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Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案に対する意見

2026年5月19
一般社団法人 日本経済団体連合会

令和元年会社法改正から7年が経過する中、企業を取り巻く環境は、デジタル化の進展やグローバル競争の激化に加えて、地政学的リスクの高まりや経済安全保障の重要性の増大など、かつてない規模とスピードで変化している。国際環境が激変する状況において、企業には迅速かつ柔軟な意思決定と持続的な成長の実現が求められており、企業活動を支える法制度の在り方についても、不断の見直しが不可欠となっている。

法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会では、近年における社会経済情勢の変化等に鑑み、株式の発行の在り方、株主総会の在り方、企業統治の在り方等に関する規律の見直しの要否が検討されている。今般の会社法制の見直しでは、日本経済の成長戦略の一環として、日本企業の国際競争力の強化、ひいては日本経済の持続的な成長の実現を図ることが強く求められている。

そこで、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」に対し、以下のとおり意見を取りまとめた。

第1部 株式の発行の在り方に関する規律の見直し

第1 株式の無償交付の対象範囲の見直し

1 制度の具体的な枠組み(1ページ)

会社法における使用人等に対する株式の無償交付の具体的な枠組みとして、株主総会の決議を不要として、取締役会の決議のみで株式の無償交付を可能にする【A案】に賛成し、株主総会の決議を必要とする【B案】に反対する。【A案】および【B案】の規律をいずれも設けることにも反対する。

〔理由〕

  • 法改正の検討の趣旨は、成長戦略の一環として、企業が優秀な人材を円滑に確保しやすくすることである。
  • 株主総会での決議を不要とする【A案】は、現行の現物出資構成による実務や新株予約権制度との整合性の観点からも合理的である。
  • 【B案】の株主総会の決議を必要とする「枠決議」制度は、柔軟に運用できないおそれがある。現行の現物出資構成と比較しても規制強化となり、日本の成長戦略でも重視されている人的資本投資の促進を妨げることになりかねない。
  • 有利発行の該当性については、①使用人への株式や新株予約権の交付は通常、有利発行に該当しないとされており、これまでの実務においても特段の問題なく行われてきたこと、②株式の無償交付をすることができる株式会社の範囲が上場会社に限定されており、使用人等に交付される株式が上場株式であるため、株式の価値が明確であること、③使用人等へ株式を交付することによって、その労働意欲が向上し、会社への貢献が期待され、会社が適正な便益を受領することになることから、「株式の無償交付の経営判断の過程、内容に著しく不合理な点がない限り有利発行に該当しない」と解すべきである。
  • 【B案】において株主総会の決議を求める趣旨は、既存株主の利益の保護であるが、【A案】においても「募集株式の割当てに関する方針」や事業報告における開示、取締役の責任追及や差止訴訟により、既存株主の利益は保護できる。
  • 【A案】および【B案】の規律をいずれも設ける場合、事実上、株主総会の決議を経ない株式の無償交付を行いづらくなる懸念がある。すなわち、【A案】および【B案】の規律をいずれも設けた場合、法制度上は、株主総会を経るか否かは選択制になるものの、実際には、「株主総会の決議を経ない株式の無償交付は有利発行に該当する疑義が残る」との評価を前提に法改正がなされたと受け止められることになるため、リスク管理の観点から、企業は、事実上、株主総会の決議を経る【B案】での対応を選択せざるを得なくなるという懸念がある。そうすると、結局、企業が制度の活用自体を躊躇することになりかねず、株式の無償交付の活用が妨げられることを懸念する。
2 その他の検討事項(3ページ)
  1. (1) 現物出資構成については、現行法の規律の見直しをしない【A案】に賛成する。
  2. (2) 新株予約権の行使時の金銭の払込み等を要しない新株予約権の発行については、「1 制度の具体的な枠組み」で提案されている【A案】と同様の規律を及ぼす前提であれば、新株予約権の行使時の金銭の払込み等を要しないものとすることに賛成する。

〔理由〕

  • 実務において、現物出資構成は特に法的な問題を生じることなく行われてきた。株主総会決議を要件とするという新たな規制を設けるべき立法事実はないと考える。このような見直しは、現行の実務と比べて明確な規制強化である。
  • 現物出資構成の場合、使用人等が出資する金銭債権の額が特定されるため、有利発行に該当しないことは明らかである。

第2 株式交付制度の見直し

1 株式交付の対象となる場面(4ページ)
  1. (1) 子会社の株式を追加取得する場合を一般的に株式交付の対象とする【A案】に賛成し、一定の要件を満たした場合に限り株式交付の対象とする【B案】に反対する。
  2. (2) 株式会社を会社法施行規則第3条第3項第2号及び第3号に掲げる場合における子会社とする場合を株式交付の対象とすることに賛成する。

〔理由〕

  • 【B案】では、柔軟な追加取得などのニーズに応えることは難しい。
  • 親子会社関係を強化する行為であっても、組織再編行為として位置付けることは可能であると考える。組織再編行為である会社分割では、承継対象となる財産の規模を要件としていない。
2 株式交付の対象となる会社(4ページ)
  1. (1) 持分会社を子会社とする場合を株式交付の対象とすることに賛成する。
  2. (2) 外国会社を子会社とする場合を株式交付の対象とすることに賛成する。

〔理由〕

  • 持分会社のうち、特に合同会社は外資系企業やスタートアップが積極的に活用しており、対象に含めることへのニーズがある。
  • 外国会社を子会社化する場合については、海外の会社に対するM&Aにおける実務上のニーズがある。
  • 法的安定性の観点では、要件を満たさなかった場合に株式交付の無効の訴えにおける無効事由とすることで十分であると考える。
3 株式交付の手続(4ページ)

株式交付親会社における債権者保護手続を廃止することに賛成する。

なお、(注2)に記載されている株式交付親会社の反対株主の株式買取請求権を認めないものとする考え方に賛成する。

〔理由〕

  • 株式交付および株式交換では、吸収合併などとは異なり、買収会社が対象会社の権利義務を包括的に承継するわけではないため、債権者保護手続の必要性は小さい。
  • 反対株主の株式買取請求権は過大な現金負担や対価設計の不確実性を生じさせて、円滑な株対価M&Aを阻害している。これにより、株式交付親会社が大規模買収を行う場合などに、十分な現金がなくても成長投資の手段として利用できるという株式交付の本来の役割が発揮されていない。株式交付には、株式交付親会社において株主総会の特別決議による承認が必要であり、事前救済のための差止請求権も存在しているため、既存の株式交付親会社の株主の保護は十分に図られている。

第3 現物出資制度の見直し

1 検査役の調査の制度の見直し(5ページ)

株主総会の特別決議による検査役の調査の省略について規律を設ける提案内容に賛成する。

〔理由〕

  • 株主総会の特別決議により現物出資財産の価額を定めた場合に検査役調査を要しないとすることについては、現物出資の実務における時間的・手続的負担を軽減することになる。
2 不足額填補責任の見直し(5ページ)
  1. (1) 現物出資者の不足額填補責任
    「ア 責任の発生要件」や「イ 責任の内容」における見直しを行うことに賛成する。
  2. (2) 取締役等及び証明者の不足額填補責任
    見直しを行うことに賛成する。

第2部 株主総会の在り方に関する規律の見直し

第1 バーチャル株主総会及びバーチャル社債権者集会

1 バーチャルオンリー株主総会の実施要件(8ページ)

会社法にバーチャルオンリー株主総会に関する規律を設けるにあたり、実施要件として、定款の定めは不要とすべきである。株主の意思を反映させるための代替手段についても、検討する必要はないと考える。

株式会社は、合理的に必要と認められる範囲内において、即時に、かつ、相互に株主総会の議事における情報の送受信を行うことができる通信の方法を使用しなければならないとする規律については、実施要件として規定すべきでない。

〔理由〕

  • 「バーチャルオンリー株主総会では、経営陣に都合のよいように議事が進められる懸念がある」という事例を把握していない。
  • 自然災害やパンデミックなどの不測の事態に直面した際に、全ての企業が迅速に制度を利用できるようにしておくことが望ましい。
  • 近年、社会インフラとしてのインターネット等の浸透やスマートフォン等の普及により、デジタルデバイドの問題は小さくなりつつある。リアル株主総会について定款の定めを不要とし、バーチャルオンリー株主総会に限って定款の定めを求めるのは、リアル株主総会が「原則」、バーチャルオンリー株主総会が「例外」という考え方を前提とするものであり、適切ではない。
  • 「合理的に必要と認められる範囲」や「株主総会の議事における情報」が明確でなく、即時に、かつ、相互に「株主総会の議事における情報」の送受信を行うことができる通信の方法を使用しなければならないことが実施要件として規定されると、当該要件を満たしていないことを理由に、株主総会決議取消しの訴えを提起される懸念があるなど、実務上の支障を払拭できない。産業競争力強化法に基づくバーチャルオンリー株主総会においては、即時性や双方向性は要件とされておらず、現在と同様にQ&Aで運用のガイドラインを示せば十分である。
2 バーチャルオンリー株主総会を実施する際の手続等(9ページ)

保存することが求められる通信記録等の具体的内容については、必要最小限にとどめるべきである。

通信記録等の保存期間について、3か月とすべきである。

株主による通信記録等の閲覧または謄写に関する規律を設ける必要はない。

〔理由〕

  • 保存することが求められる通信記録等として(注1)で挙げられている①~④は、いずれも、物理的な場所における株主総会においては、他の株主が把握できない情報であるうえ、④の「その他株式会社と株主との間のやり取り」については、その範囲が不明確である。
  • 通信記録等の保存期間について、株主総会決議取消しの訴えが提起されたときの証拠資料とするために保存するのであれば、その提訴期間(3か月)に合わせることで十分であると考えられる。
  • 閲覧または謄写に関する規律を設けなくても、株主は、株主総会決議取消訴訟において、民事訴訟法に基づく文書提出命令により通信記録等を確認することが可能である。通信記録等の閲覧等を認めると、決議取消訴訟を提起すべき具体的な事情を株主が何ら認識していない場合であっても、「訴えの提起を検討するため」という理由で、通信記録等の閲覧等が広くなされる懸念がある。
3 株主総会の決議の取消しの訴えの特則(10ページ)

バーチャルオンリー株主総会における株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)を規律として設けることには賛成する。しかし、「通信障害により株主総会の決議の方法が法令又は定款に違反した事実が決議に影響を及ぼすものである」ときにセーフハーバールールが適用されないものとすることに反対する。また、(注1)に記載の「通信障害対策措置をとることについては、セーフハーバールールの適用要件ではなく、前記1の実施要件とする考え方」に反対する。

〔理由〕

  • 「決議に影響を及ぼした」として取消訴訟が提起されやすくなり、バーチャルオンリー株主総会を開催することを躊躇する会社が増えることが懸念される。
  • (注1)については、通信障害が発生せず、問題なく株主総会が開催されたにもかかわらず、通信障害対策措置を取らなかったことをもって株主総会の決議取消事由となることには、合理性がないため反対する。
4 株主総会の延期又は続行(10ページ)

通信障害により株主総会の議事に著しい支障が生じる場合には、当該株主総会の議長が当該株主総会の延期または続行を決定できる旨の決議がある場合において、当該決議に基づく議長の決定があったときは、会社法第298条(株主総会の招集の決定)および第299条(株主総会の招集の通知)の規定は適用せず、改めて株主総会の招集の決定や通知を行わなくてよいとする旨の規律を設けるものとすることに賛成する。

5 場所の定めのある株主総会の開催請求権(10ページ)

株主に対して場所の定めのある株主総会の開催請求権を認めないものとすることに賛成する。

6 規律の適用対象(11ページ)
  1. (1) 規律の適用対象となる株式会社の範囲について、非上場会社を含む全ての株式会社を対象とすることに賛成する。
  2. (2) ハイブリッド出席型バーチャル株主総会については、株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)に関する規律に限定して規律を設けるべきである。

〔理由〕

ハイブリッド出席型バーチャル株主総会については、特段の規律が設けられていない現行法の下でも開催されており、株主総会の決議の取消しの訴えの特則(セーフハーバールール)以外に新たな規律を設けるべきではない。

7 バーチャル社債権者集会(11ページ)

場所の定めのない社債権者集会の開催を認める方向に賛成する。

8 社債、株式等の振替に関する法律第86条に規定する書面制度(12ページ)

振替法第86条に基づく証明書について、電磁的記録による証明書の提示も可能とする【A案】に賛成する。

第2 実質株主確認制度

1 株式会社から実質株主を確認する制度(13ページ)

株式会社から実質株主を確認する制度について、仲介機関が株式会社に実質株主の情報を提供しない場合等における制裁として、過料による制裁に加えて、株式の議決権の停止による制裁を認めるべきである。

実質株主による株主総会への代理出席及び議決権の代理行使について、新たに規律を設けるべきでない。

〔理由〕

  • 制度の趣旨を「株式会社と株主との間の建設的な対話の促進」とのみ整理するのではなく、「株主の共同の利益の保護」や「支配に関する重要な情報の把握及び開示」も含めて整理すべきである。実質株主は自らがどの会社の株主であるかを把握できる一方で、会社側は実質株主を把握することができない。また、会社に情報を提供したとしても実質株主に対話に応じる義務を生じさせるものではない。
  • 過料による制裁では抑止力として不十分であると考える。とりわけ、海外の名義株主や指図権者に制裁を科すことは困難である。
  • 株式会社から実質株主を確認する制度の実効性が確保されなければ、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度も十分に機能しないことが見込まれる。
  • 実質株主による株主総会への代理出席および議決権の代理行使については、「株式会社から実質株主を確認する制度」に基づき実質株主の情報が提供されたとしても、その情報の正確性を会社側で担保することは通常困難であるため、代理人としての出席および議決権行使を認めるか否かの判断が困難なケースが多く生じることが想定される。また、実質株主のうち、一部の者についてのみ代理出席および議決権の代理行使を認めることになり、実務に混乱を生じさせるおそれがある。実質株主が株主総会への出席を希望するのであれば、株式を一単元購入して名義株主となることで足りる。
  • 当該規律を設けた場合、上場会社の実務上の負担が大きくなるとともに、決議取消リスクが増大することが懸念され、ひいては、本制度の利用を躊躇することにもなりかねない。
2 株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度(16ページ)

株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度の創設に賛成する。議決権保有割合が5%超の場合のみならず、3%以上や1%以上の場合も通知義務の対象とすべきである。17ページの(注3)の期間は1か月では長く、できるだけ短くすべきである。議決権停止通知をするか否かの決定を取締役会決議事項とすべきでない。

第3 株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項

1 書面交付請求制度の見直し(18ページ)

書面交付請求制度を廃止する【A案】に賛成する。ただし、移行期間を設ける必要はないと考える。

2 書面による議決権の行使についての見直し(18ページ)

書面による議決権の行使について見直しを行う【A案】に賛成する。

3 株主総会の招集の電磁的方法による通知についての見直し(18ページ)

株主総会の招集の電磁的方法による通知について規律を設ける提案内容に賛成する。また、(注)にある「一定の要件の下、株主の電子メールアドレス等を株主名簿の必要的記載事項とし、株主の承諾を得ずに、書面による通知の発出に代えて、電磁的方法により通知を発することができるものとする」ことについては将来的な見直しをすることが望ましい。

第4 「会議体」としての株主総会に関する規律の見直し

1 事前の議決権の行使がされた場合における株主総会の決議の合理化(19ページ)

事前の議決権行使により決議要件を満たした場合に株主総会決議があったものとみなす制度を創設する【A案】に賛成する。ただし、定款の定めは不要とすべきである。仮に、【A案】について、定款の定めの要件が維持されるのであれば、【A案】の規律を設けるのとあわせて、定款の定めを要せずに、株主総会当日の議事による法令違反等は株主総会の決議取消事由とならないものとする【B案】や、(後注)の事前の議決権行使により決議要件を満たした場合に議長の宣言により株主総会決議があったものとみなす考え方についても検討すべきである。

〔理由〕

  • 上場会社の株主総会においては、事前の議決権の行使により、株主総会の前日までに決議の成立が事実上確定しているケースが大半であるにもかかわらず、現行法の下では、株主総会当日に採決を行うまで決議は成立しないため、当日の議事運営次第では決議取消事由が生じ得る。そのため、上場会社は、決議取消事由が発生しないよう、多大な時間、労力、費用をかけて、詳細かつ多岐にわたる想定問答の作成、動議など様々なケースを想定した議事運営シナリオの作成、リハーサル等による当日の所作の確認等の事前準備を入念に行わざるを得ず、また、株主総会当日も慎重な議事運営を行うことに注力せざるを得ない。「会議体」としての株主総会に関する規律の見直しにより、上場会社の負担を軽減させるにとどまらず、株主との間で、過度に慎重になることなく、柔軟で自由なコミュニケーションをとることが可能になるため、会社と株主の建設的かつ実効的な対話が促進されることにつながり、会社だけでなく株主全体にとっても望ましい。
  • 【A案】では、株主は、事前の議決権行使をするか否かを通じて、事前に決議を成立させるか、あるいは株主総会当日に決議を成立させる(株主総会を意思決定の場とする)かを選択することが可能であり、多数の株主が、株主総会当日の審議を踏まえて決議を成立させることを希望せず、事前に議決権を行使した場合に初めて、事前に決議が成立し、株主総会が意思決定の場ではなくなることになる。したがって、【A案】では、定款の定めがなくても、株主総会当日の審議を踏まえて決議を成立させるか否か、すなわち株主総会を意思決定の場とするか否かについて、株主の意思が適切に反映されることになる。
  • また、多くの上場会社では、株主総会の特別決議の定足数を定款で3分の1に引き下げており、定款変更は、総株主の議決権の3分の1の株主が出席し、その3分の2の賛成で成立し得る、つまり、総株主の議決権の9分の2の賛成のみで成立し得るのに対し、【A案】では、株主総会ごとに、事前の議決権行使によって、普通決議事項の場合は総株主の議決権の過半数の賛成、特別決議事項の場合は総株主の議決権の3分の2の賛成が必要であることから、定款変更よりも株主総会ごとの事前の決議の方が、より多くの株主の意思を反映したものとなるとの見方も可能である。この点からも定款の定めを要件とする必要はないと考える。
  • 決議取消事由を限定する【B案】では、事前の議決権行使により多数の賛成票が得られている場合であっても、株主総会当日に採決を行わない限り、決議は成立しないと考えられる。また、何らかの理由で株主総会当日に採決ができなかった場合には、決議が成立しないこととなり法的安定性を欠く。さらに、株主総会当日の修正動議への対応の負担も発生する。このように、【B案】では、会社の負担の軽減は限定的であるが、仮に、【A案】について、定款の定めの要件が維持されるのであれば、【A案】の規律を設けるのとあわせて、【B案】の規律を設けることについても検討すべきである。
2 株主総会の書面決議制度の見直し(20ページ)

提案内容に賛成する。ただし、異議を述べた株主が総株主の議決権の一定割合を超えない限り決議が有効となるよう要件を見直すべきだと考える。

〔理由〕

「ただし、当該通知を発した日から1週間以内に異議を述べた株主があるときは、この限りでない。」という記載について、一人でも株主が反対すれば決議が成立しないことになり、制度の活用が進まないことが懸念される。

4 キャッシュ・アウトの手続の見直し(24ページ)

株式等売渡請求をすることができる「特別支配株主」に該当する者について、金商法第27条の2第6項に規定する公開買付けにより総株主の議決権の3分の2以上を有することになったものを含めることに賛成する。ただし、【A案】に含まれているマジョリティ・オブ・マイノリティ条件(MOM条件)の設定を公正な手続の要件とすべきではない。仮に、一般株主の利益の確保のための公正な手続の具体的内容として、MOM条件の設定に関する規定が設けられるならば、改正を行わない【B案】とすべきである。

「特別支配株主」に関し、複数の株主の議決権を合算して議決権保有割合を算定することについては、仮に今回の改正では見直しを行わない場合であっても、今後も引き続き見直しを検討していくべきである。

〔理由〕

企業には、M&Aをできる限り速やかに完了させたいというニーズがある。ただし、MOM条件が設定された公開買付けに限定すると、それ以外の公開買付けについて、金銭の交付時期が遅れることへの懸念から生じる強圧性の問題が生じる。また、MOM条件の設定については、企業価値の向上に資するM&Aに対する阻害効果の懸念もある。また、会社法がMOM条件の設定について法的効果を与えると、MOM条件の設定のない公開買付けは一般株主の利益の確保のための公正な手続を踏んでいないとの評価を前提に法改正がなされたと受け止められるおそれがある。

第5 株主提案権に関する規律の見直し

1 株主提案権の議決権数の要件の見直し(24ページ)

株主提案権の議決権数の要件(300個以上の議決権)を廃止する【A案】に賛成し、一定の個数まで引き上げる【B案】に反対する。

〔理由〕

  • ここ数年で、上場会社における株主提案の件数は著しく増加しており、それに対応する企業の負担も増大している。
  • 投資単位が引き下げられることで、より少ない投資額で議決権300個要件を満たしやすくなるため、企業は株式分割に対して慎重にならざるを得ない。
  • 現状、300個要件があることから、可決の可能性が低い株主提案の対応のために会社において非常に大きな負担やコストが発生している。これらの負担やコストは、最終的には株主全体で負担をすることになることから、このような状況は、株主共同の利益に資するとは言いがたい。
  • 株主が議決権を300個有することの意味合いは、当該会社の議決権総数や上場会社・非上場会社であるかによっても状況は大きく異なるため、会社の規模や種類を問わず、一律に議決権を300個有していれば株主提案権を有するという制度は、合理性を有するとは言いがたい。仮に、【B案】のように「300個」という議決権数の要件を「500個」、「1000個」、「1500個」という一定の個数まで引き上げたとしても、個数要件を維持する限り、合理性を有するとは言いがたい。
2 株主提案権の行使期限の見直し(25ページ)

「8週間」の期限を延長する【A案】の見直しをした上で、株式会社が一定の時期までに株主総会の日を株主に対して通知した場合には、株主は一定の期間前までに株主提案権を行使しなければならないとする【B案】の見直しを行う考え方に賛成する。ただし、【A案】について、期間は12週間程度とすべきである。【B案】における通知の方法について、上場会社においては、金融商品取引所の規則に基づく適時開示による開示を行った場合、当該開示をもって通知に代えることができるとすべきである。

〔理由〕

  • 「株主総会の日の8週間前まで」という現行の行使期限を前提とした場合、スケジュールが非常に厳しく、上場会社にとって極めて大きな負担となっている。一方、株主提案権の行使期限を「8週間前」より数週間程度前倒ししても、株主が株主提案権を行使するか否かやその具体的内容について検討や判断をするための情報に実質的に違いはないと考えられる。
  • 株主総会の4か月前までに株主への通知を実施し、株主提案権の行使期限が株主総会の3か月前までということが明確化されることになれば、株主にとって予見可能性および十分な検討期間が確保され、また、会社にとっても、株主提案への対応のために一定の期間が確保される。
  • 【B案】における通知の方法について、(注1)に記載されている公告よりも、適時開示の方が株主にとって認識しやすく、かつ、上場会社にとっても利便性が高い。
3 その他の見直し

中間試案において記載はないが、業務執行事項に関する様々な株主提案が定款の変更に関する議案として提出されている現状を踏まえ、業務執行事項に係る定款の変更に関する議案の提出を制限すべきである。

〔理由〕

  • 取締役会設置会社の業務執行は、本来は取締役会が決定すべきであるが、定款変更の形式で業務執行事項に関する議案を提出することを認めると、事実上、業務執行事項について無制限に株主提案を行うことが可能となり、株主総会の権限を限定した会社法第295条第2項の趣旨に反することになりかねない。
  • また、日常的な業務執行事項が定款に定められると、当該事項を変更するためには株主総会の特別決議による定款変更が必要となるため、機動的で柔軟な経営判断が困難となる。

第6 その他

1 会社法第316条第2項に規定する調査者制度の見直し(25ページ)

2項調査者制度を廃止すべきである。仮に、廃止が困難である場合には、株主総会で選任される役員と同じ規律を及ぼす観点から、【B案】に一定の修正を加えた見直しを行うべきである。

〔理由〕

  • 本制度は、調査権限の対象事項、調査の範囲、調査者の義務や責任などについて具体的な規律がなく、裁判所の関与もないため、濫用のおそれがある。
  • 本制度は、昭和25年(1950年)の商法改正において、監査役が業務監査権限を有しないものとされた際に、その役割の一部を少数株主に担わせるために導入された。しかし、現行法では、株主総会で選任された監査役等が業務監査権限を有している。株主総会で2項調査者の選任を認めることは、会社のガバナンスに混乱をもたらし得る。
  • 仮に、廃止が困難である場合には、【A案】ではなく【B案】の規律を基本としつつ、株主総会で選任される役員と同じ規律を及ぼす観点から、【B案】に一定の修正を加えた見直しを行うべきである。例えば、2項調査者を株主代表訴訟の対象にするなど、2項調査者について、株主総会で選任される役員と同様の規律を及ぼすべきである。また、会社の健全な経営を確保する観点から、調査対象事由は重大な法令定款違反事由に限定すべきである。

第3部 企業統治の在り方に関する規律及びその他の規律の見直し

第1 指名委員会等設置会社制度の見直し

1 指名委員会等の権限の見直し(28ページ)

指名委員会等の権限の見直しについて、検討を進めるにあたっては、具体的な立法事実を整理すべきである。

モニタリング・モデルを指向する会社のための機関形態の在り方については、見直しを行う必要はない。

〔理由〕

  • 3つの機関設計(指名委員会等設置会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社)に優劣は存在せず、各社が自由に選択することが望ましい。特定の機関形態に誘導することのないように留意すべきである。
  • モニタリング・モデルを指向する会社のための機関形態の在り方について、企業からは見直しを求める意見は出されていない。
2 監査委員会の権限等の見直し(28ページ)

現行法の規律の見直しを行う必要はない。

〔理由〕

  • 監査委員会は取締役会の内部機関であり、監査委員でない取締役による監査委員会の議事録の閲覧等は監査委員会に対する取締役会の監督機能の一環である。
  • 監査委員の選定および解職を行うのは株主総会ではなく取締役会である。

第2 責任限定契約制度の見直し(29ページ)

株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等である取締役及び執行役を加えることに賛成する。

株式会社と業務執行取締役等である取締役又は執行役との利益が相反する状況にあるときに行われた行為に基づく当該取締役又は執行役の会社法第423条第1項の責任について、責任限定契約による責任の限定の対象外とすることに反対する。

〔理由〕

  • 責任限定契約の相手方を拡大することにより、経営陣の適切なリスクテイクおよび優秀な経営人材の確保を後押しする環境を整備すべきである。
  • 多くの上場企業においては、複数の社外取締役が取締役会に参加しており、業務執行取締役と社外取締役との間で責任限定に関する取扱いが大きく異なる現行の規律は合理的ではない。
  • 責任限定契約は、取締役の責任を完全に免責するものではなく、善意でかつ重大な過失がない場合に限って免責が認められ、その場合でも一定の損害賠償責任は負担する。
  • 実質的な利益相反の有無や程度等は、善意でかつ重大な過失がないという要件への該当性の判断にあたって考慮すれば足りる。

第3 事業報告等及び有価証券報告書の開示の合理化(30ページ)

上場会社が電子提供措置開始日までに事業報告等の開示事項の全てを記載した有価証券報告書を提出した場合には、事業報告等を作成することを要しないものとすることに賛成する。なお、電子提供措置開始日までに事業報告等の開示事項の全てを記載した有価証券報告書を提出するか否かについては、上場会社の選択に委ねるべきである。

会計監査人が上記の有価証券報告書について金商法に基づく監査をした場合には、会社法に基づく会計監査人の監査をしたものとみなすことに賛成する。

上記の見直しに加え、開示書類に関する法的責任の合理化を引き続き検討する必要がある。

有価証券報告書の早期作成・提出の実現のためには、有価証券報告書における開示内容の見直しやスリム化、株主総会準備の負担軽減、事業報告等や有価証券報告書以外の開示も含めた開示全体の見直しなど、制度横断的な環境整備を継続して検討することが肝要である。

以上

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