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Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 スチュワードシップ・コード改訂案への意見

2025年4月18
一般社団法人 日本経済団体連合会
金融・資本市場委員会資本市場部会
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コーポレートガバナンス改革を、「形式」ではなく「実質」を伴うものとするためには、スチュワードシップ活動の実質化により、企業と投資家との建設的な対話を促進することが重要である。

「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」での検討を踏まえて提示されたスチュワードシップ・コード改訂案は、スチュワードシップ活動の質を向上させ、企業と投資家の建設的な対話の実現に資するものと評価する。今改訂を契機として、投資家と企業の対話がより一層「形式」から「実質」を伴うものとなることを期待する。

改訂案に関する具体的な意見は、以下の通りである。

(実質株主の透明性向上)【原則4】
問1-1.

日本企業が機関投資家の実質的な保有状況を把握することは容易ではなく、調査会社を活用した実質株主判明調査や投資家との個別面談等の相応のコストをかけて、実質株主に関する情報を得ている。照会しても保有状況を開示しない機関投資家も存在する。

投資先企業からの求めに応じて保有株式数を開示すべき旨を、指針4-2として明確に位置付ける、本指針の創設に賛同する。本指針により、対話の前提となる実質株主の透明化の進展を期待している。

また、今後、実質株主の透明化の実効性をさらに高めるため、会社法制の見直しを行うべきである。

問1-2.

企業側は、限られた人的・時間的リソースのなかで投資家との対話を進めており、あらかじめ開示方針が明らかとなっていれば、対話の設計・準備が円滑に行われ、限られた機会を最大限に活用することが可能となることから、本提案に賛同する。

(協働エンゲージメントの促進)【原則4】
問2-1.

改訂に賛同する。複数の機関投資家が、共通の課題意識に基づいて協働エンゲージメントを行うことで、企業との対話を深めることができる場合があると考えられる。

問2-2.

現状、協働エンゲージメントにおいては、参加している投資家間の考え方の違いや優先度の相違等により、対話の焦点が分散する例も見受けられる。したがって、協働エンゲージメントの実施にあたっては、対話の目的やテーマについて、参加投資家間で一定程度のコンセンサスが形成されていること、またそれが対話先の企業に開示されていることが、不可欠である。

また、協働エンゲージメントの後に実施される個別の対話において、協働エンゲージメントに属する異なる投資家から同一テーマについて重複した質問を受けるなど、企業の負担が増すケースもある。よって、投資家は、協働エンゲージメントの内部で得られた情報を適切に共有し、個別のエンゲージメントとの連携を図ることが求められる。

協働エンゲージメントにより、企業の負担が増すなど、当初の趣旨と異なる運用が行われる場合に備えて、金融庁は、企業からの通報窓口を設けるなど、適切なフォローアップを行うべきである。

問3.

コードのスリム化/プリンシプル化の趣旨に賛同する。

問4.

原則8について、以下の通り意見を述べる。

議決権行使助言会社については、日本における人的・組織的体制の整備が不十分であることや、助言内容が画一的な基準の適用に基づいた形式的なものに留まっているとの意見が多く聞かれる。

この点、指針8-2において、議決権行使助言会社に対して、人的・組織的体制の整備を求めた点については、助言の質と透明性の向上に資するものとして評価する。企業と投資家との実効ある対話と信頼関係の構築に向けて、両者の橋渡しをする議決権行使助言会社が、企業と十分に対話することのできる、適切な体制整備をすることが不可欠であり、今回の見直しはその第一歩として期待している。

なお、指針8-2で「企業を含む関係者との意思疎通を実効的に行う」ことを求めているのは、議決権行使助言会社の助言の質や助言プロセスの透明性を高めることが目的である。すなわち、議決権行使助言会社は、機関投資家が適切に議決権を行使できるよう、画一的な議決権行使基準のみによらず、企業価値向上に資する深度ある対話を行ったうえで、議決権行使の賛否の推奨を判断することが求められる

金融庁は、議決権行使助言会社が、指針8-2の改正の趣旨を踏まえ、適切な体制整備を行い、助言の質や助言プロセスの透明性を高める取組みを行っているかを監督するとともに、改正による十分な効果が発揮されなければ、更なる指針の見直しや、議決権行使助言会社への法規制を検討すべきである。

以上

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