にも、受ける影響の範囲を小さく抑え、通常と同じレベルで製品・サービスを提供し続けられる能力を指す。
  10. 狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新しい社会とされる。
  11. 情報処理の観点から知的システムと知能の性質を理解しようとする研究分野。心理学、人工知能、言語学、人類学、神経科学、哲学等の学際領域にあるとされる。
  12. 特に、Society 5.0という言葉が存在する遥か以前の2001年に「e-Japan戦略」で「5年以内に世界最先端のIT国家になる」と目標を立て、2013年に「世界最先端IT国家創造宣言」で「2020年までに世界最高水準のIT利活用社会の実現とその成果の国際展開」をうたったわが国政府の政策と現実のギャップは目を覆うばかりである。遠隔教育への取り組みの深刻な遅れも顕在化、医療も同様の状況にあることが広く認識された。民間の取り組みも十分とは言えない。「サイバー空間とフィジカル空間の融合」は一定程度進んできたが、「課題解決と経済発展の両立」や「人間中心」を体現する革新的な製品・サービス事例に乏しい。
  13. 産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)等。今般、人文科学分野に関わる3独立行政法人(経済産業研究所等)を「研究開発法人」に追加。
  14. 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)等。NEDOは技術戦略研究センター(TSC)、JSTは研究開発戦略センター(CRDS)を保有。
  15. Evidence-based Policy Making。エビデンスに基づく政策立案。
  16. 総合科学技術・イノベーション会議、高度情報ネットワーク社会推進本部、知的財産戦略本部、健康・医療戦略推進本部、宇宙開発戦略本部、総合海洋政策本部、地理空間情報活用推進会議の横断的かつ実質的な調整を図り、統合的に政策推進を図るため設置。現在の「統合イノベーション戦略推進会議」で統合対象とされている各本部の中で、法的な権限があって関係府省の政策を望ましい方向に持っていくことのできる本部は少ない。
  17. 経団連では、「デジタルエコノミー推進に向けた統合的な国際戦略の確立を」(2018年5月)において、「情報経済社会省(デジタル省)」を創設すべきと提言。
  18. 「デジタル庁の創設に向けた緊急提言」(2020年9月)では、デジタル関連の施策・予算を一元的に所掌する組織の設立をあらためて要望。
  19. 経団連「Society 5.0の実現に向けた『戦略』と『創発』への転換~政府研究開発投資に関する提言~」(2019年4月)参照。
  20. 温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収量とのバランス(世界全体でのカーボンニュートラル)を達成すること。
  21. 「パリ協定」が長期的なゴールと位置付ける「脱炭素社会」の実現に向け、企業・団体がチャレンジするイノベーションのアクションを国内外に力強く発信し、後押ししていくための経団連の新たなイニシアティブ。http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/052.html
  22. 太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマス等。
  23. 再生可能エネルギーの中でも量的拡大のポテンシャルが大きい太陽光・風力は、季節や天候等による発電量の変動が大きい。個別地点における精緻な気象予報の実現や、蓄電池等の調整力の高性能化・低価格化など、幅広いイノベーションを促進していくことが、再生可能エネルギーの主力電源化にも繋がる。
  24. CCUS(Carbon dioxide Capture Utilization and Storage; 二酸化炭素回収・利用・貯留)。カーボンリサイクルは、CCUSのうち、特にCO2を炭素資源として回収し再利用(リサイクル)する技術を指す。
  25. サステナビリティの実現に向けては、生態系の保全という視点も重要である。特に近年注目されている海洋プラスチック問題は、生態系を破壊する大きな要因の一つであり、海洋プラスチック除去技術の開発、プラスチックの再利用、代替素材の開発等より、この問題に積極的に取り組むべきである。
  26. ジャック・アタリ(Jacques Attali)。仏大統領顧問、欧州復興開発銀行総裁等を歴任。等
  27. 本来の意味は生態系。企業間の連携関係全体を示す。
  28. 産業界は予てより「デジタル・ガバメント」の実現を要望。例えば、経団連・日本商工会議所・経済同友会「デジタル・ガバメントの実現に向けた緊急提言」(2018年6月)参照。
  29. 交付実績は、約1702万枚(2020年5月30日時点)。
  30. ①デジタルファースト:個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する、②ワンスオンリー:一度提出した情報は、二度提出することを不要とする、③コネクテッド・ワンストップ:民間サービスを含め、複数の手続・サービスをワンストップで実現する。
  31. 「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言~デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~」(2020年7月)参照。情報通信政策担当大臣・内閣府特命担当大臣(規制改革)・経団連会長・経済同友会代表幹事・日本商工会議所会頭・新経連盟代表理事の連名で公表。
  32. COVID-19の中、外出自粛を呼びかけるにあたり携帯電話を活用して収集したビッグデータを有効活用して実態を把握する例や、SNSを活用して大規模な健康実態調査を行う例あり。
  33. Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)プラスArts(芸術)。
  34. 誰もが何歳になっても学び直し、復職・転職・起業等によって再び社会で活躍することができるようになるための教育。
  35. 「教育(Education)」と「テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語。
  36. 経団連「EdTechを活用したSociety 5.0時代の学び~初等中等教育を中心に~」(2020年3月)等を参照。
  37. 情報関連技術を利用・使用できる能力のある人とそうでない人の間に生じる貧富・機会・社会的地位等の格差。
  38. 例えば個人情報の扱いについては、民間事業者を律する個人情報保護法以外に、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、地方公共団体の条例が存在。地方公共団体には、独自の規律が設けられている場合もある。こうした規律の不統一さは「2000個問題」と言われ、データ利活用に向けた大きな障害となっており、改革が必要。
  39. 産学官・関係府省連携の下、共通的なプラットフォーム構築を推進すると謳われている。
  40. カリフォルニア州は、2020年1月1日に「CCPA」(The California Consumer Privacy Act:カリフォルニア消費者プライバシー法)を発効。
  41. 「インターネット安全法」(2017年6月施行)等で規制。
  42. EUにおける個人データ保護に関する法律。個人が自身に関わるデータを自分自身でコントロールする権利を有すべきとの考え方に基づくEU域内のルール。わが国については、2019年12月にEUから「十分性認定」(個人データについて十分な保護水準を満たしていると認定)を受けたことから、日EU間での個人データの相互流通に道が開けている。
  43. 今後5年間で焦点をあてる3つの柱(①人々のための技術、②構成で競争力のあるデジタル経済、③オープンで民主的かつ持続可能な社会)と当面の主な施策を提示。
  44. 信頼ある自由なデータ流通。2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて安倍首相は「成長のエンジンはもはやガソリンでなく、デジタルデータで回っている」「新しい経済活動にはDFFTが最重要課題である」と提言、続く6月のG20大阪サミット首脳宣言においても「DFFTはデジタル経済の機会を活かすものである」と提言。
  45. 経団連では、サイバーセキュリティはコストではなく投資であるとの観点からその強化を呼び掛けている。各種提言のほか、啓発に向けた「経団連サイバーセキュリティ経営宣言」(2018年3月)「サイバーリスクハンドブック」(2019年10月)のとりまとめ等を実施。
  46. Ethical, Legal and Social Issuesの略。
  47. 経団連「規制改革の推進体制の在り方に関する提言-Society 5.0の実現に向けて政府一丸となった対応を求める-」(2019年3月)。
  48. 国際標準化機関や国家標準化機関、標準化団体等により公的な標準として策定される規格。代表的なものは、ISO(国際標準化機構)規格、IEC(国際電気標準会議)規格、ITU(国際電気通信連合)規格。
  49. Society 5.0を念頭に置けば、例えばIoTについては、標準に関わる団体が乱立し、「マルチスタンダード化」が一般化。非競争領域のソフトウェア部分は、オープンソフトウエア(OSS)も主流化。こうした中、社会実装に向け、既存のどの標準を使い、新たにどこでどういう標準を作るのかを戦略的に考え行動することが求められる。
  50. 世界的な都市化の課題が深刻化する中で、スマートシティ/スーパーシティの重要性が高まっているが、現在、監視色の強いスマートシティをISO等で国際標準化する動きが強まっている。国際標準をめぐっては、望ましいものを作る活動も望ましくないものを作らせない活動も等しく重要であり、わが国の官民をあげた戦略的な取り組みを、他国との連携のもとに進めることが必須である。
  51. アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)。
  52. 文部科学省・経済産業省で策定。2016年に初版、2020年に追補版を公表。
  53. 文部科学省・経済産業省・経団連で策定。初版は「産学官共同研究におけるマッチング促進のための大学ファクトブック」として2016年に公表。その後、「大学ファクトブック2019」「大学ファクトブック2020」として公表。
  54. 研究者が大学、公的研究機関、民間企業のうち、二つ以上の組織と雇用契約を結び、一定の勤務割合の下で、それぞれの組織における役割分担や指揮命令等系統に従いつつ、研究開発や教育等の業務に従事することを可能とする制度。
  55. 経団連「Society 5.0実現に向けたベンチャー・エコシステムの進化」(2019年2月)。
  56. 経団連では、大企業の役員クラスとスタートアップのマッチングを行うべく「KIX: Keidanren Innovation Crossing」を立ち上げ。
  57. 経団連は、委員をスタートアップに限定(非会員も参加可)した「スタートアップ政策タスクフォース」を設立。スタートアップ視点で政策提言をまとめて発信。
  58. 経団連の取り組みは http://www.keidanren.or.jp/policy/StartUp.html 参照。
  59. 一般にはGDPが指標として使用されるが、歴史は比較的浅く、1940年代に生まれたもの。指標開発時点から方法論をめぐり多くの議論あり。
  60. 国連では「世界幸福度」を作成(2020年版の報告書によれば、首位は3年連続フィンランドで日本は62位)。ジョゼフ・スティグリッツ、アマルティア・セン、ジャンポール・フィトゥシは、「MISMEASURING OUR LIVES: WHY GDP DOESN'T ADD UPS」を発表。
  61. 「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という近江商人の考え方。

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